カルデアにこいつらを召喚してみた   作:Million01

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るろうに剣心
セイバー


カルデアの体育館に二人の英霊が対峙していた。

紺色の雅な陣羽織に身を包み、長い青髪の男と短身痩躯で左頬にある大きな十字傷がある赤髪の男だ。

 

青髪の英霊・佐々木 小次郎は刀を目前の高さに持ち刃を上に向けて赤髪の英霊・緋村 剣心と対峙している。

また剣心も同じく小次郎と似た構えを取り様子を伺う。

 

一触即発の雰囲気を放つ二人。そんな中、一人だけ見ている者がいる。

 

「ちょっと、どっちもやばいじゃない。『剣の速さ』『身のこなしの速さ』『相手の動きを先読みする速さ』を最大限に発揮して、あの佐々木 小次郎の太刀筋を無駄の無い動きで躱す。だけど、佐々木 小次郎の方も刀の長さを巧みに利用して近づかせないように斬撃を放っている」

 

 

腰にニ刀を携えた英霊・新免武蔵守藤源玄信は二人の手合いを見て呟く。

 

「あ〜あ!私も闘りたい!ていうか、混ぜて!」

 

「ぬっ?」

 

「おろ?」

 

「武蔵殿……どういうつもりかな?」

 

「貴方ばかりずるいわよ。私も混ぜてくれって言ってるのよ」

 

「だが、これは手合いーーー」

 

「ほら、防がないと死ぬわよ!」

 

ガキン、と刀と刀がぶつかり合う鈍い音がした。

 

「天眼か……さすがは武蔵」

 

一度狙えば獲物を逃さぬ、運命が如き一撃。必中の斬撃、恐るべし新免 武蔵の天稟(てんびん)とも呼ばれる魔眼に近しいもの。

 

「いやいや。そう言っておきながら防ぐってやっぱり貴方、狸ね」

 

「またまた、ご冗談を。私はこれでも英霊・佐々木 小次郎でござるよ」

 

荒々しい型を放ちながらもニ刀の姿勢を崩さないその姿はさすがは武蔵と言ったところ。それでも武蔵の斬撃を笑顔で捌く佐々木 小次郎も見事なものであった。

 

「…………」

 

二人の斬り合いに思わず剣心は唖然としてしまう。

手合いを申し込まされたのに放置されたのだ。もう完全に二人の視界に剣心はいなかった。

 

「仕方ない……拙者はこれにて」

 

剣心が体育館の扉の前で一礼をするとその場から立ち去った。

 

 

 

 

 

剣心がカルデアの廊下を歩いていると、マスターが反対側からやってきた。

 

「あ、剣ちゃん」

 

「け、剣ちゃん…?マスターは変わった呼び方をするでござるな」

 

「それで、どうしたでござるか?何か探しているようにも見えたが……」

 

「いや、土方さんに言われて沖田さんを探してるんだ」

 

「沖田殿を?拙者も手伝うでござるよ」

 

「いいの?」

 

「ええ、拙者は今やることがなくて……」

 

剣心がそう言うと立香がお礼をしながらその場を去った。

 

「とりあえず、他のサーヴァント殿達から聞きに行こう」

 

 

「沖田?あんな奴は知らん。しかし、お主あやつと同じ感じがするぞ?まさか、新手の人斬りサークルか!?」

 

 

「徳川の飼い犬?知りませんね……他を当たってください」

 

 

 

 

 

「なんか、凄く冷たい目で見られたでござる……」

 

剣心がそう言いながら最後の場所に出る。外だ。

 

「ん、沖田殿〜!」

 

たまたま、外で腰を掛けていた沖田を見つけ剣心は叫んだ。

 

「あ、緋村さん。どうしたんですか?」

 

夜の月を眺めていた沖田は剣心の声に気付いた。

 

「どうしたもこうも土方殿が呼んでいたでござるよ」

 

「土方さんが?」

 

剣心の言葉に沖田は心当たりがない。呼ばれるようなことをしていないのだ。

 

「にしても、いい月でござるな」

 

「そうですね……。そう言えば緋村さんに聞きたいこがあったのですが」

 

「ん?」

 

「なんで逆刃刀(そんな刀)を持ってるんですか?」

 

「…………」

 

「私から見れば今の貴方は明らかに弱い。逆刃刀(そんな刀)を持っているから貴方は弱くなった」

 

「……生前、似たような事を斎藤にも言われたでござるよ。『「不殺(殺さず)流浪人(るろうに)」がお前を弱くしたんだ』と」

 

「斎藤さんと会ったんですか!?」

 

「ああ、その時は『藤田 五郎』と名乗っていたでござる」

 

「プッ…!」

 

「おろ?」

 

「ふ、藤田 五郎!?なんですかそれ。変な名前ですね!フフフフ、つい笑ってしまいました」

 

「…………」

 

「すみません。それで、緋村さんはどうしたんですか?」

 

「こう答えたでござるよ。『今の拙者は自分の目に映る人を守れる「流浪人」としての強さがあればそれでいい』」

 

「『人を殺める「人斬り」としての強さなどもう必要ない』と……」

 

「一応、聞きますが斎藤さんはなんと?」

 

「……『「流浪人」すら失格』だと」

 

「…………」

 

「さて、沖田殿も早く土方殿の所に行った方がいいでござるよ」

 

「待ってください」

 

「?」

 

「緋村さん。私と闘ってください」

 

「…………」

 

「私は貴方を超えたかった。幕末最強と謳われた貴方を」

 

「……もう拙者は人斬りとしての強さを持ち合わせていないでござるよ」

 

「分かっています。ですからーーー」

 

ヒュン、という音と共に剣心の目前に何かが通り過ぎた。

 

「私が貴方を『人斬り』に戻します」

 

沖田の刀であった。見れば沖田は刀を構えていた。

刺突(つき)を外されても間一髪入れずに横なぎの攻撃に変換できる戦術の鬼才 新撰組副長・土方 歳三の考案した『平刺突(ひらづき)』。

 

剣心自身、この『平刺突』を嫌と言うほど味わっている。剣心が生前、幾度となく繰り広げた新撰組三番隊隊長・斎藤 一が放つ技はこの『平刺突』の完成形だ。

だが、沖田の場合は違う。完成形とまではいかなかったものの沖田自身の速度がそれを補い、斎藤 一にも劣らない威力を持つ。

 

「沖田殿っ!」

 

「構えて下さい。でないと死にますよ?」

 

彼女の速さを持ってすれば回避不可能。たとえ、幕末最強の剣客であった剣心でもだ。

彼女が唯一剣心に勝っているものが一つある。それは速さだ。『目にも止まらぬ速さ』を持つ剣心に対し、沖田は『目にも映らぬ速さ』で勝っているのだ。

 

だからこそ、剣心は最大限の力を持って向かい合わなければならない。

だから、剣心は構えた。

『抜刀術の構え』を。

 

目には目を。歯には歯を。ならば宝具には宝具を。

ただ、それだけであった。

 

「一歩音を超え、二歩無間……三歩絶刀!」

 

一歩踏み出しニ歩目で加速し三歩目に至っては姿が消えてしまう。

 

「飛天御剣流……奥義!」

 

それに対して剣心は『抜刀術の構え』のまま前に出た。

速さに対して沖田に劣る剣心は総合的な速さで沖田に勝たなければならないのだ。

即ち神速の速さから宝具に繋げることを考えた。

 

無明三段突き(むみょうさんだんづき)!!」

 

天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)!!」

 

この勝負、どちらに転ぶか分からない。

全く同時に放たれる三段刺突に対して超神速の抜刀術。

剣心自身、沖田の宝具を全て防ぎきれるわけでもない。

沖田にとっても剣心が放つ宝具は生前見たことが無かった。

 

故にこの勝者はーーー

 


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