カルデアにこいつらを召喚してみた   作:Million01

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ぬらりひょんの孫
アサシン


「マスター!私が取っといたおやつを知りませんか?」

 

正午が過ぎ、金髪碧眼のセイバーが立香の部屋に入ってくるといきなりそう質問してきた。

立香は何事かと思いながらも首を振る。

 

「さては、あの英雄王が……!」

 

セイバーがそう言うと部屋を出て何処かに行ってしまう。

 

今度はセイバーが出て暫くしてからだった。

 

「マスター、倉庫の食材が原因も分からず減っているんだ。何か知らないか?」

 

赤い外套のアーチャーが部屋に入ってくるとそう聞いてきた。

立香はまたもや首を振り、否定した。

 

「そうか。犯人を見つけたら教えてくれ」

 

アーチャーがそう告げると部屋を出ていき、それとすれ違いに金髪の鬼、茨木童子が入ってきた。

 

「汝……昨日まで取っといたお菓子を知らぬか?」

 

今度は茨木か……と思いながらも首を横に振る。

 

「もし犯人がいたなら吾に知らせろ。殴り殺してやる……」

 

ヒッ、と立香の背筋に寒気が走る。尋常ではない殺気があたりの空気を振動させる。

 

「おい、俺の沢庵(たくあん)を知らねぇか?」

 

そんな雰囲気を壊して入ってきたのが茨木と同じバーサーカーの土方 歳三であった。

 

立香は安堵しながらも知らないと答えておく。

 

「そうか。すまねぇな」

 

土方がそう言うとこの部屋から立ち去る。また、茨木も土方の登場に吾に帰ったのか部屋を出た。

 

何があったのだろうか?今日は少しだけ不可解な事がありすぎだ、と思ってしまう。

英霊を召喚したのにも関わらずその場には誰もいなかった。

更には英霊達の好物や倉庫の食材が行方不明。まるで誰かに取られているような気がしてならない。

そう思いながらも机の上に置いてあったお菓子を取ろうとする。

 

「……?」

 

だが、そこで違和感を感じた。ないのだ。そう、机の上に置いてあったはずのお菓子が。

 

「どうした?マスター」

 

「いや、ここに置いてあったお菓子が……」

 

「ああ、それならワシが貰ったぞ」

 

「それならそうと……ん?」

 

「ん?」

 

当たり前のように話しかけられたので当たり前のように答えたが、今気付いた。

 

「うわっ!?」

 

思わずそう叫んでしまった。下ではなく長く後ろに伸びた髪、着物を着て何処かぬらりくらりとしているような雰囲気を放つ男がいた。

 

「どうしたんですか、先輩ーーー」

 

立香が男の存在に気付くと同じく部屋の扉が開かれ、眼鏡をかけたマシュが入ってきた。

 

「えっと……どなたですか?」

 

当然の質問。部屋の主である立香もそう思った。カルデアのスタッフ……にしては目立ちすぎる。

 

「ワシか?ワシはぬらりひょんじゃ」

 

「ぬらりひょん!」

 

「知っているのか、マシュ!」

 

「はい、家の者が忙しくしている夕方時などにどこからともなく家に入り、茶や煙草を飲んだり自分の家のようにふるまう妖怪です」

 

「また、家の者が目撃しても『この人はこの家の主だ』と思ってしまうため、追い出すことはできない、またはその存在に気づかないと解説されています」

 

「……案外、せこい妖怪なんだね」

 

「随分、勝手な事を言ってくれるじゃねぇか。マスター」

 

ニヤリとぬらりひょんが不敵に笑った。

 

「ほう……変な気配がすると思ったが、まさか貴様の仕業か」

 

いつの間にか部屋には茨木がおり、ブゥン!とぬらりひょんに拳を振るう。

 

ヌッ、と茨木の拳がぬらりひょんの頭を貫いた。

 

「い、茨木さん!?」

 

「ザコ妖怪風情が吾に楯突くからだ」

 

「ザコ妖怪ね……」

 

「っ!?」

 

突如、茨木の背後からした声にその場にいた者が驚く。

 

「なるほどな……妖怪の総大将としては中々、やるよのう」

 

ブォン!という音ともにぬらりひょんの首が離れてしまう。

 

「美人な鬼が二人も相手してくれるとはワシも運がいいのう」

 

ぬらりひょんはそう言いながら霊体化の如く消えてしまう。

 

「外に出てはったな〜」

 

「うちの酒を勝手に飲んだ罪は重いで?」

 

「ほら、こっちじゃ」

 

酒呑童子に続き茨木童子までもが部屋に出ていく。マシュや立香も不安で仕方なく二人、いや三人の後を追う。

 

ぬらりひょんを追う二人の鬼とマスターにマシュ。

 

「ん?」

 

「私の直感スキルが犯人はここにいると思いましたがあたりのようですね」

 

ブン!

 

「おっと……」

 

セイバーの振り下ろした剣をぬらりとした動きで避け、通り越す。

 

ヒュン!

 

だが、赤い弓矢がぬらりひょんの頭部を貫いた。

 

「やった!?」

 

「それ、やってないフラグ!」

 

セイバーがぬらりひょんの頭部を見てフラグを立てる。

 

「中々やるじゃねぇか」

 

「っ!」

 

赤い弓矢を放ったアーチャーは声のした方向、後ろに振り向きながら赤と白の双剣を創り後ろに振りかぶる。

 

「いない!?」

 

だが、そこには誰もおらず双剣は空を切った。

 

「いや、おるで」

 

ザシュ、と酒呑童子が手に持つ剣を振り下ろすとまるで空間が斬り裂かれたかのようにぬらりひょんが姿を現した。

 

「妖怪と戦うときはな、ビビったら負けよのう。いい男なのに勿体あらへんが本気でいくで?」

 

「フン、いいじゃろ。ワシも本気で行くとするかの」

 

二人がそう言うとどこからか盃を取り出した。

 

「死にはったらよろしおす」

 

「ほら、行くぜ」

 

「『千紫万紅(せんしばんこく)神便鬼毒(しんぺんきどく)』ーーー爪先からゆっくり……ゆ〜っくり……」

 

「『明鏡止水(めいきょうしすい)(さくら)』ーーーふむ、いい光景じゃ」

 

酒呑童子が盃から湧く毒酒がを床に注ぐ、それと同時にぬらりひょんが盃から妖銘酒を前方に浴びせると、毒酒と妖銘酒が発火した。

 

「燃やされはったの」

 

「当たらんかったの」

 

カルデアの廊下が燃えてるのを見て二人が穏やかにそう呟く。

 

「フン!」

 

ガキン!といつの間にかぬらりひょんの背後にいた土方が手に持っていた。刀を振り下ろすもぬらりひょんの長ドスで防がれた。

 

「そこ!」

 

「ーーー牛鬼」

 

ガキン!さらにセイバーが炎の中を突っ切って聖剣を振り下ろすも突如として現れたから牛鬼と呼ばれた男の刀によって防がれた。

 

「私の剣を受け止めるとは只者ではないな?」

 

「私は牛鬼。400年も総大将と一緒にいた古参」

 

「ふふふふ、牛鬼?今、牛鬼とおっしゃいましたか?」

 

「!?」

 

一瞬、牛鬼の背筋が凍る。思わず振り返ってしまった。

 

「貴方が牛鬼?おかしいですわね。牛鬼はそんな人間のような姿はしていないはず」

 

牛鬼の配後に一人の女性が立っていた。黒く長い髪が凛とした雰囲気を放つ。

 

「いいでしょう。貴方が牛鬼なら私が処理してあげましょう」

 

「いいだろう。来い!」

 

ガキン!と牛鬼がセイバーを押しやりバーサーカーのサーヴァント、源頼光に刀を振るった。

 

「面白いことになってきたの〜」

 

「……どこが?」

 

立香は思わずそう呟いてしまった。セイバーにアーチャー、土方 歳三、ぬらりひょん、酒呑童子、茨木童子、牛鬼、源頼光ととんだ大惨事となってしまい冷や汗をかいてしまう。

 


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