カルデアにこいつらを召喚してみた   作:Million01

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HELLSING
アーチャー


〜第一特異点 邪竜百年戦争 オルレアン〜

 

 

「ーーー最後のワイバーンを仕留めました。周囲に敵影なし。戦闘終了です」

 

十字ような巨大の盾を持った"盾の英霊(シールダー)"マシュ・キリエライトが周囲を確認してそう言った。

 

「……」

 

「ジャンヌさん?」

 

マシュが傍らにいた女性 ジャンヌ・ダルクを見た。

 

「……これをやったのは、恐らく"私なのでしょうね"」

 

「そうと決まった訳ではーーー」

 

「いいえ、分かります。その確信が私にはあります。分からないのは一つだけ」

 

「どれほどの人を憎めば、このような所業を行えるのでしょう。私にはそれが分からない」

 

『待った!先ほど去ったサーヴァントが反転した!まずいな、君たちの存在を察知したらしい』

 

「数は!?」

 

『おい、冗談だろ……!?数は5騎!速度が迅い……これはライダーか何かか!?と、ともかく逃げろ!数で勝てない以上、逃げるしかない!』

 

「ですがーーー!」

 

 

『数が同じだったら勝負を挑んでもいい!だが、戦力的に君たちの倍以上ある相手と戦わせるわけにもいかないだろ!撤退しよう、こんなの誰だって逃げる。三十六計さんもそう言ってる』

 

「……」

 

「ジャンヌさん!サーヴァントがやってきます、すぐにーーー」

 

「……逃げません。せめて、真意を問い質さなければ……」

 

「ですが……!」

 

『ダメだ、もう間に合わない!マシュ、とにかく逃げることを考えるんだ。いいね!?』

 

ーーーパンパンパン

 

「素晴らしい。やはり素晴らしい。やはり人間の英霊は素晴らしい。そうでなくては困る」

 

「アーカードさんもそんな事を言ってないでーーー」

 

「来たぞ。シールダー」

 

「……っ!?」

 

マシュやジャンヌ、アーカード、そしてそのマスター藤丸 立香がやってきた相手の英霊を見た。

 

ジャンヌが黒に染まったような英霊。巨大な十字架を手に持った英霊。羽帽子を被った英霊。槍を持った金髪の英霊。杖を持った銀髪の英霊であった。

 

「ほう……」

 

一瞬だけアーカードが槍を持った金髪の英霊を見て感嘆の声を上げた。

 

「ーーーなんて、こと。まさか、まさかこんなことが起こるなんて。ねえ。お願い、誰か私の頭に水をかけてちょうだい。まずいの。やばいの。本気でおかくしくなりそうなの」

 

「だってそれくらいしないと、あまりにも滑稽で笑い死んでしまいそうなの!」

 

黒いジャンヌ……ジャンヌ・オルタがジャンヌを見て笑うように叫ぶ。

 

「ほら、見てよジル!あの哀れな小娘を!なに、あれ羽虫?ネズミ?ミミズ?どっちも同じことね。ちっぽけすぎて同情すら浮かばない。ああーーー本当ーーーこんな小娘にすがることしかできなかった国とか、ネズミの国にも劣っていたのね!

ねえジル、貴方もそうーーーってそっか。ジルは連れてきてなかったわ」

 

「貴女は……貴女は誰なのですか!?」

 

「それはこちらの質問ですが……そうですね、上に立つものとして答えてさしあげましょう。私はジャンヌ・ダルク。蘇った救国の聖女ですよ。もう一人の"私"」

 

「……馬鹿げたことを。貴女は聖女ではない。私がそうでないように。いえ、それはもう過ぎたこと、語ることではない。それよりーーーこの街を襲ったのは何故ですか?」

 

「……何故、かって?同じジャンヌ・ダルクなら理解していると思っていましが。属性が反転していると、ここまで鈍いのでしょうか?」

 

「この街を襲った理由?馬鹿馬鹿しい問いかけですね。そんなもの明白じゃないですか。単にフランスを滅ぼすためです。私、サーヴァントですもの」

 

「政治的に、とか経済的に、とか回りくどいわ。物理的に、ぜんぶ潰す方が簡単で簡潔でしょう?」

 

「バカなことを……!」

 

バカなこと(・・・・・)?愚かなのは私たちでしょう、ジャンヌ・ダルク。

何故、こんな国を救おうと思ったのです?

何故、こんな愚者たちを救おうと思ったのです?

裏切り、唾を吐いた人間たちだと知りながら!」

 

「それはーーー」

 

「私はもう騙されない。もう裏切りを許さない。そもそも、主の声も聞こえない。主の声が聞こえない、という事は、主はこの国に愛想をつかした、という事です」

 

「だから滅ぼします。主の嘆きを私が代行します。すべての悪しき種を根源から刈り取ります。人類が存続するかぎり、この憎悪が収まらない。このフランスを沈黙する死者の国に作り替える」

 

「それが私。それが死を迎えて成長し、新しい私になったジャンヌ・ダルクの救国方法です。まあ、貴女には理解できないでしょうね。いつまでも聖人気取り。憎しみも喜びも見ないフリをして、人間的成長をまったくしなかった綺麗な聖処女さまには!」

 

「クククク、フハハハハッ!」

 

「何が可笑しい!」

 

ジャンヌ・オルタが叫ぶ中、一人のサーヴァントが笑った。アーカードである。

 

「人間的成長だと?ふざけるなよ。貴様は諦めを拒絶した。『あきらめ』が人を殺すように。もはや人ではない。それに比べてこの聖女さまのほうがマシだぞ?」

 

「ーーーうるさい蝿がいるわね。あまり耳障りだと殺すわよ?」

 

「殺せるのか?貴様に。この化物である私を?」

 

「……。貴女は、本当に"私"なのですか……?」

 

「……呆れた。ここまでわかりやすく演じてあげたのに、まだそんな疑問を持つなんて。なんて醜い正義なのでしょう。この憤怒を理解できないのではなく、理解する気さえない」

 

「ですが、私は理解しました。今の貴女の姿で、今の私という英霊のすべてで思い知った。あなたはルーラーでもなければジャンヌ・ダルクでもない。私が捨てた、ただの残り滓に過ぎません」

 

「……!」

 

「私と同一の存在で、尚且つクラスも同じであるなら、何かしら感じ入るものもあったでしょう。ですが貴女にはなんの価値もない。ただ、過ちを犯すために歴史を再現しようとする、亡霊に他ならない」

 

「バーサーク・ランサー、バーサーク・アサシン。その田舎娘を始末しなさい。雑魚ばかりで飽きたところでしょう?喜びなさい。彼らは強者です」

 

ジャンヌ・オルタはそう言って槍を持った金髪の英霊と杖を持った銀髪の英霊を見た。

 

「私が召喚したサーヴァントの中でも、貴女には一際血に飢えた怪物です。勇者を平らげる事こそが貴女たちの存在意義。存分に貪りなさい」

 

「ーーーよろしい。では私は血を戴こう」

 

「いけませんわ王様(・・)。私は彼女の肉と血、そして(はらわた)。戴きたいのだもの」

 

「強欲だな。では魂は?魂はどちらが戴く?」

 

「魂なんて何の利益もありません。名誉や誇りで、この美貌が保てると思っていて?」

 

「よろしい。では魂は私が戴こう!皮肉なものだ。血を綴る悪魔に成り果てた今になって、彼女の美しさを理解できるようになったとは」

 

「ええ、だからこそ感動を抑えられない

私より美しいものは許さない

いいえ、それより 私より美しいものの血は、どれほど私を美しくしてくれるのかしら?」

 

「ああ、新鮮な果実を潰すのは楽しいわ

果肉は捨てて汁だけ嗜む

それこそ夜の貴族の特権

私の宝具で、一滴残らず搾り取ってあげましょう」

 

二人の英霊はそう言いつつ前に出る。

 

「来ます!」

 

「我が主よ。ここは私に譲ってくれないか?」

 

「アーカード?」

 

「ここは私でないとだめなのだ。化物である私でないと」

 

「わかった」

 

アーカードのマスターである藤丸 立香がそう言うとアーカードが前に出た。

 

「さあ、戦争の時間だ。狂った王様(・・)

 

アーカードがそう言うと両手に拳銃を構えた。

 

「よかろう、絶叫せよ!」

 

グシャ、という音ともにバーサーク・ランサーの槍がアーカードの心臓を貫いた。

 

「幾千幾万の血を流し、そして命を捧げよ」

 

バーサーク・ランサーは手に持っていた槍をねじ込ませるように力んだ。

 

「流石だな。狂った王様」

 

並のサーヴァントであるならここで死んでいたであろう。バーサーク・ランサーもそう思っていた。だが……

 

「どうした?槍で心臓を突いただけだぞ。まだ他に手はあるのだろう?」

 

「何……?」

 

ーーーパァン!

 

アーカードが両腕を高く上げると手に持っていた白銀の銃をバーサーク・ランサーに向けて発砲した。

 

「ランチェスター大聖堂の銀十字錫を溶かした弾頭だ。並の吸血鬼はこれで終わる」

 

バーサーク・ランサーは着弾した衝撃で後ろに吹き飛ばされる。

 

「ほう……懐かしい槍だ」

 

アーカードは心臓に突き刺さっている槍を抜き、軽く手で弄んだ。

 

「返すぞ、王様。しっかりと受け取れよ」

 

ヒュン、とアーカードが亜音速で槍を投擲した。

 

「グッ……!」

 

アーカードの投擲した槍がバーサーク・ランサーの脇腹に突き刺さる。

 

「ほら、立てよ王様。脇腹に槍が刺さっただけだぞ」

 

「くっ……全ては幻想のうち……けれど少女はこの箱に……『 幻想の鉄処女(ファントム・メイデン)』!」

 

アーカードが徐々にバーサーク・ランサーに近づくと突如、背後にソレは出現した。

 

何か鉄の箱のようにも見えるそれはアーカードを包み込む。

拷問器具『鉄の処女(アイアン・メイデン)』……左右に開く扉からは、長い釘が内部に向かって突き出しており、中の人物に刺し傷を追わせる拷問道具。

 

アーカードにそれが襲う。バタン、という音ともに何が肉を貫く音が響く。

 

「フフフフ、アハハハハ!!」

 

だが、それでもヤツは死ななかった。

 

「そんな……嘘よ……!」

 

宝具を使ってでも殺しきれない化物。

 

「楽しい!!こんなに楽しいのは久しぶりだ 貴様達を分類(カテゴリー)A以上の吸血鬼(ヴァンパイア)と認識する」

 

アーカードは

 

「っ!?バーサーク・ランサー!バーサーク・アサシン!引きなさい!!」

 

「――拘束制御術式。第三号、第二号、第一号、開放」

 

ジャンヌ・オルタの言葉を聞いて二人が後退し始める。だが、それよりもアーカードの体から闇が蠢き始めた。

 

「状況A。『クロムウェル』発動による承認認識。

 目標、敵の完全沈黙までの間、能力使用限定解除開始」

 

グニャリ、と闇の中で無数の赤い眼が開き二体の英霊を睨みつけた。

 

「さあ、お楽しみはこれからだ。本当の吸血鬼の闘争は!」

 

そして、アーカードから現れた果てしない闇が二人の英霊を襲う。

 

 

 


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