ナザリック最後の侵入者   作:三次たま

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二りぼっちの決戦

 

ルベドは姉たちが好きだ。

だから姉たちが大好きな方々のことはよく知っている。

 

ニグレドはタブラ様が大好きで、アルベドはモモンガ様のことが大好き。

仲良い二人は、けれど根っこで正反対にすれ違ってる。

 

……まあルベドだってそうだけど。

 

姉妹なのに好きなのに、なんだか不思議。大好きってとっても変な気持ち。

とってもとっても、気持ち悪い。

 

そうは思わない? ねぇ、おねえちゃん、

 

 

◆◇◆

 

 即座に死を直観させる黄金槍の強烈な刺突。

 

 アルベドは両の手の武器を全力で掲げて、大地を踏みつぶすように食いしばる。

 

 少女並みの矮躯しかないルベドが放つ単調な一撃はしかし、100レベル盾役(タンク)であるアルベドの体幹と気力を根こそぎ削り取るように重かった。

 

 

 

『ねぇ、おねえちゃん、』

 

 武器を通じて流れ込むのは、憎むべき敵(愛しい妹)の切実な叫び。

 だが今のアルベドには彼女を慈しむ余裕は無い。

 アルベドにだって、ルベドの考えに思うところは確かにある。

 

 けれどこの瞬間においては答えるべき言葉も、それを考える時間だって与えられてはいないのだ。だから――

 

「うるさああアアアアァァァッい!!!」

「!」

 

 極大の流星を思わせる重いルベドの槍の一突きに対し、アルベドは満身の力を籠めて拒絶する。

 

「かまってる余裕は無いのよぉ!!」

 

 続けざまにバルデッシュを横薙ぎにしてルベドの右肩口に叩きつけた。

 

 刃の先から盛大な衝撃波と青白い火花が飛び散って金属音を打ち鳴らす、内まで響く重厚なクリーンヒット。

 同僚である階層守護者達すら致命打に追い込む会心の一撃を、アルベドは慈悲も容赦もなくルベドへと切り込んだのだ。

 

(糞が、また痛む!!)

 

 刹那、アルベドの肩口にも同様の衝撃が撃ち込まれたかのような錯覚が、アルベドの思考にノイズする。

 聡明なアルベドは理解していた。この幻痛はルベドの仕業などではなく、アルベドの中にある許されざる躊躇いであると。

 

【アインズ様の敵は誰であれ、容赦なく滅ぼさなければならない】

 

 今までは当たり前にできていた(・・・・・・・・・・・・・・)はずの必然の思考が、どうしてか霞んでままならないのだ。

 

 *1

 

(馬鹿か私は!!!)

 

 最強(ルベド)を前になんと悠長な考えを巡らせているのか。

 

 死闘を前に内向しかけた愚かな思考を瞬時に棄て、バルデッシュを強く握り追の2撃目を踏み込んだ。

 

 しかし戦場における一瞬の戸惑いは、ワインに混ざった一滴の泥の如く、すべての結果を無駄にする。

 

 僅かに揺らいだアルベドの刃を、ルベドは児戯のように右手で掴み取った。

 それは圧倒的な腕力と反射神経が為せる神業であり、かつアルベドが先ほど与えた右肩へのダメージがまるで効いていないことを意味していた。

 

「お姉ちゃん邪魔」

 

 まるで羽虫を追い払うように、空いた左手の槍で無防備なアルベドを薙ぎ払うルベド。

 

 アルベドが盾を挟み込むより速く、ルベドの矛先がアルベドの首元を切り付けようとした瞬間、アルベドは避けようのない死を直観した。

 

 だが直後、絶望的な期待は愛すべき主によって裏切られる。

 

「させん! 〈魔法三重詠唱最強化(トリプレットマキシマイズマジック) 現断(リアリティ・スラッシュ)〉!」

 

 後衛に位置していたアインズ様からの、高火力魔法による援護射撃がルベドの背中を狙い打つ。

 

 背後からの特大ダメージは流石のルベドも避けるべきと判断し、左手を止めて防御魔法を発動せざるえない。

 

「ん! 〈 魔法三重詠唱最強化(トリプレットマキシマイズマジック)石の壁(ウォール・オブ・ストーン)〉」

 

 アインズ様の放つ三本の裂刃と、ルベドが隔てた三重障壁。

 両魔法が耳を衝くほどの破砕音とともに相殺し合い、減殺された〈現断(リアリティ・スラッシュ)〉の一発だけがルベドの背中を斬り付けた。

 

 ルベドの背中からまたしても青白い火花と衝撃波が発生するが、当のルベドがまるで堪えていないのはわかりきっている。

 そしてアルベドの背中からも痺れるような共感覚が染み込むものの、2度同じ過ちを犯すほどアルベドは愚かではなかった。

 

 

(アインズ様のほうがずっと、ずっと辛いもの)

 

 アルベドは理解していた。

 

 アインズ様自身が誰よりも、今この状況を憂い嘆いて藻掻き苦しんでいるのだと。

 

 生涯で唯一得られたアインズ・ウール・ゴウンという繋がりに、主人は2度も裏切られた。

 一度は軽薄にも孤独に追いやられ、二度目はあまつさえタブラによって御命すらも狙われる。

 

 悲しいだろう、辛いだろう。

 これまで全てを懸けて守ってきたナザリックに裏切られ、そしてかつての仲間に立ち向かわなくてはならないのだから。

 守ってきた宝物に傷つけられて、ゆえに自らの手で壊さなくてはいけないのだから。

 

 アルベド以上に、ルベドの傷に痛んでいるのがアインズ様。

 そんな、愚かしいほど慈悲深い御方なのだ、アインズ様という人物は。

 

 だというのに、だというのに、だというのに、

 

(タブラもニグレドも、パンドラズ・アクターもマタタビも、どいつもこいつも好き勝手! アインズ様を置き去りにしやがって!!)

 

 

 おそらく全ての諸悪はタブラだろう。

 

 そして例の如くマタタビが勝手に動き出し、被造物であるはずのパンドラズ・アクターも続いてアインズ様の意に反した。

 

 結果この、誰もが望まぬ最悪の戦端が開かれたのだ。

 

 

 そしてアルベドだけが、今アインズ様の傍にいる。

 ならばたとえ、己の心を殺してでもアインズ様の願いをかなえなくては。

 

 でなくてはずっとずっと、アインズ様は一人きりだ。

 

 

 

 

 アルベドは背中に奔る幻痛を、強固な意志でねじ伏せる。

 

 今度はつかさず、斬撃に怯んだルベドに対して大盾ごと体重を傾けてのショルダータックルをぶちかます。

 

 そしてルベドが右手を放した瞬間に、バルデッシュの平らな部分でアインズ様の方向へと叩き飛ばした。

 深く深く、祈りを込めて。

 

「アインズ様……! 」

 

 アルベドが守るべきはずのアインズ様の方角へ、あえてルベドを吹き飛ばしたのだ。

 

 一見不明瞭な状況に、ルベドは僅かな困惑を見せながらもアインズへと矛先を突きつけた。

 

 それは【アインズ様の抹殺】を命じられたルベドにとって、とらざる得ない必然的な判断だ。

 故にそこ(・・)へ向けて、アインズ様は罠を張る。

 

 

 

 

魔法無詠唱化(サイレントマジック) 異界門(ゲート)

 

 

 

 

 それは一度限りのネコ騙し。

 

 勢いをつけてアインズへ向けて突進をしかけるという限定状況において、一回だけ使用できる芸当だ。

 

 

 

 ルベドの一撃がアインズ様の玉体に触れる紙一重。

 

 数瞬前に発動していた〈異界門(ゲート)〉がアインズ様との間に立ち広がって、勢いそのまま黒い靄の中へと吸い込まれる。

 

「っ!」

 

 ルベドが完璧に黒い靄へと潜ってしまったその瞬間、アインズは手をかざして元の入り口を搔き消した。

 

 

「また会おうルベド」

 

 そして2㎞先にある八階層のある方角(・・・・)を向いて〈異界門(ゲート)〉の出口側を確認し、アインズ様は即座に左手に巻いていた時計に手をかけた。

 

『モモンガお兄ちゃん! 時間を設定するよ!』

 

 するとアウラとマーレの創造主である ぶくぶく茶釜様の間抜けたボイスが響き渡る。

 

 その惚気た女声に息を合わせ、アルベドとアインズ様はある方角(・・・・)へと飛翔する。

 

 それはアインズ様が有するルベドへの唯一の対抗手段。

 

 八階層に幽閉された旧ナザリック地下墳墓の元支配者の群勢(元レイドボス)が座す、最悪の危険地帯である。

 

 

◆◇◆

 

 アインズ様は〈飛行(フライ)〉で、アルベドは己の翼でそれぞれ目的地へと空を切る。

 転移が使えないのには当然理由がある。

 

 ルベドとの戦闘を開始する前にあらかじめ、目的地の周辺に強力な転移阻害を施した大規模結界を張り巡らせていたからだ。

 

 もし目的地周辺へ向けて転移使おうとすれば、たとえギルドの指輪(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)を持つ者であろうと5分間のタイムロスが発生するように仕掛けている。

 

 つまりアインズ様の〈異界門(ゲート)〉に吸い込まれたルベドが目的地に開かれた転移先から飛び出してくるのは、タイマーで測った丁度5分後になるというわけだ。

 

 

「ひゅー、さすがはアインズ様ですね! ルベドを〈異界門(ゲート)〉に封じ込めてる隙に、モモンガ玉でレイドボスたちを起動して、転移先から飛び出したところをリスポーンキルするってことですか。まったくもって作戦は完璧ですね!」

 

「正解よ。アインズ様の持つワールドアイテム【オーブ・オブ・モモンガ】には2分の起動時間がかかるの。

 当然ルベドも元支配者達の存在は認知しているから、起動時間を見切られて転移で逃げられたり隙を狙われては埒が明かないもの。

 

 だから〈異界門(ゲート)〉のタイムロスコンボによって出現場所とタイミングを固定して、最高のタイミングで波状攻撃を仕掛けるの。

 いくらルベドでも生存確率は0パーセント……ってマタタビあなた!! よくぬけぬけとアインズ様の前に顔を出せたわね!? てめぇ今すぐ顔の皮剥いで塩漬けにしてやろうか! あぁん!?」

 

 

 飛行するアルベドとアインズ様の背後から突如追いすがってきたのは、召喚獣スフィンクスの背に乗った渦中の根源マタタビであったのだ。

 

 さりげなく割り込んで自然とと掛け合うアルベドとマタタビの様子に、アインズはほろ苦い感傷を抱いて口を衝いた。

 

「……お前ら意外と仲いいよな」

 

「いくらアインズ様のお言葉でもそればかりは撤回していただきたく思います! パンドラズ・アクターとは一緒にしないでください!」

 

「あはは! だってさ!」

 

 

 

「マタタビあなた! 今回ばかりはもう許しようがないわよ!? パンドラズ・アクター拐かして、こっちに何の説明もなくタブラとの戦端を開きやがって!

 

 覚悟の準備もないままに対応に追われるアインズ様がどれだけ御心を痛められたことか! あなたこれまでを通して何の成長もしていないのね!」

 

 アルベドはマタタビの胸倉に飛び掛かり、わずかな加減を残してその首を締めあげた。

 どうしようもなくどうしようもなく、マタタビの全てが許せなかった。

 

「成長してないは耳が痛いです……」

 

 今回のことも、そして今までの出来事の不満も併せて、アルベド中からドロドロと累積していた黒い激情が噴出した。

 

 

「あなたが! あなたがマトモであったなら! どれだけアインズ様が救われたことか!

 

 あなたがナザリックに歩み寄ってくれたならば! アインズ様と我々シモベが無用な勘違いをしてすれ違うことは無かったの!

 あなたが正しい判断を下せたら! 【傾城傾国】に出し抜かれて、シャルティアやアウラ、なによりアインズ様を傷つけることは無かったの!

 あなたが秘密を打ち明けてくれたなら! 評議国と王国で無用に混乱を招くことは無かったの!

 あなたが心を開いてくれたなら! モモンガ様は御一人にならずにすんだの!

 あなたが私のことを糾弾すれば! 本当は私は処刑されてたのに!」

 

「……それ今言うことですか?」

 

「そんなの私だってわかってるわよ!」

 

 馬鹿なことを言ってることも、場違いなことを言っていることはわかっている。

 そしてとても無責任な発言であることも。

 

 しかし、この場を置いて他に言える時も無いだろうと、そのようにも思うのだ。

 

 

「何でもできるくせに! 何でも知ってるくせに! 誰よりもアインズ様のことを大事に想っているくせに! 見下して馬鹿にして! アインズ様を置き去りにして! もし、私があなただったならっ……もっと!」

 

 

 アルベドはどうしようもないくらいマタタビのことが妬ましく、そしてだからこそ許せなかった。

 

 立場も知恵も力も視野も愛情も、アインズ様が必要とする全てを完全に兼ね備えておきながら、、どうしてアインズ様とすれ違う道ばかりを選び取ってしまうのだろう。

 

 こいつは一体、どれだけ道を踏み外せば気が済むのだろう。

 法国の隠し事を打ち明けてくれたり、白金の竜王との決闘を打ち合わせたりと、ちょっとは改善の兆しを見せたかと思いきや、タブラの件で途端にコレだ。

 

 もう理解ができず、腹立たしくて妬ましく、羨ましくて許せない。 

 

「ほんと何なのよあなたっ!」

 

「私は私だっつうの! 馬鹿な期待は無駄ですよ!」

 

 アルベドの腕をつかみ返して、反対の腕でアインズ様を指さしながらマタタビは叫ぶ。

 

「私はアルベドさんほどこの人のことを愛してるわけでもないんです! 仲良くしたいとも思わないし、心が通じてるわけでもない!

 独りぼっちに酔いしれてるところを水差すほど酔狂でもないし、支配者ぶって意地を張りたきゃ勝手にしてなって感じ!

 野垂れ死にしねぇ限りには、どうなろうが知ったこっちゃねぇのですよ!」

 

「嘘おっしゃい! あなたがどれだけアインズ様に執着してるかなんて、見てればわかるわよ! 」

 

「いやだから私は!」

 

 ああ言えばこう言い、水掛け論のように収集がつかなくなってきた会話に終止符を打ったのは、アインズ様の咳払いであった。

 

「いい加減にしてくれないか? 色々思うところがあるが、とにかく今は時間が無い。今大事な話だけを優先してくれ」

 

 アインズ様は苛立ちを込めた声音でアルベドとマタタビを窘める。

 あまりにも全うすぎる主人の正論を前にアルベドはマタタビから手を放して心底から恐縮した。

 

「も、申し訳ありませんアインズ様! 出過ぎた真似でした」

 

 マタタビもバツを悪くしながら頭を掻いて謝罪する。

 

「……悪かったですね。では単刀直入にこっちの状況をお話ししましょう」

 

 アインズ様は鷹揚に手を振り、気にしてないと意思表示を行う。

 そして視線で先を促すようにマタタビを見つめた。

 それに答えるよう、マタタビはスフィンクスの背の上で器用に胡坐を組む。

 

「タブラとニグレドさんの身柄は、アクターさんと私とでそれぞれ無事に確保いたしました。現在、仲良くお二人監禁中です。

まぁ、無事と言っても……」

 

 そこでマタタビは言葉を濁す。

 その様子だけでアインズ様は状況を理解したようだ。当然だろう。

 

「まさか」

「ええそのまさか……タブラのクズ野郎、ルベドにアインズ様抹殺の指示を出した直後に遠隔制御基板を自分で壊しやがっていたようですよ。マジであいつ性格終わっていやがりますね」

 

「なんてことを!!」

 

 アルベドが怒髪天を衝く勢いで激昂するのに対し、アインズ様は深いため息をつく。そして大きく肩を落とし、絶望の表情を浮かべていた。

 

「……信じられない、あのどうしてタブラさんがそんなことを……何かの間違いじゃないのか」

 

「全部私の嘘っぱちだったら、どれだけ素晴らしいことでしょうね。何なら今すぐ彼を呼びつけて話を付けてもいいですけど」

 

「結構です……そもそも今のルベドを俺の指示権で動かせないなら、誰の仕業かなんて確かめるまでもないんです。それにルベドの口からも、タブラさんの差し金であることを聞きましたしね」

 

アインズ様は力無く首を横に振る。マタタビはしかし、それでも慎重に問い続ける

 

「今すぐ彼をここに呼びつけることだってできるのですよ。ルベドを止める前に、直接証拠をその目で見なくては決心がつかないでは?」

 

それはマタタビなりの最大の良心だったのだろう。

だが、アインズ様は苦笑いとともに拒絶の意志を示す。

そして自らの意志を明確に口に出した。

 

「マタタビさんがそんなつまらない嘘をつく方だとは、俺は思っていませんから。それにもしタブラさんにやむを得ない理由があったのだとしても、この俺に何も告げずにルベドを殺しに遣わせたんですから、それがどんな言い訳だろうと耳にしたくはありません」

 

 そう言ってアインズ様は腹に埋め込んんだオーブを握りしめ、振り絞るように決心なされた。

 

「ルベドを壊したら次はニグレドとタブラさんの番です」

 

アインズ様の決意の言葉を受け、マタタビが目を細めた。

 

「へぇ~そうなんだ、そっかそっか。過去を振り切れてよかったね」

 

 パチパチと軽く手を叩きながらのその言葉に、アインズ様の瞳が怒りに染まる。

 だが、それを即座に抑え込むと、アインズ様は平静さを取り戻そうと深呼吸を繰り返す。

 それから再び口を開く。

 

 そこには先ほどまでの怒りの色は無く、ただ冷徹な支配者としての声が響く。

 

「マタタビさん、あなたに理解されようとは思わない。ユグドラシル最終日に鈴木悟が終わったように、骸骨の御旗を燃やした時からモモンガというプレイヤーは死んだんだ。

 今ここに在るのはナザリックのためならかつての仲間すら手にかける、独りよがりで我儘な狂った墓守、アインズ・ウール・ゴウンその人だ」

 

 冷たい声音に、アインズ様が本気であることをマタタビは感じ取ったのだろう。

 ニヤリと唇の端をつり上げる。

 

「アインズ様がどう思おうが構いません。どう感じようが勝手だし、どう考えようが自由だ。

 アインズ様はアインズ様が信じるアインズ・ウール・ゴウンを守ればいい。

 あなたが何を考えていようが、あなたがどう行動しようが、あなたが何を望もうが、あなたがどう生きようが、あなたの勝手。

 だから好きにすればいいのですよ」

 

 マタタビの返答はアインズ様にとって予想外のものだったのだろう。

 アインズ様は僅かに眉を動かし、不思議そうな表情を浮かべている。

 

「ただ一つだけご忠告を。片意地張って独りよがりをはたらくと碌なことありませんから」

「……」

「だけど安心してね。もしアインズ様が躓くことがあったとしても、この私自ら骨を拾って差し上げますから」

 

 マタタビはアインズ様に対して親しげに、そしてどこか親しみを込めた笑顔を浮かべる。

 

「…………マタタビさん」

 アインズ様はそれに何か言おうとしたようだったが、結局は何も言わず黙られた。

 だから代わりにアルベドが声を挙げる

 

「あなたまだ何か企んでいるの? いい加減にしなさいよ。これ以上アインズ様の邪魔をするなら容赦しないわ!」

 

 その剣幕に対し、マタタビは肩をすくめる。

 

「邪魔なんてとんでもない。アインズ様の企てた完璧な作戦が成功すれば、そのまま万事オールオッケーなのですからね

 てなわけで邪魔者は邪魔しないように自重しますから、お二人さんバイバイ!」

 

 そう言うやいなやマタタビとスフィンクスは煙幕に包まれて、次の瞬間には跡形もなく消えていたのだった。

 

 

 

*1
きっとおそらくその理由は……


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