カルネ村近郊(ガゼフ)
王国戦士長として国王の勅命を受けたガゼフ・ストロノーフは、国内の村々を襲う何者かを討伐するため、精鋭部隊を率いて辺境地に出向いていた。
しかし、行く先々の村では既に焼き討ちに遭っており手遅れとなるばかりであった。焼け残りからわずかばかりの生存者を探し出しては、人員を割き護衛とともにエ・ランテルに連れていくよう指示を出す。
厳格な面持ちで惨状を見渡していたガゼフに、部隊の副長が話しかけてきた
「戦士長」
「なんだ」
「王の御下命は、国境周辺の村を襲う集団を調査し、討伐せよとのことでした。
帝国騎士の襲撃も考えられます。しかし、実際に出動を命じられたのはわずか50名。 これは戦士長を嵌める陰謀に違いありません」
「そうかもしれないな」
ガゼフが仕えるリ・エスティーゼ王国。近年は農作物の収穫期を狙った隣国バハルス帝国による軍事政策によってその国力は着実に減衰しつつある。ところが王国内では国王派閥と貴族派閥で対立していることもあり、ロクな対策を取ることも叶わない。それどころか犯罪系裏組織につながりを持つ者や、帝国と秘密裏に手を結ぶ者もいるくらいだ。
そんな彼ら貴族にとって、周辺国家最強の戦士にして国王直轄の懐刀であるガゼフは邪魔な存在でしかないのだろう。事実此度の遠征でも何かと難癖をつけてきて、ガゼフは自身の主装備を外させられていた。
「最悪の場合を考えるなら、このまま人命救助のために部隊を分断するより、いっそ全員でエ・ランテルに戻り体制を立て直しましょう。
このあといくつの村が犠牲になるかはわかりません。しかし、最強の剣士であるあなたを失うほうが国の損失は大きいのです。」
副長の提案は無辜の民の犠牲をやむなしとするものだ。だがそれを罪悪であると断ずることは容易ではない。周辺国家最強の戦士であるガゼフ、その存在は王国内での軍事力としても無視できないものだ。失うとならば、帝国の侵攻により危ぶまれていた国力低下に拍車をかけることとなる。また、それによって国王派が墜落し貴族派が台頭した場合、国民の暮らしぶりは悪化して結果的に多くの犠牲者が生まれることだろう。
剣一筋で生きてきたガゼフとは言え、事態を理解できないほど馬鹿なわけでもない。しかし決して副長の意見を是する様子は見られなかった。
「今や王国戦士長なんて大層な肩書で呼ばれてはいるが、私も元は一介の平民に過ぎなかった。 それはお前も同じだろう」
「はい」
かつてガゼフは王国主催闘技大会の優勝を経て、国王より地位を賜った。そんな彼と自身を比較してはたして同一なのかと訝しむものの、そんなガゼフの着飾らない部分を好ましく思う副長であった。
「だから我々は知っている
村の生活は死と隣り合わせ。モンスターに襲われることも日常茶飯事だ。
なればこそ期待したはずだ、力を持つ貴族や冒険者が助けに来てくれることを。」
異形種や亜人種と比肩しても、人間種は圧倒的に脆弱である。戦士として鍛えた者でさえ非戦闘員のビーストマン相手に苦戦を強いられる程度には。ましてやただの村人、いつ村にモンスターが襲って来て命を奪われるかもわからない。
故にモンスター退治をなりわいとする冒険者や、個人で軍隊を保有する貴族もいるわけだ。しかし、冒険者の総人数は王国全土をカバーできるものではないし、貴族たちも自身の身が可愛いだけであるため進んで出兵しようとはしない。
「期待しなかったといえば嘘になりますが、実際は誰も現れなかった。」
「そうだ そしてこの『期待』の虚しさは、王国民であれば誰もが知っている。
しかしだからこそ、虚構の希望に縋らなければ夜安心して寝床につき明日の働きに備えることもできない。非力な民とはそういうものだ」
ガゼフは拳を握り、胸部鎧の前にかざす。
「ならば我々が示そうではないか、危険を承知で命を張る者の姿を。 弱きを助ける、強き者の姿を」
「!」
副長自身、諭すことが無駄なのだと薄々気付いてはいた。
ガゼフ・ストロノーフは決して曲がらない。自分の中の正しさにひたすら正直に生きてきた。
その気高き生き様に魅せられたからこそ、副長は彼に付いてきたのだから。
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カルネ村
屈強な戦士ガゼフの胸中にあるのは、少女の如き純真な祈りであった。民を心から思い、立場は違えど志同じくする国王に忠誠を誓う王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。
(どうか次こそは無事であってくれ)
そんな願いが聞き届けられたのかどうかは分からないが、次の目的地であるカルネ村の平穏無事な姿が遠目から見えてきた。
村の入口のところまで来ると、どうやら何者かがガゼフ達を出待ちしているようである。数は4人。
一人目はこの村の村長らしき中年の男性。あからさまに恐怖のこもった視線をこちらに向けてきている。
もう一人が漆黒の全身甲冑を装備した長身の女戦士、彼女からもジリジリとした敵意が感じられた。
その女性に付き添われるようにして佇むのが、常闇をそのまま布の形にしたようなローブを羽織り、形容しがたい表情を浮かべた赤黒いマスクを被る魔術師らしき男性。
最後の人物、先の二人の影に隠れるようにしていたのですぐには気付かなかったが、こちらを覗き込む黒髪黒目の少女の姿。おそらくガゼフと同じで南方の血統が色濃く受け継がれたのであろう。
ガゼフはボソっと呟いた。
「……3人の家族か?」
怪しい3人だが、夫婦とその子供みたいな関係かもしれないと考えた。すると二人も南方系の民族だろうか。
「くふふふ……家族、親子、夫婦なんて甘美な響き!」
僅かな声にもかかわらず、黒甲冑の女性はその音を聞き取るとくねくねと身悶えはじめ、とてつもなく気味が悪かった。
ガゼフは特に黒甲冑の女性に対する警戒を上方修正した。
「私は、リ・エスティーゼ王国、王国戦士長ガゼフ。この近隣を荒らしまわっている下手人を退治するために王の御命を受け、村々を回っているものである」
「王国戦士長……」
仮面の男はガゼフを値踏みするような視線を向けたあと、背後の少女と何やらアイコンタクトを取っていた。ガゼフは視線を村長の方に向ける。
「村長だな」
「はい」
「横にいるものが誰なのか教えてもらいたい」
「いいえそれには及びません」
仮面は一歩前に出て自己紹介を始めた
「はじめまして、王国戦士長殿。私はアインズ・ウール・ゴウン。この村が騎士に襲われておりましたので助けに来た魔法使いです。 横の者は……」
「妻のアルベドと申します」
「ムスメノ……マタタビ……デス」
何故か高らかと勝ち誇ったふうに妻を名乗る黒甲冑の女性アルベド。対し、娘を名乗った少女はどこか遠い目をしている。仮面の男は少し慌てた様子であったが、間もなく平常を取り戻した。
「村を救っていただき感謝の言葉も無い」
王国戦士長という立場がありながら突然頭を下げたガゼフに、アルベド以外の3名は不意を突かれたような具合であった。
「いえいえ。実際は私も村を救ったことによる報酬目当てですから、お気にされず」
見たところ立派な装備を身に着けていると、審美眼に疎いガゼフでも一目瞭然で理解できていた。そんな彼らが取り立てて見所のない村落にどんな報酬を求めたのかガゼフは気にかかった。 あるいは何らかの方便かもしれない。
ガゼフは、強者の立場にいながら謙遜する余裕すら持て余すアインズの振る舞いに好感を抱いた。
「では申し訳ないが、どのような者達が村を襲ったのか、詳しい話を聞きたいのだが?」
「村長殿がよろしければ、私は構いません」
「私も構いません どうぞ私の家であれば狭いながら腰を落ち着けて話すことができますので よかったらそちらで」
「それはどうも」
「お言葉に甘えさせていただこう」
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カルネ村 村長宅(マタタビ)
普通にお気づきになったかもしれませんが解説しておきます。私に唆されたアルベドさんが、ガゼフ達が来る直前にモモンガさんに内緒で私と示し合わせて夫婦設定を捏造したのです。
ちょっとびっくりしたモモンガさんですが、すぐに精神安定化の効力が発動して、めんどくさいしそれでいっかと流してくれたという経緯です。
ちなみにそのあとアルベドさんがモモンガさんを『あなた』呼びし始めたのですが、声がやたら艶っぽくなったり『クフーッ!』と水蒸気を上げたりしてウザくなったので《メッセージ/伝言》ごしにモモンガさんが禁止令を出したようです。
その時のアルベドさんの凹みっぷりったら見ものでしたけど……ゲフンゲフン。
「というわけで鎧の取引についてなのだが ゴウン殿」
「そうですね 金銭以外となれば……」
と、いつのまにかだいぶ話が進んでいますね。何のお話してるんでしょう
唐突にモモンガさんから《メッセージ/伝言》が届いてきた
(マタタビさん、頼みがあるんですが、このガゼフという男と手合わせしてもらえませんか?)
(あー〈地味子のメガネ〉の検証ですね? )
(そういうことです マタタビさんの見た限りで30レベル程度らしいのですが、この世界ではどのくらい信憑性があるものなのか気になるので)
(承りました魔王さま……いえアインズさま?)
(呼び方はどっちでもいいです。 別にデスナイトで調べても良かったのですが、力の推し量りみたいなことをする場合、力加減が得意なマタタビさんのほうが適任なので)
(わかりました)
「よろしければ王国戦士長直々に、ワタシノムスメと手合わせしてもらいたいのですが。構いませんかな?」
「そちらの黒髪のお嬢さんかな?」
何を言ってるのかわからないというふうに ガゼフさんは私の方を向きました。そりゃそうでしょう、娘を王国戦士長とガチンコさせる父親は普通いません。事実赤の他人ですから。
「……所詮どっかの処女サキュバスの茶番劇ですし」
うっかり声に出してしまいました。アルベドさんがギョロッと私の方を向いて睨みつけます、めっちゃ怖い!ところが話し込んでるガゼフとモモンガさんはちっとも気づかない。
あとでモモンガさんから聞いた話ですが、この時の私はガゼフさんに恐縮していたように見えたらしいです。
違いますよモモンガさん、真の敵は身内にいるのです。
「これでも彼女は戦士としての心得がありましてね。 彼女の今後のため、ぜひ戦士長殿と手合わせをと思いまして」
「ほうそれはそれは。ゴウン殿程の御仁であれば、娘さんもそれなりの使い手なのだろうな。逞しい奥方もお連れのようだし、そういうことならこちらとしてもぜひ相手してもらいたいものだ」
『奥方』という言葉に対し、モモンガさんは存在しない頬を引きつらせ、アルベドさんはヘルムの下にて『くふー』とキモく微笑み、私はそんなアルベドさんが可愛いなぁと思うのでした。
どうやら最近私は、ヒドイン萌えにめざめたようです
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カルネ村 広場
帝国騎士?がデスナイトに蹂躙されて「おかにぇあげましゅうううぅぅぅ!」と断末魔していた広場にて、いざ尋常に私とガゼフさんの立ち会いが始まります。
観客として、生き残りの村人やガゼフさんの部下たち。 戦士長が少女を相手取るということで、兵士の方々からは侮るような視線がちらほらと。正直めっちゃ恥ずかしいです。
対して広場向かい側に佇むガゼフさんはそれなりに真剣な表情をしています。立ち会う相手に敬意を払う態度が非常に好印象。戦士然とした野蛮な風像に反して、結構紳士な方のようですね。
ここで立会人を引き受けたモモンガさんが、尊大に両手を広げて試合のルールを説明します。
「一本勝負、相手にこの木刀を当てた方の勝ちとする。両者それで異存ないな?」
「それでかまわない」と、ガゼフさん。
もちろん私も同意します。私にとって実はめちゃくちゃ有利なルールなのですけど。
確認が取れたところで、モモンガさんは片手をチョップ風に振り上げました。両者武器を取り、サッと身構えます。
えっと、こういうとき名乗ったほうがいいのかな?
「マタタビです よろしくお願いします」
お辞儀と声を合わせないようにしてピッチリ挨拶
「改めて ガゼフストロノーフだ」
あーお辞儀いらなかったのね
試合開始を告げるような、一陣の風が吹きました
「それでは はじm「せいやっ!」
モモンガさんが開戦の狼煙をあげる直前、私が地面を思いっきり蹴りつけて大きな砂埃があがりました。
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(ガゼフ)
少女を見た第一印象は気弱とか臆病。どちらかといえば小動物的な雰囲気であった。
とても戦士としての心得を持つ者のようには思えず、ガゼフはゴウンを訝しんだものだった。
しかし、こうして武器を握り目の前で立ち会ってみるとだいぶ印象が変わる。
今の彼女の雰囲気は獲物に相対する野良猫に似ている気がした。
普段ちいさな物音にも敏感な猫は、大型動物である人間が近づけばあっという間に逃げ出してしまう。だが一度獲物と決めつけた相手にはさながら獅子のごとく立ち向かい、あっというまに追い詰めてしまうものだ。
(ひょっとして自分はこの少女からして鼠程度の存在でしかないのでは?)
そんな発想が脳裏をよぎるも、戦士としての矜持によって容易く霧散する
「マタタビです よろしくお願いします」
「改めて ガゼフ・ストロノーフだ」
互いに名乗り挙げたところで、アインズが開戦の狼煙をあげようとしたその直前
「それでは はじm「せいやっ!」
突然少女が地面を盛大に蹴りつけ、前後が見えないほどの砂埃が発生した。周囲の村人や兵士は大きく咳ごんでいる。
(まさかこの立ち合いで目眩ましなのか!?)
別にルール違反とかではないが、1体1の試合形式でこのような手段を使ってくる相手をガゼフは知らなかった。人から猛獣のようだとも比喩されるガゼフではあったが、今思えばそれは実に馬鹿らしいことだと解る。真の野生とは、生存のために手段を選ばぬことなのだ。
少女―マタタビはそれを見事に体現していた。暗黙の良識に囚われているガゼフとでは圧倒的にステージが違っていたのだ。
〈可能性知覚〉
砂埃の発生からわずか数瞬、少女相手にガゼフは気配感知系の武技を発動させていた。それが直ちに正解であると悟る
マタタビは瞬時にガゼフの懐へ突っ込んできていた。気付いたガゼフが横薙ぎに木刀を振るい距離を取る
(速い!)
速度的な話だけでいえば、ガゼフが過去に戦ったブレイン・アングラウスよりも上だ。ガゼフの中にあったマタタビへの侮りはもはや影も形もなくなっていた。
今度はガゼフが少女の方に詰め寄り、鋭い一閃を叩き込む。木刀を後ろ向きにして受け流し、懐がガラ空きになったところをマタタビが足技を入れる。彼女の爪先は的確に男性の急所、金的を捉えていた。
(っぐ!?〈即応反射〉)
『木刀を当てた方の勝ち』というルール上、足技を受けたとしても負けにはならないが、ガゼフは己の人生設計を大きく揺るがしかねない一撃に対して戦慄し、思わず武技により全力で回避を取った。
ガゼフも戦いの最中足技を使うこともあるが、剣士としてのセオリーに反する為か、自分の他に使うものなど殆ど知らない。ただ彼女らしい一撃だと納得できた
「!」
武技による超即反応に戸惑うマタタビに空きが生じる。そんな隙を見逃すガゼフではない。蹴りが躱され体勢の崩れたマタタビにつかさず打突を入れる。
瞬間マタタビは身体をグニャリと反り返らせた。その動きは軟体動物を連想する程の柔軟さでとても人間業とは思えないものであった。結果、ガゼフの突きは躱される。
しかしその急激な姿勢では反撃の攻撃は入れられない。ガゼフは勝機と見るや大地を踏み締め渾身の一撃を叩き込もうとした、しかし
―礫かっ!?
マタタビの片手から3個の小石が放たれた。
一つはガゼフの利き手の指元。指がしびれるような衝撃に木刀の握りが弱まってしまう。
もうひとつが胸部装甲、若干鎧が凹む程の威力。
3個めがガゼフのおでこ、これにはたまらずガゼフは怯んでしまう。
瞬時に体勢を立て直したマタタビはガゼフの一撃に対して、身を屈めるようにして回避した。そしてそのままガゼフの足元に木刀を振るう。
これにて勝負が決まるかと思いきや、ガゼフも足技を使ってマタタビを攻撃する。くらったマタタビは地面をゴロゴロと転がっっていった
試合開始の時のような一陣の風が吹いた。ただ違うのは、その風が試合の終わりを告げるものであるということ。
「あはは、わたしまけましたわ」
「良い勝負だったよ」
砂埃が晴れ渡り姿を表したのは、意外と満足そうな笑みを浮かべて仰向けに倒れ込んだマタタビ。そして木刀を向けながらそれを見下ろすガゼフの姿であった。
目眩まし、金的、飛礫 たしかに卑怯染みた手段ばかりであったが、勝利に対する貪欲さが強く感じられた。そんなマタタビのやり方を、ガゼフはどことなく好ましく思っていた。それも彼自身の器の大きさに由来するものだが
そしてアインズの声が響く。
「――そこまで」
どうみても勝負は戦士長の勝利。だがパチパチと軽い拍手が鳴る程度で、大して歓声は挙がらなかった。実のところ試合時間は十秒にも満たなかったし、相手が少女では当然の結果として受け止めるものが多かったからだ。
もっともそれがマタタビなりの気遣いであることをガゼフは見抜いていた。初手の砂埃は目眩ましというだけでなく、少女が戦士長と渡り合う姿を見せないためのものでもあったのだ。
「……さすがは王国最強ですね。ガゼフ殿 彼女にもいい勉強になったことでしょう」
圧勝に見えて息を切らしていたガゼフへ近づき、声をかけるアインズ。ガゼフの獰猛な微笑みを前にしてもアインズはたじろぐ様子もない。
「いいえ、実際娘さんにはかなり手こずらされました。ところで鎧の件だが……」
「鎧の一着は村長殿の家に置いてあります。どうぞお持ち帰りください。我々はそろそろ帰ろうと思います。約束通り、私達のことは内密にしてください」
「了解した。ではアインズ殿、村を救ってくれた恩は忘れない。私の屋敷が王都にあるから、訪ねてきた際にはぜひ歓迎する」
王国内では魔術師に対する風当たりが強い。それを見越してのことだろう。アインズは自身のことを誰にも言わないように要求してきた。帝国あたりにスカウトされてしまえば王国の脅威ともなりうるので正直遠慮願いたかったが、「帝国の軍門には下らない」と言うので渋々承諾した。
結局その後、アインズ一家はどこへともなく去っていった。
そのあと王国戦士団は、カルネ村にて復興の手伝いのためしばらく駐在することとなった。
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復興作業の休憩中、ガゼフはカルネ村の広場にてあるものを見つけた
「これは!」
血の付いた小石2つに、同じ大きさの木片が一つ。
小石の方は、マタタビがガゼフとの試合で指とおでこを狙い撃ったときに使ったものだろう。
その順繰りで行けば、血のついていない木片はガゼフの胸部装甲を撃ったものだとわかる。 その木片にガゼフは見覚えがあった。
木片の材質は、試合の時に使った木刀と同じ材質だったのだ。
おそらく『木刀を当てた方の勝ち』というルールを見越して木刀を千切り、礫に紛れ込ませて投げたものだろう。
「実戦では勝ったが、試合に負けたということか!」
相手を追い詰めたのはガゼフに違いない。しかし試合ルールを逆手に取って勝利したのはマタタビであったのだ。
事実に気づいた途端、先程勝利を誇ってしまった自分を叱責したい衝動に駆られた。そして同時に言い知れぬ闘争心が湧いて出てきた。
「また、会いたいものだな」
その後、ガゼフ一行は無事王都へ帰還した。危惧されていた何者かの策謀が起こらず、副長はホッとしたという。
前回で登場したのはスカッシュレモン頭の信仰系魔法詠唱者。
誰もニ●ンだなんて言ってない。
注意事項でも書きましたが、敢えて原作キャラを登場させない場合があります。
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