ナザリック最後の侵入者   作:三次たま

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 ようやくこの章に終わりが見えてきました。ほんとに良かったです


物申す

 

 

 

 ――戦闘は始まる前に終わっている by.ぷにっと萌え

 

 

 

【マタタビの至高の41人大百科】

 

No.8:武人建御雷

 

 戦闘狂な部類だが比較的温和なプレイヤー。ただし たっち・みー大好き人間。たっち・みーに勝つために武器を何個も用意したり、狡い作戦組みまくったりしまくったけど一度も勝てなかったらしい。挙句の果てにたっち・みーが引退したら意気消沈してつられて引退したという。

 ちなみに彼が記録した たっち・みー の戦闘映像は引退時に全てマタタビが引き取った。

 

 

 

 アルベドさんが反逆の意を示したなどという仰天な連絡を受けたマタタビとアインズ様は、ゲヘナ作戦を早めに切り上げ後片付けをしてから急いで玉座の間へと向かいました。

 

「アルベドの表示色は……白か」

 

「確か、黒色だと敵対状態なんでしたっけ?」

 

「ええ。システム上では何の問題もないようです」

 

 ナザリックが最奥10階層の玉座の間、アインズ様が【諸王の玉座】に座しながらマスターソースを開くのを、メイド服姿のマタタビも眉をひそめながら覗きます。

 レベル順に並べられたNPCリストの中でアルベドさんの名前は一番上にあって、記されている文字色は下記の方々と同様に白色です。これが精神支配とかをされて敵対状態だったりすると色が変わるそうなのですが。

 

「つまるところコキュートスさんの早とちり?」

 

「それこそ早計でしょう。ゲームシステムがどのように現実化されてるかわからないのですから。

 微妙な意識の持ちようで管理システムの認証をすり抜けているのかもしれない」

 

「考えすぎ……でもないか。私もそれに救われたんだし」

 

 ちょっと前に【傾城傾国】の精神支配をマトモにくらったマタタビだって、仕様変更した〈読心感知〉によってバグみたいな方法での発動術者を返り討ちにしたことがあった。

 あの時は本当に運が良かったなぁと思いつつ、一歩踏み外せば最悪の結末だったことを考えて一人勝手に気落ちした。

 まぁそれはそれとして。

 

「一体どんな内容なのやら。コキュートス達から直接聞かないことには何とも言えません」

 

 アインズ様の言う通りだ。

 

 どうにもコキュートスさんの緊急報告では、アインズ様とマタタビの作戦経過を鑑賞してたところで突然アルベドさんが狂乱して我々二人に攻撃的な内容の旨を口走ったらしい。その詳細は直接でないと話せないとのこと。

 我々は管理確認のために丁度玉座の間に来ているわけだけど、何故かアルベドさん直々のご要望でそのまま玉座の間にて詳しい事情聴取が始まる予定。ちなみに私が居るのもアルベドさんのご要望だ。

 

「最近こんなことばかりだ。NPCの自主性について行けなくなってる」

 

「何度も言ってることだけど、もう魔王様ロール辞めちゃえばいいのでは。それだけで楽になるし。きっと皆さん優しくしてくれますよ」

 

「……そうも簡単にはいきませんよ」

 

「じゃあ私は何も言いませんが」

 

 続けて何か言いたげだったが、アインズ様はマタタビの方を僅かに睨むだけだった。

 親心じみた男の矜持というヤツか、失望への恐怖か、それとも別に事情があるのか。彼の心の内だけはマタタビも量り知ることが敵わない。

 ただ何にせよ彼の虚栄心はマタタビには真似できないモノであって、その意志を尊びこそすれ善意にしろ無暗に踏みにじる野暮な真似は出来なかった。

 

 だからマタタビは敬意をもって彼のことを称えるのだ。かつては魔王様、今ではアインズ様と。

 

 

「今日もまた碌でもねぇことが起きそうですね」

 

「起こしたやつが言うと説得力がある」 

 

 彼の嫌味に全く心が響かない。だってまんまな正論だから。

 散々な失敗続きがあってもはや今はただただ諦観の境地である。

 

「でしょ。もういいんだ、どうせまた私絡みでしょうから。間違ってもアルベドさんは咎めないであげくださいな

 じゃなきゃ私、アインズ様の事が本気で嫌いになっちゃうからね」

 

 これはせめてもの釘差し。こんなお願いの仕方は死んでもしたくはないけれど、彼女が死ぬくらいならする。

 

「前から思ってたが、アルベドには随分入れ込んでるようだな」

 

「安い同情を買わされただけですよ。私の良く知る友人と、それとお母さんにすごく似てたから」

 

「母親……うむ。似ていたのはタブラさんじゃあるまいし、ウルベルトさんか?」

 

「さぁ」

 

「まぁいいが別に」

 

 ピンとこないのかアインズ様は軽く流した。

 

 マタタビにとっては、アルベドの愛憎もアインズ様の頑固さもどちらも酷く侵しがたい。

 だからマタタビは両者に均等に肩入れして、当人たちだけが向かう結末を傍観するだけに押し留めたのだ。

 

「もう来ますね」

 

 レメトゲンのゴーレムが立ち並ぶ廊下をコキュートスさんとアルベドさんが歩いているのを感じ取り、マタタビは口を閉じた。そしてアインズ様から離れて段差を下る。

 一般メイドから教わった作法思い出しながら、最終日の時のプレアデス共よろしく通路側へと控えた。メイド姿だからホントにまんまだ。

 

「コキュートス、アルベド 共ニ只今参リマシタ」」

 

「入れ」

 

「ハッ」

 

 扉が開かれ入ってくるのは、武装を整え細心の注意でアルベドさんを引き連れるコキュートスさん。

 アルベドさんの両手には頑丈な魔法手錠が嵌められて、手錠から伸びた鎖はコキュートスさんの腕の一本に握られていた。

 

 コキュートスさんは、更に言えばアルベドさんも彼の倍以上ビビってる。まるで戦いに挑む前の戦士みたいな深い覚悟が感じ取れた。

 そして私の良く知る小心者の友人も、そんな覇気に当てられてビビらないわけがないだろう。顔は見えんし見てもワカランが多分絶対ビビってる。

 

「では早速だが事情を伺うか。コキュートス、状況説明をしろ」

 

「お待ちくださいアインズ様」

 

「オイ、アルベド!」

「何だアルベド」

 

 アルベドさんの制止に二人が合わせて反応した。一触即発の空気を感じ、マタタビもあらかじめ服の下に仕込んでた神器の短刀を意識する。

 

「まずは御身に無礼を働いた我が身でありながら、玉座の間での詰問という要望に応えてくださったことに深く感謝を申し上げます」

 

 ここまでは普通の内容。ただこれがトンデモナイことをぶちかます溜めなことは明白で――

 

「構わん。ここにはお前の状態を確認するための用もあっただからな。システム上で見た限りは、どうにも白のようだった

 それに理由もわかる。玉座の間はナザリック地下大墳墓の中でも最大最硬の隔離空間だ。

 ギルド指輪を含めた転移、情報魔法、物理、諜報全てのアプローチが遮断されるこの空間でないと語れない事情なのだろう?」

 

「仰るとおりにございます。

 そしてもう一つ、マタタビ御嬢様(・・・)にもご足労頂いた訳ですが――どうかそのようなところにお控えになられないで面を上げてくださいまし」

 

 何だ何だ気持ち悪い。

 マサヨシのことバレてるからって敬語とかマジでやめろよ。っていうか内心敬ってないのバレバレだかんないったい何考えてやがるこの女。

 

「何か?」

 

「不敬で差し出がましく、また恐れ多い不遜な要望ですが何卒お聞きくださいますようお願い致します

 私は間もなくここで行われる報告において、アインズ様の不興を買って死を命ぜられることがあるやもしれません

 ですが私は絶対に、ここで死ぬわけにはいかないのです。なのでどうか我が命を一時だけでも御守りいただけないでしょうか?」

 

「アルベドキサマ! 守護者統括デアリナガラ、マシテヤ先ノヨウナ失言ヲ宣イ、ドノ面ヲ下ゲテ!」

 

 オイオイ何を言ってやがるこの女!?

 即座に彼女を敵と断じたコキュートスさんは、一切の迷いなく神器アイテムの斬神刀皇を取り出してアルベドさんの首元へと振り下ろした。

 

 間に合……わない。

 反射速度ならユグドラシル随一を誇るマタタビをもってしても、10メートルも距離があっては。ましてや達人級のコキュートスさんの一撃なんか阻止できるわけがない。

 方法があるとすればそれは

 

 一瞬にも満たぬ判断で、マタタビは握った神器の短刀をアインズ様の方(・・・・・・・)へと振り投げた。

 

「「止めろっ!」」

「ッッツ!?」

 

 同時に放った叫びがアインズ様と重なった。

 

 アインズ様直々の制止、そしてマタタビの主人への攻撃行動、その二つによってコキュートスの断刀は中止される。

 どっちか無けりゃ首皮ちぎれて死んでたんじゃねぇのかな。

 

 次の瞬間マタタビが投げた短刀はアインズ様の頭部擦れ擦れ(・・・・)を通過して【諸王の玉座】の隙間部分へと突き刺さった。多分ちょっと傷ついたかも。許せよ。

 

 一瞬コキュートスさんは私の方を睨んだが、流石に攻撃はフリだとわかってくれたみたいで再びアルベドさんの方を睨む。

 誰かが何かを言い出そうとしたその矢先、開口一番をやったのはよりにもよってアルベドさんだった。

 

「第6階層守護者コキュートス、あなたは何も間違えてません。アインズ様に盾突く者があるとすれば、如何な存在と言えどその命脈を許してはなりませんから。むしろ私は貴方の今の行動を心の底より誇りに思います」

 

「ナンノツモリダ?」

 

「私は自分の正しさを信じているのです。今私がここで命を墜とせば、ナザリック地下大墳墓全ての者に、何よりアインズ様に最悪の結末が訪れると確信しています。

 それを承知で不興を死で詫びるなど臣下として最悪の償いです。私は私の思うナザリックの最善のために全てを懸ける所存であります」

 

 やりやがったぞこの女。自分の命を懸けに出して、玉座の間の空気を完全に掌握したんだ。コキュートスも(彼女に自覚は無かろうが)アインズ様も完全に気圧されて、下手な口出しが出来なくなってる。かくいうマタタビ自身がなによりもそうだ。

 マタタビはアルベドの正気が振り切れてることを悟りつつ、自分の役割を自覚した。

 

「そしてアインズ様、ひいてはマタタビ様。ただ今の無礼な申し出を耳にした上で我が命を救ってくださったこと、重ねて深く感謝します」

 

 女神

 

 この時マタタビには、アルベドさんの姿が本物の女神のようにしか見えなかった。

 造り物な至高の美貌に、あらゆる本物に勝る慈悲と愛と賢さという、女性としての全ての価値を注ぎ込んだ存在。それが彼女。

 こんなのに愛されやがって同性なのに妬んじゃうぞアインズ様め。

 

「〈瞬間換装〉学生服」

 

 情けなくも気圧されて言葉に詰まるアインズ様を尻目に、マタタビはメイド服からフォーマル装備の学生服へと切り替えた。

 

「アインズ様、私はアルベドさんを守るよ」

 

「……好きにしてください。コキュートス、鎖から手を放してこちら来てくれ」

 

「御心ノママニ」

 

 マタタビは対外的な服従ポーズを辞めにして、呼ばれたコキュートスさんと入れ替わりにアルベドさんへと近づいた。

 

「ちょっと失礼〈封錠解印〉」

 

 まずは手錠に手を当てスキルで開けた。

 アルベドさんは妖艶に微笑み、頭を近づけ二人にしか聞こえないよう耳打ちをする。

 

『ありがとうございます。では少しだけお話を』

『敬語やめてください。むず痒いです』

 

 戸惑うマタタビに構わず、アルベドが取り出したのは【真なる無(ギンヌ・ガププ)】とギルドの指環に一枚のメモ帳だった。

 

『この【真なる無(ギンヌガププ)】があれば、【×‽傾●】の精×支●は無効です。既に課せられた縛りは解けませんが今以上の干渉は出来なくなり、マタタビ様はほぼ自由になれるはずです。だから手放さないでください』

『何? よく聞き取れないけどまぁわかったですよ』

 

「してやられたな」

 

 何か後ろのアインズ様が恨めしそうに見てるけど一体全体なんじゃらほい。

 

『あと万が一私が死ぬ場合を考え、お伝えしたい内容をこの手帳に記しておきました。億が一アインズ様が貴女様を狙って来た場合はギルドの指輪でお逃げください』

『万が一も億が一も杞憂じゃない?』

『石橋を叩き壊して鉄橋を造り進むべしが、私の座右の銘ですから』

『……叩き壊される石橋さん、後ろからめっちゃこっち睨んでるよ』

 

 まぁそれくらいアルベドさんがビビっているというわけだ。

 どれだけビビってらっしゃるかといえば、虎穴に投身した子供並みにビビってらっしゃるのだ無理もない。

 しかもアインズ様に睨まれて猶のことだ。

 

「終わったか? そろそろ話を進めたいのだが。アルベドの言う最悪の結末というのも気がかりだし」

 

「大変お待たせいたしました。では手っ取り早く私がなした無礼について説明したいと思います

 コキュートス、例のレコーダーを出してください」

 

 おやおやレコードとはずいぶん都合の良いものがありますね。

 コキュートスさんが何故かすごく気まずそうに、言われたものを取り出しました。

 

「これは先ほどのアインズ様とマタタビ様の模擬試合を記録するため、コキュートスが用意したレコーダ―です。

 本来は〈水晶の画面(クリスタル・モニター)〉から別の記録魔法を横付けするのが望ましいのですが、なにぶん作戦の予定変更が急だったものですから。なので〈水晶の画面(クリスタル・モニター)〉の映像を直接コレで録音録画していました。

 丁度その時、横に居た私がアインズ様とマタタビ様両名に不遜な暴言を吐いたのが、ことの次第です。ですから私の発言も当然記録されています」

 

 なぜでしょう。すこぶる胸騒ぎがしてきました。

 段々と空気が震えてくるのがわかります。多分これ心臓の鼓動音が空気を揺らしてるんですね。

 アルベドさんもコキュートスさんも、それにつられてなぜか私も。心臓があったらアインズ様のこれに加わっていたのかな。

 

「……では、お願いします」

 

 アルベドさんの神妙な声に合わせレコーダー再生された。

 映し出されるのは先ほどのマタタビとアインズ様の茶番な模擬戦だ。

 時折アルベドさんとコキュートスさんの話し声も聞こえたりする。小さい頃、運動会で再生されたホームビデオを思い出して何とも言えない気持ちになった。

 

 しばらく流れて、アインズ様の努力振りにコキュートスさんが感激し出したあたりから場の空気が重くなる。

 アルベドさんの方を見ると、先ほどの美貌と覚悟は見る影もなく死んだ魚の目をしていた。

 

『やはり私は貴女が憎いわ、マタタビ。御方の御心を揺さぶれるのは貴女だけ。私には無理。なのに貴女は……』

 

『なのに貴女はあなたはアナタはアナタはアナタはアナタはアナタ方ッはッ!!』

 

『アルベド? ドウシタ』

 

『どうしてすれ違う!? どうしてわかり合うことを諦める!? 世界で唯一二人だけが理解し合える筈なのに!

 マタタビお前は何度同じ過ちを繰り返せば気が済むの! 肉親の愛から逃げてはナザリックへと迷い込み、ここでもアインズ様の愛を履き捨てて独り善がりな愛を押し付けるのか。相手の想いに蓋をして目を背けることの罪深さを知れ!

 それにムキになるアインズ様もなんて愚かな! たっち様を蘇生したいなら、我々に構わず気の済むまで互いに話し合えば良いというのに! ×神▼配をかけるにしても、完全に仲たがいしてからでも遅くはないのだから! 彼女の拒絶を怖れて有無を黙らせることのなんと哀れで臆病なことか! それを罪を奪うなどと強がって粋がる様など、まったくもって下らない!』

 

 

 

 

 

 

 空気が死んだ音がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 二次は推しを贔屓してなんぼだと信じたいこの頃です。タグに1期EDの美人を追加しました。文句があれば評価を下げるかタグ消すか好きにしてどうぞ。


 オリ主・アインズ様・アルベドさんの関係があまりにも複雑化しすぎたので活動報告に補足しときます。ホントは本文で説明するべきモノなのでしょうが、いい加減テンポがきついので力不足ながらこのような形にいたしました。
 興味ないヒトは見なくていいと思いますので、お好きにどうぞ。


 あと情けない話ですが、今回に限っては熱烈に感想を所望したいしょぞん
 さもなくば作者は悶え死にます。どなたか人助けと思って何卒……何卒……


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