「私の好きなマンガに、新米メイドのヒロインがご主人様に一目惚れするラブコメディ漫画があります。
ご主人様の幼馴染や秘書官、同僚メイドなど数多くの恋敵たちと女特有の陰湿な蹴落とし合いをしながらご主人様の御心を奪い合うという昼ドラ的なストーリー。それを可愛らしいイラストで描くという独特な作風で人気を博し、かなり有名なマンガとなっていました。その漫画の作者がAOGのホワイトブリム様だという衝撃の事実を知るのはもう随分前の話、AOGが全盛期だった頃です。
当時の私は、1500名の大侵攻防衛戦の功労者の一人として、AOGから報酬アイテムを貰えることとなりました。ホワイトブリム様の大ファンだった私は、是非とも御方のサインを貰いたかったのですが、それは無理なので代わりに記念になるアイテムをオーダしました。そのアイテムこそホワイトブリム様のフェイヴァリット、メイド服なのです!
ホワイトブリム様は、ギルド内に自作品を評価してくれる者が誰一人いなかったという境遇から、ユグドラシルで初めて出会ったファンの存在に感動し、記念アイテム制作に猛烈な熱が入ることとなりました。
そうして生まれたのが、ホワイトブリム様の最高傑作アイテム
《メイド・オブ・ヘル・アルマゲドン(メイド服は決戦兵器)》
ワールドエネミーからのみ採取できる希少素材や希少金属、それら最高級の素材たちをふんだんに使い込み、アシスタント泣かせのプロフェッショナルなデザイン技術で作り上げたそれは、神器を超えかのワールドアイテムに匹敵する圧倒的性能を誇ります。
物理的、魔法的な高水準の防御力。全属性攻撃耐性、全状態異常耐性という理論上不可能だと言われていた完全耐性。その卓越した性能を持ってすれば、紙耐性ステの私ですら本職のタンクとタメを張れる防御力を得ることができるでしょう。
これが作られた当時、制作に費やされた膨大な資源のことで議論が起こって、ギルド内の別の御方にこのアイテムを渡そうという話になりました。誰が能力的に適任かという話になり、それならばと粘液盾の二つ名を有するぶくぶく茶釜様が自ら名乗り上げたそうです。しかし、ピンクの肉棒のお姿が最高級メイド服を着用する絵面を想像し多くの御方々が苦言を呈します。そのあとPVPに発展しかける大論争が起こりましたが、モモンガ様これを執り成し多数決をとって、結局所有権は私のものとなりました。
まぁ悲しいことにこのメイド服を装備すると、私の十八番の隠形と素早さに若干のマイナス補正が掛かってしまうので、これまで殆ど使われることがありませんでした。が……今こうして使う機会が与えられたので、御方々は全てを見通されていたのでしょう」
話が終わると、頼んでもいないのに盛大な拍手が起こります。正直困惑しかない。
ハロ~エヴリヴァディ~ マタタビです。状況を説明すると、私が今しがた着替えた最高級メイド服に疑問を持ったホムンクルスの一般メイドの方々に、このアイテムのルーツをお話していたところです。
いつの間にか41人全員のメイドとプレアデス、メイド長のペストーニャさんまで集まり熱心に耳を傾けていました。
話が終わると、質問するためにメイドたちがお行儀よく手を挙げます。とりあえず反応した方がいいのかな?
「どうぞ、インクリメント先輩」
「その、ホワイトブリム様がお作りになられたという「まんが」なるものは一体どこで見ることができるの?」
「10階層にある、アッシュールバニパル大図書館に蔵書されているようです。
新刊が出るたびにモモンガ様が寄贈なさっていたらしいですね。」
「それは本当ですか!」
メイド達の中で歓声とも嬌声ともつかない甲高い声が上がった。この時ばかりはメイド長のペストーニャさんですらそんな粗相を気にも留めなかった。
次々に上がる質問の挙手。プレアデスの方たちも自分の製作者の逸話を催促し始めました。
宗教団体の司教様ってこんな気分かな? AOGの他愛もなかった逸話が、ここで神話として語られるとはまさか思いもしません。
結局この流れは、廊下を通りかかったセバスさんがメイド全員に喝を入れる形で終了を迎えます。
正直助かりました。自分で切り上げられる空気じゃなかったので。
ああそれで、どうしてこんなことになったかって?
むしろ私が知りたいです。
まさか本当にAOGのギルメンが、こんな未来を予想していたとでも?
バカバカしいったら無いじゃないですか。
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時は遡り、6階層の円形闘技場
モモンガさんに、キャラの濃ゆいNPCたちと一緒に置いて行かれたことで私は内心呪詛を吐き散らしていました。これが間違って口から出てしまえば、あっという間にNPCの皆様から敵対認証されて殺されてしまうでしょう。
ところでNPCの皆様方はというと、モモンガさんの謁見の余韻に浸りなにやら楽しそうに話しています。 モモンガさんに絶対の忠誠を誓うという彼らからすれば、それはごく自然なものなのでしょう。彼とはただの友達でしかない私にはどうしようもなく理解しがたいものなのですが。
この蚊帳の外感はちょっと寂しいけど、どうしようもないものですね。
「す、すごく怖かったね、お姉ちゃん」
「ホント、押しつぶされるかと思った」
「マサカ、コレホドトハ」
「あれが、支配者としての器をお見せになった、モモンガ様なのね」
「ですね」
「我ワレノ忠義ニ答エテクダサッタトイウコトカ」
「アタシたちといる時は、全然オーラ発していなかったしね。モモンガ様すっごく優しかったんだよ。 喉が渇いたからって、飲み物まで出してくれて」
おや、アルベドさんの様子が変 なんか腰元の羽パタパタしとるけど。
「あれが 支配者として本気になったモモンガ様なんだよね。すごいよね!」
ふむふむ、スキル《読心感知》によると…嫉妬、歓喜、興奮状態? どゆことこれ、なんか呼吸荒くなってるし。
「まったく、そのとおり!」
突然後ろを向き直し、感嘆の声を挙げるアルベドさん。その顔は、歓喜、興奮、畏敬、など他様々な感情が積み込まれた結果、酷い歪み方をしていた。いわゆる顔芸ってやつ。
「ワタクシ達の気持ちに応えて、絶対者たる振る舞いをとっていただけるとは、さすがは我々の造物主! 至高なる41人の頂点! そして最後までこの地に残りし、慈悲深き君!」
顔は酷いけども、言ってることは他のひとたちも概ね同意らしく、なんだか温もりのこもった視線をアルベドさんに向けていた。
一拍、場に沈黙が置かれたところで、ランドスチュワードのセバスさんが言った
「ではわたくし、先に戻ります。 モモンガ様がどこに行かれたのか不明ですが、お側に仕えるべきでしょうし。」
「セバス、何かあった場合はすぐにワタクシに報告を。特にモモンガ様がワタクシをお呼びという場合、即座に駆けつけます。
他の何を放おっても!」
美人が台無しになる酷い顔芸だった。口裂け女なんて異形種あったかなと記憶を探るが、心当たりはない。
「ただ、寝室に御呼びという場合、それとなくモモンガ様に時間が必要だと伝えなさい。湯浴みとうの準備は、勿論そのままでいいから、ということであれば―」
「了解しました。 では、守護者の皆様もこれで」
呆れたセバスはアルベドの言葉を遮って、丁寧に挨拶したあと居なくなりました。
彼女の惨状は、モモンガさんは最終日の時アルベドさんの設定文弄った結果でしょう。しかし「ビッチ」を削除したにも関わらず未だビッチとはこれ如何に。
「ん?どうかしましたか、シャルティア」
「ドウシタシャルティア」
シャルティアと呼ばれる、トゥルーヴァンパイアの少女。モモンガさんに伺った話によると、その胸中には巨乳へのコンプレックスと幾重にも重ねられたパッド、そして数多なる異常性癖が秘められているという変態のハイブリッド。エロの申し子、ペロロンチーノさんの愛娘だそうだ。
「…うぅ あのすごい気配を受けてゾクゾクしてしまって、すこぉーぅし下着がまずいことになってありんすの」
おまえもか
「このビッチ!」
おまえがいうな !
「はぁ? モモンガ様からあれほどの力の波動、ご褒美をいただいたのよ?それで濡れんせんほうが頭がオカシイわ大口ゴリラぁ!」
「ヤツメウナギ!」
「あたしの姿は至高の方々に作ってもらった姿ですえぇ?」
「それはこっちも同じことだと思うけどぉ!」
彼らNPCの騒がしいやり取りが、どことなく創造主たちのそれらに重なって見えた。ギリシャ神話をエロ方面から語るペロロンチーノと、それを浅はかだと断じるタブラ・スマラグディナ。方面の違う両者のオタク気質が、以前満遍なく衝突してうざったらしかったのを思い出す。
頭痛がしたような気がしてこめかみに手を当てるが、間もなくそれが幻痛だと気づいた。
……はぁ、ダメかもしれない。 就職仕立てで配属前に考えることではまず無いのだが、転職先について考えたほうが良いかもしれない。 最悪、この世界に知的生命体がいないとするなら……諦めるしか無いのかなぁ。 万一私は逃げることができるけど、モモンガさんは代表責任者だしなぁ。ほんと、御可哀そうに……
明後日の方向に大爆発している修羅場の炎を対岸越しにぼんやり眺めていると、紳士服を着込んだお耳トンガリの上位悪魔、デミウルゴスさんがこちらに歩み寄ってくる。なんか見覚えがあるなぁと思ったら、あいつが作ったNPCだ。
「お初にお目にかかり初めまして、ではないかな? 私の記憶が正しければ、あなたを以前お見かけたことがあるのですが…… まぁいいでしょう。
ナザリック地下大墳墓第7階層守護者デミウルゴスと申します。以後、お見知りおきを」
デミウルゴスと名乗る上位悪魔、彼のこちらを見る目、それは少々の警戒心を孕みつつも、大部分はおそらく好奇心だろう。アルベドさんの放つ殺気とはまた違うが、器の小さい私に不快感を抱かせるには十分な代物だった。
「新手のナンパですか? まぁとにかく初めまして、マタタビです。こちらこそ今後とも宜しくお願いします」
悪魔は少し意外そうにキョトンとした顔をした。
「どうしました?」
「ああ いえいえなんでもありませんよ。ただ少々意外でしてね」
悪魔は続ける。
「これは助言ですが『ナザリックに仕えるのであれば』もう少し、協調性を大事になさったほうがよろしいですよ?」
「助言、痛み入ります。 昔からそういうの苦手でして。ついツンケンしてしまうんです。 気を付ければ、どうにかなるんですけどね……
ところで何用でしょう、デミウルゴスさん」
「同じ主に仕える同胞として、あなたのことをよく知っておきたくてね。
あなたは一体何者なのでしょう お教えいただけませんか?」
んー、普通に下僕じゃないってバレてたか。仕方ないよね超不自然だったもん
「いいですよ別に。大したことではありませんが。」
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同時刻 9階層 ロイヤルスイートルーム モモンガ自室
(あいつらマジだ!)
マタタビの大方の予想通り、モモンガは存在しないはずの胃袋がキュウキュウ締め付けられる錯覚に苦しんでいた。
その理由は言うまでもなく、自我を持ち動きだしたNPCにある。
彼らのモモンガに対する高評価と、モモンガ自身の低い自己評価。この二者のギャップにモモンガは苦しんでいた。 彼らと接する時は常に、その期待に応えるように振る舞わなければならないことを考えると、モモンガの架空の胃袋は更に悲鳴を上げて穴が空きそうなほど苦しくなった。
『まぁ合っていなくもないのでは?』
「他人事だと思いやがって! 他人事だと思いやがって!」
鈴木悟は嫌なことがあったとき、一人で抱え込んでしまうタイプの人間だ。しかもそれを結構粘着的に引きずってしまう。この本性がAOGのギルメンのうちでも暗黙の共通認識であったのを、モモンガはもはや知る由もない。
「はぁ……」
マタタビの先程のセリフが概ね本意で言ったものであると、モモンガの方も薄々感づいてはいた。ただモモンガ自身の自己評価の低さによって、マタタビの慰めの言葉が素直に受け入れられなかったのだ。
さらに言えばゲームが現実世界になるという途方もない状況についていけず感じる心労、これを発散させる対象がモモンガにはどうしても必要だった。それを知ればマタタビは、何かとモモンガに皮肉をを投げかけるだろうが、本心ではきっと攻めてこないだろう。
「……マタタビさん、置いてきちゃったな」
急いでNPCから逃げ出したモモンガは、結果的に6階層にマタタビを置いて来てしまったことにすぐ気づいた。しかし、アルベドに出した指示内容からして差し障りはないし、万一守護者全員を敵に回してもマタタビなら逃げることは可能だろう。そんな打算から、モモンガは結局マタタビのことを放ったままにしておいた。
しかし、今思えば事前打ち合わせもなしに初対面の集団に放り込む仕打ちは酷すぎたと、モモンガは反省していた。 自分一人転移していたらどうしようもなく心細かったに違いないのだから。
他のギルメンに対しては普通に接することができるが、どうしてか彼女とだけは面と向かって話すことが難しい。基本的に会話するときだけは明るい調子なのだが、集団の中での距離のとり方が独特で苦手だったのだ。
ふと、マタタビというプレイヤーについてモモンガは思いを巡らす。
クラン:ナインズ・オウン・ゴール
それは、DMMORPGユグドラシルで異形種PK差別が横行していた時代、ワールドチャンピオンたっち・みーが異形種保護を掲げ作り上げたクランだった。異形種PKに対するPKKを生業としていたそれは、名前の通り初めは9人のメンバーが居るだけであったが、最終的に27人にまで勢力が拡大していった。
当時、年齢のことが関係して課金アイテムがクラン内でもマタタビだけ使うことができなかった。そのためモモンガ、ウルベルト、ペロロンチーノらの無課金同盟に加盟していたのだが、ペロロンチーノがたっち・みーの課金エフェクトに憧れたのをきっかけに徐々に無課金同盟が崩壊していった。課金していないのが彼女だけという状態になったところで、彼女の口の悪さも起因してクラン内で孤立してしまう。
クランリーダーであるたっち・みーは、マタタビが孤立したことを問題視し、歩み寄る話し合いをしようと提案したが、ウルベルトがそれを迷惑がったマタタビを思いやって彼女のクラン脱退を提案した。二者の意見によってクラン内が分裂しかかるほどになる。
この混迷を極める会議を執り成したのはモモンガだった。白熱する議論をどうにか鎮め、多数決でマタタビの今後の扱いを決めようということになる。
モモンガはたっち・みー派に、マタタビはウルベルト派の方に投票していた。結果、僅差でウルベルト派の意見が通り、マタタビはクランを退会することとなった。この事件がきっかけで、クランのリーダーたっち・みーは後のギルド長の役職をモモンガに譲ることとなる。そして新ギルド長はこれを戒めとして、ギルド加入条件に社会人を加えることとしたのだ。
その後もマタタビはAOGと付き合いを持ち続け、ギルド戦やPKK活動にも協力し続けていた。結果的に良好な関係に収まったといえるが、それは時を経てマタタビがフリーターとして課金できる様になってからでも変わらなかった。
結局未成年を皮肉るような学生服に身を包んだ彼女が、客人としてナザリックに踏み入れたことは、ただの一度としてなかったのだ。
「マタタビさん……」
何を思ってか、モモンガはアイテム欄からひとつの指輪を取り出す。
リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン:AOGギルドメンバーにのみ所有を許された、ギルド拠点の自由移動を可能とするアイテム。
骸骨の指でそれを摘んで、通路のシャンデリアの光にかざし、眺めた。
「あとでちゃんと謝らないとな 置いて行ったこと」
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ゲームの話とか課金とかは別のワードで置き換え、モモンガさんが話したことと矛盾しないように話すのには少し骨が折れた。
デミウルゴスは話を聞けて随分と満足気だった。
「なるほど実に、興味深い話でした。アインズ・ウール・ゴウンの起源まで知ることが出来たのは思わぬ収穫でしたが」
「まさか貴方様が一時期とはいえ御方々と肩を並べていらっしゃったとは」
彼の大げさな言い方に嫌なものを覚えた私は早々に釘を刺した。
「別に敬称とかいりませんからね。
私はAOGのメンバーだったわけではないですので、どうか気安く呼んで下さい」
「ご厚情痛み入ります。我々が忠義を尽くすのはあくまで、アインズ・ウール・ゴウンひいては至高の41人の皆様方ですから。」
「ところでこの話、バレてないなら内緒にしてください。ちょっと気まずい関係かもしれませんし」
ふむ、といって何か考える素振りをしたデミウルゴス。やがて何かに納得したようだった。
「なるほどわかりました、そのように致しましょう
では改めてこのデミウルゴス、ナザリックの一員として、あなたを歓迎いたしましょう。今後とも宜しくおねがいします。」
胸に手を当て丁寧にお辞儀をするデミウルゴス。こちらもお辞儀を返しましたが、彼を見ると見劣りしてしまう拙さです。
「ど、どうも」
『ではこの辺りで』 そう言って会話を切り上げたデミウルゴス。未だ続いていた女同士の醜い(異形種的な醜悪も含む)争いを止めに入っていった。
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正気を取り戻したアルベドは、守護者の皆さんにひとしきりの指示をし終えたあと、私を連れて9階層まで向かいました。
途中の道のりでデミウルゴスに言われたことを思い出して、アルベドにも私自身の身の上の話をしてみました。 すると、彼女が私に向けていた殺気が殆どなくなりました。
しかし私の境遇って、AOGのNPCにとってどんな風に映るのでしょう。ちょっと気になります。
機嫌が良いのでしょうか。アルベドはいい感じの笑顔で優しく教えてくれました。
「私達ナザリックのシモベにとって、御方々は唯一無二にして至高の存在。 対等なモノがあってはならないの。
私やデミウルゴスはまだ話の判る方だけど、他のシモベにあなたの素性がバレてしまえば、かなりの悪感情を与えるでしょうね」
「そう、なんですか?」
だとすればやっぱりここで働くのは前途多難だなぁ。ま、事情を考慮してくれるアルベドならマトモな働き口を紹介してくれるでしょうか。
「だけどあなたがモモンガ様の后、とかでないのであれば、私も貴方を歓迎するわ。ま、悪いようにはしないわよ。」
「違いますよ!」
あー、この人の殺気の正体やっぱりモモンガさんへの恋慕だったか。 未だにじわじわした悪意が感じ取れるのもそのためだろう。うんきっとそうだ。
アルベドは、とある部屋の前に差し掛かるとその扉にノックをしました。
「入るわよ」
「どうぞ」
返事が来るや、豪奢な扉の取っ手を掴み、アルベドさんは扉を開けて中に入ります。私もそれに続きました。
「これはこれはご機嫌麗しゅう 守護者統括殿。先程メッセージで伺いましたが、件の新たなシモベとは横に居る彼女のことですかな?」
「ええ 彼女はケット・シーのマタタビ 今は人間体に化けているようだけれど立派な異形種よ。」
背中は真っ黒、お腹は白くて胴長体躯。
ペチペチ音立つおみ足は、平べったくて小ぢんまり。
両手の代わりに翼かな、飛ぶには小さいようだけど。
オレンジくちばしその上に、凛々しい黄色な眉毛あり。
その名も-
「イワトビペンギン!?」
比喩でもなんでもありません。直喩です。一分の一イワトビペンギン。
お腹にネクタイをかけてますが、それ以外は生まれたまんまのお姿です。
「……何やら不躾な娘ですな。何故御方はこのようなものを」
ペンギンの表情はわからないけど、見た目の割にやたら尊大な様子だということはわかりました。
ペンギンが不満そうに値踏むような視線で私の方を見ます。逆に、横にいたアルベドさんは女神を連想するほどのとてもいい笑顔でして、同性の私でもコロッと堕ちてしまいそうです。
「紹介するわ、今日から彼があなたの上司よ。
ナザリック地下大墳墓執事助手エクレア・エクレール・エイクレアー
こと清掃において言えば、ナザリック内でも右に出るものはいないわね」
「……そうですか」
何、こんなNPCいたの?っていうかこいつが私の上司?
「ではよろしく、マタタビとやら。今日から貴方は栄えあるナザリック地下大墳墓9階層所属、執事助手秘書官です。至高の御身に遣える身としての自覚をつねづね忘れぬよう!」
……マジでか。おそらくペンギン上司を持つ奴なんて人類史上私だけなのではないだろうか?何この初体験、今後に不安しか見いだせないんですけど
かくして私はエクレアさんの部下、執事助手秘書官となりましたが、彼の望む使用人としての技能が私にはありませんでした。そのためこれからは、新人研修としてメイド長のペストーニャさんのところに回されて、メイド見習いとしてコッテリ絞られることとなります。
こうして暫定的な地位として、私は42人目の一般メイドになりました。
冒頭に続きます。
今回の捏造
・ホワイトブリムの漫画について
・ナインズ・オウン・ゴールの過去
・オリ主の設定全般
タイトルは半分ミスリードというわけでした
誤字脱字、感想や気に食わぬところがあったらコメントお願いします
暇つぶしに「きゃらふと」でつくたよっと。
黒歴史化不可避
【挿絵表示】