ナザリック最後の侵入者   作:三次たま

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 冒頭でオリキャラは禁止にしてましたが、苦渋の決断で今回は出番なしの既存キャラを捏造満載で登場させることにしました。申し訳ございません。



another under ground 後半

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 男には願いがあった。

 それは切なる想いであり、深い愛情だった。

 ただどういうわけかその願いが、彼が彼であり続けることを否定した。

 

 これまで積み重ねた地位を、名誉を、誇りを、人生を、『願い』は彼から捨てさせた。

 慄く周囲はこれを引き留めようとするも既に手遅れだった。

 

 男は歪み、やがて年月を経た『願い』は無形の妄執へと変質する。

 ならば『願い』と外道がすれ違うのも時間の問題でしかない。

 

 誰もが望まぬ凶行に手を染め、邪法への探求は十数年にも亘って行われた。

 

 そしてようやく一歩前進できるというところで、しかし理不尽な運命が男を挫いた。

 

 成就の寸前に来訪した敵こそ、後に漆黒として名をとどろかせる王国最強の冒険者チームの片割れ。

 女はナーベと名乗った。

 

『不本意だけど、ナーベとしてとれる最短手で手早く終わらせるわ

 今は下等生物(ミノムシ)の相手をしてるほど暇ではないのよ』

 

 《次元の異動(ディメンジョナル・ムーブ)

 

 背後に転移で迫った女は手早く懐から抜いた片手剣を男の腹に突き刺した。

 彼の人生で初、そして最後となるであろう激痛の電流が全神経に迸る。

 

『あぁああぁぁぁぁああ!?』

 

 痛い、死ぬ、避けられない

 何故、どうして、ここに来て?

 

 かつてない苦痛は男の思考から理性と冷静さを強引に引きはがす。

 女が第三位階の転移魔法で急接近し物理攻撃を仕掛けた、ただそれだけの事象を認識することすらままならない。

 しかし男の本能だけが、不可避の死の訪れを絶望的に理解していた。

 

『腹を突かれたぐらいでうるさいわね、虻の方がまだ静かだわ。虫けら以下の下等生物(アオミドロ)が』

 

 喘ぐ男にひたすら冷徹な女。

 嗜虐心の欠片すらない純粋な無関心、明後日な方向への焦燥感だけが向けられる。

 

 女は無造作に人差し指を男へ向ける。

 流れ出る魔力が白魚のような指先へと集約し、鋭く輝く閃光となって間もなく男の死を生み出すのだろう。

 

 男の脳裏に流れる走馬燈には一人の女性――目の前の女ではない――の微笑みが浮かぶ。

 

 会いたかった、そのためならば世界のすべてを敵に回しても構わなかった、母の姿。

 

『ぉかぁあさ』

 

 《電撃(ライトニング)

 

 

 激しい雷光に包まれながらカジット・デイル・バダンテールの意識は潰える。

 

 

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………

 

 

◆◇◆

 

 おそらく船長室なのだろう。

 開かれた扉から入って、ほの暗い燭台が並ぶ廊下を渡ると、奥には木製のボロい両開き扉があった。

 恐らくこの先に意中の人物がいるはずだ。

 

 湧きあがる緊張を投げやりな気持でもって追い払い、指骨で二回扉を小突く。

 

「勝手に入れと言っただろうに……」

 

 不機嫌そうなしわがれた声が扉越しから聞こえてくる。

 しかし勝手に入れと言われたとして、それを躊躇なく真に受ける奴は人としてどうかと思う。

 

「では失礼する」

 

 半ば意地を張って入室の礼を崩さないまま、ゆっくりと扉を開き入室した。

 

 

 船長室という見立ては正しかったのだろう。

 少し広い程度の小部屋である。壁際にはカビ臭そうな本を敷き詰めた本棚や、潮風を浴びすぎて読めなくなったと思しき地図が広がっていた。部屋のサイズに見合わない、でかでかと意匠の凝ったシャンデリアが窮屈そうに天井を占拠していて、そのシャンデリアの直下にはコンパスや油の染みた書物と地図で散らかった執務机が照らされていた。

 全体的に賊船のような野蛮さが垣間見える雰囲気だ。

 

 そして机の奥の回転椅子に腰掛ける者が一人。

 紺色の外套に身を包み、退廃的なまでにギラギラとした指輪やネックレスをこれでもかと下品に着こなす男。

 ただしその顔は白骨死体のそれである。

 

 目の前のエルダーリッチは短く自己紹介を切った。

 

「パーミリオンだ。今はこの汚い船の船長やってる、しがない愛猫家だよ」

 

 パーミリオンはそう言い捨て、白磁の腕を虚空に伸ばす。

 その意図に反応し空間がねじ曲がって『穴』が開いた。

 穴に突っ込んだ腕は一本の上等なパイプを取り出して、そのままパーミリオンの剥きだしの歯に咥えられた

 

「………!」

 

 それら仕草の一部始終は間違いなくアイテムボックスの使用、

 そして何よりわかりやすい自己紹介である。

 

 プレイヤーと相対する覚悟はしていたが、的中してもなお動揺は負えなかった。

 同族のアンデッドだからか、そんなアインズの心境も筒抜けのようだ。パーミリオンはパイプの煙を、からかうようにアインズへと吹きかける。

 

 

「……んでもって、いわゆる魔神って言えば通りがいいかい? プレイヤーさん」

 

「魔神だと? てっきりあなたは――」

 

「――その驚きぶりからして聞きたいことは山ほどあるんだろーが、その前にアンタの、アインズさんの話を聞かせてくれよ。

 さもなきゃアンフェアだぜ?」

 

 親し気に二の句を遮り、パーミリオンはアインズの疑念を窘めた。

 続いてアイテムボックスから悪趣味な趣向を凝らした黄金の玉座を取り出し置いて、座るように促した。

 

 なんとなく嫌だったので、アインズは普通に地味な木椅子を取り出し勝手に座る。

 

「……そうだな失礼した。ではこちらから開示できる範囲のことを話すとしよう」

 

 「ぐぬぬ」と唸るパーミリオンはなんとなく無視した。

 

 

「へぇあんた()最近ハウスごとユグドラシルからこっちに引っ張られたクチかい。

 んでもって今は部下と一緒にこの世界の情報をかき集めてる最中と」

「そんなところだ。だから事情通らしきあなたの話は是非聴かせてもらいたい」

 

 話を聞いて満足げなパーミリオンは、手前の気怠さを嘘のようにかき消し無い舌を饒舌に前し始めた。

 

「“あなた”なんて他人行儀は結構、パーミリオンと呼んでくれ。

 むしろハウス持ち(・・・・・)なんて知らなかったし、おたくの部下が怖いから、アインズ様とでもお呼びしましょうかい?」

「……嫌な奴を思い出すからそのままで結構。部下にはこちらから言い聞かせる」

「そりゃども失敬、頼んまっせ」

「初対面の不気味な面影がまるで嘘のようだな」

「よく言われ……無いな。引きこもりだから」

 

 重厚な声の響きに対して存外明るい性格である。

 不気味な装束と幽霊船の雰囲気から醸し出される独特の気配とまるで乖離している。 

 これでも周辺国から恐れられるエルダーリッチだというのに威信も何もあったもんじゃない。

 

 アインズは自分は決してこうはなるまいと内心で戒める。

 ただ実のところ、部下の忠誠に内心あたふたするオーバーロードのほうが100倍滑稽だったりするが、本人に自覚はない。

 

「さて何から話したもんか。客人と話すなんて久しいからな。俺の生涯1から10までエッセイするのもやぶさかじゃあねぇぜ?」

「どれだけ人恋しさに飢えてるんだ……。心意気感謝するが、正直そこまで聞いていられない」

 とはいえアインズも気持ちはわからないでも無かった。

 

「HAHAHAHA!! 辛辣なこった! でもいいさ! 自己紹介の続きをしようか。

 まず魔神のことを話さにゃならんが、そもそも魔神って何か知ってるか?」

 

「私が知りうる限りでは、数百年前に突如大量発生した強大な力を持つ有象無象。

 この世界に甚大な被害をもたらした亜人や異形や人間種など個々纏まりの無い者達のことで、世界中の種族が手を組んで滅ぼしたという話のはずだが……」

 

 ここまではアインズが現地で調べた伝承そのままだ。

 だがもしそれが額面通りであれば、目の前の存在と矛盾してしまう。

 つまりまだ裏があるのだと、パーミリオンは言いたいらしい。

 

「しかしどう言ったもんか、ハウスの主にはちと言い辛いことなんだが……」

 

 パーミリオンは痒いはずのない頭蓋骨をガリガリ引っかき言い淀む。

 その仕草からアインズも、前々から考えていた仮説が脳裏に浮かんだ。

 そして結局ドンピシャだった。

 

「端的に言えば魔神っつーのは、ギルドが拠点崩壊して行き場をなくしたNPCのことだ」

 

「やはり……そうか」

「……そらちょっと頭まわせば勘づくよな、わりぃ。あんまいい話じゃなくてよ」

「別にお前が謝ることじゃない」

 

 目の前のパーミリオンは、エルダーリッチにしてはあまりにも情緒が豊か過ぎる。

 だがそれがNPCとして作られた設定ならば納得がいくものだ。

 

 きっとかつては信望する何者かがいて、恐らく今はその人も、忠誠心も失われている。

 もしNPCとしての忠誠が残っていたなら、冗談でもアインズへ『様』の敬称つけたりなんてしないだろうことはよく知っている。

 

 

「本題に戻ろう。何なら私の推測を述べようか。

 600年前に転移した六大神のギルド拠点を500年前に転移した八欲王が破壊し、六大神のNPCが魔神化。

 八欲王が自滅した後、そのまま残った八欲王のNPCが13英雄にアイテムを貸し与え魔神を殲滅させた。状況としては恐らく全体的に八欲王側にコントロールされていたのだろう。

 これが伝承に残る魔神戦争の実態ではないかと私は考えているのだが、どうかね?」

 

「凄いな、まるきり正解だぁ……と言いたいところだが生憎満点は上げられないな」

「違うのか?」

 

 急に硬い表情―と言っても骨なのだが――をとって渋面をするパーミリオン。

 

「アンタが言ったことは、そんで八欲王がバカでワルなのも事実だぜ?

 ただ俺らにとっちゃ、六大神に仇討ってくれた恩があるということさ」

「ならばお前は、というかここは!」

 

「ご察しの通りだ。おいでユダ」

 

 パーミリオンは指骨をパチンと打ち鳴らす。

 それに釣られて一匹の子猫、正確に言うなら骨格だけのキャット・ボーン(骨猫)というモンスターが、執務机の下から這い出て木椅子に坐したアインズの大腿骨上りあがる。

 そして口元に咥えた一枚の布を見せつけるようにしてアインズを見上げる。

 

 それはアインズも良く知るとあるギルド旗だ。

 

「ネコさま大王国の骨猫飼いパーミリオン、それがかつての俺の名だ。

 愛しいハウスは六大神に潰され、今じゃ死霊の巣窟で

 カッツェ(・・・・)平野と、そう名付けたのも他ならぬ俺なのさ」

 

 

 ネコさま大王国とはその名の通りネコ好きたちによって結成されたギルドであり、その成り立ちもあってユグドラシルにおいても指折りの勢力を誇っていた。

 当然「誇っていた」と言ってもそれは最盛期の話であり、最終日ごろにどういう状態だったかはアインズも知る由がなかったが

 

「そうか、来ていたのか……」

 

 正直複雑な心境である。

 同じくして異世界へ迷い込んだ同郷とも言えるし、あるいは敵対していたかもしれない可能性を考えると既に滅んでいてくれたことは都合が良い。

 ただ眼前のパーミリオンのことを思えば、そういう打算は酷く気が咎めるようにも思う。

 

「いやいや、どう考えたってアインズさんが気にすることじゃあねぇと思うぜ?

 身内びいきを度外視すりゃあはっきり言って、『滅ぶべくした滅んだ』んだからなぁ」

 

 『身内びいき』などと宣うが、かつてNPCだった者がそれ(・・)を口にすることがどれほど異常なことだろう。

 そんな冷めた客観視など、アインズの知る子供たちなら決してしないし、不可能だ。

 数百年の時空の流れか、はたまた魔神化による影響が彼の在り方を歪めたというのか。

 

 そんなアインズの戦慄を知ってか知らぬか、パイプの煙を噴き上げ自嘲気味に肩をすくめながら、パーミリオンは経緯を語った。

 

 

 

 

 

 大昔、元々この地はとある亜人種族の集落だったらしい。

 それが実に700年前、数名のプレイヤーとNPCを引き連れたネコさま大王国の拠点が突如転移してきたことで、その運命が大きく歪む。

 時間をかけて亜人と密接に関係を深めたネコさま大王国は亜人と周辺人間国家との抗争に介入し、一時はそれらすべてを支配下に治めるほどにまで至った。

 ところが600年前に転移してきた、今で言うところの六大神達が今度は人間側に付いて、プレイヤー同士の戦争にまで発展する。

 結局自力で負けたネコさま大王国とその亜人達は歴史の闇に葬り去られ、魔神化した者たちも尽く殲滅される。

 やがて現在に至るまでのスレイン法国の信仰心、ヒューマニズムの礎となった。

 そしてそれから約700年間、唯一の生き残りであるパーミリオンは拠点の残骸の周囲を亡霊のようにずっと彷徨い続けている。

 

「HAHAHA! かれこれ主人に仕えていた期間より、一人の存在として在り続けた生涯の方が断然長い。

 だからまぁ、今にして思えばあんまりいい主人じゃなかったぜ? 無駄に見栄張るもんだから、おだてるこっちが大変だっつのよ、HAHAHA!」

 

「…………」

 

 そんな話を何気なしに語ってしまえる平然さが怖い。

 もっと言えば、平然とならざる得なかった700年という深い虚空が。

 

 自分だったら耐えられる気がしない。

 しかし仮に耐えられなかったとして、アンデッドの精神はどんな狂気や悲嘆も沈静させることだろう。

 永遠に、正気のままで孤独にあり続けるのだ。

 

 目の前の男が立つ境地はきっと限りなく地獄に近しく、そしてきっと――

 

「今じゃ一人きりっつっても、ほら来なペットども」

 

 快活な声で、何かを呼ぶように手をたたく。

 するとそれにつられてか、棚や机の隙間などから10匹のケット・ボーン(骨猫)が姿を現しパーミリオンの傍に寄り添った。

 

「ペトロ、ヨハネ、アンデレ、フィリポ、バルトロマイ、マタイ、トマス・ヤコブ、タダイ、ヤコブ と、それにさっきのユダ。

 主人が残した忘れ形見で、今なお残る俺の御役目にして唯一の生きがい。

 こいつらがいたから俺は寂しくなかったよ」

 

「……なら、良かったな」

 

 ――そしてきっと、今のアインズもそう遠くない場所にあるだろう。

 

 

 虚構の肺から息を吹き込み、パーミリオンはパイプを蒸かしてまた紫煙を放った。

 なるほど煙草ならアンデッドでも味わえる。よく考えられた娯楽だ。

 

 鼻腔をくすぐる甘い香りが心地よく感じる自分自身に嫌悪した。今度自分もやってみようかなどと、思える自分が恐ろしかった。

 

 だから恐怖に反射するようにして、かつてマタタビが侮蔑した一つの感情が再び浮上した。

 

「パーミリオン」

「なんだい?」

「ナザリックに来ないか?

 あなたを狙う冒険者は多い。そのうち討伐隊が編成されて、あなたの身に危険が及ぶこともあるだろう

 当然ケット・ボーン(骨猫)も一緒だ。こちらとしても、この世界の情勢に詳しいであろうあなたはぜひ引き入れておきたいのだが」

「すまん、ムリだ」

「なら時々でいい。こうして面会し、情報交換する機会をまた作ろう!」

 

「……あのなぁあんたっ!」

 

 感情に任せに机が叩かれる。地雷を踏んだ音がした。

 温和で陽気な彼がアインズの前で初めて感情を荒げ、薄笑いの下の本物の想いで殴りつける。

 

「年端も行かぬクソガキが。馬鹿にすんなよ、俺が何年生きてると思ってる。眼を見りゃわかるさ、あんたが俺と同じなことくらい。

 そのおまえが、よりにもよって俺の在り方を否定するのか? 

 俺が手にした安穏と平穏、これを手にするのにどれだけ心身削ったか。お前もいずれ知ることになる」

 

 エルダーリッチがオーバーロードを小僧呼ばわり。

 知ってか知らぬか、しかしあまりにも状況に相応しい。

 

「……もう十分なんだ、こいつらが居れば。この船さえありゃ。お前だって、家と家族、それさえありゃ十分だろ? この世界(・・・・)にそれ以上の幸福があるか? 無いだろ?

 無いだろ、無いんだ、無くなったんだよ、そもそも存在しないんだ! お前が何より知ってるはずだ、アインズ・ウール・ゴウン」

 

 そうだ、知っている。

 この世界(・・・・)にはもう心許せた仲間たちはきっと居ない。彼が仕える主人と同じだ。

 居たとして、それは恐らく……

 『ふざけるな! みんなで作り上げたナザリック地下大墳墓だろ! なんで簡単に捨てることができる?!』

 主人ではなく、仲間は居ない。

 

 ならそうだ、閉じてしまえ。

 全て思い出の中に閉じ込めて、叶わぬ想いを想い続けて、忘れ形見と慰め合おう。

 それしか無くて、それしか無いならそれでもう……

 なんだ、誰だ

 

 

『ったくそんなんだからアルベドさんに愛想つかされるんだよクソ骸骨』

 

 

 あぁそうだ、思い出に埋没することを拒絶した声があった。

 そして彼女は思い出ではない。思い出ではない彼女をの想いを、アインズはまだ知らない。

 

 これから(・・・・)知ろうと、ついさっきだって思っていたはずなのに

 

 だから

 

「知らないな、老いぼれがほざく幸福論なぞ欠片ほどの興味も沸かない。俺が知りたいのはもっと別のことだ」 

「……話が違うな。こんな奴だったのか?」

 

 彼のいう話が、何の話かはわからない。

 

 ただ確かに、あれから何かが変わったのだろう。

 マタタビを嫌いだと自覚した時と、そんな彼女が嫌いではないと気付いた時から。

 

「あんただって、ホントは来ない方がいいんだがなぁ……」

 

また来るよ(・・・・・)パーミリオン。あなたとは友達になれそうだ

 あぁだがしかし、何の土産もなのは少しアレだな。何か良い物は……」

 

 整理されてない乱雑なアイテムボックスを漁る。

 友好の証に相応しいものは無いだろうか。

 

「そうだこれがいい」

 

 死の宝珠。前回の依頼で手に入れた戦利品だ。

 40レベルのアイテムはアインズには不要だったが、能力的にもパーミリオンなら丁度よいだろう。

 

 ああだこうだ叫ぶ宝珠を無視し掴んでほいっと投げ渡す。

 

「おまえ、こいつは! 最初から知っていたのか?」

「ん? なんだ、この世界では有名なアイテムだったりするのか?」

 

 デスナイトが伝説扱いされるなら案外それもありうるのか。

 余りものを押し付ける意識と相手の反応のギャップが少しつらい。

 

「知らバックレやがって。へぇ、やっぱアンタ気に入った!」

「あぁそう……なら良かった」

 

 知らない間に好感度を上げてしまうのはもう慣れた。ともかく歓迎してくれるなら何よりである。

 出した椅子をしまい込み帰り支度を済ませた。

 

「……とりあえず今日のところは根負けってことにしといてやる。

 来るなら勝手に来てくれよ。ただし俺にも事情があるから、この地から離れることは出来ないがな」

「わかった、今日はありがとう。また会おう」

「じゃあな」

 

 

 意味深な視線に見送られながら転移門を開き帰還した

 

 

 

 

 




 ……こいつを真面目に解説すると1話書けそうで怖い。
 推しキャラではなく、あくまでアインズ様の合わせ鏡。舞台装置として作ったつもりです(遊び心はありますが)。

オリキャラの解説
 

◆パーミリオン[異形種] parmillion
◆性別:男性
◆年齡:推定700歳以上
◆二つ名
・幽霊船長

◆役職
・フライングダッチマン号船長
・???
・旧ギルド:ネコさま大王国骨猫の番
◆住居
・フライングダッチマン号の船長室(カッツェ平野)

◆属性アライメント
中立[カルマ値:0]

◆種族レベル
・スケルトンメイジ10LV
・エルダーリッチ5LV
◆職業クラスレベル
・チョーセン・オブ・アンデッド:5LV
・ネクロマンサー:10LV
・ビーストテイマー:1LV
・レッドローブウィザード:5LV 
・ハーミット:10LV   
・ロード・オブ・キャッスル:10LV 

◆[種族レベル]+[職業レベル]:計56レベル
・種族レベル:15
・職業レベル:41


 ネコの骨格標本を愛したプレイヤーが課金で設置したケット・ボーン(骨猫)の飼い主として創造したエルダーリッチ。
 ネコさま大王国で唯一の猫以外のNPCなのだが、その作成経緯上から創造主の思い入れは皆無だった。
 転移の際には創造主も同行していたのだが「俺も猫のNPCにすりゃあよかった」など散々。種族上、猫ばかりの他のNPCと打ち解けられるはずもなくひたすら孤独。
 NPCは拠点崩壊の影響で忠誠心を失いその多くが暴走したのだが、彼の場合精神構造上暴走せず生き残った。むしろ虚しい忠誠心を失ったおかげで救われたまである。
 ケット・ボーン(骨猫)にはキリストの十二使徒の名前が付けられているが、見分けがついてるわけでは無い。本人には見分けがついてるつもりなのだが、ネクロマンサーの能力で操ってるだけなので名前(ユダ)を呼んで最初に現れたヤツがそう(ユダ)呼ばれるだけ。ツッコミは不在。

 アインズが好印象だった理由はケット・ボーン(骨猫)が敵対反応を示さないアンデッドだから。


※原作ではアウラあたりが交渉役だったということにしておく(ねつ造)。
 アンデッド以外のキャラがコイツと交渉したら魔神うんぬんまで喋らないが、12巻みたいに船に旗飾るくらいなら条件次第でやってもらえる。

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