ナザリック最後の侵入者   作:三次たま

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 カタツムリ投稿でごめんなさい
 執筆速度や時間が足りなくて今の有様です。
 これからはもっとちゃんとやりますんで、なにとぞ、なにとぞ


隙間
アドバイザー


「ここもしばらく久しぶりだな」

 

 というのも、先日の『吸血鬼騒動』によってアダマンタイトへと昇格して以降、アインズは冒険者として引っ張りだことなったのである。

 モモンとしてしばらくナザリックを開けていて、ようやくできた暇な時間に自室に帰ってきたアインズは感慨深く呟いた。

 

 とはいえかつてプライベートのほぼ全てが『ユグドラシル』に集約されていたものだから、ゲームが現実化してしまった今では『暇』な時間の過ごし方が行方不明となっていた。

 だからかえって、帰宅して間もなくNPCが訪ねてきたのは幸いだったのかもしれない。

 

 コンコンと控えめなノックが扉に響く。

 

「失礼します、アインズ様。偽ナザリック建設計画についてなのですが」

 

「アウラか。どうした」

 

「現在ダンジョンに仕掛ける罠ギミックの草案をまとめているのですが、恥ずかしながら難航しておりまして」

 

「なるほどな」

 

 事情を聴いてアインズは得心した。

 

 現在アウラには対プレイヤーを想定した偽のナザリック建設の仕事を任せている。

 ナザリックのダミーとしての機能は言わずもがな、有事の際の避難拠点やアインズの作り出したアンデットの保管スペースなど、多目的にわたる活用が想定されており、現行の『アインズ・ウール・ゴウン』における重要プロジェクトの一つである。

 もちろんそれなり防衛力が要求されるため、金額的に言えば今最も予算をかけている計画でもあった。

 

 難航しているというのはおそらく、先日マタタビに敗走した経験によりプレイヤーに対する警戒が強くなり目標水準が高くなったからだろう。

 アインズ自身これまでもプレイヤーの存在には強い警戒を示していたのだが、外の世界を知らないNPCたちにはいまいち実感が伝わらなかったので予想外ではあるが嬉しい変化に思えた。

 

 だからアウラの口から「難航」と聞いてアインズの気分は悪くなかった。しかし同時に悩ましくもあった。

 もし親心が叶うのであればつきっきりでアインズのプレイヤースキルを伝授してやりたいところではあるが、しかしアインズ自身忙しい身である。

 

(どうしたもんかな。俺だってこの後また出かけなくちゃならないし、こういったことで当になりそうなアルベドやデミウルゴスだって暇じゃない。パンドラズ・アクターは……絶対人前には出せないしな……)

 

 ところがアウラの成長はアインズの想定の上を行っていたらしく、思いもよらない一言が放たれる。

 

「それでアインズ様がお許しくだされば、その……マタタビの、力を借りたいなぁって思うんですが、だめでしょうか」

 

(えぇええええ!?)

 

 親心を抱いた途端に子が離れる衝撃でアインズの顎が大きく下がった。

 

◆◇◆

 

『なんで俺じゃなくてマタタビさんなんかに……。俺に頼ってくれれば後の予定蹴っても良かったのに』

 

「知りませんがな」

 

 久しぶりにアインズ様から急に〈メッセージ/伝言〉が飛んできたかと思えばとばっちりな恨み言である。

 アウラさんと会うとなればこっちだって気まずくて仕方がないじゃないか。変われるものなら変わりたいのはこっちも同じである。

 

『でもアウラは自分のトラウマ乗り越えようとしているんですからすごいですね。当の『トラウマの方』はあれからずっと部屋に籠ってるっていうのに』

 

「そのくらいにしねぇと切断しますよ?」

 

 あれ以来、アインズ様の私に対する接し方は大きく変わった。

 以前は表面上とても好意的だった反面、無自覚な嫌悪感があったからか要所要所では塩対応だったのだ。6階層で私のことを置いてけぼりにしたり、メイドになったのを放置したりとか。そのくせ仲間面して外出に誘ってきたりしたもんだからムカつくことムカつくこと。

 それが自覚化されて以降はこの通り、むかついたら容赦なく嫌味を言ってくるように『改善』された。転移直後に比べれば私としてはこっちの方が千倍マシである。

 

『真面目な話良い機会だと思いますけどね。マタタビさんだってアウラに負い目があるはずだ。

 借りを返すと思ってやってくれれば、俺としてもうれしいですよ』

 

「……どうだかね」

 

 かの世界級アイテムの騒動以降、メイドもクビにされ必然的にやることもなくなった私は、必然的に自室に引きこもることとなっていた。

 することと言えば、隠形を使いながらナザリック内を探検するとか、無駄に広い自室を影分身を使って掃除するとか、読書とか、時々バーで顔見知りのNPCと話すとかそのくらい。

 

 ……まぁトラウマという程のことではないけど、例の件があってから少しだけ外に出るのが億劫になっていて、精神衛生上あまりよろしくないとは薄々思っていながらも「また明日」を内心毎日繰り返しながら怠惰に過ごしていた。

 

 アルベドさんは多少気にかけてくれるそぶりは見せるが、こちら側が拒否すると簡単に引き下がってくれる。

 彼女に関して言えば「マタタビを気にかけている」というポーズをアインズ様側に表示する必要があっただけで本意ではないらしい。〈読心感知〉で感じ取ると、私が引き籠ってくれることに対しむしろ安堵している節がある。先までは私を利用しようとしていた彼女らしくない、安堵などという妙に消極的な姿勢には引っかかりを覚えたが

 

『まぁ強制はしませんしマタタビさんがどうしようと勝手ですよ

 ただ、社会人ギルドの『アインズ・ウール・ゴウン』にニートが巣食ってるというのは気に食わない話だ』

 

 ああもうこれだ。

 結局この人は変わってない。どれだけ悪態をつくようになっても肝心なところでぶれていない。

 前に進まず、私みたいな奴にすら執着する始末だ。

 

「……わかりましたよ、手伝ってやればいいんでしょ。 ったくそんなんだからアルベドさんに愛想つかされるんだよクソ骸骨」

 

『は? どうしてアルベドが――

 

「自分で考えて。じゃあ切りますね」

 

 

 

 

 

 昼過ぎごろ、アウラさんとは偽ナザリック建設地にて待ち合わせた。

 なんだったら転移してもらうこともできたのだが、世話になるであろう輸送係のシャルティアさんのことを考えると気が咎めたので地図だけもらって自力で向かうことにした。

 

 コンパスと地図とを交互に睨み、変哲もない森林地形の僅かな特徴を頼りにどうにか切り抜けていってようやく霊廟らしき建物の屋根部分が見えてくる。

 さらに近づいていくと森林開発に従事するゴーレムや現場主任らしき様子で指揮を執るエルダーリッチという珍風景を散見する。彼らにも既に話は通ってるようで、こちらを一瞥すると手を止めて軽く会釈してくれた。

 

 やがて木々が開かれた偽霊廟前に到着すると、待ち受けていたアウラさんはパラソルテーブルに茶菓子とファストフードを広げてくつろいでた。

「お待たせしました」 

「遅かったね。まぁ座りなよ」

 

 彼女は椅子を後ろに傾けて退屈そうに振り返った。一見して危なっかしい姿勢だが後ろに転ぶイメージはできなかった。

 敵意は感じられない。恐れを抱いてるわけでもなさそうだ。まったくもって落ち着いている。

 

 言われるがままに空いている向かい側の席に座った。

 

「意外ですね。てっきりアウラさんには恨まれても仕方ないと思っていたんですけど」

「あんたを恨むなんて筋違いでしょ。憎むならシャルティアを襲ったっていう連中か、無力な自分くらいなもんだよ」

 

 なんていう出来た割り切り方だろうか。相変わらず子供気の無い少女だなと思った。

 

 ……でもなぁ、言わなきゃなぁ

 出来ればこのままアウラさんの厚意に甘えてあやふやにしておきたかったが、それはそれで自分の矮小さが顕著になって嫌な気分になる。

 結局諦めるようにして、謝罪の旨を打ち明けた。

 

「でも悪かったですね。あの時私がポカしなければもっと穏便に事を運べたっていうのに」

「だからそのことはもう気にしてないよ。それに――まぁいいや。けどあんたにしてはやけに素直だね?」

 

 短い付き合いの癖によくわかってらっしゃる。

 先日シャルティアさんに言い損ねたからだとは、恥ずかしくてとても言えなかった。

 

「あんたのことを呼んだのは、あんたの『嫌な性格』を少し見習おうと思ったからなんだ」

「ふぇ?」

「戦ってるところもさんざん見たし、罠仕掛けとかが得意なんでしょ?」

「……あぁそういうこと。ならまぁ、それなりにね」

 

 プレイヤーキャラクターとしてのマタタビは元々純粋な戦闘タイプではなく、欠落した能力値をいつも外付けのアイテムによって補って戦っていた。

 だからユグドラシルでPKやPVPをする際には地雷仕込みをはじめとした様々なトラップを駆使してきたし、それでなくてもかつて他所のギルド拠点を散々荒らしてきたものだから防衛拠点のノウハウは体感的に理解しているつもりである。

 自分で言いうのもアレだが、そんな私をアドバイザーとして選んだアウラさんはやっぱりなかなかの人選であると思った。

 

「それじゃあ手始めに軽く偽ナザリックの設計概要を説明するね」

 

 偽ナザリック――略して偽ナザは地下五階層から構成されており、1~3層が防衛ライン兼召喚したアンデッドの保管場所。4,5層が緊急時の拠点と物資の保管場所となっている。

 現在4,5層に工事が集中している一方、1~3層は計画が練り切れてないのでフロア中が空っぽという具合なのだそうだ。

 

「防衛能力の要求水準としては、平均80レベルのパーティ1つを壊滅させられる程度。

 そしてもしそれ以上の存在が侵入してきた場合には、こちら側の迎撃準備ができるまで十分な時間稼ぎができればいい」

 

「あまり厳しい条件とは思えないのですが?」

 

「そうなんだけどさ……」

 

 困った顔をしながら彼女は1枚の羊皮紙を取り出して見せる。

 促されるように羊皮紙を覗き、記されていた予算額の桁を見て得心した。

 

「前述の条件を満たすだけならこの半分も要らないですね。エルダーリッチや即殺不可なデスナイトもいるんだし」

 

 おそらく石橋クラッシャーなことで定評のある某骸骨が余計に気を利かせたのだろう。

 要求条件に釣り合わない高すぎる自由度。これは迷うのも無理はない。

 

「アインズ様は遠慮せず使って構わないって仰られたんだ。何か意図があるのかなと思ってデミウルゴスに相談したんだけど」

 

 デミ曰く――

『私やアルベドを含め、これまで我々シモベはプレイヤーという存在を過小に評価していた節があった

 だから先日の件から学び取ったアウラがプレイヤーに対しどこまで気を回すのかということをアインズ様は測っておられるのでしょう』

 

 深読みだ。あの人そこまで気を回すタイプじゃない。

 

 湧きあがりそうな心の声をのど元でキュッと抑えて飲み込んだ。これでまたアインズ様の胃痛の種は着々と発芽して行くのだろう。

 自業自得な部分もあるんだし、彼が自身の過大評価に苦しめられようと知ったこっちゃなかった。彼以外、誰も不幸にはならないしね

 

「一応予算を最低限にした場合の設計プランを作ったからまずは読んでくれないかな」

「いーですよ」

 

 

 プランニングに目を通して第一に思ったのは、モンスター配置がなかなか巧いということだ。

 例えばアンデッドの徘徊するエリアに酸・負・冷気のダメージを与える広範囲トラップを仕掛け、耐性を持たない侵入者だけに一方的にダメージを与えるとか。蜘蛛型モンスターを天井に這わせて床に地雷を仕込むトラップ部屋とか。用水路の抜け道があると思いきや水中に無色透明のスライムが潜んでいるとか。

 

 魔獣の造詣が深く感じられ、流石ビーストテイマーといったところでしょうか。PKばかりでモンスターに関する知識に疎い自分には却って出来そうにない所業だ。

 だが同時に欠点もある。トラップ単体の扱いとなると途端に雑になってしまうのだ。

 

「ここの地雷トラップさ、少し目を凝らせばスキルを使わなくても見つけられるようにして、さらに下に別の爆弾を仕掛けるんです。上の方を解除して気が緩んだら下の方が起動してボカンってね

 ……能力的に看破できたはずの盗賊でもついつい引っかかったりとかするんですよねこれが」

 

「ひょっとしてアンタもあるの?」

 

 しまった顔に出ていたか。

 

「まぁね。昔、ぷにっと萌え様が戯れに仕掛けていたヤツに少々痛い目を見たんです。

 元々ゲリラ戦争なんかで使われていたブービートラップの手法なんだってさ」

 

 ギルメンの名前が出てきたからか、アウラさんの目の色が変わる。

 罠に引っ掛けられたことなんぞに嫉妬されても困るんだけど。

 

「他にはないの?」

「あるよ。ほらここの〈狂気ガス〉トラップのところ。これを幻術魔法と組み合わせれば直接被害は無いにしろ、精神的にかなりダメージを与えられると思うよ

 喩えるなら五大最悪の恐怖公さんが〈絶望のオーラ〉を使って近づいてくるイメージ。わかります?」

「……端的に言ってすごくヤダね」

 

 おそらくナザリックのNPCの中で最もプレイヤー撃退スコア、厳密にいえば戦意喪失による回線切断が多いのが彼だろう。

 製作者は知らないが、あの手の悪辣な手法を好むのは大抵るし☆ふぁー辺りだ。

 

 

 

 しばらくはガールズトークならぬ戦術トークで盛り上がった。3時間ぐらい話し込んできたところでとうとう日が暮れてきた。

 

「やっぱりあんたに相談して良かったよ

 計画書にもまだ見直しの余地がありそうだってわかったし」

「なら何よりです」

 

 ここまで他人と長話したのは何時以来だろう。小さいころまで遡っても思い出すことができなかった。

 ユグドラシルにおいても、アウラさんの制作者であるぶくぶく茶釜とはここまで打ち解けられた覚えはない。アルベドさんみたいに、気難しい私のご機嫌取りをしてくれたわけでもあるまいし、まったく不思議だ。

 

 なんでこんなに素直なんだろ、自分

 

 そんな疑念を頭の片隅に浮かべていたところで、対するアウラさんも何やら気になっていることがあるらしい。彼女は鷹揚と訊ねた。

 

「先日マタタビが戦う姿を見て、それと今日色々教えてもらって思ったんだけど、あんたの戦い方って至高の御方々のものと凄く似ているよね

 マタタビは御方々から師事を仰いでいたの?」

 

「違うよ

 私は、私にはどうしても勝ちたかった人がいたんです。だから連中の……御方々の傍でひたすら戦略を盗み見ていただけ」

 

 ぷにっと萌えの『誰でも楽々PK術』から始まり、ウルベルトの時間操作テクやぺロロンチーノの狙撃術、弐式炎雷の暗殺技、やまいこの体術

 そしてその他諸々のメンバー技能を、多様な魔法を駆使するアインズ様の戦い方をモデルにして自分の戦略として確立させた

 

 対応力には自信があるが、おかげで酷い器用貧乏だ。武器のストックも大量に用意する必要があるし、1戦ごとのアイテムの消費量が馬鹿にならない。この戦い方を維持するために盗賊職となってギルド荒らしを始めたといっても過言ではないくらいだ。

 

「もっとも、それだけやっても勝てはしませんでしたがね。無駄骨です」

 

「ひょっとしてアインズ様のこと?」

「え? 何で、全然違いますよ。いやまてよ……」

 

 ここで意外な名前が出てきて戸惑うもしかしよくよく思い出してみると自然な流れなのかな。

 たしかアウラさんは、私とアインズ様が戦うところを監視していたんだっけ。ひょっとして会話も聞かれてた?

 

 

『簡単に殺せそうだよ』

『嫌がらせか』

『バッカじゃねぇの?』

『クソ骸骨が!!』

 

 恥ずかしさで蒸気する顔面に冷や汗が伝った。

 こうなると最早不敬どころではない。敵対ルートまっしぐらじゃないか? なるほどだから今日アウラさんに呼ばれたのかなるほどなるほど。『抵抗せず一方的に殺されなきゃいけない』んですねわかります。

 

「……なんか今、スッゴク馬鹿なこと考えてない?」

「ほへ?」

 

 呆れ気味な溜息を浴びせられて思考が冷静になり、そもそもアウラさんからは一切敵意を感じないのを思い出した。

 じゃあ……どない?

 

 それから一転、柔いこめかみに年齢不相応な血管を浮かび上がらせ苛立たし気にアウラさんは言った。

 

「よもや何かされるとでも思った?アインズ様は今のマタタビを生かしたんだよ。あんたを手にかけるなんてそれこそ背徳行為も甚だしい。

 まったく、馬鹿にしないで!」

 

つまるところ私の勘違いは、アウラさんの使命と忠誠心を侮辱してるのも同然だ。

 ああしまった、これは怒られて当たり前じゃないか。

 

「ごめんなさい」

「わかってくれたならいいよ。それにあたしは『何も知らない』からね。元々あんたの振る舞いにどうこう言える立場じゃないし

 だから教えてくれないかな、マタタビとアインズ様がどんな関係なのか」

 

 乗り気はしなかったが、直前に失言してしまった手前断りづらい。それにもうアウラさんはアインズ様と私の会話を聞いてしまってるんだから、下手にごまかしても仕方ないだろう。

 だから観念して白状することにした。 

 

「セバスさんとデミウルゴスさんの関係に近いんじゃないですかね。互いに気が合わないんです

 正直今アインズ様がどう思ってるのかはよく解らんですが、私みたいな厄介者にすら執着する様は見てられなかった

 だから最初はそのうち出奔しようと思ってたんだ」

 

「それなのにどうしてナザリックに居続けることにしたの?」

 

「私が自分でも思ってる以上にアインズ・ウール・ゴウンが好きだったからかな。もっと言えばギルドメンバーの面影が残るあなた達のことを存外気に入ってしまったってのもある

 それでもアインズ様の好意なんて絶対受け取りたくはなかったから、アルベドさんの悪意に甘えてでメイドにさせてもらったんです」

 

「アルベドが悪意を?」

 

「おっとしゃべりすぎましたね。そこは出来れば追及しないでください

 んで何か感想は?」

 

「よくわからないところもあるけど、アインズ様がマタタビを気にかける理由はなんとなくわかった気がする」

 

「あっそ。今更ですけど、喋り方とか気にしないでくださいね? 今になって敬語なんてされたら迷惑です」

 

「わかってるよ。アインズ様も気にされていないし、今更整えるのは正直やりづらいから

 ……それと話してくれてありがとう」

 

「どうもどうも。自分でも何でこんな饒舌なのか不可解なんですけどね」

 

 まるで〈魅了/チャーム〉でも使われたみたいです。ビーストテイマーが魔法なんて使ってくるわけないけれど。

 ビーストテイマー? ありゃもしや……

 

「〈影分身の術〉」

 

 嫌な予感を感じ、咄嗟に分身体を生み出した。

 そして〈地味子の眼鏡〉により分身体のステータスを確認すると、案の定状態異常の項目に『軽度のヘイト値減少』と記されている。

 

「あっちゃ~」

 

 スキルの使用がばれ、旗色を悪くしテヘペロ顔するアウラさん。

 

「……うわぁ、ないわぁ」

 

 

 スキルの使用自体はまぁ許せる。アウラさんも仕方なかったんだよね。

 悪いのはわざわざスキルを使わないと碌に話せもしない私の方なのだろう……

 

 今度こそ仲良くなれたと思ったのだけど




 オリ主のナザリック勢に対するスタンスは

「私なんかを好きになるわけがない」
「私なんかを好きにならないで」

です。だからアウラが何となく察した『理由』なんて本人には至極どうでもいい、というか聞きたくもないのでしょう。
 でも愛情には飢えていますから、つれなくされれば普通に凹みます。

 狂ってはいないけど至極面倒な奴



 あー、ちゃんとアインズ様主体の話も書いていきたい。

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