ナザリック最後の侵入者   作:三次たま

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 誤字報告3件もあった……内2つは自分だけど。めっちゃありがたいけど、自分自身にいやんなっちゃう
 そして書き溜め終了。嫌なことは重なるらしい。


・ザックリ概要
マタタビ「大森林行きたい!」
アウラ「ウゼェ」




トブの大森林まで

トブの大森林〈マタタビ〉

 

 

 大森林の木々が枯れているエリアを目指し、アウラの騎乗獣に二人乗りしていたところ、突然何者かの気配を感じ取った。

 

 盗賊系特化である私は当然、レンジャーであるアウラも気付いたようで、相槌をして一旦フェンリルを止めさせた。

 

「突然気配が現れるなんて不気味です、一体何者でしょう?」

「誰かが森林入り口でやった手口とそっくりじゃん。 日に二度もこんなことがあるなんてね」

「アハハ一体誰でしょう」

 そういえば私がトブの大森林に入ったときも同じ感じでしたね。ごめんなさい

「突然現れたってことは、私達では感知出来ないレベルの隠形?」

 

 ビーストテイマー兼職のアウラはともかく、専業盗賊の私を誤魔化せる隠形使いなんてユグドラシルではそうは居ない。ともすれば後者の可能性が高いけど、この世界にはタレントとかあるらしいからなぁ。

 

 とりあえず正体を確認するため、右目を手で覆いユグドラシルでも大人気だった探知スキルを発動させた。

 

「《ピープ/覗き見》」

 

 手に閉ざされて見えないはずの右側の視界が、本来見えないはずの場所の景色を映し出した。

 

 そこにいたのは全身に黄色タイツに身を包んだヒト型の何か。頭に生えた植物からして明らかに植物系のモンスターである。一応その姿には見覚えがあった。

 

「ドライアードですか?」

 

 マジックアイテム《地味子のメガネ》の能力を併用させて簡単なステータスを測るが、レベルはそんなに高くないみたいだ。ではどうして気配を感じなかったんでしょう。アウラが教えてくれました。

 

「ドライアードの本体は木だから、実体化するまで様子がつかめなかったんじゃないのかな。木なんてそこらじゅうにあるから」

 

 なるほど、木を隠すなら文字通り森の中ってことですね。わかりやすい

 

「どうしますかアウラ?」

「うーん、一応アインズ様から知的生物がいたらまずは交渉しておくようにって言われたから、話だけでもしていこっかな。

 あんたが言ってた生態系の崩れってのも気になるし」

「了解です」

 

 生態系とか……やけに知的な子供ですこと。少なくとも10歳の時の私よりは頭いいですよ。これでまだ将来があるってんだから怖い怖い

◇◆◇

 

「あのー、あなたがダークエルフで……そちらの変な格好してる人は、人間?」

 

 ドライアードは見事に私の機嫌を損ねさせる。第一印象は最悪だ。

「変な格好って言ったけど、故郷じゃこれ正装なんだからね?それに私人間じゃありませんケットシーです。」

 

 別にケットシーに拘りはない。

 

 苛ついたのでちょっと睨みつけてみました。当然ドライアードは狼狽するも、アウラが「まぁまぁ」と宥めて間を取り持つ。

 

 へそを曲げた私と反面、アウラは子供っぽく親しみやすそうな雰囲気で自己紹介をした。

 

「こんにちわ、あたしの名前はアウラ・ベラ・フィオーラ。隣のこいつがマタタビ

 あなたの名前は?」

 

「えーとピニスン、ピニスン・ポール・ペルリアだよ」

「わかった、ピニスンね。ピニスン、あたしたちこの森の生態系が崩れているようだから調べているんだけど、最近何か変わったこととか知らない?」

 

 会話そのものに慣れてない様子のピニスンでしたが、柔らかい物腰のアウラに促されて言葉を紡いでいく。

 

「……あーとうん、多分…‥それなら、あの魔樹のせいだと思うよ」

 

 アウラは首を傾げます。

 

「魔樹?」

 

 名前からしてイビルツリーとかのことでしょうか。

 

「あたしが生まれるずっとずっと大昔、突然空を切り裂いて幾多の化け物たちが大地に降り立ったことがあったんだってさ。そいつらはドラゴンの王様たちと渡り合い、世界をも滅ぼすことができる力を持っていたんだ。でも結局、すべて退治されたらしいんだ。」

 

 「世界をも滅ぼす」という互換を聞いて私が連想するのはワールドエネミーだ。ユグドラシルでも「ワールド」の名を関しているだけあって最強のボスキャラである。

 

 もしそんな奴がレベルの奴が複数体いたとして、逆にそれらと渡り合うドラゴンというのも一体何者なのだろう。

 

 ピニスンによるとその化物の一体がこの森の奥地に封印されてて、時々触手を伸ばして動物や植物の栄養を奪おうと暴れまわり迷惑しているらしい。

 

 以前はとある7人組とやらが触手退治をしてくれて、もし魔樹の封印が解かれたら今度は魔樹を滅ぼしてくれると約束してくれたらしい。ところが今現在になって封印の解除が近いにも関わらずその7人組は現れない。

 

「君たちその7人組について何か知っていない?出来れば居場所とか知っててくれたら最高なんだけど……」

 

 知らんがな。

 

「あたしたちここに来たばかりだからその人たちのことよく知らないんだ。力になれなくてゴメンね」

 

 アウラの内心も7人組に無関心なことは《読心感知》でわかりきっています。演技派の彼女は外面では非常に親切です。

 

「しょうがないかぁ……約束してくれたんだけどねぇ……約束」

 

 アテが外れたと見るやピニスンはがっくりと肩を落とした。

 

 このドライアードの時間間隔は結構アバウトのようだし、ひょっとしてその7人組は死んでるんじゃないだろうか?まぁ私とてわざわざ指摘してやる程鬼ではないけど。

 

「どうします?強敵だったらちょっと不味いし、様子だけでも見に行きましょうか?」

「そうしよっか。あたしたちだけで処理できる相手ならそれに越したことないし」

 

 するとドライアードは食いつき、これでもかと言わんばかりの反論を訴えました。

 

「ええーっ!? 倒すって君たちがかい? あいては世界を滅ぼし尽くすことの出来る魔樹だよ!? 前に来てくれた7人組も、その一部とだって苦戦したんだからね!?私たちに出来ることなんか何一つとしてないんだよ!倒したいならドラゴンの王様でも引っ張ってこなきゃ!大体君たち年端も行かぬ少年少女でロクに武装もしてないじゃないか!そもそ(ry)」

 

―少年少女……少年

 

 張り詰めた糸がプツンと切れるような景気のいい音が鳴った。

 

「ちょっと黙れ薪の材料、殺すぞ」

 

 アウラのドスの効いた子供声に、私はどこか懐かしいモノを憶えました。

『黙れ、弟』

 

 しかし、男装してるくせに男扱いされるのが嫌って理不尽じゃありませんか?

 

====================================

 

 キレたアウラが嫌がるピニスンを無理やり引っ張って魔樹のところまで案内させると、そこは私達が目指していた木々の枯れた場所でした。

 

 〈地味子のメガネ〉でユグドラシル後期登場のレイドボス、ザイトルクワエがいることを突き止めたので、私が爆弾を使って無理やり叩き起こし、アウラが魔獣を沢山呼び込んで殲滅することになりました。

 

「マタタビさん、私はちっぽけな世界しか知らなかったんですね、うん。

 私の目は今日見開かれました。世界を滅ぼせる化物なんて、その辺にいるんです。石を投げれば当たるのです。そう考えれば何もおかしいことはありません。」

「それは良かったですねぇ~」

 

 なんということでしょう。あれだけやかましかったピニスンが今では悟りを開いた釈迦のようです。

 

 目の前の光景がそれほどに衝撃的ということでしょうか。

 

 ザイトルクワエ、全長300メートル程にもなる「歪んだトレント」ともいわれる植物系モンスター。竜王とも互角に渡り合い、世界を滅ぼす力を持っていたソレは一時の封印から解き放たれ世界に大いなる災いをもたらす……筈でした。

 

 今ではその大木の体も何十という数の魔獣の群れにバキバキと齧られまくり、中には火を噴く魔獣から火炎放射を浴びせられています。なかでもアウラが一番大暴れしておりまして、ビュンビュン鞭を振り回して幹を叩き折っていきます。見た目に反して超パワフル、ピニスンが卒倒するのも頷けるというもの。

 

 この魔樹の寿命(それとも樹命?)はあと数分も持たないでしょう。

 

 

 まもなく魔樹、ザイトルクワエは消滅しました。

 

 一見無秩序に大暴れしてたように見えて、アウラは残った木材資源を後で活用できるようなるたけ痛めつけないよう魔獣にも指示していたらしく、おかげで推定樹齢500年以上というまぁまぁレアな木材を大量入手することが出来ました。

 

 あとピニスンが教えてくれたのですが、ザイトルクワエのてっぺんの苔はかなり貴重な薬草なのだと。運良く残っていたのでそれも回収しました。

 

「村の脅威となるモンスターを討伐して、木材資源を大量入手しつつ希少な薬草まで手に入れるなんて大手柄ですね。つまり私が来たこともそう悪いことではなかったのでは?」

 

「……恩着せがましいなぁ。べつにこいつが目覚めたところでぴゅっと飛んで行ってやっつけることくらいわけないんだから。

 ま、久々に体動かしたから退屈しのぎにはなったけどさ。あんたは良かったの?割り込んできても別に良かったんだけど」

 

 うーん運動でストレス解消かぁ。考えたこともなかったなぁ。

 

「それも悪くなかったけど、私の取ってる職業に〈トリックスター〉ってのがあって、そいつのペナルティが『レイドボス、ワールドエネミーに対する攻撃力50%ダウン』なんですよ。

 だからユグドラシルのレイドボスだったアイツじゃ私では分が悪いんです。」

 

 そもそもなんでユグドラシルのレイドボスがこんなところに居るのかもよく解らないけれど、確かピニスン曰く空から落っこちてきたんだっけ?倒す前に詳しく調べときゃよかった?……いや無理か。

 

「何そのペナルティ!? シャルティアの〈血の狂乱〉よりも酷いじゃん」

「ま、ペナルティ度外視すれば中々強いし捨てたもんじゃないよ。無論ユグドラシルでは不人気筆頭だったけど。」

 

 ふーん、とどうでも良さそうな反応をしてからアウラは言いました。

 

「じゃ、用事も終わったしちゃっちゃっと帰ろ。あんたもこの森林にはもう用事ないでしょ」

「ですね]

 

 ドライアードに今日のことは内緒にするよう言い含めて(ほとんど脅し)私たちは帰ることにした。

 

◇◆◇

 

(アウラ)

 

 

 今日一日マタタビと過ごしたアウラだが、彼女は一体どんなやつなのかという疑問は結局先送りにした。

 

 御方に何らかの形で一目置かれている。口調がうざく、テンションが軽い。それでも案外悪いヤツではないことなど、断片的な特徴は少しずつ集まったがそれでもマタタビへの全体像は未だぼやけがちだ。謎が謎を呼ぶようで掴み所がない。

 

(嫌なやつだけど、嫌いではないかも)

 

 自分でも訳の分からない複雑な心境に、アウラは眉をひそめ不機嫌そうに頭を掻いた。

 

 

 行きと同じくマタタビとアウラは、フェンリルの背中に二人乗りで帰ることになった。

 

 日没の差し迫る夕暮れ時、生まれたときからナザリックの防衛に従事し続けていたアウラはこの世界に来るまで夕焼けを見た事は無かったが、マタタビのように感動する気分にはならなかった。

 アウラにとっては本物の星空なんかより、第六階層にある星空模様の天井のほうが遥かに輝かしいのだ。

 

 マタタビも今日のことで疲れたのか、フェンリルの背中に掴まりながら器用に居眠りしているためリアクションの取りようがない。疲労無効の装備をつければ眠る必要はないのだが、趣味で装備から外しているらしく、やっぱりアウラには理解しようもない嗜好だ。

 

 アウラからしても起きて軽口を叩かれるより眠ってもらった方がありがたかったから、フェンリルに速度を落とすよう指示したのは内緒である。

 

 マタタビの寝顔は間抜けそのもので、柔らかな獣毛に顔を埋めながら涎をこすり付ける行為はフェンリルもアウラにも不愉快だったが、今は注意しようもないので我慢するしかない。

 

 あまりに無防備な姿を見せつけられたアウラは、彼女に自分が気を許されたのだという決定的な証拠を前に、なんとも言えないもどかしいような苛立ちを感じた。

 

 マタタビのことを思うとイライラしてたまらないので、アウラは別のことを考えることにする。

 

 今日挙げた成果についてだ。

 (マタタビが押し掛けてきたことがきっかけだったのはともかく)アウラはこの世界でも屈指の強さを誇る脅威に打ち勝って、大量の木材資源と貴重な薬草を手に入れることに成功した。

 

 以前六階層で炎の原精霊を倒した時に、アインズがアウラとマーレを非常によく褒めていたことを考えると、倒した敵(名前は既に忘却の彼方)も同程度の強さだったので今回はなお賞賛されると思われる。

 

 それも全てアウラを作り上げた創造主が優れていたということなので、結局のところあらゆる成果は御方に還元されるであろう。

 しかし自身の行いが御方の超越性の証明になるというのであれば、アウラはこれ以上の誉れを知りえない。

 主人に賞賛される場面を空想して機嫌良く鼻歌を口ずさむアウラの姿は、親に褒めてもらうことを嬉しがる年相応の少女にしか見えなかった。

 

 

 フェンリルに速度を落とすよう指示したせいだろう。マタタビを送り届けるカルネ村までまだ距離はあったが、日はすっかり沈みきって、木々の影は夜陰と同化していた。

 

 アウラやフェンリル、おそらくマタタビにとってもこの暗闇は一切障害足り得ぬものだったが、夜の森から運ばれる風はどことなく不気味で不吉じみていた。

 

 別にナザリックにおいて門限などがある訳ではないが、このままの状態というのもどうかと思い、アウラはフェンリルに速度を上げるよう指示しようとした。

 

「!」

 約2時間ほどフェンリルの背中のもふもふに夢見心地だったマタタビが、ピタッとスイッチが入るように目を覚ました。

 

 先程までの判然せぬ寝ぼけ眼には肉食獣のような閃光が宿り、かつて無いマタタビの豹変に何かを感じ取ったアウラは、おそるおそる「何かあったの」と尋ねる。

 

 マタタビの表情には、さっきまであった喧しい程の喜怒哀楽は消え失せていて、刀剣のような鋭さだけがあった。

 

 以外と大きい犬歯をギラつかせながらも、マタタビは淡々と答えた。

 

「推定レベル95以上が2つ、感知に引っかかった。」

 

 95レベル以上。アウラの記憶上、シモベや至高の方々を除いたらその領域に立ちうる者は唯一つしか考えられない。

 

「プレイヤー……!」 

 

 かつて1500名の大群がナザリックを襲撃した時、6階層まで突破されてアウラの前にまで立ちはだかった存在。立ち会ったのは、アウラにとってたった一度でしかなかったが、忌々しい死の記憶がフラッシュバックして戦慄する。

 

 前回は数の暴力により壊滅させられたとは言え、今回は二人だ。決して油断できる相手ではない。

 

「あんたがやった時みたいな、誘い出しだったりしない?」

「多分違うと思う。今回は私の索敵範囲に入り込んだだけだから、意図してやるならば、私達の位置情報と、この私の能力を把握していなければならない。」

 

 もし全バレしてたら逆に終わりだけどね、とゾッとするような付け加えをする。それから状況を詳しくアウラに伝えた。

 

「2者の因果関係は、発見した私達の存在をも含めても皆無。これはどう見ても偶然ですよ」

 

 片側は50レベル以下30レベル以上の雑魚集団を数人連れてカルネ村の方向へと移動中。もう片側はそれを気にせず、何やら洞窟で暴れているようだが詳細は不明。

 

 一通り聞いたアウラはフェンリルを止めさせてしばし考える。

 

 偵察しに行くかどうか、リスクとリターンとを推敲して顎を擦る姿は、彼女の幼い風貌にどうしようもなく不相応だった。

 

 チラリとマタタビの方を見ると、彼女のアウラへの眼差しは真剣そのものだ。

 

 アウラの判断に任せるという信頼感がひしひしと感じ取れる。どうして今日話したばっかの自分なんかを信じられるのか、アウラには理解できない。とにかく自身の判断に伴う責任の重さが一層増した気がした。

 

 自らの主人はこれ以上の重圧の中で常に最善手を取り続けているのだなぁ、というやや現実逃避気味な思考がよぎる。

 しかし実際時間ではそれ程たたないうちに、彼女の判断は決した。

 

「よし、行こう。案内して!」




 ここでエタッたら最悪すぎる。次話の完成度50%くらい?

※今回の捏造
・ザイクロさんはユグドラシル後期のレイドボス
・オリ主の設定全般
・アインズ様がいなければピニスンとアウラは結構話せる。

 感想気に食わぬところ誤字脱字があったら報告くださいな。おねげーします。

 
●次回予告(一度やってみたかった)

「精神支配は完璧だというのに、何故こんなことが!」
「せめてメイドさんが優しく冥土までエスコートして差し上げましょう。」
「なんて綺麗なの」
「信じたあたしが馬鹿だった」

 次回「木天蓼」


「きっとそれが正解です。」




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