翌日俺達はこの都市で一番でかいと言われている建物の地下に来ていた。どうやらここで若手悪魔の会合を行うらしい。
俺がいる理由は魔王に顔合わせをしてきてくれと言われたからだ。
エレベーターに乗る前はボディーガードらしき人達がいたが中に入れないようでエレベーターの前で別れた。
「皆、何が起こっても平常心を保ってちょうだい。これから会う人達は将来の私達のライバルよ。無様な姿をさらせないわ。貴方は特にね」
と言って、俺を指してきた。
いや、お前が言うなよ。鏡みてこいよ目の前に無様な姿さらしてる奴いるから。こいつ、自分の事を棚に上げすぎだろ。はっきり言ってお前は何をいっているんだ状態だ。
俺は小猫と小声で話し合った。
「なぁ小猫。何で今俺が指摘されたんだ?」
「…さあ?まだ自惚れてるんじゃないんですか?」
「どう考えてもそうじゃね?」
「…一回鏡みてきた方が……」
「だよなぁ…」
そんな会話をしているとエレベーターが到着。ドアが開く。目の前には使用人らしき人が会釈した。
「ようこそグレモリー様。そして赤の戦士様こちらへどうぞ」
そう言って案内を始める使用人。と言うかもうなにも言わないぞ。いい加減めんどくさくなってきた……。
案内されていると前から一人の男性が歩いてくる。
「サイラオーグ!」
「久しぶりだなリアス」
「ええ、サイラオーグ。変わり無いようで何よりよ。初めての子もいるわね。彼はサイラオーグ・バアル。私の母方の従兄弟に当たるの」
ふーんつまり親戚なのか。それにしてもグレモリーと比べると、強いな。
よく見るとサーゼクスとどことなく似てるな。雰囲気とか。
「サイラオーグ・バアルだ。バアル家の次期当主だ」
バアルはソロモン七十二柱の大王に当たる一番目の悪魔の名前だ。纏う雰囲気がまさに大王のそれだな。
ってことは昨日あったグレモリーの母親はバアル家出身か。
サイラオーグの視線が兵藤に向く。
「お、俺はリアス様の兵士の兵藤一誠です」
兵藤がそう自己紹介するとサイラオーグの眷属だと思われる人達が驚く。
「なるほど、君がか。あえて光栄だ赤龍帝殿。して、そちらは?」
そう言ってサイラオーグが俺に視線を向けた。
「俺は乾蓮だ。お前大分鍛えてるんだな。まさに大王の名にふさわしいぐらい強いな」
「見ただけでわかるのか!…それにしても貴方も大分鍛えているな。しかし、乾蓮か…どこかで……」
そう言って考え始めるサイラオーグ。まさかとは思うが魔王の奴俺の名前を言ったんじゃないだろうな。
「それでサイラオーグはどうして通路に?」
「ん?……ああ、くだらんから出てきただけだ」
「くだらない……?他のメンバーも来ているの?」
「アガレスとアスタロトもすでに来ている。あげく、ゼファードルだ」
そうサイラオーグが言うとグレモリーも「ああ」と言って、納得する。
その瞬間、ドォォォンと言う音が通路の奥から聞こえた。
「はぁ…またか……」
そう言ってサイラオーグとグレモリーは溜め息を吐く。
そのまま奥の部屋まで歩いていく。
部屋を開けると部屋の中はボロボロで悲惨な状態だった。壁と床はえぐれており、椅子や机は壊れていた。
部屋の中央には二人の男女が対立していた。恐らくこの騒動の原因だろう。
二人の後ろには二人の眷属と思われる悪魔達が殺気を出しており、武器も出している。まさに一触即発と言う状態だった。
「ゼファードルこんなところで戦いを始めなくても仕方なくては?あなたは馬鹿なのかしら?いっそのことここで殺っちゃってもいいかしら?」
「ハッ、言ってろクソアマ!こっちが気を利かせて別室で女にしてやろうと思ったのによ!アガレスのお姉さんはガードが堅くて仕方ねえな!そんなんだから未だに処女やってんだろう!?だからこそ俺が開通式をしてやろうって言ってんのによ!」
眼鏡をかけた女性とヤンキーと言うか完璧にかませの風格がある男性がそう言い合っている。
あのヤンキー、はっきり言ってザコだな。何であんなザコがいるのか。流石にグレモリーよりもザコだぞ。まぁ、だからこそグレモリーが入れているんだろうが…。
その近くではもう一人の男性が座って優雅にお茶を飲んでいた。後ろにはその男の眷属がいる。何か優男に見えるが、あいつは信用できない。はっきり言って何か裏のある顔だ。
「ここは若手悪魔が挨拶する場だったんだが……血気盛んな若手悪魔を一緒にしたとたんこの様だ」
そう言うサイラオーグは声を出す。
「アガレス家の姫シークヴァイラ、グラシャラボス家の問題児ゼファードル!これ以上やるなら、俺が相手をする!これは最終忠告だ!」
そう言って殺気を出す。グレモリーと同期とは思えないぐらいだ。
流石に分かってるのかアガレスは身を引いたがグラシャラボスはサイラオーグを見て食って掛かる。
「誰が問題児だ!バアル家の無能が!ってん~?何でこんなところに汚い人間が混じってんだ?」
そう言って俺に標的を変える。まぁ、予想はしてた。
「汚ねぇのはそっちだろうがチンピラ」
「ああ!?ふざけんじゃねぇぞてめぇ!」
「乾蓮………ハッ、思い出した!やめろゼファードル!その方は!」
俺が挑発すると簡単に乗ってくれた。
そう言って殴りかかってきたグラシャラボスの拳を止めて顔面を殴りそして腹に蹴りを入れる。
「グハッ!!」
『兄貴!?』
グラシャラボスの眷属がそう言って驚く。
グラシャラボスはそのまま飛んでいき壁にぶつかって気を失った。
「クソ!よくも!」
「俺は殴りかかられたから自分を守るためにやっただけだ。つまり自己防衛」
「屁理屈を…!」
「やめろ!君たちでは敵わない!それに、先に主を回復させろ」
『ッ!!』
そうしてヤンキーの眷属はグラシャラボスを運んでいった。
その後生徒会が到着し、部屋も修繕され現在、広間で顔を会わせている。
「私はシークヴァイラ・アガレス。大公アガレス家の次期当主です。先程はお見苦しい所を申し訳ございませんでした」
「私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主です」
「私はソーナ・シトリー。シトリー家の次期当主です」
「俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」
「僕はディオドラ・アスタロト。アスタロト家の次期当主です」
そう言って各々挨拶をする。しかし、アスタロトはやっぱり嫌な予感がする。
と言うかグラシャラボスはあんなのが次期当主なのか。大丈夫か?
「グラシャラボラス家は先日、お家騒動があってな。次期当主とされていた者が不慮の事故で亡くなったそうだ。先程のゼファードルは新たな次期当主候補となる」
マジか。
「さて、貴方は?」
「何で俺まで言わなくちゃいけないんだよ」
本当に勘弁してほしい。
「いや、間違いじゃないか確かめたくてね」
「はぁ…分かったよ。言えばいいんだろ。俺は乾蓮だ。認めた奴以外は名前を呼ばせねえからな」
「その後は?」
「まだなんか言わなくちゃいけないのか?」
「どうせ会談で話すなら今言ってもいいんじゃないか?」
こいつ、俺のこと分かってるな……。
まあいいか。遅かれ早かれ言うことになったんだし。
「えーっと後、赤の戦士です。ただ様とかつけるんじゃねぇぞ」
そう言うとサイラオーグとグレモリー、シトリー眷属以外の全員が驚いた。
「やはり赤の戦士殿だったか」
「お前分かってたじゃねえかよ。何で知ってた」
「いや、実は少し前に魔王殿に教えてもらってな。確か、三大勢力会談が終わった後条約ができたといわれたと同時だったかな?」
「チッ、
「ハハッ、魔王様を人間の身でそう言えるのは君だけだろう」
「あー、サイラオーグは呼んでいいぞ。実力は認めてるし、こっちももう名前で呼んでるし」
「それは光栄なことだ」
そう二人で言い合っていると扉が開かれ使用人が入ってきた。
「皆さま、大変長らくお待ちいただきました。会場にお入りください」
さて、俺もいくかな。
「俺は魔王にお呼ばれしてるから、またな」
「ああ、また会おう」
そう言って別れた。
サーゼクスのとなりに来るとサーゼクスが質問してきた。
「どうだった若手悪魔達は」
「サイラオーグ以外はそこまでだ。と言うか一人何か裏がありそうだし。まあ、名前は伏せるが」
「じゃあリアスはサイラオーグ君に勝てると思うかい?」
「はっきり言って無理だな。まだ小猫の実力がばれてないから、勝率はあると思うが、バレたら終わりだ」
「兵藤くんは?」
「力で負ける」
「……どうするべきか分かるかい?」
「アザゼルに聞け」
前を見ると上級悪魔がこちらを睨んでいた。俺はそれを無視する。
魔王をみてみるとサーゼクス、セラフォルーとともに見ている魔王と、欠伸している魔王がいた。いいのかそれで……。
少ししていると若手悪魔達が入ってきた。
座っている上級悪魔の年寄りが立つ。
「よくぞ集まってくれた、次世代を担う若き悪魔たちよ。この場を設けたのは一度、この顔合わせで互いの存在の確認、更には将来を競う者の存在を認知するためだ。それと…」
年寄りがこちらを見る。
「貴方は私達を救ってくれた英雄。ですが、くれぐれもでしゃばるような真似はしないでいただきたい」
「と言うと?」
「ここは悪魔の場です。貴方のような人間が本来この場に存在してはならないことをご理解していただこうか」
「さよう。人間ごときがこの会合に立ち会えるなど本来あってはならないのだ」
「それに貴方が本当に英雄かもわからないしな」
こいつら…。そっちから呼んでおいてその対応は無いわ。
「それはまた後の話で。まずは若手悪魔の方から」
「ふん!」
そう言って話が始まる。
「さて、キミ達六人は家柄や実力を合わせて申し分無い次世代の悪魔だ。だからこそ、デビュー前に互いに競い合い、その力をより高め合っていって欲しい」
サーゼクスが六人それぞれに視線を向けそう言うと、サイラオーグが反応する。
「我々もいずれは禍の団との戦いに投入されるんですね?」
「それはまだ言えない。だが、私達はできる限り若い悪魔達は戦いに投入したくはないと思っている」
「お言葉ですが、我らとて若いとはいえ悪魔の一端を担っております。この年になるまで先人方からご厚意を受けている身でありながら、何も出来ないのは……」
「サイラオーグ。その気持ちは嬉しい。勇気も認めよう。だが、ハッキリ言わせてもらえれば、それは無謀というものだ。万が一にも、キミ達を失うわけにはいかないのだ。次世代を担うキミ達は、キミ達自身が思っている以上に、私達にとってはかけがえのない宝なのだから。焦らず、ゆっくり、確実に成長していって欲しいのだよ」
サーゼクスはそう言うとサイラオーグは納得したのか引いてくれた。
「さて、長い話に付き合わせてしまって申し訳なかった。これで最後だ。冥界の宝である君たちに、それぞれの夢や目標を語ってもらおう」
「俺の夢は魔王になる事。それだけです」
最初に答えたのはサイラオーグだった。
「ほお、大王家から魔王が出るとしたら前代未聞だな」
「俺が魔王に相応しいと冥界の民が感じれば、そうなるでしょう」
へー、それはつまり民衆の信頼を掴んでみせると言うことか。良い考えだ。
「私はグレモリー家の次期当主として生き、レーティングゲームの覇者となる。それが現在の、近い未来の目標ですわ」
まあ、目標は良いとしても近い未来は言い過ぎじゃね?今のままだと絶対眷属に依存するぞ。
その後も次々と若手悪魔が夢や目標を語っていき、最後に生徒会長が来た。
「私の目標は冥界にレーティングゲームの学校を建てることです」
「レーティングゲームを学ぶ学校ならば、すでにあるはずだが?」
「それは上級悪魔や特例の悪魔のための学校です。私が建てたいのは、下級悪魔、転生悪魔、平民、すべての悪魔が等しく学べることが出来る学校です」
ほう、つまり悪魔勢力の力となる基盤を建てるってことか。確かに下級悪魔とかが力をつければそれだけで悪魔の戦力が増えていくからな。先の事を見越して、悪魔勢力のための夢なんだろう。いい夢じゃないか。
『ハハハハハハハッ!!』
頭の固い老害共が笑い始めた。
「それは無理だ!」
「そんなバカげた話があるとは!」
「なるほど! 夢見る乙女と言うわけですな! これは傑作だ!」
「若いというのは実に良い! しかし、シトリー家の次期当主よ、ここがデビュー前の顔合わせの場で良かったというものだ」
こいつら、何もわかってないな。バカなの……いや、バカだったわ。流石に、人の夢をバカにする奴等は…苛つくなぁ……!
「私は本気です」
「ソーナ・シトリー殿。下級悪魔、転生悪魔は上級悪魔たる主に仕え、才能を見出されるのが常。その様な養成施設を作っては伝統や誇りを重んじる旧家の顔を潰す事となりますぞ?」
「さよう。それに、たかが転生悪魔や下級悪魔などに教育など悪い冗談としか思えん。いくら悪魔の世界が変革期に入ってると言えど、変えてよいものと悪いものの区別ぐらいは…「知ってるか?」…何だ人間。今大事な話を…」
俺は我慢できなくなりあの言葉を放った。
「夢を持つとな、時々すっごい切なくなって、時々すっごい熱くなる、らしい。それと夢ってのは呪いと同じなんだ。途中で挫折した奴はずっと呪われたまま、らしい。俺はその事をある二人から聞いた。」
俺はそう言って生徒会長のほうを見る。
「生徒会長。あんたの夢は時々すっごい切なくなって、挫折したくなるかもしれない。でも、あんたがそれを乗り越えて呪われないように俺は応援している」
そう言って次は老害共を見る。
「お前ら、夢はなんだ。生徒会長の夢を笑えるってことは、それ以上の大きい夢を持ってるんだろうな」
「そ、それは今は「関係ないってか?」ッ!そうだ!」
「関係ないわけないだろ。人の夢を馬鹿にしたんだ。それ相応の覚悟があって馬鹿にしたんだろ?早く言えよ」
そう言うと、老害共は口を閉じ少し経った後、一人が口を開いた。
「わ、私は…「アウト」な、まだ何も!」
「間がある時点で全員アウトだ。第一自分の夢ならすぐ口に言えて当たり前だろ?」
「じゃ、じゃあお前の夢はなんだ!」
俺はすぐに答えた。
「俺には夢はない。でも悪魔にも、天使にも、堕天使にも、妖怪にも、もちろん人にもどんな奴等にだって夢はある。俺はその夢を守ることが出来る。あえて言うならそれが夢だ」
生徒会長が小声で「夢を守ることが夢……」と呟いたような気がするが、それは置いておこう。
「ちょうどいい。実は今オリジナルのベルトを持ってきていてな。一個は俺が変身できる証明のために持ってきたがもう一本はお前らが変身してもいいよ」
そう言ってファイズと
「もしそれで俺みたいに変身して解除して生きていたらそいつにそのベルトやるよ」
その瞬間老害共は我先にとカイザのベルトを取りに行き最初の奴がカイザギアを装着する。
「やったぞ!」
「変身して解除できたらだからな」
そう言う前に老害は『9・1・3』と『ENTER』のボタンを押し、カイザフォンをセットする。
『complete』
「お、おおぉぉ……!」
「んじゃ、解除してみろ」
「わかった…とでも言うかボケが!此方が譲歩していれば調子に乗りおって!」
「譲歩なんてしてないじゃん」『ready』
そう言って俺はファイズショットにミッションメモリを挿し『ENTER』を押す。
『Exceed charge』
そして襲ってきた老害を殴り強制解除する。
強制解除された老害は灰になった。
「「「なっ!」」」
「攻撃しなけりゃ生き残れたかもしれないのに、じゃあ次」
今度は少しためらったようだが一人が手に取り装着する。
「こ、攻撃しなければ……」
『complete』
「そしてこのまま…」
そう言って老害は変身を解除する。すると光が収まり老害が立っていた。
「やったぞ!これでこのベルトは私の……」
そう言った瞬間そいつは灰になって崩れ去っていった。
「な、どう言うことだ!貴様は変身できたのに!」
「俺は言ったはずだぜ。解除して
老害共が動かなくなったので俺はカイザのベルトを回収して、会長に投げ渡した。突然カイザのベルトを渡された生徒会長は驚いていた。
「………え?」
「変身してみろ。お前の夢の大きさをあいつらに叩きつけてやれ」
「お、おまえ!会長に死ねって言うのか!?」
匙が反対するが俺は何も答えない。そんな俺を怒鳴り付けようと匙が一歩前に出ようとしたところを、
「待ちなさい、匙」
「か、会長?」
「私の夢はここでは終わりません。その事を乾君、
そうして会長は『9・1・3』と『ENTER』を押し変身しようとカイザフォンを上にあげたところで、
「お前の夢の大きさ、よくわかったぜ。下ろしていいぞ」
俺が手を止めていた。元々会長の心意気を測るためにやったことなので元より殺すつもりは無かったのだ。
どうやって止めたかって?アクセルフォームに変身して止めただけ。
会長はカイザギアを俺に渡すと、俺の目をみてこう言った。
「私の夢の大きさ、わかりました?」
「ああ、よく分かったぜ。支取会長」
そう言って俺は老害共の方を向く。
「いいか、会長はお前らの死をみて自分も死ぬかもしれないと思いながらも勇気を振り絞って見せてくれた。それをできなかった奴等がこいつの夢を笑うんじゃねぇ。それと、今回で変身できないことは良くわかったな老害共。もう俺に突っかかるな。詳しく話聞きたきゃサーゼクスに聞け。そんだけだ。じゃあ俺はもう帰るな」
そう言って会場から出ようとして、あることを思い出した。
「あ、それと、お前らの事に俺を巻き込むんじゃねぇぞ。めんどくさいからな」
そう言って俺は本当に会場から出ていった。
アンケート結果
えー、前回アンケートを取った所ギャスパーはハーレム要員に加えず弟的な感じで、TSさせないことに決まりました。
コメントには「大事な男の娘要員を潰すなんてとんでもない」と言ったコメントが多かったです。
アンケート回答ありがとうございました。
3/17感想欄で面白い発想があったので少し編集しました。ゼアムさん感想ありがとうございました。