ハイスクールD×555   作:白尾芯

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落ち込んだ主人公 励ます後輩

黒歌、小猫、グレイフィア、ロスヴァイセは駅にいた。蓮とここで集合するためだ。

四人が待っているとバイクの音が聞こえた。悪魔がバイクを使うわけがないのですぐに蓮だと分かった。

 

「あ、蓮が来たにゃ!」

 

他の三人よりも耳がいい黒歌がいち早く気づき音がした方を指差す。

他の三人はその言葉を聞いて、黒歌が指を指した方を見ると確かにバイクが来ているのが見えた。

 

蓮が駅に到着すると黒歌が飛び付く。

 

「蓮~」

 

「おいこら引っ付くな」

 

そう言って蓮は黒歌を引き剥がす。

 

「大丈夫でしたか?何かテレビとかでは凄い被害が出たって話でしたけど…」

 

「………油断した。オルフェノクが二体いてな。その内一体は暴走が酷くて、街に被害出しちまった。魔王になに言われるか…」

 

「ありゃりゃ、蓮が油断するって珍しいわね」

 

「ですがこういう時もあるでしょう。いってみるまで何があるか分からないですし…」

 

「と言うか何でここに小猫がいるんだ?確か今日は若手悪魔の…」

 

「…会合でしたが今回の事件で明日になりました」

 

「明日って、居住区っぽい所に被害甚大なんだが…」

 

そう心配した蓮だがロスヴァイセがその心配を無くしてくれた。

 

「今、被害が出た居住区では復興作業が行われています。このペースだと明日の朝にほぼ終わるらしいです」

 

「早くね?あれか、魔術とか使ってんのか?」

 

「はい、そうらしいです」

 

「魔術って便利だなー」

 

そう言って蓮は呆れた感じで言う。

 

「じゃあ、今日はこのままボーッとしていいのか?」

 

「ボーッとは時間の無駄ですから観光ぐらいしてみてはいかがですか?」

 

グレイフィアの答えに他の三人も頷く。

 

「……俺、疲れてんだけど?」

 

「…付いてくるだけでもダメですか?」

 

「いや、俺寝たいんだけど……」

 

「その疲れを癒すために遊ぶ、と思えば」

 

「そうですよ。たまには息抜きも必要です」

 

ロスヴァイセの言葉に黒歌も頷いていた。

蓮は頭を掻いた後こう言った。

 

「しゃーねぇ、付いていってやるよ。でも俺は見てるだけだからな」

 

「やったにゃ!」

 

そう言って蓮に再び飛び付く黒歌。

それを引き剥がす蓮。

 

「だから引っ付くな」

 

そんなやり取りをして五人は街を散策しに行った。

 

 

 

 

しかし、蓮は楽しんだ様子はなくただ呆れた感じで四人の様子を見ているだけだった。

そのまま蓮は笑うことなく観光は終わった。

 

 

 

 

―――夜、蓮達はグレモリーの住んでいる城にお邪魔していた。

因みにだが蓮はグレモリーの城を見て、唖然とした後、バッカじゃねぇの?と言ったのは内緒である。

夕食を済ませたあと、城内にある接客室に来ていた。

接客室には魔王二人とアザゼルが座っている。

 

「んで、今日の俺の処罰とかは有るのか?」

 

蓮がそう三人に訪ねる。

しかし、すぐにサーゼクスが言う。

 

「いや、処罰はないよ。と言うか此方は君に感謝を送りたい。今回は住民を守ってくれてありがとう。君のお陰で被害は少なかった」

 

「少なかったって言ってもな、街に被害出しちまったし、それに何人か殺されちまったし…」

 

「それでも君がいなかったらもっと多くの被害が出ていたし、最悪、悪魔勢は全滅していたかもしれない。君がいたからこれだけの被害で済んだんだ」

 

「そうだぞ。そりゃ街と住民に被害が出ちまった。けど死んだ人数を数えたら二桁もいなかった。それに街の方は心配するな。全員がお前の姿を見てやる気だして突貫工事して明日の朝に終わる予定だ。気にすることはねぇよ」

 

そうアザゼルも言う。セラフォルーも顔を赤くして頷いていた。

 

「で、何でそこの魔王様は顔を赤くしてんだ?」

 

「まぁ、こいつは気にするな」

 

「あぁ分かった」

 

そう言って三人はセラフォルーを無視することにして、話始める。

 

「それで、君には明日、予定通りに若手悪魔の会合に出て欲しいんだが……」

 

「分かってる。とりあえずベルトは二本だけ持ってくからな」

 

「何で二本か分からないが考えあっての事だろうし、そこは君に任せるよ」

 

「よし、そんだけ確認できればオッケーだ。んじゃ」

 

そう言って部屋を出ていこうとする蓮をアザゼルが呼び止める。

 

「あ、俺今から風呂行くんだがついてくるか?他のやつらも一緒だぞ」

 

「…俺は後でいい。一人で入る。お前と入ったらどうせロクな事が起きそうだからな」

 

「おまっ、俺をどんな奴だと思ってんだ!」

 

「ロクでもない事を起こす神器バカのセクハラ変態オヤジ」

 

「流石に酷くねぇかおい!!いや、神器バカは知ってるがよ!」

 

「ハッ、そう思われたくなかったら行動を直せよ。じゃあな」

 

そう言って蓮は部屋を出ていった。

 

「ったく、人間で堕天使総督にああ言えるのはアイツだけだろうな」

 

「まぁ、僕も彼の発言には同意できるけどね」

 

「お前もかよサーゼクス…」

 

そう言って冗談を言い合った後真剣な顔になって話始めた。

 

「あいつ、口では平気そうだったが大分気が沈んでたと言うか、落ち込んでたな」

 

「さて、あの状態で明日会合に彼が出席したらどうなるか…」

 

「さぁな、でもまぁ予想していいぜ。明日最低でも一人上級悪魔が消える」

 

そう言ってアザゼルは予想する。サーゼクスもその予想に頷く。

 

「…だろうね。出来れば余計な事を言わない事を願うよ」

 

サーゼクスの答えにアザゼルは溜め息を吐き、考える。

 

「…絶対に突っかかってくるよなー…」

 

「ああ…。所で話は変わるが今日の避難誘導中にある悪魔の気配を感じたんだが…感じたかい?」

 

「ああ、あの気配は間違いなくリゼヴィムだ。まさか今回の事件はあいつが関与しているのか?」

 

サーゼクスは頷く。

 

「彼は言わなかったが人にしかなれないオルフェノクが出たんだ。これは意図的に誰かが送り込んだに違いない。そう考えるとリゼヴィムが起こしたと考えるのが妥当だろう。最悪、リゼヴィムが禍の団と繋がっていると考えてもいい」

 

「…こりゃあまた一波乱あると考えていいな」

 

「出来るなら被害はあまり出したくないものだ…」

 

そう言って二人は酒を酌み交わせた。

因みにセラフォルーは本当に無視されており、ボーッとしていた。

 

 

 

 

《蓮side》

 

俺は風呂に行かず、割り当てられた部屋のベランダでのんびり空を見ていた。

とそこに、扉をキィ…っと開けて誰かが入ってきた。

 

「…蓮先輩、風呂に行かないんですか?」

 

小猫だった。

 

「俺は…後ではいるよ。小猫はもう入ったのか」

 

「…いいえ。まだ入ってません」

 

「なら先に行って「…何か悩んでいますか?」ん?」

 

「…なにか悩んでいるなら私に言ってください。相談に乗ります」

 

そう言って詰め寄ってくる小猫。

 

「…何でもねぇよ」

 

俺は小猫から逃げるように言う。

しかし、小猫は近づいて来て言う。

 

「…何でもないこと無いです。だって今日の観光の時も笑っていませんでした。楽しそうじゃ、ありませんでした。オルフェノクと戦っただけでは蓮先輩はあんな沈むはずありません」

 

……ったく、何でこう鋭いのかね。こいつは。

 

「…まったく、俺も素直じゃねえな。いいよ言ってやるよ」

 

そうして俺は話始める。

 

「今回俺が倒したのは二体のオルフェノクだったが、その内一体は洗脳されているのも分からなかった少女だった。しかもその後暴走させられて人殺しをさせちまったよ」

 

小猫はその言葉に驚愕していた。

 

「…その暴走させられたと言うのは?」

 

「禍の団が絡んでいてな人間界から連れてきたんだと。恐らく最初の一体も同じだろう。話を戻す。その子は記憶を書き換えられているにも関わらずなにも知らないまま笑っていた。泣いていた。怒っていた。俺と会話していた。あの子はちゃんと感情も意識があった。それを俺は暴走したからと言う理由で…殺した。屈辱だった。泣いている子を止めてやれなかった。助けてやれなかった。その子は俺を仮面ライダーと言ってくれた。自分の中の英雄とも言ってくれた。なのに助けられなかった!そんなの何が英雄だ!何がヒーローだ!街の被害は最小限に抑えられたと魔王は言った。でも何人かの悪魔は灰になって死んでいった!その人達を助けられなかった俺には人々から賞賛を与えられるべきじゃないんだよ。はっきり言って、俺は…無力だったんだよ……」

 

小猫は俺の話をなにも言わずに聞いていた。

俺が話終わると小猫は俺に近付き、抱き締めてきた。

俺はいきなり抱き付いてきた小猫にビックリした。

 

「…お疲れさまです、先輩。先輩はそれだけ考えられるだけでも人から賞賛を与えられる強い人です」

 

そう言って一旦離れる小猫。今度は俺の顔を見てこう言った。

 

「…先輩は無力なんかじゃありません。人の命をそれだけ重く考えられる人なんかいません。そんな人がヒーローじゃないわけがありません!前に上級悪魔のライザーと言う人が英雄色を好むと言っていました。ですが先輩みたいに色を好まず平等にものを見れる人ほど私は英雄だと思います。力が無くたっていい。色を好まなくてもいい。ただ、人の命をどれだけ重く見れるか。それだけで良いじゃないですか。それが私の自慢の先輩です!大好きな先輩です!だから先輩、もっと自信を持ってください!前までの気迫はどうしたんですか!早く元の先輩に戻ってください!」

 

俺は小猫の言葉を聞いて思った。ああ、こんなに俺の事を考えて心配してくれていたんだなと。

まったく、こんなうじうじ考えてるのは俺らしくなかったな。あー恥ずかし。

 

「…はぁ、まさか後輩に元気付けられるとはな」

 

「…フフッ、いつものお礼です」

 

「あいつらも心配してたか?」

 

「…はい。特に黒歌お姉様が。先輩が心配だと行って私に抱きついてきました。早く何とかしてください」

 

「ハハッ、そりゃ後で説教だな。まあその後俺が説教受けるはめになるんだろうが」

 

「…もっと私達を頼ってください、先輩。私達に出来ることがあるなら何でもしますし、相談したいことがあれば相談してください」

 

そう寂しそうに言う小猫。俺はそんな顔をしている小猫の頭に手を置いて、撫でる。

 

「ああ、今度からそうさせてもらうとするさ。心配かけたな。よっしゃ、とりあえず風呂行くぞ」

 

「…はい!」

 

そう言って俺達は風呂に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

が、まさか俺の家族全員が入っておらず一緒にはいるはめになるとは思ってもしなかった。

しかも風呂場で黒歌たちが騒ぐし、止めてくれそうなロスヴァイセや小猫、グレイフィアも乗り気だったし、最後の最後まで騒がしくて疲れた…。

 

でも、疲れたけど……いや、止めておこう俺が変態みたいに思われる。まぁ、その日の夜はぐっすりと眠れたと言っておこう。

 




遅れてしまい申し訳ございませんでした。
代わりと行ってはなんですが、またまたアンケートを実施したいと思います。
詳細は活動報告で。

それとただ今悪維持さんの『ナイトローグ提督とブラッドスターク副官が東都鎮守府に着任しました。』でコラボ中です。
とても面白いのでご覧下さい。
え?お前は書かないのかって?それは後のお楽しみです。

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