『まもなくグレモリー本邸前。グレモリー本邸前。皆さまご乗車ありがとうございました』
「蓮さん、到着しましたよ」
そうアナウンスがされたあとロスヴァイセは蓮を起こす。
「…ん?ああ、あんがと……なんかあったか?」
「いえ、何もありませんでしたよ」
「…そうか。ん?探知機が」
探知機とはこの冥界旅行のために、開発したオルフェノクを探知するための機械だ。どうも冥界では人間界で使っていた探知機の反応が鈍くなるようなので蓮が修正して使えるようにしたのだ。因みにだがこの修正作業、昨日のことである。
「反応があるんですか?」
「ああ、ちょっと反応が弱いから気配を察知できなかったんだろ。時間がかかりそうだ。だから俺だけで行く。お前らはアザゼルかグレモリーの方についていけ。分かったな」
「分かりました。ですが駅の前に人(?)が集まっていますし、どうやって移動するんですか?」
「魔方陣でオートバジンを呼ぶ。あの悪魔の集まりは認識阻害のアイテムでも付けてれば抜けられるだろ」
「…それもそうですね。では私は他のみんなに伝えてきます。頑張ってくださいね」
「おう、行ってくる」
そんな会話をしていると駅についたようで列車が止まった。ドアが開きグレモリー達が降りていく中、認識阻害のアイテムを付けた蓮も降りていった。
蓮は悪魔の集団をスルスルと避けて抜け出し、少し離れた人目につかないところでオートバジンを呼び出し、目的地に走っていった。
数分ぐらいした所で目的地が近くなったので、オートバジンを止め、探知機を見る蓮。しかし、探知機には反応はなく反応があったところが記されているだけだった。
「ちょっと遅かったか」
そう言ってオートバジンを魔方陣で送り返す蓮。仕方がないと思い歩いていると、悪魔混みを見つけた。
「…ちょっとすまん。何があったんだ?」
蓮が近く男性の悪魔に聞いてみると、どうやら子供がホラを吹いているらしい。
「何でも、倒れていた人が灰になったらしい。そんな嘘誰が信じるか、と思ったんだがどうもその女の子必死になって言っていてな。本当か嘘か分からなくてな」
蓮はその話を聞き、ありがとうと言うと、丁度周りの悪魔が居なくなり、泣きそうなその子供に話を聞いてみた。
「…何があったんだ?」
「…お兄さん、誰?」
「いいからさっきの話を聞かせろ」
「!信じてくれるの?」
「内容によってはな」
「うん、分かった話すね!私は家に帰る途中だったはずなの。でも気づいたらこの路地にいて、男の人二人がここで倒れていたの」
そう言って女の子は後ろの路地を指す。
「で、その男の人に大丈夫?って声を掛けたら、目の前で青い火を出して灰になっちゃったの!」
「………」
(やっぱりオルフェノクか…でもなんだってこんな場所で……?)
そう蓮が思っていると女の子が泣きそうになる。
「やっぱり、嘘だって思うよね……でも本当なの!」
「…分かった。信じるよ。灰になった原因を探ろう」
「本当!?」
「ああ、こう見えて俺はこの手の類いの専門家だ。何回も立ち会って解決したことがある」
「本当!?てことはお兄さんは探偵さん?」
「いや、俺は探偵じゃねぇよ。それと俺は乾蓮って言うんだ。お前は?」
「私はシェリーって言うの!人間の血が濃いハーフの悪魔よ!」
(人と悪魔のハーフか。珍しいな)
「じゃあ、早速犯人を探しましょう!蓮お兄さん!」
「おい、待て引っ張るな!」
この時蓮は気づいていなかった。
此方を見て笑っている男の悪魔の視線に。
「蓮お兄さんって人間なの?」
「…人間だよ。おかしいか?」
「おかしくはないけど……どうやってこっちに来たのかなって」
「列車で来た。グレモリーの列車でな。つってもグレモリーとアザゼルに連れてこられただけだが…」
「え!?あのグレモリーの列車で来たの!?いいなー」
二人は犯人を探している最中そんな他愛のない会話をしていた。
そうしていると少女シェリーがふとしたように言う。
「そう言えばさっきから雑談しかしていないけど、犯人の目処は立ってるの?」
「ああ、さっきもいった通り俺は専門家だ。分からないわけがない」
「じゃあ、犯人は何て名前なの?」
蓮は少し悩んだあとこう言った。
「俺がお前に言うとお前も目を付けられるかもしれねぇから言わねぇよ」
蓮は少しでもシェリーを遠ざけようと嘘を言った。
「えーケチ。でも言えないならしかたがないか」
「すまねぇ……ッ!?」
蓮がシェリーに謝ろうとした時、探知機が鳴った。見てみると、すぐ近くいや――
「危ねぇ!!」
シュッ!
「キャッ!」
上だった。
蓮は何とかシェリーを庇い避けた。上から仕掛けてきたサメを模したオルフェノクは姿勢を戻し、此方を見る。
(こいつも前の奴らみたいに洗脳されてやがる……!)
蓮は瞬時に理解する。シェリーは何がなんだか分からないようだ。
「隠れてろ!」「う、うん」
蓮はシェリーが隠れたことを見届ける。
そして、四次元収納ケースからアタッシュケースを出し、中からファイズギアを取り出し、変身する。
「変身!」
『complete』
瞬く間に蓮はファイズへと変身した。
「お、お兄さんは…赤の戦士、だったの………?」
「フッ!」
シェリーはそう呟く。蓮はそう言っているシェリーの事は気にせず、手首をスナップさせシャークオルフェノクに向かっていった。
「ハッ!オラッ!」
ファイズはシャークオルフェノクに打撃を与える。洗脳されているためか避けることはしなかった。
その代わりファイズが攻撃を与えている間にも攻撃を仕掛けてきた。
「チッ!めんどくさいな!!」
そう言ってファイズはオルフェノクから離れようとする。が、オルフェノクは離れたそばから近付いて攻撃を仕掛けてくる。
「離れろよ!オラァ!」
オルフェノクが近づいた瞬間、ファイズは蹴りをいれてオルフェノクを離す。運が良いことに吹っ飛ばれたオルフェノクは蹴りがクリティカルヒットだったのかよろよろと立ち上がる。
「やっと決められる」
そう言って、ファイズポインターにアクションメモリーを取り付け、それを足に取り付ける。
『Ready』
そして、ファイズフォンを開き『ENTER』を押す。
電子音が鳴りベルトから足にかけて赤い光が伝わる。
『EXCEED CHARGE』
「ハッ」
ファイズはジャンプをし、ポインターをオルフェノクに向け、オルフェノクに光を当て矢印を出現させる。
「ハァァァァァァァッ!!」
ファイズはシャークオルフェノクにクリムゾンスマッシュを決める。オルフェノクにΦの文字が出て灰になる。
オルフェノクが灰になったことを確認し、蓮は変身を解除した。
「…ふぅ。もう終わったから出てきてもいいぞ」
そこまでの戦いを見ていたシェリーは興奮していた。
「すごい、あれが赤の、ううん、人間界で噂になってる
シェリーは内心ドキドキしながらファイズの元に走っていった。
「ふーん、あれが赤の戦士の力か♪怖いなー。おじいちゃんを簡単に葬れるんだもん♪まあでもそれを倒すための道具があるんだけどねー♪さて、残り一回は赤の戦士を殺すのに役立って貰いましょーう!」
そう言うその男の手には一本の注射器が握られていた。