夏休み前の会話
「は?夏休みに冥界に行く?」
もうそろそろ夏休みが始まる時期、俺はオカ研の事で小猫に、魔王の力(権力)で違法のような改築をした兵藤家に半ば強制的に連れてこられ、その件の一室では夏休みの予定について話し合っていた。
「ええ。毎年夏休みは冥界に帰省するのよ。と言うことで長期の旅行の準備をしておいてね」
「おおそうか。行ってらっしゃい」
「…蓮先輩も行きましょう」
「ですぅ~」
俺が拒否に近い形を取ると後輩二人が言ってくる。
もうお分かりだろう。小猫とギャスパーだ。
「…けどな、俺が行ってメリットってあるのかよ」
「…行ってみなきゃ分かりません」
「分からないなら家でベルトのメンテとかアイテム作ってたりする方が確実にメリットがある。何よりそっちの方が楽しい…つーか離れろ」
俺はそう言うが二人は離れようとしない。逆にもっと引っ付いてきた。
「…先輩が行くって言うまで離れません」
そこに姫島も加わってきた。
「そうですよ。イキましょうよ乾さん」
「行くの表記がおかしい。普通に旅行だけだよな?」
「さて、どうでしょうか」
「…むう。先輩は渡しません」
「あらあら、正妻の座は私がもらいますわ」
どうすりゃいいんだよ。
「クッソ羨ましいぞォォォこの野郎ォォ!!俺なんか置いていかれるって言うのにィィ!!」
知らんがな。故意にやったわけではない。つまり俺は無罪だ。
「朱乃、離れなさい。それとイッセー、私がイッセーを置いていく訳がないでしょ。大事な眷属なんだから」
お、今神器バカが入ってきた。小猫とギャスパーも感づいたな。二人とも目が動いたし。
俺は二人にバレないように静かにしてろと言うと、二人もバレないように頷いた。
「でも、冥界に行くってなにするんですか?」
「夏休みの間に若手悪魔の会合があるの。それに出席するのが主だわ」
「俺も行くぞ」
とそこで、アザゼルが声を上げる。俺含めた三人以外は驚いていやがる。
「ど、何処から…」
「さっき普通にドアから入ってきたぞ。所詮力不足って言う奴だ。そこら辺もっと鍛えなくちゃな。ま、気付いていて言わなかった奴らも居るようだが」
そう言って此方を見るアザゼル。
「乾はともかくそこの二人にどんな修行させたんだよ。俺の記憶ではそこの二人はこの中でも下の方だったんだが?」
「小猫は仙術の修行、ギャスパーは時間停止の修行をつけただけだ」
「そんだけでここまでになる筈はないんだがなぁ…。まぁ良しとするか」
なんか勝手に頷いて認めていやがる。現実を見ろー。
「で、何でお前は冥界に行くんだよ」
俺がアザゼルに質問すると周りの奴らも頷く。
「それはお前らのレベルアップのためだ。サーゼクスにも頼まれた。つってもそこの二人は必要なさそうだけどな。ついでに乾、お前には来てもらうぞ」
「なんでだよ」
「若手悪魔の会合で何故かお前の話もするらしくてな。まぁ、十中八九いちゃもん付けてお前の持ってるベルトを手に入れたいんだろ。サーゼクスが全部話しても信用しなかったし。それを解らせるために出席してもらう」
はぁ、めんどくさ。これだから頭が固くてボケている老害共は。
「解らせるために何してもいいぞ」
ほう。つまり殺っても大丈夫って事だな。自分のベルトって言い張ってくるうざったい奴らが減ると思えば安い…のか?
「…しゃーねえ、行くか」
「よし、ついでだがギャスパーと小猫の特訓も見てくれ。そこの二人に関しては俺が作ったメニューじゃ特訓にならねーと思うし、何よりいつもやってるんだろ?だったら俺じゃなくお前が適任だ」
「まぁ、そこら辺は了解した。いつも通り稽古つけてやればいいんだな?」
「ああ、頼む。それとその二人以外で受け持ちたい奴はいるか?」
アザゼルにそう言われて、考える。
はっきり言って、グレモリーと兵藤は話を聞かなさそうなので除外。朱乃は……俺魔力使えないし除外。アルジェントも朱乃と同じ理由で除外…いや、アイテムだけは作ってやれるか?木場は軽くアドバイスするだけで上手く昇華してくれるだろう。ゼノヴィアは剣の感じは速さよりも力って言うタイプだと思うし、まだまだ粗削りな部分がある。でも、将来有望だとは思うし…よし、決定。
「アザゼル、ゼノヴィアに稽古付けていいか?」
「分かった。いいなゼノヴィア」
「分かった。よろしく頼む」
「ああ」
「なんで私じゃないんですか?」
と、朱乃が笑顔で言ってきた。笑顔なんだが少し恐ろしいのは何故だろう。
「理由は俺がそもそも魔力使えないんだよ。使えない奴が稽古つけるって言っても特訓にならんだろ。アルジェントとグレモリーも同じだ。て言ってもアルジェントには特訓用のアイテムを渡そうかなとは思っているが」
「じゃあ僕は?」
次に木場が聞いてきた。
「木場はアドバイスするだけで上手く昇華出来るだけの能力が有りそうだったから。アドバイスだけはしてやるよ。因みに兵藤はアザゼルがもっといい特訓方法を考えていそうだから除外した」
「お、分かってんじゃねーか」
「お、お手柔らかにお願いします……」
兵藤はそう言うがこの中で一番弱いのお前だからな?そこら辺理解しとけよ。いつまでもその脳筋でいけると思うなよ?
「んで、若手悪魔の会合は俺も出席するって形なんだよな?」
「ああ。つーかさっき言わなかったか?」
「すまん。少し確認しただけだ。少し良いことを思い付いたからな」
「蓮先輩悪い顔をしていますぅ……」
「…それだけ悪いことを思い付いたんですね」
うるせえ。て言うかいい加減離れてくれ。行くって言ったろうが。
「よし、今日の話し合いは終わりだな。アザゼル、帰っていいか?」
「ああ、いいぞ。それじゃ夏休みはよろしくな」
「ああ。…っとそう言えば」
「ん?」
俺は思い付いた。少し気になっていたのだ。俺と小猫は冥界に行って、他の奴らは家にいるって言うのがちょっと不公平と思っていたのだ。なので、
「俺んちにいる連中も連れていって良いか?」
「んーとそうだな…。まあ、いいんじゃね?」
「軽いな」
「だってな、お前らの家族を見ていなかったら何が起こるか分からねぇからな。近くで見ていた方が安心できる」
今なんか軽くフラグが立ったような……まあいいか。
これであいつらも冥界に行けるから一安心だ。家には認識阻害の装置みたいな物を作って置いときゃいいだろう。家に帰ったら早速作ろう。
…なんかこの夏は嫌な予感しかしないが……。
出来れば当たってほしくないな。
そう思って俺は家に帰った。
しかしこの時の嫌な予感は的中しており、とても面倒くさい夏休みが始まるとは誰も思っていなかった。
今回は短め