俺は今、部室の隣の部屋にいます。
何でかって?それは今からサーゼクスと話すからだ。黒歌関係でな。そのため俺のとなりには黒歌が座っていた。黒歌は静かに座ってうつむいたまま一言も喋らない。まあ当然か。犯罪者にされている奴が魔王に会うんだからな。沈黙して当然か。
………慰めぐらいはしてやるか
「安心しろ黒歌。絶対にお前の無罪を認めさせてやる。ついでに魔王がなんかしてきたら俺がぶっ潰してやるよ」
「蓮……うん、ありがとう」
俺らがそんな言葉を交わしていると部屋の扉が開き魔王が入ってきた。側にはクローディアもいる。
「やあ、乾くん。そちらがはぐれ悪魔黒歌だね」
「よ、よろしくお願いします……」
「よぉ魔王さん。前振りはいらないな。あの時渡した資料読んでくれたか?」
俺は早速本題に入った。
「ああ、あの資料はしっかりと読ませてもらったよ。その資料をもとに黒歌の前の主の事を調べたんだ。そしたら色々と悪いことをしていたようでね。顔だけいい人ぶっていたらしい。その中には黒歌と小猫君のことも書かれていたよ」
「……ッ!」
魔王がそう言った時、黒歌が震える。
俺はそっと肩に手を乗せて落ち着かせた。
「魔王さんよぉ、その話は今の黒歌にとってトラウマ何だ。話さないでくれ。それとさっさと結論を言え」
「…すまない、軽率だった。結論から言うと黒歌のはぐれ悪魔認定は取り消された。でも、王を殺したことには変わりはない。よって黒歌には罰を与える」
魔王は険しい顔つきになってそう言った。
黒歌はその言葉を聞き、「そう、だよね…」と呟く。
俺は魔王に殺気を向ける。
「罰だぁ?前にも言った通り、黒歌の中にある駒は俺が取り除いた。もう悪魔じゃない。つまり悪魔の管轄じゃなく妖怪の管轄なんだよ。それなのに魔王自ら罰を与えるってどう言うことだよ」
魔王はその言葉を聞いたあと険しい顔を緩め、笑顔になったあと、肩をすくめて言った。
「そうなんだよね。もう黒歌は悪魔じゃないからどうしようか悩んだんだけど、黒歌君には一生乾君の側から離れてはいけないと言う罰を与えようか。勿論限度は有るけどね」
その事を聞いて俺と黒歌はポカンとした。
それって端的に言うと……、
「お咎め無しってことか?」
「まあ、そう言うことだね。根本的に悪いのは
魔王は笑いながらそう言った。
俺は理解できたが黒歌は今だに混乱していた。
「な、何で…」
「いや、さっきも言った通り、黒歌君はもう妖怪だ。此方からはなにも言えない。それともう一つ言うと乾君とその家族を敵に回したくないんだ。もう半分以上はそれだね」
まあ、そうだろうな。俺達を敵に回したら悪魔滅ぶもんな。
「という事で話し合いは終わりでいいかな。それでは…っと忘れていた。乾君」
「何だ」
「私の妹とその眷属の一人がすまないことをしたね。しっかりと言い付けておくよ」
「ああ、よろしく頼む」
「では、今度こそ私は退出するよ。それではね。」
そう言って魔王とクローディアは出ていった。
出ていったあと、黒歌は泣きながら俺に抱き付いてきた。
「良かった…!私、蓮の側に居られるんだにゃ……!」
「ああ、良かったな、黒歌」
「うん…!」
こうして黒歌に付いていた不名誉な称号は剥奪され、ただの小猫の姉の黒歌になった。
《黒歌side》
「さてと、はぐれ悪魔の称号も剥奪されたし私は自由になったにゃ!これからは堂々と街中を歩けるにゃ!」
「そうだな」
家に帰る途中私はそう言った。まあ、いっつも認識阻害のアイテムをつけて猫の姿で外に出ていたけど。それでも人形で出歩けるのはうれしい。
「これで、蓮をホテルに堂々と連れ込んで……にゃふふふふ…」
私はそんな事を言ってみたが蓮は反応しなかった。つまらないにゃー。
「あ、てことはもう認識阻害のあの首輪要らねえな。返してくれ」
いきなり蓮がそう言った。
「いやにゃ!」
「何でだよ。理由があるならちゃんとした理由を言えよ」
「それはね……これを着けていたら雌奴隷みたいだからにゃ」
「ちゃんとした理由って言ったろうが」
蓮は私を掌で叩いた。
「にゃッ!!失敬な!これはちゃんとした理由にゃ!」
そういう私に今度は無言で拳を与える蓮。
「痛いにゃ!酷いにゃ!」
「お前がちゃんとした理由を話さないからだ。…もういいや。その首輪はお前にやるよ」
「ありがとうにゃ!」
本当はね少しでも多く蓮との関わりのあるものを持っていたいって理由だけど、こんなこと言えるわけ無いわよねー。恥ずかしくって口どもっちゃうにゃ。
蓮は私の考えていることが分からないのか頭に?が浮かんでいた。
「?おら、置いてくぞ」
「あ、待ってにゃー」
蓮。私がこんな風に会話出来るのは全部蓮のお陰にゃ。
ありがとうね、蓮。そしてこれからも末永くお願いしますにゃ。
そう思い私は蓮の腕に抱きついた。
「…黒歌、歩きづらいから離れろ」
「いいじゃん、こんな時ぐらい」
「…しゃーねえ。今日だけだぞ」
そう言ってくれたので私はそのまま腕に抱きついた状態で家に帰った。
ここまで来たんだ。絶対に蓮の正妻戦争に勝ってやるにゃ!
蓮の家の中では知らぬまに戦場が出来ているらしかった。
《黒歌side out》
《第三者視点》
ここはオカルト研究部の部室。その部屋には一誠とリアス、サーゼクスがいた。その隣にはいつも通りクローディアが立っている。
「さて、二人とも僕が何故呼んだか分かるかい?」
「……いえ」
一誠は喋らず、リアスは小さい声で返事をした。
「それは、二人が乾君に迷惑をかけているからだ」
「は!?俺と部長は乾に迷惑なんか掛けていませんよ!」
「そうです!私が迷惑をかけている筈が「無いと言えるのかい?」…ッ!はい…」
一誠とリアスはそう言うが途中でサーゼクスがその言葉を遮る。
サーゼクスはその答えを聞いたあとため息を吐いた。
「君達はやっていないと言うのなら、無自覚で迷惑をかけているんだ。そこはすぐに直した方がいい。まずイッセー君は会談で時を止められた時、止められない力を持っているにも関わらずギャスパー君に止められてしまった。それはギャスパー君が強くなったと同時に、君が弱いと言う証拠なんだ。リアスも同じだ。消滅の魔力を上手く使えていれば瞬時に対応し動けていた筈だ。なのに動けなかった。それもまた実力が足りていない証拠だ。さて、それを踏まえて言うと君達の中でも下の方にランク付けされていた小猫君は動けていた。もう言いたいことは分かるね?」
「つまり、小猫が私たちより上になっていた…と言うことですか?」
「ああ。小猫君は乾君の家族に稽古をつけてもらい、黒歌君に仙術を教えてもらっていた。恐らく、君達ではもう勝てないだろう」
サーゼクスが言った言葉に二人は驚き、そして反論する。
「そんなのやってみないと分からないじゃないですか!」
「そうよ!」
「いや、これは経験に基づいて言っているだけだよ二人とも。小猫君に稽古をつけているのはあの赤の戦士とされる乾君の家族だ。生半可な特訓ではないだろう。それにギャスパー君もそこで特訓して制御がだいぶ上手くなったと言っているしね」
「「………ッ!」」
「さて、君達はどう思った?」
サーゼクスが笑顔で聞いてくるが、笑顔なのに恐怖が感じられた表情だった。
「…私は、もっと強くならなければと思いました……」
「…俺もです。正直甘かったと思っています」
「うん、それが分かっただけ良しとしよう。取り合えず本題に戻ると乾君に迷惑をかけない。眷属のレベルアップをしてもらっているんだからね。それともう一つは実力をつけること。はっきり言って戦場ではすぐに死んでしまいそうなレベルだからね。じゃあ忠告はしたから。どうするかは君達次第だよ。それじゃあ」
そう言ってサーゼクスは出ていった。
部室には二人だけが残っており、これからどうするかを考えていた。
《第三者視点 out》