ハイスクールD×555   作:白尾芯

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引きこもりの吸血鬼

「いい加減出てきたらどうだ」

 

俺は今、keep outと書かれたテープの付いている扉の前でそんな事をいっていた。

その場所は学園の旧校舎。そして、この扉の向こうがギャスパーが暮らしている。この言葉から察してくれれば分かるだろう。そう、今ギャスパーが引きこもっているのだ。答えは単純、兵藤がやらかした。

この事は小猫から伝えられた。

 

 

 

 

「…蓮先輩、ギャー君を立ち直らせてください」

 

「待て、何があったか説明しろ」

 

「…実は……」

 

話を聞くと兵藤がギャスパーと一緒に契約を取りに行ったらしい。人見知りを直すには丁度いいだろう。しかし、ここからが問題だった。

どうも兵藤は変人・変態に好かれる体質らしく今回も変態だったらしい。しかも男の娘好きと言うギャスパーと相性最悪の客だった。

結果、ギャスパーを見て舞い上がった客がギャスパーに襲いかかりギャスパーは怯えて時を止める。

んで、時を止めたことの罪悪感と人に対する恐怖心が合わさって引きこもってしまったらしい。

 

「何で、そんな奴に任せたんだよ…」

 

「…兵藤先輩が提案したので部長が兵藤先輩に任せたんです。因みに今は兵藤先輩が説得しています」

 

「ああ、そうだった。お前の王も馬鹿だった……」

 

俺はあの馬鹿二人をどうしようか、と考えていると小猫は心配そうにこちらを見つめてくる。

 

「まぁ、俺も特訓に付き合うって言ったしな。何とかしてみる」

 

「…お願いします、先輩」

 

 

 

 

と、こんな感じで俺が説得を受け持った。兵藤?邪魔だからどっか行ってもらった。ついでにギャスパーは兵藤を警戒してしまっている。

 

「おい、出てこい。特訓するぞ」

 

「い、イヤですぅぅぅ!もう外に出たくありませんんんん!」

 

こりゃ大分重症だな。どうするか……。

にしても何で俺こんなにこいつのこと気にかけてんだ?接点も無いのに。何だろうなこいつの感じ、どっかで…………あ、そうだ思い出した。

転生前にいた妹だ。そうだったあいつ俺にいっつも引っ付いてたな。人見知りだったし。俺が二十歳になって、一人暮らししようとしたらあいつも付いていくとか言ってたっけ。懐かしい。

…………何か思い出してくると拳骨ばかりしている記憶が多いぞ。何でだ?

そう思っているとギャスパーが抗議してくる。

 

「…もうイヤです。自分の神器が勝手に動くせいで他人が止まってしまうのを見るのは…。自分の人見知りの性格もイヤです。もう迷惑なんてかけたくありません。ですから…もうここから出たくありません……」

 

そう言って静かになる。そうか、この力に恐怖するのは俺に似ているんだ。最初の頃の俺に……。

 

「なぁ、今からちょっと話をしようか」

 

そう言うが、ギャスパーからの返事はない。まぁ、そりゃそうか。俺は扉の前に座って扉の方に向いて喋り始める。

 

「俺はさ、このファイズの力を手に入れた時、怖かったんだ。親父が命をかけて取り返してくれたこのベルト、それを取り返した親父は家に帰ると、灰になって死んだ」

 

「!!」

 

「そんだけ凄まじい戦いだったんだろうよ。ここだけの話、親父はオルフェノクだった。だけど死んだ。じゃあ、俺は?ただの人間である俺は簡単に死ぬのか?そう思ったし、このベルトの使い方を間違えると人を殺す兵器になる。それも怖かった」

 

「じゃあ、どうやってその力を?」

 

お、食いついてきた。

 

「ただひたすら特訓しただけだ」

 

「え、それだけ?」

 

「それだけだ。特訓してベルトの力と使い方を勉強する。そして体に馴染ませる。そうすることで人を傷つけず、逆に助けられるように使えるようにした」

 

「恐怖は無かったんですか?それと、戦闘とか…」

 

「あったよ。でも、それも克服した。恐怖とかあっても邪魔だしな。だって手が届くのに手を伸ばさなかったら死ぬほど後悔しちまう。だから手を伸ばす。目の前の命を助けるのに恐怖なんてあったら助けれないからな、手を伸ばして救えるなら安いもんだ」

 

「…恐怖を克服するなんて……強いんですね、先輩は…」

 

「いや、弱いさ。人間誰しも強い奴なんていない。全員が恐怖を持っている。でも、その恐怖を分かろうとするかで人は強くなれる…と、俺は思う。俺はお前も充分強いと思う」

 

「え?」

 

「だって自分の恐怖と弱点が分かってんだろ。他の人はその二つが分からないくせに自分は強いと思ってるんだ。少なくともそんな見栄だけの奴よりお前は強い」

 

だってそうだろ?自分の恐怖心が分からずに強いと思っている奴は大事なところで恐怖し負ける。んで、強いと思っていた奴は、心に大きなキズをつけてしまってトラウマになる。

分かっていれば少なくともトラウマになることは無いだろう。他の事は知らんが。

 

「それとお前は間違っている」

 

「!」

 

「時を止めてしまって恐い?だったら特訓してそう言うのをなくして勝手に発動しないようにしないようにしろ。人見知りだからじゃねーよだったら人に馴れろ。俺とか小猫はとことん付き合ってやるよ。だから出てこい。んで、俺らに迷惑をかけろ。その度にちゃんと指摘してやる」

 

そう言って十秒ほど待つと、扉が開いた。

 

「…指摘は恐いですけど、何とか頑張りますぅぅ……」

「よし、言ったな。覚悟しとけよ。何とかしてお前の神器、扱えるようにしてやる」

 

「お、お願いしますぅぅぅ!と、ところで僕の神器って何か助けることに使えますか?」

 

「うーん、例えばトラックに轢かれそうな子供がいたとする。その時お前が時間を止めて子供を助ければその子の命を助けれたってことになら無いか?」

 

「な、成る程…。そう言う使い方もあるんですね。考えても見ませんでした」

 

まぁ、さっきまでは恐怖と不安の方が強かったからな。しょうがないだろう。

さて、もういいかな。

 

「出てこい馬鹿ども」

 

そう言うと木場と兵藤が物陰から出てくる。兵藤が出てくると俺の後ろにギャスパーが隠れる。

 

「な、何でわかったんだよ…」

 

「ははは、ごめんね」

 

「おい、ごめんねじゃねーんだよ。人の言うことぐらい聞け。特に兵藤、お前の頭はサル以下なんだ。もっと頭をよくしろ」

 

「おいそれ酷くないか!」

 

「まあまあ。ところでイッセー君。イッセー君ならギャスパー君の神器でどういう使い方を考える?」

 

「そうだな…俺だったら…」

 

あ、こいつ変なこと考えてるな。殴る準備をしておこう。

 

「まずギャスパーが時を止めて、俺が女子の胸を揉むこれでどうだ!」

 

「ふーん、で、俺と木場は?」

 

「乾と木場は俺の護衛だ!いつ敵が来るかわかんねーしな!バカだなーそんな事も分からぐぺぇ!」

 

「バカはテメーだ!!」

 

そう言って俺は拳を兵藤にぶつける。案の定兵藤はろくなことを考えていなかった。

 

「こんな奴放っておいて、特訓しにいくぞギャスパー」

 

「は、はいですぅぅぅ」

 

そう言ってグラウンドへ行く。

 

「ま、待ってくれ!ちょっとエロ談義でも…!」

 

「今回は僕も庇えないよイッセー君…」

 

後ろからはこんな声が聞こえたが無視した。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、その日から本格的に特訓に入った訳だが、ギャスパーは結構筋がよく、時間を止めるのも馴れてきていた。たまに、匙も手伝ってくれて結構スムーズに自分の神器を使いこなせるようになっている。

因みに俺の家でも特訓させているためもう俺の家のやつらとは知り合いになった。あ、アイテムはちゃんと渡しましたよ。名前呼びも許可した。

 

そして今日は休日、俺と小猫とギャスパーはデパートを歩いていた。

 

「ひぃぃぃ、人がいっぱいですぅぅ!」

 

「そりゃそうだろ、休日だしな」

 

「…これを期にギャー君も人に慣れよう」

 

「わ、分かりましたぁぁぁ……」

 

そう、俺達がデパートに来ている理由はギャスパーの人見知りをなくすためだ。こう人が多ければ少しはましになるだろうと考えた訳だ。

 

「まぁ、買い物の目的もあるからな。今日一日はよろしく」

 

「よろしくお願いしますぅぅぅ」

 

「…はい、お願いします」

 

そんな感じで買い物が始まったのだが、ギャスパーが女物の服を選んでいるのは馴染みすぎて違和感がなかった。違和感仕事しろ。

小猫は小猫で何かアイスクリームとか団子とか買いまくってたし、結構自由だった。

俺はと言うとその二人をまとめあげている感じだった。

 

 

「どうだったデパートは」

 

「とっても楽しかったです!」

 

そうか、楽しかったか。

 

「楽しかったか。じゃあ、今は回りに人がいるわけだがどうだ?来たときみたいな感じはするか?」

 

「あ、そう言えば…」

 

「ギャスパー、これで分かったろ。世の中には悪い人ばっかじゃないってな」

 

「は、はい」

 

うん、俺も買い物できたし、こいつも進歩したし、良しとしよう。

 

「よし、今日の特訓終わり!帰るぞ」

 

「…ギャー君また明日」

 

「あ、ありがとうございました!蓮先輩!小猫ちゃん!」

 

そう言って俺たちは別れた。

 

家に帰り今日の事を話したら

 

「いいお父さんでしたね、蓮様」

「お父さんですね蓮さんは」

「お父さん、次は私もいきたいにゃ」

「オーフィスちゃん、今度から蓮の事をお父さんって呼んであげましょう」

「ん、蓮、お父さん?」

「お父さん役、お疲れさまでした」

 

口を揃えてこう言った。誰がお父さんだ、誰が。




個別にメールで蓮のハーレム要員を増やしてほしいと言うのが来たのでアンケートを取りたいと思います。詳しくは活動報告で。

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