ハイスクールD×555   作:白尾芯

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新たな眷属と蓮の怒り

《蓮side》

 

真夜中、俺は今学校に来ている。

理由はと言うと昨日、授業参観が終わった次の日の夜、家にて小猫に言われたのが原因だ。

 

 

 

「…蓮先輩、今日封印されていたされていたうちの眷属の一人が魔王様に許可をいただき解禁されました」

 

と、こんな風に話し始めた

 

「何だよその封印とか解禁とか物騒な言葉は。で、それがどうした?」

 

「…その子、神器を持っているんですが暴走してしまうため、明日から特訓することになったんです。で、その子を紹介しようと思いますので来てくれませんか?」

 

「俺に得が無くないか?それ」

 

「…実はその子が持っている神器が時間停止の能力でして……」

 

俺を実験、開発好きと知っているからそんな事を言っているな。まぁ、行かねー……。

 

「……気になるから見に行く。けど、自分の気まぐれで行くからな」

 

でもやっぱり時間停止ってのは気になるから見に行くことにした。俺ってこんなに釣られやすかったか?

 

「…はい、よろしくお願いします。」

 

 

 

と、そんな事があって冒頭に戻る。

そんな事を思っていると、手にスコップを持った匙がやって来る。

 

「よぉ、匙」

 

「ああ、お前か。てかなんでいるの?今夜中だぞ」

 

「いや、小猫に昨日から解禁された眷属の特訓があるって聞いてな。気になったから見に来ただけだ。んで匙は?」

 

「俺は会長に言われて花壇の整備をしてる。今度会談があるからな、今以上に綺麗にしねーと。他の眷属もそれぞれ準備してる」

 

へー頑張ってんだな。グレモリーは今頃魔王様に校内案内か説明会あたりか?眷属は特訓してるし、シトリー眷属は会談の準備してんのになにやってんだか。まあそれも重要だとは思うが

 

「そうかよ。まぁ頑張れよ。あ、あと生徒会長に向けてだが、お疲れって伝言言っといてくれ。あの人、大分苦労してるようだから。じゃ、俺はグラウンドに行くから」

 

そう言うと匙は苦笑いをする。どうも匙も会長が苦労している事がよく分かるようだ。

 

「………ああ、伝えとくよ。って、俺もそこの花壇に用があるから、一緒に行くぞ」

 

そう言って、俺と匙はグラウンドに向かった。

 

 

 

 

グラウンドに着くと何やら女みたいな男が聖剣を持ったゼノヴィアとにんにくを持った小猫に追いかけられている不思議な光景を目の当たりにした。

兵藤は芝生の上でボーッとその光景を眺めていた。目茶苦茶アホ面だ。

そこで匙が兵藤に話しかける。

 

「よー兵藤、これどんな状況だよ…」

 

「よー匙って、何で乾も居るんだよ!」

 

「居ちゃ悪いか。俺は小猫に呼ばれてきたんだよ。あと名前で呼ぶな。いい加減学習しろ」

 

そう言うと兵藤は「いや、居ちゃ悪いって事はないけど…」と言った。

 

「そ、それより今の状況だったよな。えーっと今は」

 

どうも追いかけられている奴の精神力と体力を付ける特訓のようだ。馬鹿だ。

 

「で、昨日解放されたのがその追いかけられている奴」

 

「うおぉぉぉ!金髪美少女!」

 

匙が何か言っているが俺はそこに現実を突きつける。

 

「あいつ、男だぞ」

 

「え!?お前見ただけでわかんの!?」

 

「嘘だろ…あいつ、男なのかよ…」

 

そう言って兵藤は驚き、匙は膝をついた。兵藤は匙に近付いて慰めていた。

 

「現実は辛いな」

 

「そうだな…」

 

馬鹿供が…。そうしているとグラウンドを走っていた三人が帰って来た。

 

「…先輩来てくれたんですね」

 

「む、君も来ていたのか」

 

「ふえぇぇ、誰ですかこの人ぉぉぉ…」

 

「…紹介します。この子が昨日解禁された眷属、ギャスパー君です。極度の人見知りで封印と言う名の引きこもりでした。で、こっちが度々助けてくれる協力者の蓮先輩です。この人は名前で呼ばないように気を付けてください」

 

「ギャ、ギャスパー・ヴラディ…です。よ、よろしくお願いしますぅぅぅ」

 

そう言われギャスパーは涙目で自己紹介する。と言うか紹介のしかた、それで良いのか。

 

「ああ、紹介された乾 蓮だ。小猫が言ったように名前で呼ぶなよ。お前とかだったらいいからな」

 

「わ、分かりました。先輩でいいですか?」

 

「OK、それでいい。どうやら兵藤よりも頭はいいようだな」

 

「おい、それひどくねーか!?」

 

兵藤が何か言っているが気にしない。っとそれより、本題に入ろう。

 

「あー、聞いていると思うが俺はお前らで言う赤の戦士だ」

 

「え!?そうなんですか!?ホントですか!?サインください!」

 

お、おう…。どうしちゃったのこの子

 

「実は、ギャスパー君、先輩の変身するファイズの大ファンだそうで、はじめて話したときもこんな感じでした」

 

「そ、そうか。あ、後でサインでもなんでもやるからちょっと能力とか色々調べさせてくれ」

 

「あ、はい!分かりました!」

 

「すげぇ、あの乾がたじろってる」

 

うるせーよ兵藤。だまってろ

 

「おーやってるな」

 

と、そこで昨日知り合った奴がやって来る。

 

「えーっとあんたは…?」

 

「ッ!アザゼル!」

 

「ひょ、兵藤!アザゼルってまさか!」

 

「ああ、堕天使の総督で、俺に正体を隠して近づいてきた奴だ!」

 

そう言って兵藤は臨戦態勢に入る。そしてその言葉を聞いたゼノヴィアと匙も臨戦態勢に入る。馬鹿だろ、勝ち目ないぞ。ギャスパーは俺の後ろに隠れた。

 

「やめとけやめとけ。お前らじゃ勝てねーよ。戦うきもねーし。ま、そこにいる赤の戦士ならどうなるか…いや、本気でこられたら確実にこっちが負けるな…」

 

「ああ、そうだな。ところでおっさんは何しに来たんだ?」

 

「おっさんってお前…。まあ、簡単に言うと聖魔剣使いに会いに来たんだが」

 

「木場なら今は部長と一緒に魔王様の所にいるぞ!」

 

「あちゃー、サーゼクスの野郎に先を越されたか。まぁいいかこっちには赤の戦士と、そっちは【停止世界の邪眼(フォービトウン・バロール・ビュー)】の持ち主か」

 

「だから、赤の戦士と呼ぶんじゃねーよ。今ならファイズの状態で戦えるぞ」

 

「おー怖、さすがに赤の戦士と戦うのはごめんだ。さて、制御できてないお前に助言してやる。制御できる方法を、な」

 

「そんじゃあ早く教えろよ」

 

「そう焦るなよ。まあ、簡単に言えば赤龍帝の血を飲むこと、又は有り余っている魔力を出すことだ。おいそこの奴!」

 

「は、はい!」

 

そう言ってアザゼルは匙に声をかける。匙はビク付いている。緊張しているようだ。

 

「お前、【黒い龍脈(アブソーション・ライン)】の持ち主だろ。その神器は黒いラインで他者から力を吸いとれるんだ」

 

「お、俺の神器にそんな能力が…」

 

「かーっダメだねー今の神器使いは。まあ、それを使って吸い取りながら特訓してみろ。でも、本当に手っ取り早いのは赤龍帝の血を飲ませることだが…」

 

アザゼルがチラッとギャスパーの方を見ると、ギャスパーは勢いよく首を横にふる。

 

「血、嫌ですぅぅぅ!生臭いの嫌いですぅぅぅ!」

 

「まぁ、こんなんだから。教えたからな、有効に使えよ。じゃあまた会談で会おうぜ」

 

そう言ってアザゼルは帰って行った。

さてと、俺も変身するか。

そう思ってギアを取り出し、ファイズに変身するとギャスパーがキラキラした目でこちらを見てくる。匙はこっちを見て驚いている。

 

「すごいですぅぅぅ!かっこいいですぅぅぅ!」

 

「まじかよ…変身しやがった…」

 

「よし、じゃあ神器発動してみろ」

 

そう言った途端、ギャスパーの雰囲気が一気に元の気弱な感じに戻る。

 

「え、でも…」

 

「いいからやってみろ」

 

「は、はい。止まれ!」

 

ギャスパーがそう言った途端、辺りが灰色になる。周りを見るとまったく動いていない。いや、ギャスパーだけは動いていた。

 

「な、何で動けるんですかぁぁぁぁ!?」

 

「多分、力量の差と言うかこの姿のお陰だと思う」

 

俺は機材をセットしながらそう言う。良かった俺が触れていれば測定器は止まらないようだ。

ギャスパーはそのことを聞き返してくる。

 

「力量とその鎧のお陰?」

 

「ああ、そもそもこのスーツ自体、赤龍帝に簡単に勝てるようなレベルのものなんだ。赤龍帝ドライグはお前じゃ止められないだろ」

 

「は、はい。強すぎて止められません。でも、それなら納得できます。つまり先輩は赤龍帝ドライグよりも強いってことですね」

 

「そう言うことだ」

 

その後軽く雑談をしていると丁度測定が終わったようだ。

 

「…っと、すまねぇな。もう解除していいぞ」

 

「は、はい」

 

そう言ってギャスパーは神器を使うのをやめる。すると回りも動き出す。

 

「と言うことで俺には時間停止が効かないから練習するときは手伝ってやるよ」

 

「あ、ありがとうございますぅぅぅ」

 

「ん?お前いつのまにそんな機材なんか出した?」

 

停止が解除された匙が聞いてくる。

 

「ん?ああ、停止しているときに取り出した。どうも変身した時はギャスパーの停止は効かないらしい」

 

俺はそう言って変身を解除する。

 

「へぇ~」

 

「…なぁ乾、俺にもそのベルト貸してくれよ」

 

いきなり兵藤がそんな事を言ってくる。

 

「…何でだよ」

 

「変身してみたいんだよ、お前みたいに。そうすれば俺もギャスパーを手伝ってやれるし」

 

そう考えるのはお前の美点だと思う。が、

 

「…はっきり言う。お前じゃ変身出来ない」

 

「そんな事やってみなきゃわかんねーだろ!」

 

「前の話、聞いてたか?オルフェノクの記号がねーと変身出来ないんだよっておい!」

 

そう言ったが、兵藤は俺からベルトを奪って腰に巻く。

そして、ファイズフォンで『5・5・5』『ENTER』と押し、構えた。

 

「おい、やめろ!!」

 

「変身!」

 

 

《蓮side out》

 

 

 

《第三者視点》

 

「おい、やめろ!!」

 

そう言って蓮が止めようとするも一誠にやめる気配はない。

 

「変身!」

 

そう言って一誠はベルトにファイズフォンを挿したが、次の瞬間、

 

『ERROR』

 

「ぐわぁっ!!」

 

エラーと音が鳴り兵藤の腰からベルトが弾け飛ぶ。

兵藤は衝撃に耐えられず吹っ飛ばされる。

 

「な、何で…!」

 

そう言う兵藤に蓮は近付いて、胸ぐらを掴む。

その顔は今までと比べ物にならないほどの形相だった。

 

「だから言っただろ…!変身できねぇってな…!」

 

「な、何だよ!ただ、試しただけだろ!」

 

一誠がそう抗議すると蓮の顔はもっと険しくなる。

 

「ただ試しただけ…だと…!てめぇ今回はこのベルトで助かったから良かったものの他のベルトだったら死んでたぞ!!そんだけ危険なものなんだよ!!そのことを分かってんのか!!ああ!?」

 

「は…?死ぬ…?」

 

兵藤は蓮の喋った内容に疑問を持った。

 

「ッ!チッ!喋り過ぎた。この話はまた会談の時だ。小猫、俺は先帰ってる」

 

そう言って蓮はファイズギアをアタッシュケースにいれて去っていった。

 

「な、何だったんだよ………」

 

一誠は呆然としていた。

そこに小猫が近寄ってこう言った。

 

「…イッセー先輩、一回本当に死んできてください。それで、何で蓮先輩の言う事を聞かなかったんですか。恐らくこの中で誰よりもベルトの事を理解している先輩の話を何で聞かなかったんですか?」

 

そう言われて一誠は少し考えた後こう言う。

 

「いや、あいつが他にベルトを使わせたくないだけで嘘ついてる可能性があるんじゃないかって思ったのと、自分がもてはやされたいから使わせないんじゃないかなって思ったから……小猫ちゃん?」

 

小猫はそのことを聞いた瞬間、見下したような目で一誠を見る。

 

「…名前でよばないでください、兵藤先輩。もう本当に死んできてください。と言うか死んでください、変態馬鹿先輩」

 

そう言って小猫は一誠に蹴りをいれて帰って行った。

 

「まぁ、確かに今回はイッセーが悪いな」

 

「そうだな。兵藤、謝っとけよ」

 

「イッセー先輩、常識もってくださいですぅぅぅぅ」

 

そう言って他の三人もそこを後にした。

 

「な、何だよみんな。俺が悪いみたいな言い方して。気になったんだからしょうがねーだろ……」

 

兵藤は起き上がりそこに一人取り残されてそんな事を口にした。

 

《第三者視点 out》

 

《蓮side》

 

俺は学校から帰宅していた。

少し熱くなりすぎたかなと思うがあれは本当に危険な行為だ。あんだけ言えばもうやらねーだろ。

 

「…蓮先輩」

 

「ん、ああ、小猫か。すまん。怖がらせちまったか?」

 

「…いえ、あれは兵藤先輩が悪いので」

 

ん?今兵藤先輩って言ったか?さっきまではイッセー先輩だったのに。

 

「…それよりさっきの死ぬとは…?」

 

「ああ、それな。それは…まぁいいか。他の人に言わないなら言ってもいいぞ」

 

「…分かりました。言いませんので、早く言ってください」

 

「…それはな、教会に行った時に変身していたあの黄の戦士――カイザって言うんだが、記号を持ってないと変身しただけで…灰になる」

 

「…………え?」

 

俺がそう言うとその言葉に驚く小猫。そりゃそうだよな。ベルト着けて変身しただけで死ぬんだもんな。驚かない方がおかしいよな。

 

「そして、橙の戦士――デルタのベルトは変身したら凶暴化、暴走し、はぐれ悪魔として討伐されるだろうよ」

 

「………だから兵藤先輩が着けたとき、あんなに怒ったんですね」

 

小猫はそう言うが、そらそうだと言うしかない。さすがに目の前で灰になったりされるのは困るからな。

 

「まぁ、そうだな。今回はセーフティーがあるファイズだけだったから良かったものの。他のベルトだったら死んでいた。さてと、説明終わり。帰って寝るぞ」

 

「…はい。あ、今日は一緒に寝て良いですか?」

 

「ダメだ」

 

そんな事を言いながら二人で家に帰った。

追伸・小猫が家に帰ってもそんな事を言うもんだから全員で寝ることになった。どうしてこうなった。


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