「で、何が聞きたいんだ」
コカビエルを倒した次の日の放課後。
俺はオカルト研究部の部室に招かれていた。
目の前にはグレモリーが睨んでいるし、姫島朱乃はニコニコしながらお茶を出してきた。
「全てよ。あなたの知っていること全部話してもらうわ」
その研究部の部長、リアス・グレモリーがそう言う。
「無理だな」
「…何故?」
「俺の知っていることはお前に話したところで役者不足だ。つまり、魔王も知らないような重要機密を俺は知っている」
「そんな事があるはずが……!」
「あるんだよ。最もお前に話したところで、俺はなにもさせないし、させる気もない」
俺がそう言いきるとグレモリーは悔しそうな顔だったが大人しく退いてくれた。
「……分かったわ。じゃあ、話せる範囲で話してちょうだい」
「ああ」
俺はそう返事すると色々と隠しながら喋った。
「俺はお前らが知っている通り、赤の戦士だ。まあ、正式名称はファイズだが」
「なぜあなたがそれを持っているの?そのベルトは魔王様が持っているはずよ」
「その話はノーコメントだ。さて、俺はそのファイズのベルト――ファイズギアって言うんだがそれを使って俺は変身し、戦っていた。まぁ、今回の事件の発端のコカビエルには過剰戦力だったが」
そこで兵藤が口を開ける
「何であんなの相手に過剰戦力って言えるんだよ」
「…まぁこれなら大丈夫か。元々ファイズギアってのはオルフェノク――お前らが灰色の英雄って呼んでいる奴らを殺すための武器なんだよ。今はそう頻繁にオルフェノクと戦うことは無いけどな。その代わりと言ってはなんだが、はぐれ悪魔と戦う時に使う程度だ」
「元々が灰色の英雄を殺す…ため?」
「今は暴走したオルフェノクにしか使ってない」
「そのオルフェノクって言うのはどうやって生まれるのかしら」
「それもノーコメントだ。それとファイズギアはオルフェノク、またはそれに近い人しか変身できない」
「じゃあ、お前はオルフェノクって言う奴なのかよ!」
「話をよく聞けこの馬鹿。オルフェノクってのは体内にオルフェノクの記号って言う文字を持っている。まぁ所詮、人で言う魂みたいなものだ。それが変身できる条件。俺はその記号を持っているからファイズに変身できる。お前らじゃ変身して戦うどころか変身すら出来ないんだよ」
「嘘はつかないで!魔王様は変身できていたわ!」
「だから、その話はノーコメントだって言ってんだろ。ついでに補足しておくが、お前ら三大勢力に渡ったベルト―――ライダーズギアって言うんだが六本ともオルフェノクの記号がないと使えないぞ。俺から言えるのはそんだけだ」
俺は一割嘘、二割本当、七割隠蔽の割合で話を終えた。
「なぁ、さっきから我慢していたけどさ」
話が終わった後そう兵藤が言う。
「何だ?まだ言いたいことあるのか」
「ああ、あるよ!何でお前は小猫ちゃんを膝の上に乗せてるんだよ!!」
「しゃーねーだろ、乗ってきたんだから。それに昼は今はいつもこんな感じだぞ」
「…はい。いつも通りです」
そう、いつも通りなのだが、今回はいつのまにか乗っていたのである。
なんかスキンシップが過剰になっているように感じるのは俺だけか。
「あらあら、私は隣に座りたいのですが…」
「朱乃はだめよ」
「まぁ、仕方ないですわね」
なぜか落ち込んだように言う朱乃。
俺、昔助けただけなんだけどな。
「クッソォォォ!小猫ちゃんだけじゃなく、朱乃さんまでも落としてるなんて、羨まし過ぎるぞこのヤロォォォォ!!」
俺は無意識だったんだがな。
いつの間にかこうなってた。
「そう言えば、あなたはSS級はぐれ悪魔黒歌と一緒にいたけどどう言う「ノーコメント」……」
「言って大丈夫のなのは黒歌の妹である小猫だけだ。小猫の場合は会わすことも考えるが、お前らは駄目だ」
家族の事は家族で解決すべきだろう。そう思っての発言だが、グレモリーは、
「何でかしら?私は小猫の王なのよ。眷属のことを知らなければならないのよ!」
「小猫の家族関係の問題でもか?」
「ええ、そうよ。私は知っても良いはず――「ふざけんじゃねぇぞ」――ッ!」
俺はグレモリーの身勝手な言動に腹が立ち、ドスの効いた声で言う。
「あのなぁ、これは黒歌と小猫の問題なんだよ。二人だけの家族なんだ。そんなシビアなところに小猫の王ってだけのお前が入れる訳がねえだろ。これは身内の、家族の姉妹の問題なんだ」
そう言って小猫を見ると、小猫はこっちを見て小さく、
「…ありがとう、ございます」
と言った。
「ッ!…確かに、これは小猫の問題よ。でも眷属の問題は王の問題でもあるの。これは退けないわ!」
「何も分かってない奴が首を突っ込むな」
「なっ!」
「いいか、お前は小猫の気持ちを分かってるのか?分かっていてその発言なら少しは考えたが、お前は何も分かっちゃい無い。どれだけこいつが悲しかったのかすらもな。そんな奴がこいつの王を名乗って良いはずがない」
俺がそう言うと小猫はこっちを見ていた。俺はその頭を撫でてやる。小猫は嬉しそうに背中を俺に預けて来た。
グレモリーはそれを見て、少し考えた後こう言った。
「………………そう、ね。私は首を突っ込んじゃいけないわね」
どうやら自分がどれだけ無力なのかやっと分かったようだ。
よかった。これで安心して小猫にあのメモを渡せる。
「小猫。これを渡しておく」
「……?これは?」
「俺の住所と電話番号。それとそのメモはなくすなよ。認識阻害の結界を通れなくなるぞ。家に来るときはそれを持ってきな。歓迎してやる」
俺がそれを渡すと小猫は嬉しそうに「…はいっ!」と言った。
「なぁ、俺にもくれよ。友達だろ」
「何で友達でもないお前に渡さなきゃならん。つってもお前には絶対に渡さないが。それと小猫から聞き出そうとするなよ。まぁ、メモがなきゃが入れないが。小猫、名前書いてお前専用にしとけ。んでバカが聞きに来たら思いっきりぶん殴れ」
「…分かりました」
「な、何でだよ!良いじゃねぇかよ、ちょっとぐらい!」
お前のちょっとは図々しいんだよ。って言うかあんなに殴られてるのに友達と思っていたとは、こいつの精神どうなってんだ?
「…諦めてください。変態先輩」
「変態先輩って何!?じゃなくて、俺は諦めないからな!!」
「さて、帰るか」
俺はそんなことを言う兵藤を無視し、鞄をもって部室を出ようとする。
そこで木場が口を開ける。
「乾君」
「何だ。それと名前で呼ぶな」
「ははは、ごめんよ。それはそうと、昨日はありがとう。おかげで助かったよ」
「ああ、どういたしまして。って言っても俺はお前らのためにやったんじゃないんだがな」
そこに小猫も口を開ける。
「…それでもです。助けてもらったことには変わりません。蓮先輩、ありがとうございました」
「あのなぁ、俺は自分のためにやったんだ。お前らはお礼なんてしなくて良いんだよ」
「…やっぱり蓮先輩は優しいです」
「何度も言う、俺は優しくない」
「ちょっと待ってくれるかしら」
「何だ、グレモリー」
放心状態から回復したグレモリーが話しかけてくる。
「あなたにはオカルト研究部に入ってもらうわよ」
「断る。どうせ手元において監視、とか言うんだろ。お前に監視が勤まるはずがない」
「それでもよ」
俺はそのまま断ろうとした瞬間、小猫が手をあげて言った。
「…私が監視するので部に入れるのはやめてあげませんか?」
「小猫…?」
「…私ならいつも昼休み会いますし、仲が良いですから、ちょうど良いと思います」
「そんなの危険よ!小猫!」
「…大丈夫です。蓮先輩の事は知っていますから。そんな危険な人じゃありません。部長、やらせてください」
「………分かったわ。小猫、お願いね」
「…はい!」
てな感じで俺に監視がついた。
つってもいつも通りの日常のままだが。
また、小猫と距離が縮みそうな気がする。
まぁ、なったらなったでその時対応しよう。
すいません。最近億劫になっていました。