二人の十日間
「…蓮先輩。私明日から十日間は学校に来ません」
教会の元シスター、アルジェントが転校してきて早二週間。
俺はいきなり小猫からそう言われたため聞いてみた。
「なんだ。なんか用事があるのか?」
「…いえ、蓮先輩には関係のないことです」
「ん、分かった。じゃあ、これ以上聞かない事にするか」
「…追及しないんですか?」
「人それぞれ、個々で秘密にしたいことはある。それに追及する必要がどこにある」
「………やっぱり蓮先輩は優しいです」
小猫がそんな事を言う。
「だから、俺は優しくねーよ。これは当たり前の事だ」
「…いえ、うちの部活に入った一誠先輩なら追及して来たと思います。何か裏のある雰囲気で…」
小猫の兵藤にたいしての評価が低い。
俺もそうだが。
「そりゃ、あいつはやってかっこいいと思うことをやるからな、モテたいが為に。まぁ、それが日頃の行いですべて消えてるどころかマイナスになってることすら気づかない馬鹿だが」
「…はい、そうですね」
俺がそう言うと小猫がうなずく。
実際そうなんだよなちょっとかっこいいとこ見せて好感度上がったと思ったら一分後にはどん底になってることがよくあるし、その事に気づかずまた同じ事をしているほど学習能力ないし。
「…とりあえず最初に言ったとおり、明日から十日間は居ませんので」
「ああ、分かった。まぁ、前の状態に戻るだけだ」
「…では、今日はこの辺で」
「ああ、またな」
「…はい」
そう言って俺たちは別れた。
次の日、俺はいつも通り屋上に来て飯を食っている。
しかし小猫が来ない。いつもならもう既にいるはずなのにってああ、今日から十日間居ないんだったな。忘れていた。
俺はそのまま飯を食って教室に戻った。
その次の日
俺はパンを食っている。が、何か落ち着かない。
小猫がいないからか?
いやはや慣れって恐ろしいな。
そんな事を思いながら残り八日間を過ごした。
《小猫side》
私は今修行するために別荘に来ている。
部長の婚約者のライザー・フェニックスを倒すためだ。
修行の一貫で一誠先輩の相手をすることになった。が、
「ぐぺぇ!」
「……………弱っ」
これでは修行にならない。後で自主トレしなくては。
お昼になった。
さてと思い、私は立ち上がって足を運ぶ。
「あれ?小猫ちゃんどこ行くつもりだい?」
しかし裕斗先輩がそう言って止める。周りの皆さんもも私を見ている。
決まってます。蓮先輩のところにと思っていたが、そこで私はハッとなる。ここはどこだ。ここは部長の別荘だ。学校ではない。つまり蓮先輩も屋上もない。
そう言えば私はここに修行に来ているのだったと思い出す。
「…すいません。いつもの癖で足が動いてしまいました」
「ははっ、大丈夫だよ。誰にだって癖はあるしね。でも小猫ちゃんに癖がつくなんて、何があるんだい?」
そう裕斗先輩が聞く。そうすると周りの皆さんも気になったような目で此方を見てくる。とくに部長と一誠先輩が。
変に何でもないと言うとめんどくさそうなので正直に話す。まぁ、バラしても問題はない…………と思う。
「…ちょっと前から屋上で話し相手がいまして。いつもはその人と一緒にご飯を食べています」
「あらあら、名前はなんて言うのですか?」
「…蓮先輩です。フルネームで言うと乾 蓮先輩です」
「何ィィィィィィィイイイイ!!?」
「へー、あの人か」
「あらあら」
「蓮さんって誰ですか?」
「小猫にもついに春が来たのね」
と各々口々に言っている。一誠先輩は血涙を流しながら叫んでいる。キモいです。
と思っていたら一誠先輩がいきなり真面目な顔になりこう言ってきた。
「てか、小猫ちゃんは乾のこと名前で読んでるけど大丈夫なのかよ。俺、名字を呼ぶだけで殴られるんだけど」
「…大丈夫です。蓮先輩から直接許可をもらっています。ついでに言うと自分が認めた人にしか名前を呼ばせないし、その人の名前を言うつもりもないだそうです」
「チックショォォォォォ!羨ましすぎるぞ!乾の野郎ォォォォ!」
私がそう説明すると一誠先輩はまた涙を流して叫ぶ。
…キモいです」
「グハァッ!」
と言いながら一誠先輩が倒れる。なぜ?
「小猫、貴方口に出してはいけないことをいったわね……」
と部長が苦笑いを浮かべながらそう言った。
それより口に出ていましたか。
今度から気を付けないと。
「それで、他には何かなかったの?小猫」
その言葉を皮切りに、皆さんから質問攻めにあった。
疲れました。
ちなみに一誠先輩は部長達の質問が終わるまで気絶していた。
無様です。
ちなみにその後の九日間、昼御飯を食べていた時、何か落ち着かない感じでした。
なんなんでしょう。この足りないような気持ちは。
《小猫side out》