ダンガンロンパカレイド   作:じゃん@論破

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おしおき編

 

 Fanfare(ファンファーレ)はただうるさいだけで、Confetti(紙吹雪)はかおにくっついてきもちわるい。モノクマのLaughter(笑い声)をあびながら、ワタルさんは何も言わないで空を見上げていた。さっきからずっと立ったままだ。1つたりないVotes(投票数)だけど、そんなものでひっくりかえるようなConclusion(結論)じゃなかった。

 

 「うぷぷのぷー!大大大大だいせいかーーーーい!!“超高校級の彫師”極麗華サンを毒殺、いや病殺した犯人は、そんな極サンの一番近くにいた“超高校級のパイロット”雷堂航クンだったのでしたー!!いや〜、途中まで雷堂クンの勝利を確信してたけど、最後の最後で詰めが甘いんだなあ。何が起こるか分からない、これぞ人生だよね!」

 

 モノクマは明らかにワタルさんをバカにしてた。それでも、そのワタルさんのMiss(ミス)のおかげで、ボクたちは|Truth >真実]]にたどりつくことができた。もしワタルさんがさいごまでレイカさんのホントの『[[rb:Weak point《弱み》』を言わないでいたら・・・きっとこのClass trial(学級裁判)は、True reverse(真逆)Result(結果)になってたはずだ。ボクたちは、たまたまTruth(真実)を知れただけだ。

 

 「投票には負けたけど、最後の最後まで攪乱し続けたって意味では、雷堂クンの勝利って言っていいんじゃないかな?試合に負けて勝負に勝つ的な?ま、どうでもいっかそんなこと!どうせ雷堂クンは今日のランチも食べられないんだからさ!」

 

 だれも何もしゃべれない。モノクマだけが、ひとりでしゃべりつづける。なんて言えばいいか分からない。ボクたちは何を言うべきだろう。何をワタルさんにきくべきだろう。

 どうしてレイカさんをKill(殺す)しようとおもったのか。いつからボクたちをBetray(裏切る)してたのか。今まで見せてたワタルさんは、ぜんぶウソなのか。かんがえればかんがえるほど、分からなくなる。

 

 「マジかよ・・・!テメエ、雷堂・・・!今の全部・・・マジだってのかよ・・・!」

 「・・・ああ」

 「テメエが極を殺したのかよ・・・!オレらを裏切って・・・ずっとオレらを騙してたのかよ!」

 「そうだ。ついでに言やァ二度目のルーレット回したのも俺だ。外の世界の情報が欲しかったからな」

 「そんな時からおれたちを裏切ってたんだねえ」

 

 テルジさんとヤスイチさんが、ワタルさんをBlame(責める)する。だけどボクたちがききたいのはそんなことじゃない。ボクたちが知りたいのはそんな小さいことじゃない。

 

 「・・・ねえ、どうしてよ」

 

 ボクたちのかかえるQuestion(疑問)を言葉にしてくれたのは、こなたさんだった。

 

 「どうして・・・?雷堂君・・・どうしてなの・・・?」

 「はあ・・・どうしてもこうしてもねェだろ。自分の胸に手ェ当てて考えてみろよ。俺らが殺される理由なんて、掃いて捨てるほどあンだろうが」

 

 その言葉はボクに向けられた言葉じゃない。空に向かって、だけどこなたさんの言葉へのReply(返事)としてなげられた。それなのに、ボクはこわくなった。ワタルさんの言葉づかいとか、ふんいきとか、そういうのが、ボクの知ってるワタルさんのものとぜんぜんちがうからだ。

 

 「うん?意味が分からないねえ。殺される理由って何だい?」

 「とぼけるんじゃねェ。ついさっきまでもそんな話してただろ。そっから考えりゃ誰だって分かる。白々しいマネすんじゃねェよ」

 「さっぱり分からないんだけど・・・」

 

 ワタルさんが何を言ってるのか、ボクたちにはぜんぜん分からない。ボクたちがKill(殺す)されるりゆうってなんだ?なんでワタルさんは、犯人(クロ)だってバレたのに、こんなにStrong(強気)にしゃべれるんだろう。ワタルさんは何に気付いてるんだろう。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「俺ら全員、“超高校級の絶望”だろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 「・・・へ?」

 

 ワタルさんが言ったことをUnderstand(理解する)するのに、ボクはA minute(1分)はかかったかもしれない。Difficult(難しい)すぎることはない。だけどあたまがそれをUnderstand(理解する)のをRefuse(拒む)してるようで、ボクはワタルさんが何を言ってるか分からなかった。

 

 「さっきの裁判でもそうだ。このモノクマランドのあちこちにそういうヒントがあった。ここは“超高校級の絶望”のアジトだ。そんで俺らしかいない。だったら、俺たちが“超高校級の絶望”って結論になンだろ普通?」

 「いやさすがにそりゃブッ飛びすぎだろ!」

 「ボクたち、モノクマにAbduct(拉致する)されてきました!“Ultimate despair(超高校級の絶望)”いたとしても、ボクたちじゃないです!」

 「だったらあれはどう説明すンだよ?モノクマが俺らに配った、あの写真は」

 「写真?なんだそりゃ?」

 

 ワタルさんが言うThe photograph(写真)がなんのことか、ボクたちはわかったけど、テルジさんだけはくびをかたむけてた。マイムさんがKill(殺す)されるまえ、モノクマがボクたちにくばったFourth motive(第4の動機)だ。それぞれのThe Labo(“才能”研究室)Open(開放する)のと、モノクマランドですごしているけど、だれもおぼえてないボクたちのPhotographs(写真の数々)。モノクマがForge(捏造する)したんだと思って気にしないようにしてたけど、やぱりそれじゃConsent(納得する)するのはできなかった。

 

 「あれがモノクマの捏造だって言うつもりか?バカかよ。ンなことしだしたらなんでもありだぞ?モノクマの性格はテメェらだって分かってンだろ。どうしようもない事実なんだよ、その写真は。だから絶望的なんだ」

 「事実って・・・だけどこんなことした覚えないわ・・・!」

 「だから忘れてんだろ。忘れさせられてんだ、モノクマに。記憶を消されてんだよ。俺らはここで既に暮らしてた。その時点で“絶望”かどうかは知らねェけど、少なくとも俺らがモノクマランドに来たのはついこの間じゃねェってこった」

 「・・・」

 

 なんだかMysterious(不思議な)だったけど、Persuasive(説得力がある)にきこえた。モノクマがウソをつかってMotive(動機)をつくってボクたちにコロシアイをさせるっていうのは、ワタルさんが言うとおり、あんまりPossibility(可能性)はない。それをしちゃったら、そのあとモノクマがくばるMotive(動機)Meaningless(意味がない)になっちゃうからだ。ウソじゃないからこそ、あれはボクたちをBother(悩ませる)する。

 

 「おい雷堂」

 「ンだよ」

 「オレにはその写真がどうこうって話はさっぱり分からねえけど、オレらがここで記憶にねえ何日だか何ヶ月だかを過ごしてたとしよう。そんでもってお前がその写真で、オレらが“超高校級の絶望”ってヤツだと思い込んだとしよう。だからっつって、なんで極を殺す理由になるんだ?」

 「そ、そうですよ!もしボクたちが“Ultimate despair(超高校級の絶望)”でも、レイカさんはボクたちになんにもしなかったじゃないですか!それにワタルさんも“Ultimate despair(超高校級の絶望)”なんだったら、Ally(味方)じゃないんですか?だったら・・・!」

 「はあ・・・なンも分かってねェなお前ら。味方だと?“絶望”にそんなもん意味があると思ってンのか?」

 「君は分かってるっていうのかい?」

 「当然だろ。世界を破壊するテロ集団だぞ?絶望だなんだって殺人だってやるヤツらだぞ?身勝手で独り善がりで我が侭で自己中なヤツらだぞ?味方だろうが家族だろうが、絶望のために殺すヤツらに決まってンだろ」

 「・・・まるで、見てきたみたいね」

 「コロシアイ祈念館に行きゃァだいたい分かるぞ」

 

 Looks so dead(生気を感じられない目)で、ワタルさんがボクたちにAnswer(答える)する。だけど、テルジさんのQuestion(質問)Postpone(後回しにする)されている。どうしてレイカさんをKill(殺す)したのか。それをきいたからって、ボクたちはきっとワタルさんのしたことにAgree(肯定する)することなんてしないし、レイカさんがしんだことをConsent(納得する)なんてしないんだろう。それでも、きかなくちゃいけない気がした。わからないままおわらせちゃいけないとおもった。

 

 「オレの質問に答えろよ」

 「・・・あいつが一番確実に、“超高校級の絶望”だって言えるからだ」

 「ど、どういうこと・・・?“超高校級の絶望”って言えるからって・・・意味が分からないんだけど。だって、私たちはあのルーレットではじめてその存在を知ったはずでしょう?」

 「だからなんだよ。ヒントはたくさんあっただろ」

 「ヒント・・・?」

 

 ワタルさんは自分のあたまをゆびさして、ボクたちをバカにするみたいに言った。Hint(ヒント)って、ボクたちが“Ultimate despair(超高校級の絶望)”だっていうことの?ボクはワタルさんの次の言葉をまった。

 

 「真相ルーレットで言ってただろ?“超高校級の絶望”はまだどっかに潜んでっかも知れねェって。このモノクマランドは絶海の孤島なんだろ?身を隠すのに打って付けじゃんか。モノクマだって、その“絶望”のシンボルみたいなヤツだ。ミュージアムエリアの博物館に、でっけェ女の像があっただろ。知ってっか?あれが“超高校級の絶望”のボス、江ノ島盾子なんだぜ?他の誰も出入りできねェようなところで、“超高校級の絶望”に関するモンがこんだけある。俺らが“絶望”だって以外にどう説明するってンだ?」

 「うぅん・・・そりゃあ早計じゃあないかい?おれたちがその“絶望”に拉致された高校生だっていう説を否定する根拠にはなり得ないと思うけどお?」

 「俺も途中まではそう思ってたけどなァ・・・けどそれもねェよ。俺らは紛れもなく、このモノクマランドで記憶にねェ時間を過ごしてンだからよ。それに、化けの皮が剥がれてきたヤツもいたしな」

 「ば、ばけのかわ・・・?誰のこと・・・?」

 「荒川だよ」

 

 急にエルリさんの名前が出て来て、ボクはますますわけわかんなくなった。あのHuge statue(ドデカい彫像)とか、The photographs(写真)とか、ワタルさんはそれが、ボクたちが“Ultimate despair(超高校級の絶望)”ってことのHint(ヒント)だって言う。だけどもそれじゃまだ分からない。

 

 「あいつが最後に言ってただろ。殺し合え、ここを出ろって」

 「そ、それがなんだよ・・・!んなもん、モノクマがテキトーにでっち上げただけの──!」

 「じゃあ荒川はなんであんな必死になってこんなメッセージを遺した?それは、どうしても伝えなきゃいけねェことだったからじゃねェのか?」

 「・・・!」

 

 まだテルジさんがしゃべってたのに、ワタルさんがおっきな声でそれをかきけした。テルジさんは言葉をなくして、くやしそうにだまる。

 

 「殺し合えってのはそのまま、このコロシアイを続けろってことだ。そうすりゃ、誰かが“絶望”だった頃を思い出して、自分たちの思想を復活させられるからな。そしてここを出ろってのは、そうやって勝ち残った“絶望”が外の世界に出ることだ。あいつは・・・荒川はこう言いたかったんだよ。殺し合って“超高校級の絶望”だった頃を思い出せ、そして外に出て“絶望”の思想を世界中にバラ撒け、ってな」

 「そ、そんなこと──」

 「お前に否定できんのか?お前は荒川の頭ン中全部のぞいたってのかよ?」

 

 ワタルさんは、ボクたちにしゃべらせてくれない。Deny(否定する)しようとしても、そのまえにワタルさんはボクたちのIdea(考え)をおしつぶす。エルリさんの言葉もMuseum(博物館)にあったHuge statue(ドデカい彫像)も、ボクらが“Ultimate despair(超高校級の絶望)”だっていうEvidence(証拠)だっていう。

 

 「だとしても・・・それが極さんを殺す理由になる?私たちみんなが“超高校級の絶望”だったとして、どうして極さんが一番確実に“絶望”だって言えるの」

 「・・・正地と研前は、あいつの検死したんだろ?なんで気付かねェんだ?」

 「え・・・?」

 「モノクマが寄越した写真に写ってただろ。水着姿の極が」

 「確かに写ってるけどお、それがなんだい?」

 「・・・こいつの、腿のとこ見てみろ」

 「んなっ・・・!?んだこりゃ!?」

 

 モノモノウォッチに出てきたのは、ボクたちが見たPhotograph(写真)で、テルジさんがはじめて見るものだった。Swimsuit(水着)でなかよさそうに歩くレイカさんとマナミさん、そのうしろでテルジさんはFried noodles(焼きそば)を作ってた。

 ちょっとレイカさんにはわるいけど、ワタルさんが言うとおりにレイカさんのThigh()をじっと見る。Photograph(写真)Expanding(拡大する)してみた。あんまりじろじろ見るのは、ただのPhotograph(写真)でもなんだかはずかしい。

 

 「あっ・・・?これ、なに?」

 「正地さん、何か見つけたの?」

 「この、水着にほとんど隠れて見えないけど・・・少しだけはみ出してるの・・・これ、タトゥー?」

 

 セーラさんがそれ見つけたところを、ボクたちも見てみる。レイカさんのSwimsuit(水着)の下からちょこっとだけ見えてるのは、きっとHeart(ハート)Tatoo(刺青)だ。それだけしか分からない。だけど、それだけで十分だった。

 

 「この写真の極には、腿のところにタトゥーがあンだよ。けど、()()()にはなかった」

 「なかったって・・・お前いつの間にそんなもん見たんだよ!こんなもん素っ裸にでもならねえと見えねえぞ!」

 「だから素っ裸のところを見たんだよ。事故だけどな。けどそこで確信した。あいつは、この写真に写ってる極とは違う。タトゥーを傷もなくきれいさっぱり消すなんて、不可能だろ?」

 「・・・え、それだけ?タトゥーがなかったからって・・・それだけで極さんが“超高校級の絶望”だって言うの?」

 「十分な根拠だろ。少なくともあいつは、俺たちとは違う。写真の中の俺たちと今の俺たちは同じだが、極だけは確実に違う。これ以上ねェほど疑わしいじゃねェか」

 「そ、そんな・・・そんなのAccusation(言いがかり)じゃないですか!レイカさんなんにもわるいことしてないです!“Ultimate despair(超高校級の絶望)”だなんて、言い切れないじゃないですか!」

 「いンだよ。言いがかりでも言い切れなくても。それであいつを殺して、ここにいるお前ら全員消せば、それで“超高校級の絶望”の可能性を潰せンだろ」

 「It's absurd(無茶苦茶だ)・・・」

 

 言うつもりはなかったのに、気付いたらボクは口に出してた。だって、ホントにAbsurd(無茶苦茶)だったから。ワタルさんのClaim(主張)はどれもこれもUnfounded(無根拠)で、Self-interpretation(自分勝手な解釈)をしてる。それをDeny(否定する)することはできないけれど、だからってMurder(殺人)までするなんて、何がワタルさんをそこまでさせたんだろう。

 

 「納得・・・できるかよ・・・!」

 「あ?」

 「そんなんで納得なんかできるかよ!結局テメエは、自分一人で推理して自分一人で結論出して、極もオレらも巻き込んで勝手な理屈並べてるだけだろうが!何様のつもりだ!」

 「下越氏の言う通りだよお。たとえおれたちが過去“超高校級の絶望”だったとしてもお、今は記憶を失ってるんだろお?それならわざわざ殲滅させる意味なんかないと思うけどお?」

 「だっから・・・分かんねェヤツらだな。ダメなんだよ。“絶望”は。存在しちゃいけねェんだ。この世のガンなんだよ。そうでなきゃ、“絶望”を殺しまくったヤツらが英雄なんて呼ばれるわけねェだろ?」

 「え・・・?英雄?誰が?」

 「お前らホントに何にも見てねェんだな。真相ルーレットで出ただろ。未来機関ってヤツが」

 

 そんなものもあった気がする。The Future Foundation(未来機関)がなんなのか、ナエギマコトさんやムナカタキョウスケさんがどんな人なのかも分からない。どうしてHero(英雄)なんて呼ばれてるのかも分からない。なのに、どうしてワタルさんはそこまでしんじられるんだろう。

 

 「少なくとも未来機関は、今この世界では正義だ。その未来機関の英雄だっつう苗木や宗方ってヤツらは、“絶望”を殺しまくって英雄になった。だから俺も同じことをする。分かるか?」

 

 まだ何がなんだか分からないボクたちに、ワタルさんはそうまとめる。The Future Foundation(未来機関)が“Ultimate despair(超高校級の絶望)”をDestroy(虐殺する)したから、自分もそうしたって。

 

 「・・・?つまるところお・・・雷堂氏は、“英雄”になりたかったのかい?」

 

 ヤスイチさんのQuestion(問いかけ)に、ワタルさんは何も言わなかった。だけど、自分のモノモノウォッチをボクたちに見えるようにした。そのScreen(画面)には、みじかいSentence(文章)だけがIndicate(表示する)してあった。

 

 

 『雷堂航は、英雄ではない』

 

 

 またあの音がした。ボクらのモノモノウォッチのCount(カウント)が1つあがって、ボクたちがたったいま目にしたものがワタルさんの『Weak point(弱み)』だっていうことをおしえてくれた。ワタルさんはHero(英雄)じゃない、それだけじゃなんのことか分からなかった。

 

 「そうだよ。俺は、英雄なんかじゃない。英雄なんて呼ばれるような人間じゃなかった。だから英雄になるために・・・極を殺したんだよ」

 

 さっきまでLethargic(無気力な)なかおをしてたワタルさんが、今はすごくするどい目をしていた。

 

 「俺たち“超高校級の絶望”は、外の世界じゃ生きていけねェんだよ。未来機関が殺そうと探し回ってンだよ。だから今のままじゃ俺はどうやったって英雄になんかなれねェ。けど俺が“超高校級の絶望”を殲滅したらどうなる?俺以外の“絶望”を全員ぶっ殺して、その上でここを出て未来機関に入るんだ!そしたら・・・俺も英雄になれンだろ?俺はこの世から“超高校級の絶望”を消し去ったんだ!本物の英雄になれンだよ!」

 「・・・いやあ、普通に逮捕されるかあ、最悪処刑だと思うけどお」

 「それでもいい。“超高校級の絶望”を殺しまくったのは事実だ。苗木や宗方と同じように、俺も未来機関の英雄として名前が遺ンだったらな」

 「な、なんでそこまで・・・英雄にこだわるの・・・?雷堂くんは、英雄って呼ばれてるじゃないの・・・?」

 「そうですよ!もうHero(英雄)なんですから、どうしてレイカさんをKill(殺す)してまで・・・!」

 「うぷぷぷ!ちがうちがう!雷堂クンは英雄なんかじゃないんだよ!オマエラの目は節穴かァーッ!」

 「どういうことなの・・・?」

 

 モノクマがGrinning(にやにや笑い)しながら口をはさんでくる。ワタルさんがHero(英雄)じゃないって言われても、いみが分からない。

 

 「雷堂クンと言えば、コナミ川の奇跡という事件が有名ですね!ハイジャック犯に襲われた旅客機を川に不時着させ、一人の犠牲者も出さずに事態を収めたという英雄的事件!う〜ん素晴らしい!たくさんの人の命を救った、まさに英雄的行為ですね!もしそれが、真実なら・・・ですが!」

 「真実ならって・・・?」

 「うぷぷぷぷ!どうしようかな〜?言ってあげてもいいけど言わないままもいいな〜。ちらっちらっ」

 「・・・なんだよそれ。言わないでくれってのを期待してたのか?もうどうでもいいよ。ここで隠したって、どっちみちこいつらにとって俺はもう英雄じゃねェ」

 「っかあーーーっ!!つまんねー男だなお前はホントに!!どうでもいいってのが一番困るんだよ!!言わないなら言わないで往生際悪く、生き汚く抵抗しろよ!!言うなら言うで自分のしたことを誇らしげに、高らかに宣えよ!!言うも言わないも他人任せで、そんな空っぽの顔されたら対処に一番困るんだよ!!」

 「なんでテメェがキレてんだよ・・・どうせ俺はもう終わりだろ?たった5人のヤツらに、それも“超高校級の絶望”になんて思われたって、そんなことどうでもいいんだよ。少なくとも外の世界じゃ、俺はまだ英雄だろうしな」

 「それじゃあ、ボクがこの後、その真実を全世界に公表するって言ったら?」

 「・・・あぁ、そりゃ少しキツいな。でももう一緒か」

 「とことんつまんねーヤツ!!」

 

 Lethargic(気怠げ)なワタルさんと、Excited(興奮している)なモノクマのTalk(会話)に、ボクたちは入っていけなかった。なにもかもどうでもよくなったワタルさんと、中指を立てておこるモノクマが、なんだかStrange(奇妙な)だった。ワタルさんはこのあと、自分がどうなるか分かってる。ボクたちもモノクマも分かってる。それなのに、ちっともこわがってるようには見えない。

 

 「な・・・これで分かったろ」

 

 大きくSigh(ため息を吐く)して、ワタルさんが言う。だれにむけた言葉か分からないから、ボクたちはみんな、次にワタルさんが何を言うのか、Nervous(緊張して)になってきく。

 

 「俺は英雄じゃねェ・・・英雄になるために人を殺せるヤツだった。それが俺の本性だった。分かりやすいだろ?」

 

 どうしてそこまでワタルさんはHero(英雄)Concerne(こだわっている)なのか。Miracles of the Conami River(コナミ川の奇跡)Truth(真実)ってなんなのか。それにボクたちやこのモノクマランドのこと・・・分からないことがありすぎる。なんにも分かりやすいことなんてなかった。

 

 「ってわけだ、モノクマ」

 「ってわけだ、じゃねーよ!!ホンット最後の最後まで雷堂クンってつまんねーヤツだな!!あーあ!!もうこれ以上つまんねーヤツに費やす時間がもったいないよ!!やることやっちゃいましょうかね!!」

 「えっ!?ちょ、ちょっと待って・・・!」

 「なんだよ。まだなんかあんのかよ?」

 「あのっ・・・!あっ・・・!

 「うぷぷぷぷ!今回は!“超高校級のパイロット”雷堂航クンのためにィ!スペッシャルなおしおきを用意しました!せめて最後はつまらなくなくしてね!」

 

 おもわず声をあげたこなたさんに、ワタルさんがつまらなさそうに声をかける。モノクマはもうToy hummer(おもちゃのハンマー)をふりあげて、目の前に出てきたButton(ボタン)を叩こうとしてる。きっとこなたさんが止めてと言っても、止めないんだろう。

 

 「ああ。そういやァまだ“返事”してなかったっけか・・・今更って感じだけどな」

 「えぁっ・・・ち、が・・・!」

 「それでは!張り切っていきましょーーう!!おしおきターーーーーーーーッイム!!」

 

 となりにいるこなたさんに、ワタルさんはそっとConfront(向き合う)した。ボクの方からだと何をしてるか、よく見えない。だけど少しだけ見えたワタルさんのかおは・・・さっきまでのLethargic(無気力な)なのとちがって、とってもGentle(穏やかな)だった。

 

 「意外だったのはマジだぜ。それに・・・嬉しかったなァ・・・」

 「あっ・・・!!」

 

 くびにChain()がからみつく。手も足も、どこからかとびでてきたChain()にからみつかれる。そのときまで、ワタルさんはGentle smile(穏やかな笑顔)をくずさなかった。つれて行かれるワタルさんに手をのばしたこなたさんは、つまづいてころんだ。もう、ワタルさんがどんなかおをしてるか、見えなくなってしまった。


 見上げれば反り返ってしまうほど高い支柱に、鋼鉄製の巨体がぶら下がっていた。それは、ジャンボジェットを模したペンデュラムマシーンだった。かなり縮小されてアトラクションとして収まるようになっているが、細部までこだわった造形は、本物と見紛うほどだった。その飛行機の脇に、雷堂航はいた。全身に絡まっていた鎖はほどかれ、しかし手には手錠をかけられていた。まとわりつくようなモノクマたちが手に持った様々な機械に全身を弄られ、雷堂は入念な検査を受けていた。

 

 身長制限は、クリア。

 危険物の持ち込みは、ない。

 脳波は、異常なし。

 犯罪歴は、重大犯罪歴あり。

 

 モニターに大きく赤いバツ印が表示される。にわかに慌ただしくなったモノクマたちは、雷堂から飛び退き緊急用と思しきレバーを押し倒す。途端にジャンボジェットが震えだし、2つの巨大エンジンが煙をあげながら鼓膜を破りそうなほど轟く。

 

 「・・・ん?うぉっ!」

 

 雷堂が何かに気付く。それを確かめる前に、警備員の格好をしたモノクマによって担ぎ上げられ、アトラクションのシートに放り投げられた。震える機体の上では視界が常に上下に揺れていて、何もしていなくても酔いそうになる。震動もさることながら眩い光と割れんばかりの騒音で、目も耳もろくに役に立たない。何かに捕まろうとしても手錠のせいで自由が利かない。

 そして、アトラクション始動のベルが鳴る。その音は、雷堂の耳に届く前に掻き消されてしまう。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 唸りをあげるエンジンが噴き出す煙が炎に変わる。激しく噴き出した炎に突き動かされるように、機体は急加速で出発する。何が起きたか分からないまま、雷堂は強烈なGでシートに押しつけられる。支柱に繋がれた機体は猛スピードで弧を描き、天辺でゆるりと速度を落とし、再び加速して元の位置に戻る。

 

 「・・・ッ!!」

 

 痛いほどの音。身を焦がす熱。体を縛る重力。身を引き千切るほどの加速とともに、機体は同じ航路をひたすら回る。揺さぶられる脳が激しい痛みを訴え、目を回し、吐き気を催す。前後不覚の中でなおも与え続けられる責め苦に気を失いそうになるが、轟音がすぐさまその意識を引き戻す。

 そのとき、一際大きな揺れが雷堂を襲った。エンジンの片方から噴き出る炎に黒煙が混じり、異臭が漂う。エンジンが爆発したのだろうか。みるみる速度を落とす機体。勢いで数回転するが、いよいよその余力も消え失せていく。重力に引かれて振り子のように揺れる機体が、天辺で逆さまになって止まる。遠心力で押しつけられていた雷堂の体は、何かに掴まる暇もなくずり落ちる。

 

 「はっ・・・!?あっ・・・!?」

 

 頭から地面へ落ちる。その瞬間に理解する。落ちれば死ぬと。足下の機体は、余計な重しを捨てたせいか、再びエンジンが元の調子を取り戻す。再び激しく炎を噴き出す機体が加速していく。描く弧の先には、雷堂がいる。

 

 「・・・!」

 

 思い出した。そうだ。この景色は一度目ではない。あの夢は夢ではなかった。この処刑は、この死は、この冷たさは、既に感じたことがあった。そのことに気付いた雷堂は──

 

 「・・・ははっ、なんだよそれ」

 

 ただ、力なく笑った。脱力した肉体が機体の先端に触れそうになる。

 

 

 

 

 

 そのとき、強い横風が吹いた。機体はびくともしないが、雷堂の体が機体の脇に逸れる。数ミリ先を猛スピードで振り抜ける機体。何が起きたか理解するより先に、死ななかったという実感だけが雷堂を満たす。

 

 「はっ・・・?・・・ッ!!」

 

 記憶と違う。これはあの夢の結末ではない。戸惑う雷堂の目の前には、激しくタービンを回すエンジンが迫ってきていた。吸い込まれる空気とともに、雷堂の体はエンジンに飛び込んでいった。

 

 

 再びエンジンは激しく煙を噴き出す。そのエンジンはもはや推進力を得ることはできない。絡まった異物がタービンの回転を妨げ、機体は大きく横に揺れてバランスを失う。疲労の溜まった鉄の支柱が歪む。機体の遠心力で支柱はさらに傾く。力なく回る機体のなすがままに折れ、ひしゃげ、歪んで、倒れた。

 残ったのは、何もかも押し潰したアトラクションの残骸だけだった。それを見ていたモノクマは、頭を抱えながらくっくと笑うばかりだった。


 「エクストリィーーーーッム!!と思ったけど、なーんかイメージと違ったかな?ま、でもいっか!うぷぷぷぷ!!」

 「うぅっ・・・!」

 「・・・あぁ」

 「お、おい正地!?スニフ!?」

 

 あんまりだった。Last moment(最期の)のワタルさんは、ボクたちが知ってるような人じゃなかったし、ボクたちのことをDestroy(全滅させる)しようとしてた。だけど、あんなふうにぐしゃぐしゃになっていいなんて思ってなかった。ワタルさんをそんなScaffold(処刑台)におくったのがボクたちだって思うだけで、Dizzied(意識が遠のく)してしまう。ボクとセーラさんは、そのばでへたりこんだ。

 

 「あああ・・・うああっ・・・!!」

 「くっ・・・!」

 「全くオマエラったら、どいつもこいつもふらついたり悔しがったりするだけでさ、なんかオマエラもつまらねーなあ。オマエラに希望はないの?こんなひどいことをしてるボクに怒ったりとかしないの?」

 「・・・腹立つに決まってんだろ・・・!!黙ってろ・・・!!」

 「いやいやまあまあ、そう連れないこと言わないでよ下越クン。これからオマエラにとってとっても嬉しいお知らせをしてあげようって言うんだからさ」

 「どうせろくなことじゃあないけどお・・・言うなら早く言いなよお」

 

 きもちわるい。Breakfast(朝ご飯)をはきそうになりながら、気付いたらボクはヤスイチさんにだっこされてた。セーラさんもテルジさんに支えられて、こなたさんだけはひとりでモノヴィークルによりかかっていた。モノクマがGrinning(にやにや笑い)で言うことをちっともUnderstand(理解する)できずに、ただぼんやりとしていた。

 

 「それでは、5度もの学級裁判を見事に勝ち残ったオマエラに、ボクからの超超超スペシャルなお知らせで〜〜す!!」

 

 Throne(玉座)の上でモノクマがTurn(宙返り)して、ばんざいのかっこうで高らかにDeclare(宣言する)した。

 

 「えー、今後オマエラは、コロシアイをしてはいけません!」

 「・・・は?」

 「コロシアイをしてはいけない・・・?そりゃあ・・・今更なんだい?」

 「そのまんまの意味だよ!もう5人にまで減っちゃったし、オマエラも精神的に限界だろうからね!だから優しいボクは、オマエラに特別ルールに基づくチャンスをあげるのです!コロシアイをせずに『失楽園』となる特別ルールをね!」

 

 モノクマが言うExtra rule(特別ルール)。こんなにつらいKilling(コロシアイ)を止めるあたらしいRule(ルール)。だけどそれは、ボクたちをもっと苦しいDespair(絶望)にむかわせるための、モノクマのTactics(作戦)だった。


コロシアイ・エンターテインメント

生き残り:5人

 

【挿絵表示】

 




年内に5章終わらせることに成功しました!
あともう少しでロンカレも終わりです。来年完結を目指してがんばります٩( 'ω' )و
ではではみなさん、よいお年を!

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