すっかり慣れたもんだ。ここでの農作業も。モノクマが前に言ってたように、ここの野菜や果物は種を蒔いてから考えられねえスピードで育つ。味が心配だったけど、生でかじってみたら普通に育てたものと大して変わらなかった。モノクマのヤツ、こんなスーパー便利なもん作っといて独り占めとかケチいヤツだな。
「おい下越、そっちはまだ育ちきってないだろう」
「なんだ知らねえのか?落花生は未成熟の実もうまいんだぜ。さっぱりしてて」
「食べ物に関しては博識なんだな」
なんとなく腑に落ちねえ感心のされ方だったけど、取りあえず収穫した落花生をジップロックに詰めたものを運搬用のキャリーケースに入れた。晩飯は収穫した落花生とカボチャでペーストサラダにでもすっかな。
「はあ、疲れた。もう3日連続で収穫係だぞ。なんで俺ばっかり・・・」
「文句を言うな。下越はその前から毎日収獲係をしている。それに、お前が言い出したことだろう。研前となるべく顔を合わせないようにしたいと」
「それはそうなんだけどさ・・・」
オレは直接その場面に出くわしてねえからよく分かんねえんだけど、どうも研前が雷堂に告ったらしい。んなもんスパッと結論出しゃあいいのに、雷堂も研前もお互いに付き合うどころか顔も合わせられてない。研前用に大目に作った料理を残されたときはびっくりした。そんなことで食欲って落ちるもんなんだな。ま、なんだろうと残すのは許さねえから、百歩譲って余りを朝飯にしてやったけどな。
「農耕エリアには収穫係以外は基本立ち入らない。ここで作業をしている限りは研前と顔を合わせることはない。今のところ、研前だけは個室で食事を摂っているしな」
「ひとりで部屋で食ってうまいのかね」
「お前くらいシンプルに物事考えられたらいいよな」
「ほめられてる気がしねえ」
「ほめてないからな」
「付き合うかどうかの結論も出ていない状態で数日も研前を放置して、それでも男か。まったく」
オレには好きだとかほれたとかそんなような話はよく分からねえ。なんとなく小っ恥ずかしいとか気まずいってのは分かるけど、だからって今まで普通に話してたヤツを何日も避けるくらいにまでなっちまうもんかね。ともかく、このままじゃ普通に考えてよくねえし、毎食作るオレとしても正直研前の分だけ別にするのめんどくせえから、さっさと解決してほしいんだけどな。
「ホント、雷堂クンってヘタレっていうか、ダメ男だよねー」
「どぅあ!?な、なにしにきやがった!」
「危ない!お前クワ持ったまま仰け反るなよ!」
突然出てきたモノクマに驚いて、危うく雷堂にクワをぶつけるところだった。こんにゃろう、いつも登場のたんびにわざとかってくらい驚かせて来やがる。出てきたってことはなんか用があるんだろうけど、なんだってこんなところに。
「何しにって、別にオマエラに用があってきたわけじゃないよ!入り口の消毒用アルコールを補充しにきただけ。毎回毎回オマエラのために出てくるなんて思わないでよね!」
「アルコールの補充って・・・そういう雑用もきちんとやってんだな、意外と」
「言ったでしょ。オマエラが快適なコロシアイをできるように、ボクはそれに必要なことを全部賄ってるって。基本はオートメーションだけど、まだ整ってないところもあるの」
「ということは・・・ここで待っていれば貴様を操っている者が現れるのか?」
「そんなワケないでしょ!この程度、ボクの中の人が手を煩わせるまでもない、モノクマボディで十分だ・・・って夢を壊すなー!中の人なんていません!」
「全部一人で喋ってるよ・・・」
脇に何か抱えてると思ったら、農耕エリアに入る前に浴びるあのアルコールか。頭から煙なのか湯気なのか分からんなにかを噴き出しながら、モノクマはエリアの入り口近くまで歩いて行った。
通路の横にある地面をまさぐったと思ったら、床下のぞくみたいにフタ開けて、下からホースを取り出した。後は地道にポリタンクから地面の下のタンクにアルコールを移す。そうなってたのかよ。
「なんか、なんとも言えねえな。モノクマもああいうことしてんだ」
「余計な情を抱くなよ。ヤツはいずれ殺すべき敵だ」
なんつうか、得体の知れない化け物かなんかだと思ってヤツの、ああいうアナログで人間臭いところ見ると印象変わるというか。ただ極の言う通りだから、余計なこと考えないようまた畑仕事に戻った。
「えーっと、何の話してたっけか?」
「もういいだろ。これは俺と研前の問題なんだから」
「それはそうだが、私たちがいつでも協力するということを忘れるなよ。お前一人で軽率な行動はしてくれるな」
「お、おう・・・」
オレにできることっつったら美味い飯作るくらいだけど、それでも雷堂と研前の問題が解決する手助けになるなら、できることはやるつもりだ。てか、一緒に鍋でもつつけばちょっとはマシになるんじゃねえか?
「ああ、そうそう。ついでにオマエラにお知らせがあるよ」
「やることが終わったならさっさと失せろ」
「もうそんな脅しじゃボクはビビらないよ極サン!何を言っても、『掟』がある限り、実際に手は出せないんだからね!」
「そう思うか?」
「お、おい極・・・やめとけ。下手なことすんなよ?」
「・・・分かっている」
極もたいがい、一人にしておくと何しでかすか分からねえな。表情が変わらねえから、冷静なのか頭に血昇ってんのか分からねえ。マジでモノクマに手ぇ出すんじゃねえかってこっちがヒヤヒヤする。
「で、お知らせのことなんだけど、まさにいま惚れた腫れただ告っただの告らせたいだのと青臭い悩みを抱えてる雷堂クンと研前サンにぴったり!5つめの動機発表でーす!今回は全員強制で受け取ってもらうから、逃げるなんてナシだよ下越クン!広場に集まってください!うぷぷ♫これでどうやったって顔合わせなくちゃいけなくなるよね。思春期で素直になれない少年少女に対話の機会をあげるボクって優しい〜!」
「・・・マジか」
そうきたか。雷堂と研前をむりやり会わせるなんて、確かにこいつにしかできないことだ。モノクマの目的は、またあのふざけた動機を寄越すことだろうけど。てか、絶対二人のこと面白がってんなこいつ。
「雷堂、動機のことは気がかりだが、この機に研前ときちんと話せ。どうせ顔を合わせるなら、ここで解決しておいた方がいい」
「こ、心の準備が・・・」
「今から準備しろ。男なら腹をくくれ」
そう言う極の方がよっぽど男らしいや。
ボクたちはまた、モノクマにあつめられた。
「うぷぷ♬さて、みんな集まってくれたみたいだね。会いたい人も会いたくなかった人も、会いたいのに会おうとしなかった人も色んな人がいると思うけれど、今の気分は?」
「さっさと終わらせろ。お前との会話に割く時間ほど無駄なことはない」
「相変わらず極サンは辛辣だね。最近はスニフクンも納見クンもボクには手厳しいから、ボクは監督者としてとても辛いのです。胃薬が欠かせないよ」
「胃なんかないだろお」
「でも他のみんなはどうなのかな?例えば雷堂クンとか研前サンとかは?」
「・・・ッ!」
いまボクたちがとっても困ってることに、モノクマは
「っとにオマエラってさあ・・・て感じだよね。4回もコロシアイして、このモノクマランドがどういう場所かもようやく理解したってのに、まだこうやって内輪ネタですったもんだして。緊張感っていうか、盛り上がりに欠けるよ」
「盛り上がりって、誰に見せてるってわけでもないのに必要ないでしょ?」
「必要なの!盛り上がらないと!だってこれはコロシアイ・エンターテインメントなんだから!」
「わがままな」
コロシアイをさせられて、
「まあいいや。この動機でまたオマエラがコロシアイをしてくれるってボクは信じてるからね。コロシアイが起きれば必然盛り上がるのさ。やったね!」
「ゲスめ」
「こら!ひどいこと言うのは誰だ!ボクは優しい優しいモノクマさんだぞ!だからオマエラが知りたくてたまらない情報をあげようって言ってるんだ!優しいだろ!」
「あんまり優しいって連呼すると押しつけがましく見えるわよ」
「そうなの?うん、じゃあやめとこ。ともかく、ボクが今回オマエラにあげる動機、それは・・・『この“セカイ”の真相』でーす!」
「“セカイ”の真相・・・?な、なんだよそれ?」
「うぷぷ♬真相は真相さ。この“セカイ”、つまりモノクマランドにまつわるありとあらゆる真相、真実、事実・・・それらをオマエラに提供してあげようってことさ。一気に核心に迫るビッグチャンスだね!このタイミングでこんな重大情報をあげちゃうボクってチョー優しい!」
「ワケの分からねえこと言いやがって!全然分かんねーぞ説明しろ!」
「若干逆ギレ気味だけどお、おれも下越氏と同じだねえ。意味が分からないよお。まさかあ、黒幕の正体を教えろって言ったら素直に正直に言うつもりかい?」
「んなわけないでしょ!さすがにそこまで甘くないよ!」
そう言うと、モノクマは
「テレレレッテレ〜〜〜ン!『真相ルーレット』〜〜〜!」
「真相・・・ルーレット?」
「このルーレットのマス目は、オマエラが知りたいこの“セカイ”についての真相、外の世界が今どうなってるかの情報、ここからの脱出方法などなど、オマエラにとって有益な情報がてんこ盛りです!このボタンを押せば、その中からルーレットで選ばれた情報がランダムに発信されるのです!ですが、ボクはこのボタン、押しません!」
「はあ?なんだいそりゃあ?」
「このボタンを押すのはオマエラ自身!押せるのは一人2回まで!オマエラそれぞれの個室に置いておくから、好きなときに好きなように押しなよ!ルーレットが決めた真相が、オマエラ全員のモノモノウォッチに送信されるからさ!」
「なんでわざわざそんなまどろっこしいことを」
「あくまで動機を得る最後の一手を、私たちにさせたいのだろう。動機を手に入れるのも、それを原因にコロシアイを起こすのも、全て私たちの責任と後から言えるように」
「こんなところに閉じ込めてる時点で破綻してるような気もするけど・・・」
つまり、だれかがあの
「うぷぷ♫オマエラは外のことが気になって仕方ないはずだよね!だってオマエラに最初に与えた動機は、オマエラの大切な人たちの映像だもんね!」
「そんなのもそのルーレットに入ってるの・・・?」
「さあ?どうだろうね!まあでも、もしオマエラ全員が2回ずつルーレットを回したとしても、それで全ての真相が明らかになるとは限らないからね!」
「じゃ、じゃあそんなもんやる意味ないじゃんか・・・やってもやらなくても、結局分からないことは分からないままなんだろ?」
「その通りだ。それに、あんなガラクタに頼らずとも、私たちの手で明らかにすればいいことだ」
ワタルさんとレイカさんがモノクマに言う。こんな
「スニフクン、知りたい?」
「ッ!そ、そんなの知りたくないです!コロシアイになるなら、いらないです!」
「うぷぷ♫どうかな。ま、いずれ押す時が来ると思うよ。んじゃ、解散!」
そう言うと、モノクマは
「んでえ、どうするんだい?ホテルのフロントに置かれちゃあ、いつでも誰でもどんな時でも押せてしまうけどお?」
「あのな納見、雷堂と極の話聞いてたか?よく分かんねーけど押したって意味ねえんだよ」
「下越くんがちゃんと話聞きなさいね。いくらルーレットを回したって、それが正しいかどうかも分からない。知りたいことが知れるとも限らない。だったら回したって、余計に動機を得るだけよ」
「そ、そうだよね・・・。でも、やっぱり心配だな・・・。何かのはずみでうっかり押したりとか、しない?」
「とはいえ、監視は現実的ではない。やはりそこは各々の判断か。押せば、真相が一つ私たちに強制的に配布されるのだ。こっそり動機を得ることはできないが、得ないという選択も全員がせねばならん」
このまえみたいに、テルジさんだけ見ないなんてことはできない。だれかが
「でも・・・」
だけどもし、もしも、手に入った
そんなことを考えてしまうくらい、ボクはモノクマの
「あ、ちょっと研前さんッ・・・!」
「おい雷堂!」
「!」
こなたさんを呼ぶセーラさんと、ワタルさんを呼ぶテルジさんの声がした。それでボクは、ついさっきまでボクが考えてたことをおもってヒヤリとした。モノクマの
ボクがそうやってボクのことばっかり考えてるあいだに、こなたさんとワタルさんはどんどん行っちゃった。ふたりをおっかけてったセーラさんとテルジさんもいなくなって、レイカさんとヤスイチさんとのこされちゃった。
「さてと困ったねえ。あの二人、状況を改善するどころか気まずくて顔も合わせられないって感じだよお」
「雷堂の腑抜け加減には呆れたものだ。こうなったら無理矢理にでも話をさせなければならないな」
「でもどうやってえ?」
「少々姑息かも知れんが、手段を選んでいられない。スニフに一芝居打ってもらって」
「ボ、ボクですか?」
「みんなで食卓を囲めないことが悲しいと涙の一つでも流せば、あの二人なら気まずくとも同席はするだろう」
「なんだかズルいかんじがします・・・」
「それにい、スニフ氏に研前氏と雷堂氏の仲を取り持つ役をさせるっていうのは酷じゃあないかい?」
「ん・・・まあ、それはそうだが」
ボク
「まあ現実的に考えたらあ、雷堂氏に喝を入れて研前氏と話させることだろうねえ。研前氏が逃げるより先にケリをつけりゃあいいのさあ」
「やはり実力行使するしかないか・・・」
「そうは言ってないけどねえ」
レイカさんが手をバキバキならす。このままじゃ、ワタルさんがこなたさんと付き合っちゃう。でもボクがここでこなたさんに
「おい!ちょ、待てよ雷堂!」
「なんだよ、ついてくるなよ」
「研前と話つけるんじゃなかったのかよ。どこ行くつもりだ」
「・・・今は話せる気分じゃない。モノクマの動機のことだって気になるし、今はそっちの方が大事だろ」
「ああ、お前なりに考えてんのか。ならいい」
「いいのかよ・・・そんなあっさりと」
自分で言っておいてなんだけど、下越は簡単に言いくるめられた。モノクマの動機のことが気になるのは事実だけど、それよりも研前と同じ空間にいるのがいたたまれないってことの方が大きい。きちんと答え出すって決めてたのに、本人を前にするとなんでこんなに言葉が出なくなるんだ。
「まあなんだ。オレはよく分かんねえからアドバイスとかできねえけど、先送りにして状況がマシになることなんかねえぜ?くさったミカンってヤツだな」
「その喩えは違うだろ。とにかく、研前とのことは俺が自分でなんとかする。気にしてくれんのはありがたいけど、一人にしてくれ」
「分かったよ。じゃあ今日の夕飯は何がいい?」
「脈絡ってモンがないのかお前には」
この流れで晩飯のメニューなんかどうでもいいんだけどな。でもなんでもいいって言うとなんでもいいじゃ困るとか主婦みたいなこと言い出すから、適当にカレーって答えといた。なんでもいいから辛いもの食べてストレス発散したい気分だ。
「おうい。待ちなよ雷堂氏」
「んあ、納見だ」
「次から次へと・・・なんだよ」
下越からやっと逃れて一人になれると思ったら、今度はモノヴィークルに乗った納見がやってきた。つい言葉が汚くなってしまうくらいに、今の俺はストレスでいっぱいいっぱいになってた。このままじゃ、研前みたいに色んなことを喚き散らしそうだ。
「いやあ、おれが用あるわけじゃあないんだけどねえ。さっき研前氏のこと避けてたろお?それで極氏が雷堂氏の性根をたたき直すとか言ってただならぬ雰囲気だったんでねえ。忠告しておこうかとお」
「マジかよ・・・極のヤツ、なんで研前と俺のことに関してはそんなに積極的なんだ」
「あれでも女子は女子だからねえ。研前氏の気持ちを汲んでるんじゃあないのかい?」
「放っておいてくれ。お前たちが何をしても、結局は俺と研前の問題だろ。中学生じゃないんだから、自分で解決できる」
「その研前氏を前に逃げた人の発言じゃあないけどねえ」
こんな状況で人間関係をこじらせるのが一番いけないことは分かってる。モノクマを倒してここを出て行くために一致団結しなくちゃいけないことも分かってる。分かってるからこそ、俺は研前になんて返事をしてやればいいのか分からない。
「お前らなあ、告白されてその返事をする方だってしんどいんだぞ。分からないと思うけど」
「ああ、分からん」
「されたことないしねえ。羨ましい限りだよお」
「つうかさ、雷堂が研前のこと好きなんだったらこんな悩まねえよな?」
「そういう問題じゃないんだよ」
「じゃあ好きなのか?」
「小学生かお前は。好きか嫌いの二択じゃないんだって。研前はまあ・・・仲間だとは思ってるけど」
断る理由がないってだけで、研前と付き合うことには特に抵抗はない。だけど、そんなことしてていいのかって迷いがある。付き合ったら付き合ったで、また軋轢が生まれるんじゃないかとも思う。正地が言うように、フったら研前が傷つく。でも付き合ったら、少なくともそのとき研前が傷つくことはなくなるけれど、俺たち7人の関係性は今までとは変わる。そうなったときに、何が起きるのか、誰が誰にどんな気持ちを持つのか、予想がつかない。それが、俺は一番怖い。
「なんで告白なんかしてくるんだよ・・・こんなときに」
取り返せない過去に文句を言いたくなるほど、この状況は八方塞がりだ。時間が経てば経つほど状況は悪化していってるのに、解決の手立ては全く見えない。何より苦痛なのは、次にアクションを起こさなくちゃいけないのが俺だってことだ。なんで俺にこんな立場が回ってくるんだ。なんで俺がこんな責任を負わなくちゃいけないんだ。
「勘弁してくれよ・・・」
脳の奥がズキズキ痛む。どうすりゃいいんだ一体。
「こなたさん、
「ありがと」
「ごめんねスニフくん、私と極さんのまで淹れてもらって」
「
モノクマから動機の発表があった後、雷堂君から逃げるように田園エリアの方に行った。追いかけてきた正地さんとスニフ君に連れ戻されてホテルまで戻って来たけど、雷堂君の姿がないことにホッとしてる自分がいた。告白しておいてその答えを聞きたくないなんて、なんて自分勝手なんだろう。こんなことなら告白なんかしなければよかった。ずっと片想いのままでよかった。
「紅茶はあるけどお茶請けがないわね。厨房に何かないかしら」
「ボクこないだ、モノモノマシーンでこんなおっきいむぎチョコ
「あっ」
正地さんの一言で、スニフ君は部屋に走って行った。麦チョコを部屋に取りに行ったってことは、また隠れて部屋でお菓子食べてたんだ。何回言っても治らない悪い癖だ。
「茶請けはいいが、もっと解決しなければならない問題があるのではないか」
「うう・・・そうだけど、やっぱりこれは雷堂君と私の問題だから・・・解決に時間はかかるかも知れないけど、やっぱりみんなにこれ以上迷惑かけたくないよ。だから・・・今は、何もしないでほしい」
「・・・そこまで言うのなら、私はもうこれ以上何もしない。お前と雷堂に任せる」
「うん、そうして。もうみんなを巻き込みたくないよ」
「私もちょっとお節介が過ぎたみたい。うん・・・ごめんなさい」
「いいよ。みんなの気持ちは・・・分かってるつもりだから」
雷堂君にヤキを入れようとしてた極さんを正地さんと二人でなんとか引き留めて、スニフ君が淹れてくれた紅茶を飲んで落ち着いた。その間、私の正直な気持ちを話して、正地さんと極さんに、これ以上私たちに振り回されないようにお願いした。
「このままなあなあになって、告白がなかったことになっても、それはそれで集団の和は保たれる。本人を前にして言うのもなんだが、私は我々の関係性が乱されなければいいのだ」
「なかったことに・・・なればいいんだけど」
はあ、とまた大きなため息が出る。極さんにはまだ話してないけれど、私の“幸運”がある限り、きっと私と雷堂君の関係は、私が望まない形にはならないんだろうと思う。だけど、その結果誰がどんな形で犠牲を被るのか、それが何よりも心配だった。
「ただな研前、既にお前は雷堂に迷惑をかけている。告白された側にとってしてみれば、自分が答えを出さない限りこの問題は解決しない。なあなあになったとしても、雷堂にとっては変わらず未解決問題のままなのだ」
「うん・・・そうだよね」
「それでも、やっぱり雷堂くんがうじうじしてるのがよくないわ!女の子がこんなに悩んでるんだから、すぱっと答えを出すべきよ!」
「待て正地。私が危惧しているのはまさにそういうことだ。お前が雷堂を責めてどうする」
「あっ、そ、そうね・・・ごめんなさい。でも、こんな状態の研前さん、見ていられなくて」
「それは私も同意だ。どうにかして状況を打開しなければ・・・」
私のために極さんと正地さんがこんなに真剣に悩んでくれてる。もしこれが私の告白に対する犠牲なんだとしたら、もし雷堂君にフられでもしたら、やっぱり私の周りの人たちに被害が及ぶのは避けられない。だからフられるのは・・・なんて、そんなの嘘だ。ただの建前だ。結局、私は私がフられたくないだけだ。みんなの前であんなみっともない告白して、雷堂君や周りのみんなに迷惑をかけて、それでも私はフられて恥をかくことを恐れてる。どこまでも自分勝手で、理不尽で、わがままな・・・私なんて・・・。
「きゃあッ!?」
「ルーレット・・・!まさか・・・!?」
突然、妙に明るい音楽とモノクマの嬉しそうな声がホテル中に響き渡った。音の出所は、私たちの左腕だ。極さんは驚いて放心状態の私たちを守るように立ち上がって周囲を伺い、自分の左腕を見た。ちかちかする光で、私も正気に戻って画面を見る。表示されているのは、モノクマの顔が中央で笑うルーレットだった。いくつもの扇形に分かれて、順番に点滅してる。
「これって・・・!」
「真相ルーレット・・・!誰かがボタンを押したということか・・・!」
「そんな・・・!」
極さんが、この音と光が意味することを即座に判断する。真相ルーレットは、私たちの誰かがボタンを押さなければ動かない。ということは、今こうしてルーレットが回ってるってことは、誰かがモノクマの動機を・・・『真相』を手に入れようとしたっていうことだ。
「お前たちはここにいろ」
「えっ・・・極さんどこ行くの・・・!?」
「ルーレットのボタンは個室にしかないのだろう。現場を押さえに行く」
それだけ言うと、極さんは私たちが引き留める間もなく客室の方に行ってしまった。だけど、ついさっきモノクマから動機の発表があって、私たちはさっきホテルに来たところだ。雷堂君たちがどこにいるかは分からないけれど、追いかけてった下越君が厨房にいないなら、きっとまだ他のところにいるんだと思う。ってことは、今ホテルの部屋にいるのは・・・。
「・・・やはりお前か、スニフ」
「うぅ・・・」
なんと言うか、大方予想はついていたが、いざ部屋の中の様子を見てみると、そしてドアの前に立つスニフの顔を見ていると、振り上げた拳の行き場に困る。こんな状態の子供を、誰が責められようか。
部屋中に散らばっている黒い粒は、微かに立ちこめる臭いからして麦チョコか。さっき正地が茶請けを欲しがっていて、スニフが気を利かせて取ってくると言っていたな。手に握ったボトルは中身がほとんどなくなっていて、底の方にわずかに残るばかりだった。そして床の上には麦チョコだけでなく、ひっくり返った真相ルーレットが落ちていた。位置からして、テーブルの上に置いてあったものが落ちたのだろう。
俯き加減のスニフの後頭部には大きなたんこぶができていて、まだ新しいのか痛々しい赤色を帯びている。しゃがんでみればその目には涙が浮かび、声も出せない様子で唇をきつく結んでいた。
「どうした。一体何があった」
状況を見れば一目瞭然。既に答えは出ていたが、一応聞いてみる。
「・・・
「はあ・・・取りあえずこぶを冷やしにいくぞ」
「・・・はい」
今にも泣き出しそうなスニフの手を引いて、研前たちのいる食堂へと戻る。起きてしまったことはしょうがない。これからどうするべきかを考えるべきだ。まずはスニフの怪我を治して、得られた真相については共有するしかあるまい。少なくとも私では、このままスニフに泣かれでもしたらどうしてやればいいか分からん。
「それで、どうしたというんだ」
「ボ、ボク・・・わざとじゃなくて・・・」
「それは分かっている。何がどうしてああいう状態になったんだ」
「むぎチョコ・・・みなさんにもってこうとして・・・中がこぼれて・・・」
「なぜ溢した」
「あうっ・・・ごめんなさい・・・」
「謝らなくていい。私は理由を聞いてるだけだ」
「えうぅっ・・・うっ、ああうぅ・・・」
「ん?おっ!?ま、待て!泣くな!」
「うあああああん!ごめんなさぁい!」
ただ何が起きたかを聞いていただけなのに、スニフはとうとう泣き出してしまった。これでは私が泣かせたみたいではないか。慌てて泣き止ませようとするが、やり方が分からない。だから子供は苦手だ。何を考えているのか、なぜそうなっているのかを自分で説明できないから、こちらがどうすればいいか分からない。
「ど、どうしたのスニフくん・・・極さん!何してるの?」
「あっ・・・いや、ち、違うぞ正地!私は泣かせていない!スニフがなぜか・・・!」
スニフの大きな泣き声を聞いて、慌てた様子の正地が飛んできた。このままでは私が泣かせたように見えてしまう。今までスニフとろくに接する機会がなかったこともあって、子供の思考は全く分からない。少なくともその誤解はされないようにしなければ。
「よしよし・・・あら、こぶができてるわ」
「部屋から出て来たときにはもう創っていた。私は誓って手を出していない」
「疑ってないから大丈夫よ極さん。さ、スニフくんはまずこぶを冷やさないと。極さんはキッチンで濡れ布巾を用意してきて」
「う、うむ・・・分かった」
「スニフくん、頭が痛くて泣いてるの?」
「ぐすっ・・・」
スニフはぶんぶんと首を横に振る。先程より落ち着いたようで、声を上げてなくことはなくなったが、まだ鼻をすすりながら涙を袖で雑に拭っている。正地はしゃがんでスニフと目線を合わせ、頭を撫でながらゆっくり丁寧に質問していく。なるほど、そうすればいいのか。
「極さんに怒られたの?」
「・・・」
「って言ってるけど・・・極さん、スニフくんのこと泣くほど怒ったの?」
「怒ってなどいない。スニフに悪意がないことは部屋の状況を見て理解できた。2,3質問はしたが、責めていない」
「どうやって質問したの?」
正地に問われるがまま、部屋を出てからのスニフとのやり取りをそのまま伝える。頷きながら聞いていた正地だったが、すぐに顔色が変わった。どうやら私は対応を間違えたらしい。
「そんな詰問するような仕方じゃ、スニフくんだって怖がっちゃうわ。事故でルーレットが回ったとしたら、たとえわざとじゃなくてもスニフくんだって責任感じるはずだから、大丈夫よって言ってあげないと」
「す、すまん・・・」
「ごめんなさい・・・」
「大丈夫よ。スニフくんがそんなことわざとやるなんて、誰も思ってないから」
ようやく涙も止まったスニフの手を引いて、正地が相変わらず優しく語りかける。まさか正地にこんな形で助けられることになるとは思わなかった。長く感じたホテルの廊下を戻り、研前の待つ食堂まで戻って来た。研前も驚いた様子だったが、私はすぐに厨房へ行って冷水で濡れタオルを作ってスニフのこぶに宛がった。
「で、部屋に散らばったむぎチョコを拾おうとしてテーブルの下に潜り込んだら、後ろ頭をテーブルの縁にぶつけて、そのときにルーレットの機械が落ちてボタンが押されちゃったってことらしいの」
「・・・ごめんなさい」
「大丈夫だよスニフ君。痛かったね」
私には大泣きしたくせに、研前と正地に優しくされてほんのり顔を赤らめながら腑抜けた顔をしている。子供は素直というが、どうにも釈然としない。私とてスニフに特別厳しくするつもりもなかった。他の者と同じように相対しただけなのに、この違いはなんだ。
「後で部屋の掃除を手伝ってやろう。泣かせてしまった詫びもある」
「ボクも・・・ないちゃってごめんなさい・・・」
「きちんとごめんなさいできて、スニフ君はえらいね」
「さすがにそこまで幼くないでしょ?」
「それで、公表された『真相』は見たか?」
「ううん。まだよ」
「私も」
「ボクもです」
「・・・まあ、他の男子たちにも共有されているだろうから、見ておくべきだな。先に私も確認するが、きちんと見ておけよ」
泣き出したスニフに困り果てているうちにルーレットは公開する『真相』を決めたらしく、モノモノウォッチには既に選ばれた『真相』が届いていた。文書ファイルになっているということは、それなりの分量があるのだろうか。指先で操作し、ファイルを開く。表示されたタイトルからして、きな臭いものだった。
『真相No.2 超高校級の絶望』
かつて存在したと言われる、全世界規模のテロリスト及びテロ組織。“超高校級の絶望”そのものである江ノ島盾子を首魁とし、多くの人々が洗脳されテロ行為に加担したと言われている。
世界は一度絶望によって壊滅したが、希望ヶ峰学園で行われたコロシアイ学園生活内での江ノ島盾子の死亡及び残党の分裂や希望による掃討により、徐々にその影響は少なくなっていった。現在では歴史上の出来事として位置付けられており、当時の資料や大規模破壊の痕跡が文化遺産として遺るのみである。これらについて懐疑的な見方をする立場もあり、未来機関による各国への政治介入を正当化するための情報操作だという噂が実しやかに囁かれている。
しかし、絶望は消えていない。世界に人が、光が、希望がある限り、絶望は際限なく生まれる。そして江ノ島盾子の絶望を受け継ぐ者が、世界のどこかに潜んでいる。未来機関はその捜索、そして殲滅に全力を注いでいる。
どこからどこまでが本当なのか・・・頭が痛くなってくる。真相と言うからには全て事実なのだろう。つまり、“超高校級の絶望”と呼ばれるテロ組織は、一度世界を滅ぼしておきながら、その首魁である江ノ島の死亡により衰退。もはや歴史上の存在となりつつあるが、今なお世界のどこかに存在している。そういうことか。そんな話、聞いたこともない。
「どう受け止めればいいのだ・・・」
「極さん、大丈夫?紅茶飲んで落ち着いたら?」
「ああ・・・少し整理が必要だ。一度に色々な情報が手に入りすぎる。私自身の所感を伝えたり内容の確認をするために、全員でしっかりと共有しておきたいのだが」
「全員で・・・うん、その方がいい、よね」
現実問題として、この真相は私たち全員が等しく知る必要がある。情報の不均衡は不和を生む。全員が同様の情報を得たと確認するためには、全員で膝をつき合わせるのが最も簡単だ。渦中の研前と雷堂にももちろん顔を合わせて貰うことになるが、そこは仕方ない。
「ともかく研前、お前が夕食のときに部屋から出てくればいいことだ。頼んだぞ」
「・・・うん。分かった」
不安げな返事だったが、覚悟を決めた色を帯びていた。予断を許さない緊張感が漂っている。この均衡がどこかで崩れるとき、また何かが起きてしまう気がしてならない。
「おらよ!」
どかんっ、と音がしそうなくらい勢いよく、下越くんが大きなお皿を私たちが囲むテーブルの上に載せた。漂ってくる湯気に乗った香りが、鼻から胃袋まで駆け抜けて食欲を湧かせる。彩り豊かなお鍋の中から、私たちがよく知るものよりずっとシャバシャバなルーを、まんまるに盛ったご飯の周りによそっていく。野菜や海鮮がたくさん入った豪華なお皿が、私たちの前に並べられていく。
「普通のカレーじゃお前ら飽きただろ。今日はグリーンカレーにしてみたぜ!辛さ調節のソースもあるからスニフとかは言えよ!」
「いただきまーす!」
また凝ったものを作ったわね、なんて感心しているうちに、スニフくんと雷堂くんと納見くんはお皿にスプーンを入れてかっこみ始める。これだけたくさん具材が入ってるとどうやって食べていいか困るくらいね。
「うおおっ!?辛あっ!?」
「ヒーッ!ハーッ!ベロいたいれす!」
「雷堂が辛いもん食いたいっつうから、スパイスとか強めにしてあるぜ。だからソースあるっつったのによ」
「先に言うべきではないのかそれは」
「そのソースってなに?」
「ココナッツミルクベースにして味を邪魔しねえように調節したもんだ。辛さが抑えられて食べやすくなるぜ」
「わ、私はもらおうかしら・・・」
自分のお皿によそったカレーにもソースをかけながら、下越くんが呆れたように言う。いつも下越くんは料理に手を付けるのは必ず最後で、みんなの反応を見てから食べ始める。今回も納見くんたちのリアクションを見て自分のを調節したみたい。味見はしないのかしら。
「いやー、今日は研前も一緒に食べられてよかったぜ!辛えもんは熱いうちに食べるのが一番うまいからな!」
「それはそうかも知れんが、その他にも目的がある。私が同席するように言ったのだ」
「な、なんでだよ?」
「今日明らかになった『真相』について話すためだ」
お皿とスプーンがぶつかったりこすれる音が止まった。私たちはその目的を知っていたけれど、男子3人はそのことについてはまだ話をしてなかった。モノモノウォッチに配信されてるから、きっとみんな各自で読んだりはしたと思うけれど、そのことをこうしてみんなで集まって話すとは思ってなかったんだと思う。だから動揺もする。
「先に言っておくが、悪意を持ってルーレットを回した者はいない。あれは事故だ」
「事故・・・ってどういうことだ?」
「まず、押されたのはスニフのルーレットだ。テーブルから落ちた拍子にボタンが押される格好となったが、スニフ自身に押すつもりはなかった」
「ご、ごめんなさい・・・」
「もういいのよスニフくん。大丈夫だから」
また頭を下げるスニフくんを宥めて、男子3人に経緯を説明する。スニフくんが頭をテーブルにぶつけたことでルーレットが回ることになったけれど、それは決してわざとじゃない。外の世界の情報という誘惑に負けたわけでも、誰かがまたコロシアイを起こそうと企んでいるわけでもない。それを分かって欲しかったから、極さんはきちんと説明する場を設けたんだわ。
「まあ、それは仕方のないことだとしてえ、配信された動機は全員見てるってことでいいのかい?」
「下越君も読んだの?」
「・・・まあな。オレはルーレットなんかやるつもりはねえが、この生活の真相とか言われたら、やっぱり気になる」
「おれと下越氏は一緒に見たよお。雷堂氏は分からないけどお」
「読んだ。俺も下越と同じだ。俺にしてみれば、いきなり真相が一つ明かされたわけだから、つい見てしまったんだ。動機になり得るって分かってたのに・・・」
「そこはいい。どのみち、この場で改めて共有するつもりだった。情報の不均衡は避けねばならない」
「だけど、いきなり言われても信じられないわよ。こんなめちゃくちゃなこと」
全員が自分のモノモノウォッチで、配信された動機を見ながら訝しむ。“超高校級の絶望”なんて名前、歴史上の出来事だっていうけれど、はじめて聞いた。それにその名前や真相の記述から、希望ヶ峰学園が大きく関係してることは明らかだわ。世界を壊滅させるほどの力を持ったテロ集団が、“超高校級”とは言えたった一人の女子高生から始まったなんて、そんなの信じられない。未来機関なんて国際機関も聞いたことないし、まるで物語の中のことみたい。
「この江ノ島・・・たてこ?って名前は、誰か聞いたことあったりするのか?」
「ジュンコさんです。ボクきいたことないです」
「歴史上の出来事とあるから、図書館で調べてみた。結果から言うと成果はほぼない。間接的に言及している記述はいくつかあったが、直接この出来事を説明している書物はなかった」
「モノクマのデマカセ・・・ってこたあないよねえ。ウソでいいならこんなもんよりもお、もっとおれたちに直接コロシアイを促すようなことをしてくるはずだしい」
「っていうか、どっちにしろその“超高校級の絶望”ってのはもう今はいないんだろ?こんなもん、何の意味もねえじゃねえか」
「何の意味もないってことはないと思う・・・。だって、絶望って、モノクマがよく言ってることだよ」
「モノクマが、この“超高校級の絶望”ってヤツと関係してるってことか?」
「その可能性は高いだろう。今となっては歴史上の出来事となっているようだが、真相の一つとして与えられた以上は、むしろこのコロシアイに何かしらの形で関わっていることは間違いない」
真相っていう名目で明かされた情報だけど、そこから分かることはほんの僅か。こんなのじゃ、逆に疑問や不安が増すばかり。だけど、きっとそれがモノクマの狙いなんだわ。もう少し知りたい。あとちょっと知りたい。そんな気持ちを起こさせてますますルーレットを回させる。そうして動機をどんどん増やしていって疑心暗鬼を加速させる。その先にあるのは・・・やっぱりコロシアイだ。
「このモノクマランドそのものがどういう場所かは分からんが、ミュージアムエリアにあったあのふざけた記録館やこの真相の記述から、コロシアイは何度も行われてきていること、そしてこの“超高校級の絶望”という集団が関わっていることは確定事項としていいだろう」
「・・・それが分かったからってなんだってんだよ。結局、ここから脱出する手段はないままだろ」
「ああそうだ、雷堂。どのような真相を与えられようと、私たちのすべきことは、目指すものは変わらない。モノクマを打倒し、ここから脱出することだ。そして、真相ルーレットはこうして面倒事を増やすだけだと、ここにいる全員が理解した。分かるな?」
「要するにい、もうあのルーレットに関わるなってことだよねえ」
「ああ、そうだ。だが、事故でルーレットが回ることも考えられる。だから、私の研究室に全員のルーレットを回収させてもらう」
極さんの提案は、合理的でシンプルだった。研究室はその部屋の主である極さんしか入れない。だからそこにみんなのルーレットを集めてしまえば、極さん以外にルーレットを回すことはできなくなる。当然、極さんがわざわざ動機になるかも知れないものを手に入れようとするとは思わないし、何より言い逃れしようがない状況になってしまう。
「
「またヘマしないように気を付けないとねえ」
「部屋から追っ払えるならなんでもいいや。あれやたらデカくて邪魔だったんだよな」
ひとまず、極さんの研究室にルーレットを集めるっていう方向で一致した。“超高校級の絶望”については、今は分からないことが多いから、手が空いてる人たちで図書館やその他エリアでその手掛かりとか情報を集めることになった。下越くんは毎日の料理があるし、極さんや雷堂くんはほぼ毎日農耕エリアに行く用事がある。だから、私たちが頑張らないと。
コロシアイ・エンターテインメント
生き残り:7人
この話で事件起こしてもよかったなあなんて思ったり。
場を繋ぐだけだった話がいつの間にか長くなっていたので、ここらで一旦
ところで今日はおめでたい日です。
ダンガンロンパカレイドは今日を以て2周年を迎え、3年目に突入しました!
そして前作ダンガンロンパQQの主人公 清水翔の誕生日でもあります。あと俺も
本当は昨日の朝のうちに書き終わったんですが、せっかくなので今日投稿しました。
残り少ないですが、3年目もどうかお付き合いくださいませ。