「・・・?」
眩しくて目が覚めた。寝るときは薄明かりにするから眩しいなんてはずないんだけど、天井の照明はぎらぎらに輝いてた。っていうか何個ついてんの?チューリップみたいな照明が部屋のあちこちについてて、よく見たらアタシは床に寝てた。なんでベッドじゃないの?
アタシの目覚めた部屋は、寝室っていうか、休憩部屋みたいで、簡単なトイレとシンクとちゃぶ台があるだけだった。見覚えのない部屋だけど、誰かの部屋に連れ込まれたってわけでもないみたい。壁の隙間に一段低くなってるところがあって、そこにアタシのビーサンがあった。こっちから外に出られるのかな?
「は?」
なんかめんどくさいことに巻き込まれる前に出て行こうと、起き上がってビーサンを履いた。そのまま出て行こうと思ったら、壁の裏側には畳の部屋よりもうちょっと広いスペースがあった。外に出る用のドアもあるけど、それ以上に気になったのが、広い窓だ。窓っていうか、窓口みたいになってて、ふかふかのリクライニングチェアが三脚くらい並んでた。スーパーに置いてあるレジと金庫もあって、窓口の外とやり取りするためのマイクもあった。手元のカウンターに何か置いてあった。
「換金表?」
そう書かれてたそれは、お金とメダルを交換するときのレートの一覧だった。お金からメダルと、メダルからお金と、あとチップとかチケットっていうのもあるみたい。いや意味分かんない。ここどこなの?なんでアタシ、こんなところで寝てたの?ってか誰かいないの?
なんか周りを見てみた感じ、ここは換金所っぽい。よく分かんないけど、お金とメダルを交換する場所、メダルってなに?なんか高級そうな雰囲気もあるし、っていうかアタシほとんど水着なんだけど、こんなところいていいの?何もされてないよね・・・?
「ねえちょっと!すいませーん!」
静かな場所で大きな声を出すのもちょっと勇気が要る。がんばっているかどうかも分からない人に話しかけたのに、何の返事もなかった。嘘でしょ。アタシしかいないの?もしかして、アタシ知らないうちにここに閉じ込められた?ってかいま何時?
ふと自分の左腕を見ると、変な機械が付いてた。腕時計みたいな、でもスマホっぽい感じもする。時間が表示されてる。ちょっと触ってみると、色んなアプリがついてるみたい。っていうかアタシこんなの見覚えないんだけど。外そうと思ったけど、どこでどういう風に留めてるのか分からない。何これ?外せないじゃん!
「なんか怖い・・・ねえ!本当に誰もいないの!?」
もう一回声を出してみたけど、やっぱり同じだった。もうやめてよ。知らないところに独りぼっちとか怖くてしょうがないんだけど。っていうかマジでここどこなの?なんでアタシこんなところにいるの?だってアタシはいつもみたいにベッドで寝て・・・あ、違うわ。朝になって朝ご飯食べて、学校行ったんだった。でもその学校っていうのが・・・ああ、そうだ。希望ヶ峰学園。
「そうだ・・・アタシ、“超高校級”だった」
あまりに実感がなくて忘れてた。アタシ、あの希望ヶ峰学園からスカウトされちゃったんだった。それで入学式のために学園に行って、門を潜って・・・その後からが思い出せない。え?じゃあここ希望ヶ峰学園?いやそんなわけないじゃん!仮にも学校に、こんな怪しげな建物があるわけないし!
「うーん」
もうここでうじうじしててもしょうがないし、思い切ってこの狭い部屋の外に出ることにした。さっきのドアのノブを回すと、鍵はかかってなかった。やっぱり誰かがアタシをここに運んだのかな。でも知らねーしそんなの。勝手に出て行っちゃうから。
ドアを開けると、すごく広かった。中からじゃよく分かんなかったけど、柱が少ない広い空間に、観葉植物とか変な飾りのテーブルがたくさん並んでて、豪華な感じの照明で明るいんだけど、なんとなく薄暗い雰囲気がある。よく知らないけど、この場所を一言で表すんだったら、これしかなかった。
「カジノ?」
もちろんアタシは高校生だし、そんなところ行ったことない。だけどイメージの中にあるカジノとほとんど同じだった。っていうか日本にカジノってあったっけ?なんか香港とかだったらよく聞くけど。えっと、香港って中国語だっけ?
「!」
物凄く静かな場所だったせいか、床が絨毯になってたからか、遠くの方から微かに聞こえる音が聞き取れた。機械の音だけど、明るい音調だったり暗い音調だったり、なんかいかにもこういう場所で聞こえてきそうな、バブリーな感じの音だった。音がするってことは、あっちに誰かいる?どんな人か分かんないけど、良い人なら頼れるし、悪い奴だったら逃げればいい。こんだけ広ければなんとかなるでしょ。
音を頼りに、カジノの中を進む。見晴らしがいいからいきなり死角から襲われるみたいなことはないけど、やたら広い。さっきの換金所から音のする方まで歩いてるけど、なかなか着かない。これが一つの建物の広さ?やっぱりここって日本じゃないのかな。もし人がいても言葉が通じなかったらどうしよう。こんなことならちゃんと英語の勉強やっとけばよかった。
「・・・?」
歩いてる間に、色んなテーブルや機械を通り過ぎた。たくさん並んでるのはスロットマシーンだった。普通は数字の7とかが絵柄にあると思うんだけど、なんか暑苦しそうな男の顔とか、外国人の子供の顔とか、なんか気持ち悪い。なにこれ。
それ以外だと、トランプが並んでて枠線とかなんかのマークとか英語が書かれてる小さいテーブルがあった。たぶん、トランプゲームをするための場所なんだ。こういうところでやるのって、ババ抜きじゃないよね。えっと、ポーカーとかブラックジャックとかあれだよね。
「?」
テーブルやスロットマシーンで入り組んだところを進んでいくと、このカジノの中でも特に広くて目立つ空間に出た。そこはたくさんの椅子が並んでて、真ん中におっきなガラスケースがあった。椅子の一つ一つにモニターがあって、ガラスケースの中には物凄く大きなルーレットがあるみたいで、真上に設置されたカメラの映像がおっきなスクリーンに映し出されてる。なんかその光景が圧倒的で、思わず見とれちゃってた。だからそこに3人も人がいたことに気付くのがちょっと遅かった。
女の子が2人と、男が1人。女の子の一人は頭の後ろで長い髪を結んでてピンクのジャケットを着てた。赤いメガネの奥から覗く目がなんかキツくって、気が強そうな感じがする。もう一人の女の子は、だぶだぶでしましまの服を着て袖から手が出てない代わりに肩が出てた。巨大ルーレットの一席に座って画面をめちゃくちゃに叩いてる。なんで裸足なんだろう?最後の男は、ゴーグルとかチェーンとかベルトとかゴツいアクセをいっぱいつけて、ダメージコートを靡かせてた。髪は長くて荒っぽい感じがするけど、きちんとまとまってた。
「あ・・・」
「ほう、もう一人いたか」
「おっ?へえ水着か!いいねえ、大胆なカッコしてんじゃんか!結構遊んでんじゃね?イイねえ、ソソるぜ!」
「は?」
私と目が合うと、ピンクジャケットの女の子と男が会話なのか微妙な感じで話した。もう一人の女の子は私にも気付いてないみたいで、まだルーレットに夢中だ。
「どれどれ?なーんか遊んでるっぽいけど、よく見たらなんかカッコだけっぽいな。そういうのもいいぜ!強気に出られると弱いっつうか、必死で頼めばいっぱっ・・・!?ほげがあっ!?」
「・・・ッ!!?」
男の方がアタシの胸の辺りをじろじろ見ながら近寄ってきて、なんか物凄くセクハラめいたことを言われそうになったところで、もう一人の気の強そうな女の子が無言でその男を後ろの放り投げた。歩いてきて椅子に座るくらいすごい自然な流れで人が吹っ飛ばされていったから、事態を理解するまでちょっと時間がかかった。
「なんだ今の・・・?」
「タイガー・スープレックスだ」
「タイ・・・?」
「いや、なんでもない。すまんな。奴は女と見ると誰彼構わずセクハラをせずにはいられないケダモノなんだ」
「いや、イラっとはしたけどそれ以上にびっくりしてる」
「気を付けろ!そいつとんでもねえ暴力女だぞ!その証拠にオレは今ので両肩を脱臼した!」
「元気じゃん!」
「ケダモノに耳を貸すな。鼓膜が腐る」
「おいおいおいおい!いくらなんでもそれは聞き捨てならねえぞ!このオレを捕まえて鼓膜が腐る!?鼓膜から惚れるの間違いだろ!?」
「はあ?なにそれ?」
意味が分かんない。この人達なんなんだろ。何このコンビネーション。なんかお笑いとかやってる人たちなのかな。すごい身体張ってるけど。ちょうどそこにあった柱に肩をぶつけて脱臼を治した男が、意味不明なことを言いながら怒ってきた。
「まあ、機械越しの声じゃオレの魅力の百分の一も伝えられないわな。やっぱ声もナマだよな!ナマの方が気持ちいいに決まってんよな!」
「本当に歯ァ全部折るぞ」
「んなことしたら日本の音楽終わるぞ!っていうかそっちの水着のカノジョは、オレのこと知ってるわけ?」
「知らねーよあんたみたいなカス」
「カスて!じゃあ思い出させてやるよ!ぜってえ知ってるからなオレのこと!名前聞いて腰砕けになんなよ!?」
『“超高校級のDJ” 城之内大輔(じょうのうちだいすけ)』
すごい自分で前ふりをして自己紹介した。城之内大輔・・・言われてみると、悔しいけど、聞き覚えがあった。確か、ラジオ番組とか音楽イベントで活躍してる高校生DJだっけ。友達にラジオ番組のファンがいたっけ。カッコイイ声だって言ってたけど、そうかな?少なくとも本人を前にするととてもじゃないけど、カッコイイなんて思えない。
「その顔は知ってるって顔だな?へへ、オレは女子にはサービス精神旺盛なんだよ。リクエストにゃ絶対応えるぜ」
「じゃあ今すぐ消えて」
「オレが目立たねえ感じのはNG!!」
「うるっさいこいつ・・・」
「まあ気にするな。こういうのは構うほど図に乗る」
「プロレス技かけた人の言うこと!?」
有名人って結構調子に乗ってたりお高くとまってたりしてるって言うけど、こいつの場合はそれが突き抜けてる。っていうか勘違いしてるんじゃないのかな。アタシは別にこいつのファンでもなんでもないのに、女子は全員自分の虜みたいなこと言って、ホント今すぐこいつ消えてほしい。
「っていうか、“超高校級”?こんなのが?」
「遅え!もちろんオレが“超高校級”じゃなかったら誰が“超高校級”だってんだよ!希望ヶ峰学園ももったいねえよな。もう一年早くスカウトしてりゃ今年の入学者は女子が倍増してたはずだぜ」
「口直しといってはなんだが、私も簡単に自己紹介しておこう。極という。彫師をしている」
『“超高校級の彫師” 極麗華(きわみれいか)』
「彫師?」
「いわゆる刺青やタトゥーを入れる職人のことだ」
「へえ〜、すごいじゃん。なんかカッコイイ」
「それオレにかける台詞!」
「思っているよりいいものではないぞ。一生物だからトラブルが付きものだしな」
さっきのケダモノ、城之内だっけ?ほどじゃないけど、極ちゃんもよく見ると結構ゴテゴテした格好してる。彫師っていう肩書きはよく分からないけど、タトゥーを入れる職人なんて、カッコイイじゃん。なんか極ちゃんはあんまり嬉しくなさそうな顔をしたけど、薄暗い照明で顔に影がかかってすごく渋い感じになってた。カッコイイこの娘・・・。
「なるほどな、そういうトラブルもこの腕っ節で乗り越えてきたってわけがああああああああッ!!!」
「触るな汚物が」
「ちょっ!?なにしてんの!?」
「チキンウイングアームロックだ」
「チキン・・・!?」
「ギブギブギブ!!ごめんごめんごめんごめんごめんて!!」
「そっちで丸まってろ」
「ふげえ」
わざわざ会話に入ってきた途端に目にも止まらぬ速さで腕の関節を決められた城之内が、見てるこっちが痛くなりそうなえげつない顔をした。やっと技を外されたと思ったら、極ちゃんに蹴飛ばされて隅っこの方に転がっていった。なんか、すごく扱いに慣れてる。
「二人は知り合いなの?」
「なぜだ?」
「極ちゃんが、なんか城之内の扱い分かってる感じがするから。城之内も素直に言うこと聞いてるし」
「いや、私たちも全員バラバラに目を覚ましてついさっき会ったばかりだ。私は向こうのスロットマシーンコーナーで、こいつはトランプゲーム台で目を覚ましたらしい」
「初対面の相手にプロレス技かけてたの!?」
「頭に血が上るとクセでな。安心しろ。手加減はできる」
「そういう問題なのかな?」
「オレにも手加減してくれぇ・・・」
「あっちでルーレットをしている奴は、最初からずっとあの調子だ。話を聞く限り、私たちと同じ状況らしいが」
「あの娘・・・?」
極ちゃんが親指で指した裸足の女の子は、まだルーレットの画面をばしばし叩いて、結果に喜んだり驚いたりしてる。後ろから覗いて見ると、私と同じように腕に巻いた機械を使ってお金を賭けてるみたいだった。でもその賭け方はめちゃくちゃだった。
ルーレットのマスは数字じゃなくて、さっきスロットマシーンでみたような人の顔になってて、それを見た瞬間、私は背筋が凍った。よく見たらその顔の中には、私や極ちゃんの顔もあった。なんで?なんで私の顔があるの?なにここ?カジノじゃないの?それにこの子、この子の顔もあるのに、なんで何の疑問も持たずに遊んでるの?この子も含めて、すごく不気味だった。
「あのっ・・・」
「んぉー?あれ?キミのことは始めて見るよー♣」
「ああ、うん。いま来たところだからね」
「そーなんだ!マイムに何か用?お話したいのかなっ♫」
「ええっと、取りあえず名前を知りたいなと思って」
「いいよー♡あのね、マイムはね、マイムっていうんだー♡」
『“超高校級のクラウン” 虚戈舞夢(こぼこまいむ)』
「クラウンっていうのはピエロのことねっ♡だからマイムは色んな芸ができるんだよー☆」
「そ、そうなんだ。あの、そのルーレットは・・・?」
「マイムたちの顔があるでしょ?ヘンだよねー♫だから調べてるんだよっ♫」
「普通に遊んでるようにしか見えないけど」
「遊んでるからねー♫」
なんかヘンな子だった。自分の顔が描いてあるルーレットを何の躊躇もなく遊んでるし、そもそもこの機械の使い方を知ってる。もしかして、何か知ってるんじゃないのかな。でもまたルーレットに夢中になっちゃって、アタシの方から声をかけられる感じじゃなくなっちゃった。こんな子でも“超高校級”なんだ。なんか意外というか、“超高校級”ってなんでもありなんだなって思った。
「あ゛ぁーーーッ!!」
「ひっ!?」
「忘れてた!キミの名前聞くの!」
「え」
「ああ、そうだったな。そういやお前の名前も“才能”も聞いていなかった」
「そういやそうだ。まあオレは名前も知らねえ女ともねぶらふぁ!!」
「ん?なに?」
「裏拳打ちだ」
「違う違うっ♠ダイスケはなんて言ったの?」
「知らなくていい」
「ふーん?それじゃ、キミのこと聞かせてよっ♡」
いきなり大きい声をあげるから何事かと思ったら、そういえば私もこのクセの強い人たちについて行くので精一杯で忘れてた。自分のことを話してなかった。
「あ、それじゃ、簡単に」
『“超高校級のサーファー” 茅ヶ崎真波(ちがさきまなみ)』
「皆みたいに仕事とかじゃなくて、ただアタシが好きだからってだけだけど・・・よろしく」
「サーファーさんかっ♫じゃあ海に行ったことあるんだ!」
「そりゃまあ」
「いいなー♡マイムは海行ったことないんだー♣」
「そうなの?」
「ずっと団長さんと一緒にサーカスであちこち行ってたんだけど、海にだけは行ったことなかったんだよねー♣いいなー♡マイムも海行きたいなー♫」
「ただ好きなだけで希望ヶ峰学園に呼ばれることはない。誇るべき“才能”ということだろう」
「え・・・う、うん、ありがとう」
「えへへっ♢照れちゃうなー♢」
「なんでお前が照れてんだよ」
「あっ!間違えた!」
なんかクセが強いけど、妙にまとまりがある。城之内が行きすぎたら極ちゃんがシメてくれるし、極ちゃんはしっかりしてて頼れる感じがする。虚戈ちゃんは何考えてるか分かんないけど、悪い子じゃなさそう。でも結局、ここにいる誰もここがどこで、なんで“超高校級”が集まってるのか分かんないみたい。この建物はおっきなカジノになってるらしくて、みんなこの建物の中だけで起きたんだって。じゃあこの外に出れば何か手掛かりが見つかるのかな?
「出口を探す前に、他にも寝ている者がいないか探そうと相談していたところだ」
「それでそこにアタシが来たってわけね」
「ああ。4人目がいたら5人目もいる可能性がある。さて、出口を探すべきか5人目を探すべきか。どちらも存在するかは分からんがな」
「ちょっ、怖いこと言わないでよ!出口あるに決まってるって!」
「どうだかな。最近のファンは過激だからなあ。誘拐して監禁なんてあり得るぜ?」
「マイムたちカンケーなーい♠」
もう、やっぱさっきのナシ!虚戈ちゃんも城之内も呑気すぎるし極ちゃんは発想が怖い!アタシはどっちかと言うと、このカジノを十分に探索してから外に出た方がいいと思うな。出た後で戻れなくなったりしたら困るし。っていうか、本当にここ係員の人とかいないの?なんでアタシたちだけなの?
そんな疑問を振り払うように、アタシたちの腕についた機械が震えた。そしてどこからか、奇妙奇天烈な音楽が流れてきた。このカジノの落ち着いた雰囲気に似合わない、ふざけた音だった。
「んだこの音!最悪だな!最悪過ぎて新しいジャンルの音楽かと思った!」
「こんなものが街に溢れたら私は耳栓を付けて過ごす」
「マイムは息止めるー♠」
「息止めても音は聞こえるからね!?」
「えー!?くさいのはそれで大丈夫なのにー?」
逆に聞きたいけど今までうるさいのを息止めて耐えてたの?なんていうアタシの疑問はすぐにどうでもよくなった。それよりもずっと気になることが起きた。音楽が鳴ったすぐ後に、音楽の比じゃないくらいに気持ち悪い声が聞こえてきた。
『オマエラ!おはようございます!ただいま、地図に表示された場所に、至急集合してください!オマエラ!おはようございます!ただいま、地図に表示された場所に、至急集合してください!』
ものすごく嫌な感じがする。悪意があるっていうのかな。腹の底から嫌悪感が勝手に湧き上がってくるような、最悪な声だ。地図に表示された場所って言われても、地図なんてどこにあるんだ。と思ったら、さっき震えた機械にそれっぽいのが出て来てた。
「何これ、ここに来いってこと?」
「そのようだな。どうする?」
「行くに決まってんだろ!あんな音楽のままじゃ音が不憫だ!オレが神曲にミックスしてやらあ!ついでに作った奴に音楽ってのが何か分からせてやる!」
「マイムはもうちょっとルーレットやってたいけどなー♣でもみんな行くなら行くよー♫」
「茅ヶ崎はどう考える」
「えっ、ア、アタシは・・・行った方がいいと思う。ここがどこだか分かんないし、さっきの声の奴はこの建物に放送できるってことは、何か知ってることは間違いないし」
「そうだな。だが用心しろ」
「よーじん?なんでえ?」
「手段も理由も目的も分からんが、私たちは曲がりなりにも“超高校級”だ。希望ヶ峰学園から私たちをこんなところに連れ去るなど並大抵のことではない。私たちを待っているのはそれなりの相手だということだ」
「お、おおい・・・それじゃ、マジでオレたちが誘拐されたみたいじゃねえか」
「ほぼ誘拐のようなものだろう」
誘拐って、なんか物騒な話になってきた。そんなことを落ち着いて話せる極ちゃんはすごいのか、それともアタシたちよりちょっとズレてるのか。でも頼もしい。虚戈ちゃんはへらへら笑いながら先を進む極ちゃんの後に付いて行って、城之内もちょっと不安げな顔をしながらそれに付いて行く。
アタシは、さっき言った理由でやっぱり行くのがいいと思うけど、でもそんな怖いことになるんだったら行かない方がいいんじゃないかとも思えてきた。でも、ここに一人で残るのもイヤ。ずるずると引きずられるように、アタシは小走りで3人の後ろに付いて行った。
これでプロローグのキャラ紹介パートはおしまい!さすがに4つに分けると長く感じる!でもその分それぞれを強烈にアピールできたかなと思います。
次回からの更新は少し待ってて下さいね。今のところ気になったキャラなど教えてくださると嬉しいです!