ダンガンロンパカレイド   作:じゃん@論破

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(非)日常編2

 

 テールテールジージーテルジージー♫テールジはおー部屋でひーきこもりー♫部屋出ろ飯出せ元気ー出せー♫

 

 「ごめんくださーい♡しょぼくれたテルジに可愛いクラウンのお届けものだよ☆」

 

 コンコン♫ノックノック☆出ないなー♣お返事もないなー♣せっかくマイムがデリバリークラウンしてあげてるのに居留守するなんてどういうこと♠でもワタルにお願いされちゃったからマイムはあきらめないよ☆八方手を尽くすよ♫だからこんなこともあろうかと思っていたマイムは、部屋から秘密兵器を持ってきていたのだった☆

 ガサゴソっと帽子の中から〜・・・じゃじゃじゃじゃーーーん☆ピッキングツール〜♡これでどんなお部屋も開けゴマなのだ〜♢

 

 「あそれ、ほそれ、くるくるくる〜っと♡」

 

 マイムは器用だからこんな鍵を開けるのなんて、おちゃのこさいさいカッパの屁なんだよ☆トリセツついてるしね♡何かあっても笑って許してね♡

 

 「ぱんぱかぱ〜ん♡デリバリークラウン一丁お待ちどお〜♢落ち込んでる子はいね〜が〜♠・・・あれ?」

 

 ありゃりゃのりゃ〜?ここってテルジのお部屋だよね?そんでもってテルジってずっと誰も見てないよね?だからお部屋に引きこもってるはずだよね?だからマイムは励ましに来たんだよね?うん、そのはずだよね?おかしくないよね?

 だけどだけど、どうしてこのお部屋にはだーれもいないのかなあ???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「で、戻って来たというのか・・・」

 「そうなんだあ♨まあ〜消化不良感あるけどオーディエンスがいないんじゃクラウンはなんもできないよね〜♨」

 「なぜ茶を飲んでまったりしている。探しに行くとかしないのか?」

 「だってテルジがどこにいるか分かんないもん♣それにワタルにお願いされたのはテルジを励ますことで、テルジを探すのはお願いされてないもん♫」

 「ふむ、タイミング的には裁判の翌日から行方不明・・・昨日の今日だが、もしものことがあるやも知れんな」

 「・・・」

 

 昼飯を食べに戻って来てみれば、虚戈が茶を飲みながら菓子を摘まんでいたので、少し分けてもらった。聞けば、雷堂に頼まれて引きこもっている下越を連れ出すために訪ねてみたが、部屋はもぬけの殻だったと。となると、下越は一体どこに行ったというのだろう?同じく昼飯を食べていた荒川の言葉で不安を煽られる。

 

 「このことを知っているのは?」

 「マイムとサイクロウとエルリ、あとワタルも知ってるよ♡でもワタルがみんなに言ってるかも知れないから分かんない♠」

 「気楽なものだな。下越の安否も気になるが、我々は今後一切あの味を味わえなくなるのだぞ。研前とスニフ少年のおにぎりもまあ、悪くはないが」

 「今はこれが精一杯・・・♫」

 「大泥棒風に言っても洒落になっていない。とにかく下越を探さなければ」

 

 そう言って荒川は懐からペンとメモ帳を取り出し、何やら書いてホテルの入口に貼り付けて出て行った。『下越の行方知れず。みな探せ』か。要件は伝わるが、電報のようだな。俺もどこかを探してみようか。

 

 「ねえねえサイクロウ♫サイクロウはテルジはどうなっちゃってると思う?」

 「さあ・・・無事だといいが、万が一のことも考えておくべきなんだろう・・・。俺はまだ覚悟ができん」

 「もしかしたらあれかもね♡前にモノクマが言ってた人♢なんだっけ?」

 「・・・“超高校級の死の商人”、か」

 「それそれ♡マイムたちの中にいるんだってね♡もしかして・・・サイクロウだったりして☆」

 「何が言いたい?」

 「ふふ〜ん♫サイクロウもそろそろ慣れようよ♡モノクマランドでは人が簡単に死んじゃうんだよ♣みんな100%の信用なんかしないんだよ♣誰かが何かを隠してるかも知れないんだよ♣覚悟なんかしてもしなくてもおんなじなんだよ♣マイムお姉さんからの忠告です☆」

 「姉は血縁の一人だけで勘弁してほしい。あってもなくても同じ覚悟なら、せめて俺は自分の気持ちに整理を付けてから・・・」

 「それが甘いって言ってんの♠サイクロウ、もっと真面目に考えようよ♠」

 

 あどけない笑顔のまま物騒なことを口走る虚戈に、俺は圧倒された。席はテーブルを2つ挟んで離れている。声色は明るく子供のように軽やかだ。それなのに耳から全身に響き渡るような言葉の重みに、俺の身体中が緊張した。虚戈が次に発する言葉の一つ一つに、強く警戒してしまう。

 

 「か、考えるって・・・何を?」

 「“生き抜く”ってこと♡」

 

 それだけ言って、虚戈はスキップで図書館の方に出て行った。きっとまたはしゃぎ回ってモノクマに怒られるのだろう。その子供のような振る舞いに反して、言動や態度は恐ろしいほど冷酷でシビアだ。一体ヤツは何者なんだ。なぜ俺に“超高校級の死の商人”の話なんかしたんだ?

 まさか虚戈は──・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボクのHeartはHotelからモノクマCastleにつくまでのあいだずっとDrummingしてた。今だってそうだ。こなたさんと手をつなぐのなんて何回もしたけど、これがDateなんだって思うだけでとってもSpecialなことに思えてくる。

 いつもよりこなたさんの手があったかくてやわらかいような。ぎゅっとにぎった手からつたわるPulseでこなたさんのHeartまでかんじるような、そんなくらいボクはいまWhole bodyでこなたさんをかんじてる!!

 

 「Excellent・・・!」

 「スニフ君、大丈夫?なんか息が荒いけど具合悪いの?」

 「ダイジョブです!No problemですモーマンタイです!」

 「それならいいんだけど・・・」

 

 おっとあぶないあぶない。あんまりウキウキしてるところがバレたらこなたさんに子どもっぽいと思われる。DateはLadyfirstで、だけどおとこの人がLeadするもんだってPapaが言ってました。だから今日のボクはいつもの子どもっぽいボクじゃなくて、リッパなGentlemanなんですよ!

 

 「こなたさん、モノクマCastleです。ここはボクのTicketで入りましょう。Dateはボクがおそうざいしたので」

 「うん、お誘いありがとう」

 「It's nothing(なんの)!」

 

 モノクマCastleのFacadeはSuspension bridgeになってて、ボクたちがそのまえに来たらかってにおりてきた。Sensorがどこかにあるのかな。そしてBridgeがひらいてMoatをわたれるようになると、どこからともなくFanfareがきこえてきた。まるで、かえってきたLoyaltyをむかえてるような。

 

 「Wow・・・」

 「すごい演出だね・・・モノクマがしばらく開放しなかったわけだよ。こんなに凝ってるなんて」

 

 BridgeをわたっていきなりDoorがある。その前にはSignboardがあって、モノクマCastleのRuleがかいてあった。All Japaneseでボクにはむずかしかったけれど、モノモノウォッチのNew ApplicationでTranslateできるともかいてあったから、やってみた。High technologyだなあ。

 

 「スニフ君、読める?」

 「モノモノウォッチ、Translationできます。たくさんあるけどダイジョブです」

 

 『モノクマ城をご利用のお客様へ

  モノクマ城は夢と魔法と絶望の国、モノクマランドの象徴であり、最大の目玉です。以下のことを守っ

  て、どなた様も快くご利用いただけるよう、ご配慮をお願い致します。

   ・入城にはチケットが必要で、1枚のチケットで男女1名ずつ入城できます。

   ・城内に一度にご入場できるのは、チケットを使用して入城したペアのみになります。

   ・現在地の正門が城の入口となっています。チケットをこちらに提出ください。

   ・内部には複数の部屋や廊下などありますが、指定の順路はありません。ご自由にご覧下さい。

   ・退城後、入口からの再入場はできませんのでご注意下さい。

   ・以上のことをお守りいただけない場合、いかなるものも保証いたしかねます。

  おすすめポイントは1階“礼拝堂”と、最上階“姫の部屋”となります。

  ルールとマナーを守って、楽しくコロシアイしよう!』

 

 ラストがとってもいらなかったけれど、まえにモノクマがDinningでボクたちに言ったこととほとんど同じだった。ボクたちは今からTicketをつかって入るんだから、ここにかいてあるRuleはClearしてる。それじゃさっそく入ってみよう!

 

 「Doorはボクがあけます!こなたさんはお先に。Ladyfirstです」

 「ありがと。エスコートしてくれるんだね」

 「はい!Escortします!くっ・・・!」

 

 BridgeをわたっていきなりDoorがある。こなたさんのためにそこをあけてあげようとしたけど、おしてもひいてもSlideさせてもチクともしない。Ticketをすきまにはさんでみたりしたけど、それでもあかない。おかしいな。あんまりゆっくりしてるとこなたさんにアイスつかされちゃう。

 

 「ふぬぬっ・・・!」

 「開かないの?」

 「あ、あけます!すぐあけますからまっててください!」

 「待ってるけど・・・うん?『開錠ボタン』・・・ポチっとな」

 「うう〜ん・・・!What!?」

 「開いた」

 「いたた・・・こ、こなたさん!あきました!」

 「うん、ありがとう」

 

 がんばってひっぱったらあいた!よかった!こなたさんも笑ってくれてるし、おしりもちついちゃったけどいたくないフリいたくないフリ。

 Castleの中はまずStraightのCorridorがあって、入ったすぐのところにモノクマのStatueがある。ボクとこなたさんがCastleに入ったとたん、その目がFlashした。

 

 「きゃっ!」

 

 パシャっとCameraみたいな音がして、モノクマStatueの口からPhotographがべろんと出てきた。気を付けながらとってみると、たった今ボクとこなたさんが入ってきたところをSnapしたものだった。これでだれが来たかが分かるってことなんだ。

 

 「なんだろう?写真?」

 「ボクとこなたさんがうつってます」

 「入城記念ってことかな?いきなり撮るからピースできなかったよ・・・」

 「大事にとっときましょう!」

 「このまま進んでいいのかな?」

 「Courseはきまってないんですから、行きましょう!RecommendはChapelですから、Firstそこ行ってみましょう!」

 「そうだね。じゃあスニフ君エスコートしてくれる?」

 「Sure(はいよろこんで)!」

 

 StraightのCorridorをすすむと、とっても広いHallに出た。まっ正面にStairがあって、Pink-hair girlのPortraitがかざってあった。CrimsonのCarpetとか、まぶしいくらいのChandelierとか、見たことないくらいBigなFoliage plantがならんでたり、EntranceだけでなんだかOverwhelmされそうだ。

 

 「・・・Wonderful」

 

 かざってあるPortraitはとても大きくて、モノクマをHugしてにっこりしてるそのSmileに、ちょっとのあいだ目がはなせなかった。だけどボクはこなたさんとDateをしてるんだった。キレイだけどほかのGirlのことなんか見てたらこなたさんがおこっちゃう。

 

 「あっ、ごめんなさいこなたさん。Chapel行くんでしたね」

 「・・・」

 「こなたさん?」

 「あっ・・・ごめんね、スニフ君。ちょっとあの絵に見惚れちゃってた」

 「とってもWonderfulですからね。あの人、とってもBeautifulです」

 「私とDateしてるのに他の娘のこと褒めちゃうの?」

 「Oops!あの、そうじゃなくてですね。こなたさんの方がもっとBeautifulです!」

 「ふふ、冗談だよ。ジャストキディング♫」

 「はうあっ!!」

 

 からかわれた!こなたさんに!でもこなたさんがたのしいならOKです!No problem!というかこなたさんもボクとおんなじで、あのPortraitを見てたんだ。やっぱりあのPortraitは、すごくAttractiveだ。なんていうか、ずっと見ていたくなるような・・・。

 

 「礼拝堂ってどこかな?」

 「Floor mapだとあっちです。そっちのDoorから行けるみたいです」

 

 モノクマCastleに入ってすぐモノモノウォッチは、Castleの中のMapをInstallした。それでどこに何があるのかが分かるようになってとってもたすかる。RightsideのDoorはWoodじゃなくて、なんだかおもそうなMetalでできてた。がんばってそれをあけてみると、中はLightがなくてくらくなってた。

 DoorからまっすぐRed carpetがしいてあって、その先にはおっきなCrossがかかってた。たくさんのSeatがCarpetの両側にならんでて、ボクたちがAll memberでも入れそうだ。StainedglassからちょっとだけSunlightが入ってきて、FloorにColorfulな光がうつってる。かべと合体してるPipe organは、そこにあるだけでなんだか今にもなりだしそうで、ものすごいPresenceをかんじる。

 

 「うわ・・・すごい、なんか、荘厳な感じがするね」

 「How solemnity it・・・」

 

 さっきのPortraitもすごかったけれど、このChapelもすごい。Lightがないのはきっと、Stainedglassから入ってくるSunlightとか、CrossのまわりにたくさんおいてあるCandleをつかうからなんだろう。

 

 「・・・?ねえスニフ君、何か聞こえない?」

 「え?」

 「なんか・・・男の人が叫んでるような、何かがぶつかるような、変な音」

 「な、なんですかそれ・・・あっ、ボクのことこわがらそうとしてますね!そんな音しませんよ!」

 「じゃあ、私にしか聞こえないのかな。私、ちょっとあるんだよね。シックスセンス」

 「No, Non-scientific(ひ、非科学的な)!」

 「ふふ、やっぱり気のせいかもね」

 

 きゅうに何を言うのかとおもったら、ボクのことをこわがらせようとしていいかげんなことを言ってるにちがいありません。ChurchなんだからGhostとかDevilはぜんぶExorciseされちゃうんですよ!

 

 「もうChurchはいいです。もっといろんなところ見ましょう」

 

 そう言ってボクとこなたさんはChurchを出た。GrandfloorにあるほかのDoorは、DinningだったりWarehouseだったりKitchenにつながってて、どれもすごくキレイにClean upされてた。だけどだれかがつかったかんじはしない。なんだかDioramaの中に入っちゃったみたいだ。

 StairsをのぼってUpper floorに行くと、今度はGuest roomがたくさんならんでた。ほかのHallにつながるCorridorもあって、なんだかLabyrinthみたいになってる。モノモノウォッチにMapがあるからLostすることはないはずだけど、こうしてこなたさんといっしょにどんどんCastleのおくまですすんでいくと、だんだん戻れるのかしんぱいになってくる。

 

 「どうしたのスニフ君?何か心配?」

 「い、いえ!ダイジョブです!それに、何かあってもこなたさんはボクがまもりますから!おおぶろしきにまかれたきもちでいてください!」

 「うん、色々混ざってるけど言いたいことはだいたい分かるよ」

 

 Corridorには、Faceがモノクマにかわってる『モナリザ』や『ヴィーナス誕生』、SunがモノクマのFaceになってる『印象・日の出』みたいなMasterpieceがかざってあった。『叫び』に『最後の晩餐』に『牛乳を注ぐ女』、『記憶の固執』まである。そのどれもこれもがモノクマテイストにされてて、Parodyもこうなるとなんだかしつこい。

 

 「これって、全部モノクマが描いたのかな?」

 「それならモノクマはArtのSkillはありますけど、Senseはないですね」

 「そうだね。このモノクマなんかドロドロに溶けてチーズみたいになってる。変な絵だね」

 「ドロドロなのはOriginalもですよ」

 「そうなの?あはは、間違えちゃった。スニフ君は物知りだね」

 「グランマのいけぶくろってヤツです!」

 「おばあちゃんの知恵袋、でしょ?」

 「それでした!」

 「それでもないと思うよ。スニフ君おばあちゃんじゃないし」

 「じゃあ、じびきあみですか?」

 「きっと生き字引きのことだよね」

 「それでした!!」

 「スニフ君、このごろ間違え方が強引だね」

 「???」

 

 ボクそんなにまちがえてたかな。でもここにならんでるモノクマのpicturesよりはまちがえてないはずだ。こんなに上手にかいてあるのに、こんなにかんどうしないなんて、やっぱりなにかをまちがえてるんだ。

 そのままボクとこなたさんはCorridorをとおって、色んなところを歩いた。FountainがあるGardenとか、Clock towerとか、Observatoryから見えるモノクマランドのLandscapeとか、モノクマが作ったとは思えないくらい見所がいっぱいだ。RealのSwordとArmorがならんだCorridorだけは、モノクマっぽかったけど。

 そして、モノクマCastleのいちばんのMain、いちばん高いTowerのてっぺんにある、『姫の部屋』にやってきた。Room of Princessだ。こなたさんにぴったりじゃないか。

 

 「すごいねこれ。自動ドアになってる」

 「Castleなのにですか」

 「ムードも大事だけど、便利になるんだったらこういう変化も大事なんだよ。スニフ君じゃドアノブ届かないでしょ」

 「そんなにちっこくないです!」

 

 とは言ったけれど、Emergency用についたドアノブはホントにボクの手がとどかない高さにあった。Harassmentだ!Height Harassmentだ!I'll sue him, that bustard(あの野郎め、訴えてやる)!ボクよりちっこいクセしてこんなの作るなんてボクへのHarassmentじゃなきゃなんだってんだ!

 そう心の中で言ったけど、いけないいけない。今はDateだった。あんなヤツのことをかんがえないで、こなたさんとの時間を楽しもう。ドアがあいて『姫の部屋』の中にボクとこなたさんが入る。もちろんLadyFirstだからこなたさんが先だ。中はなんだかちょっとくらくて、広いけれどあんまりものはおいてなかった。Canopy bedとGorgeousなWindowが1つ、なぜかThroneもあって、ちょうどBedでねてる人のかおが見えるようにおいてある。Ceilingの一部はぬけ穴になるみたいで、今はぱっかとひらいてAngel ladderがおりてる。とってもきれいだ。

 

 「ここがMainです。It's beautifulです。でもなんだかさびしいです」

 「そうだね。お姫様の部屋っていうから、もっと可愛い感じだと思ってたけど、なんだか殺風景だね。鏡台もクローゼットもおもちゃ箱もない。天蓋ベッドだけ?」

 「Windowもいっこだけです。ん?」

 

 WindowのはじっこにモノクマからのNoteがある。なになに。『この窓ははめ殺しで、しかも防弾ガラスでできてるから絶対に開きませーん!だからこの部屋も絶対に飽きません。うぷぷぷぷ♫』。見なかったことにしよう。

 

 「なんだか、今まで見てきた中だと味気ない感じがするね。本当に一番の見所なのかな」

 「そうですね・・・」

 「え?スニフ君、何か言った?」

 「そうですねって言いました」

 「そうじゃなくて、その後」

 「???・・・そのあとにはなんにも言ってません」

 「じゃあさっきの声は・・・誰の声?」

 

 さっきのChurchのときみたいに、こなたさんはまたそんなSpiritualなことを言い出す。そうやってボクのことをこわがらせて面白がろうったってそうはいきませんよ。

 

 「ここにはボクとこなたさんしかいません。ボクたちじゃないVoiceなんてきこえるわけないじゃないですかあ」

 「おかしいなあ」

 「もうここはいいですよ。ボクもっかいFountain見たいです!」

 「そっか。じゃあ噴水広場に行って、そしたら出ようか」

 「はい!」

 

 思ったより大したことなかったMain spotをあとにして、ボクとこなたさんは歩いてきたRouteをもどった。モノクマからTicketをもらったときよりも楽しめたけれど、でもそれはこなたさんとだからで、このモノクマCastleが楽しかったわけじゃない。

 いろんなSpotの中で少しだけ楽しかったFountain gardenにもう一回来て、Benchにすわってこなたさんと一休みした。

 

 「結構たくさん歩いたね。私、こういうお城って初めてなんだ」

 「ボクもです。MapあったからLostしなかったですけど、とっても広くてきれいでどこがどこだかわかんなくなっちゃいました」

 「ふふふ。帰りもちゃんと地図を見ておかないとね。迷ったら何日も出て来られなさそう」

 「・・・そしたら、モノクマCastleにすむしかないですね。ボクと、こなたさんだけで」

 「え?う〜ん、そうだね。でもその前にみんなが助けに来てくれるんじゃないかな」

 「あ、そうですか・・・」

 

 いいかんじにこのままPrince&PrincessチックなTalkにしていこうとおもったのに、こなたさんはそうやってボクの気持ちをこう、手でこうやって、こねてあそんで!でもそうやってこなたさんにヒラヒラにげられてくのも、それはそれでなんだかコーフンしてきたりして。うう、なんだかHotになってきた。

 

 「スニフ君、大丈夫?顔赤いよ?」

 「ほあっ!?だ、だいじょぶです!ごめんなさい!」

 

 気付いたらこなたさんのFaceが目の前にあって、びっくりしておもわずBenchから立った。いけない、一旦おちつかないと。そう思ってボクはFountainの水を見ておちつくことにした。前にサイクロウさんに、水を見てメイソーするんだっておしえてもらったから。

 マーライオンみたいなBronze statueの口から出てくる水がきらきら光って、うつったボクがゆらゆらゆれる。そんな水のうごきを見てたらなんだか心がおちついてきて、さっきまでのコーフンが消えて──。

 

 「Woa!!?Aaaaaaaaaaaah!!?」

 「ど、どうしたのスニフ君!?」

 「あ、あわ、あわわ・・・!こ、こな、こなた・・・さん・・・!いま!」

 

 目が合った。Fountainから出てくる水の、その中から出てきた・・・その人と。水の中でも一本一本までうごきがわかるLong hairに、BlackのShirtが水にぬれてぺったりはだについてる。RedのJerseyが水のながれにゆらゆらゆれて、すごくこわい。ボクはその人にまた会えたことよりも、その人がそんなふうになってることの方がおどろきだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「テ、テルジさん・・・が・・・!?テルジさんがあ・・・!」

 「下越君・・・!?し、下越君!」

 

 ボクとこなたさんが呼んでもテルジさんは何のReactionもない。Fountainの中でぷかぷかうかんで、目も口も力がぬけてだらしなくひらいてる。これじゃあまるで・・・まるで、テルジさんがころされたみたいじゃないか──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「──ぅげほっ!!ぐへ!!えっほ!!うえっ!」

 「Wow!?テ、テルジさん!?You alive(生きてた)!?」

 「ス、スニフ君!下越君生きてるよ!助けないと!」

 「えっと!えっと!Artificial respiration(人工呼吸)Cardiopulmonary resuscitation(心肺蘇生)!あ!!こなたさんはダメです!ボクがやります!No kiss!!No kiss!!」

 「呼吸はあるから!服を脱がせて!」

 「はわわ!そ、そんなの・・・!」

 「もうあっち行ってて!」

 

 Panicになってこなたさんがもう一歩のところでテルジさんとKissしちゃうのをみのがすところだった。あぶないあぶない。Fountainからテルジさんをこなたさんとふたりで引きずり出して、Chestをがんばってばんばんたたいた。とちゅうでこなたさんにうしろにポイッてされたけど、ShirtをぬがせてこなたさんがヘンなことしないようにMarkしてた。

 

 「げっほげっほ・・・!はあ、はあ・・・ああ。死ぬかと思った」

 「ふつうは死にます」

 「ん・・・おお!じ、地面だ!空だ!風だ!!空気がうめえ!!光が眩しい!!俺は生きてんぞおおおおおおおおっ!!!」

 「ど、どうしたの下越君・・・?」

 「すごくHustleしてます・・・あのう、テルジさん。おひたしぶりです」

 「あん?ブリのおひたしってのは食ったことねえな。ブリはやっぱ照り焼きだぜスニフ!」

 「お久し振り、でしょ?」

 「それでした!」

 「ああそうだ!思い出した!腹減った!」

 「ちょっと待って。一旦整理させて。今しっちゃかめっちゃかだから」

 

 げほげほいってReviveしたテルジさんが、なんだかいきなり元気になってHustleしてた。生きてるのはびっくりしたけど、なんでそんなに元気なんだろ。ついさっきおぼれてFountainから出てきたのに。

 

 「ま、まず・・・下越君はなんで噴水から出てきたの?」

 「あ?ああ、ここ噴水か。いやあ、どっか出口ねえかなって思ってうろうろしてたんだけど、一世一代の覚悟決めた甲斐があったぜ。死ぬかと思ったけどな」

 「ごめん、全然分かんない」

 「下水に落とされたんだよ。この城入ってすぐに」

 「Sewageですか?」

 「城に入ってすぐに写真撮られただろ。びっくりしてたら床が抜けてよ。そのまんま下水に真っ逆さまだ。よく生きてたと思うぜ」

 「ボクらもとられましたけど、なんともなかったですよ」

 「うん、なかった」

 「なんだそりゃ!差別か!オレ差別か!オレ差別はやめてください!」

 「なんで急に敬語なの?」

 

 入ってすぐSewageにおとされるなんて、モノクマのいたずらだったらいくらなんでもあんまりだ。それにボクとこなたさんはダイジョブだったのに、テルジさんだけどうしておっこちたんだろう。あのモノクマのStatueって、Memorial photographじゃなかったのかな。

 

 「えっと・・・ここ最近、下越君を見なかったのってもしかして・・・」

 「下水にいたんだよ!この城が開放された日に来て、そのままストンだからな!3日も4日も真っ暗で何もねえくっせえところをウロウロして、なんとかギリギリ生きてられたけど、危うく死ぬところだ!」

 「だから普通は死ぬってば」

 「しかも誰も助けにも来てくれねえから、マジでやべえと思ってじっとしてたんだ。そしたらスニフと研前の声がするだろ?ここっきゃねえと思って死ぬ気で下水を遡ってきたんだよ」

 「いや、いくらなんでもそれは無理でしょ。どうやってここまで上がって来たの?」

 「なんか水を汲み上げる桶の水車みたいなのがあったんだよ。ちょうどあの時計塔の下あたりだな。それに乗ってきたんだ。さすがにここから出るときにゃ覚悟決めたけどな」

 「すごいGutsですね」

 「ったりまえだ!もし明日も下水にいたらせっかく育てた糠床がダメになっちまうからな!イヤな予感がしたから冷蔵庫にゃあ入れといたが、もう限界だ!かき混ぜる!」

 「命よりぬか漬けなの?」

 「ああ!その前にシャワーか!ドブ風呂なんかに浸かった後じゃ厨房に近付けもしねえ!こうしちゃいられねえ!」

 「ちょちょちょ待って待って下越君!まだ全然解決してないから!糠床は逃げないから!」

 「んぬぅかどこぉおおおおおおおおッ!!!

 

 こなたさんがStopするのもきかないで、テルジさんはものすごいDashでKitchenに行っちゃった。あ、そのまえにShowerか。でも、とりあえずテルジさんがぶじみたいでよかった。これでまたテルジさんのおいしいごはんがたべられるぞ!でも、ぬかどこってなんだろ。

 

 「行っちゃった・・・なんだったんだろう。一応、無事みたいだけど」

 

 いきなり出てきてあっという間にいなくなって、Hurricaneみたいな人だ。それにしても、テルジさんが出てきたせいで、ボクとこなたさんのSweet timeが大の字になっちゃった。それになんだかおなかもすいた。

 

 「帰ろっか、スニフ君」

 「はい、こなたさん」

 

 ボクとこなたさんは、また手をつないでホテルに向かった。モノクマCastleのEntranceで、テルジさんがPitfallにおちないようにふんばってたのを助けて、三人でもどった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻は午後2時を少し回った頃。今日は生憎の快晴。新たに開放されたエリアには脱出の手掛かりはおろか、黒幕の正体に繋がる手掛かりもない。まあ、俺様をこんな場所に監禁しているのだ。この程度ではボロを出すには早すぎるというものだ。

 

 「ふむ」

 

 たまには凡俗共の様子を見て回るというのも悪くないかも知れん。いや、見ておくべきだろう。少なくとも俺様は一度目の学級裁判で、凡俗共を熟知していないが故のミスリードを犯している。腐っても“超高校級”、凡俗と十把一絡げにできるものではないと学んだはずだ。

 しかし見ておくと言っても、勲章以外は俺様を避けている。陰から観察しようにも誰がどこにいるか分からん。適当に、図書館など行けば誰かいるかも知れんな。酔狂に身を委ねるのもよかろう、今日は『オフ』とすることに今、俺様が決めた。

 

 「さて」

 

 図書館か。このモノクマランドに来て数日は通っていたが、めぼしいものは全て読み尽くした。今さら本に新しい発見など求めていない。人類の最高傑作であり天才を超越した天才である俺様にとって、本など書かれた時点で遺物に過ぎない。無駄ではないが最新ではない。俺様の“才能”を以てすれば、この図書館を丸ごと脳内に移設することもできよう。

 見上げるほどの高さの本棚も、欄干から欄干へ網目がごとく行き交う階段も、ゆったりとくつろげそうな読書スペースも、俺様の世界には不要なものだ。用があるのは、そこに居並ぶ二人の眼鏡。納見(ぎっちょう)(盛り髪)だな。

 

 「こりゃあちょっと渋すぎないかい?」

 「できないことはないのだろう?」

 「まあそりゃあ仏さんを彫るのは初めてじゃあないけどねえ。それにしても極氏がこんな趣味を持ってたのは意外だねえ」

 「趣味というと語弊があるような気がするが・・・これは戒めだ。我々への、な」

 「分かってるよお。ちょっとさすがに、おれも気が滅入ってきてたからねえ」

 「ほう、仏像か。そういえば貴様らはどちらも芸術をハガッ!?」

 「おおおおう!!?ほ、星砂氏ぃ!?あれえ!?極氏!?」

 「何をしにきたドブネズミめが」

 

 今、何が起きたのか全く把握できなかった。俺様は確か、納見(ぎっちょう)(盛り髪)が仏像のカタログを見て何やら話をしているところを後ろから覗き込んだ。と思ったら次の瞬間、(盛り髪)に顔面を鷲づかみにされていた。指先から頭蓋を通して怒りが伝わってくる。というか、単純に痛い。

 

 「ま、待て貴様・・・!離せ!一旦離せ!何をする!」

 「アイアンクローだ」

 「技はきいていない!おい納見(ぎっちょう)!こいつをなんとかしろ!」

 「おれになんとかできると思うかい?」

 「それもそうだな!俺様としたことがあまりにあり得ない展開に少なからず冷静さを失っがあああああ!!いだだだだッ!!」

 「3つ数えたら手を離す。口を閉じたまま、私たちから離れろ。3,2,1」

 「おああっ!」

 

 なんということだ。ただ近付いただけだというのに、この俺様にアイアンクローをかますとは。隣にいる納見(ぎっちょう)も明らかに引いている。だのにこの暴力女は平然としている。一体何者だというのだ、堅気ではないだろうさては。

 

 「一言でも口を開いたら、ただでは済まないと思え」

 「くっ・・・!」

 「極氏、いくらなんでも警戒し過ぎじゃあないかい?星砂氏だってすぐこの場でおれたちに危害を加えようなんて気はないだろうさあ。二対一だしねえ」

 「実質サシのようなものだ。油断していると足下を掬われるぞ」

 「だな。警戒してもらわねばこちらも手応えがない。貴様は少々脇が甘いな、納見(ぎっちょう)

 「喋るなと・・・言ったはずだが?」

 「はてな、俺様は貴様に口を開くなと言われたはずだ。だからこうして、口を開かず話している」

 「こいつ・・・!直接脳内に・・・!?」

 「いやいや極氏。ただの腹話術だよお」

 

 ふん、驚いたか凡俗め。俺様が口の開閉を封じられたところで喋るのを諦めるとでも思ったか。たとえ縫い付けられようとも、こうして喋る手段などいくらでもあるというものだ。それにしても、どんな技能でも身につけておくものだな。こんな芸が役に立つ日が来るとは。

 

 「俺様は別に貴様らの邪魔をしようというのではない。今日はオフだからな」

 「オフ?」

 「たまには貴様ら凡俗の生活でも観察して、今後の身の振り方の参考にしてくれようというのだ。大人しく観察されるがいい」

 「見世物ではない。そういうものが見たいなら虚戈の所へ行け」

 「そうではない。ただの貴様らの有り様が見たいのだ。まあ俺様はいないものとして考えるがいい」

 「よくそんな偉そうな態度でいられるよねえ。ついさっきあれだけ極氏に痛めつけられたってのにさあ」

 「それで、貴様らは何をしていたのだ?」

 「あ、なかったことにするんだあ」

 

 仕方のないこととはいえ、俺様ほどの強大な影響力を持つ者は存在するだけで凡俗共の行動に影響を及ぼしてしまうということだな。自然な様を観察したいというのに、図らずも俺様が干渉してしまったことで少々歪な形にはなってしまうだろう。斯くなる上は、少しずつ俺様の存在を薄めていくしかないか。

 

 「極氏がねえ、仏像を彫ろうって言うんだよお。今までにもう5人も死んでるからねえ。彼らのために小仏像を彫って、供養と戒めにしようってさあ」

 「こんなヤツに洗いざらい話す必要はないぞ、納見」

 「そうか。貴様らは二人とも芸術系の“才能”だったな。確か、造形家と彫師だったな」

 「私たちに興味がなかったくせに、“才能”だけは覚えているのだな」

 「どんな“才能”がどのような形で利用価値が生ずるか分からないからな。まあ、俺様の“才能”に比べれば有象無象に過ぎんことには変わりないが」

 「星砂氏の“才能”・・・?“超高校級の神童”だっけえ?神童ってなんだい?」

 「そんなことも分からず俺様を崇めていたのか」

 「崇めてはないよお」

 

 これはなんと、さすがの俺様も予想外だ。納見(ぎっちょう)のヤツ、俺様が一体どのような“才能”の持ち主かさえ理解していなかったというのか。ふむ、そういえば、希望ヶ峰学園に入学する生徒の一部は、入学前からある程度の知名度を有し、その“才能”を世に知らしめている者もいる。対して俺様の“才能”は、そう派手な部類ではないからな。知らん者がいても無理はない、か。

 そうだ、さほど腹を立てることでもない。無知なる者には知恵を与えればいい。それだけのことだ。

 

 「そうか。では良い機会だから教えてやろう。納見(ぎっちょう)、貴様には俺様の“才能”について語る役割を与えてやる。もし他に俺様の“才能”を知らん者がいるのならば、伝えてやれ。“超高校級の神童”とは如何なる“才能”かを!」

 

 いくらか振りだな。自分のことを凡俗に話すのは。

 

 「神童とは、神なる童、つまり生まれながらに神がかりな力を得た子ども、あるいは神の寵愛を受けし子どものことだ」

 「神童の意味くらいは知ってるよお。おれが聞いたのは、“超高校級の神童”ってどういう“才能”なのかって──」

 「それを今から説明してやるというのだ。黙って聞いておけ」

 「・・・気になるから腹話術はやめて構わん。その代わり、一歩もこちらに近付いてくるな」

 

 ふははは!つまりそれは(盛り髪)が俺様に根負けしたということだな!情けないことだ!ただの暇つぶしに身につけた芸に負けるとは!

 

 「神童とはある分野において、若くして大いなる才覚を発揮する者への称号だ。そうは言っても小学生程度の子どもへの賛辞、せいぜい普通の大人が出来る程度のことができれば十分神童と言えるだろう」

 「・・・つまり星砂氏は、普通の大人程度のことができる“才能”ってことかい?」

 「ははは!おもしろい冗談だな納見(ぎっちょう)!俺様を小馬鹿にするとは恐れ知らずもいいところだ!気に入ってやろう!」

 「そりゃどうも」

 「貴様らただの“超高校級”は、ある分野において類い希なる才気を発揮する“だけ”だろう?だが俺様は違う。“超高校級の神童”とは、特定の分野において類い希なる“才能”を持つ、という“才能”だ。これで貴様らに理解できるかな?」

 「“才能”を持つ“才能”・・・?」

 「俺様にしてみればあらゆる“超高校級”共は、単なる事例に過ぎない。如何なる“才能”が存在し、如何なる“才能”の使い方があるのか、というな。そして俺様は、その全てを修得することができる。“超高校級”の“才能”も、凡人共では理解することもできん遥かに高度な学術書も、悠久の時を経て研ぎ澄まされた精神も、俺様にとってはすべからく等しいサンプルでしかない!」

 「そ、それってつまり、やりようによっちゃあおれたち全ての“才能”を持つこともできるってことかい?」

 「まあ、その気になればな。だがその意義を俺様が感じていないことに加え、なにぶん忘れっぽい質でな。過去に幾度か、手慰みにこの世の全ての“才能”を手に入れてみようとしてみたのだがな・・・。前日の夜に修得した“才能”も忘れてしまってな」

 「そんな献立感覚で言うことではないが」

 「しかし専門書の一冊でもあれば、今すぐにでも貴様らと同じ“才能”を修得し、超えることもできる。この“才能”があれば俺様は、何者にもなれる。たった1つの“才能”に縛られ未来と可能性を制限された貴様らと違い、自由に、無限の可能性を持つ。故に俺様は天才を超越した天才であり、人類の最高傑作でもあるわけだ!これが“超高校級の神童”という“才能”、そして俺様という人間だ!」

 「ずいぶんと誇らしげだな。“才能”にプライドを持つのは構わんが、簡単に超えられるというのは聞き逃せんな。私たちの“才能”は、伊達や遊びで名乗っているものではない」

 「背景事情など知ったことか!貴様はその眼鏡をかける時に、光の屈折の発見からレンズの発明、そして製造過程までに思いを馳せるのか!?“才能”とはその表層にこそ最も意義があるものだ!どのように身に着けようと、どれほどプライドを持っているかなど関係ない!」

 「大した“才能”観だねえ。まあ人の考え方だからおれはとやかく言いやしないけどさあ」

 

 ふう、こんなものだな。凡俗共にはこの程度の説明で十分だろう。“才能”を修得する“才能”、それが希望ヶ峰学園においてどれほど異質なものか、どれほど貴重なものか、どれほど危険なものか、分からない俺様ではない。だがそれすらも、ただの一部に過ぎん。俺様の“才能”の本質はそこにはないのだ。“才能”の保有者である俺様でさえ、未だ届かぬ深淵があるはずだ。この“超高校級の神童”という“才能”には。

 

 「星砂氏がこんなに自分のことを話してくれるなんてねえ。今日は雷でも鳴るかなあ」

 「残念だが今日は快晴だ」

 「くだらない話だった。おかげでもうこんな時間だ」

 

 (盛り髪)に言われて、ふと時間が気になった。モノモノウォッチが示す時刻は15時を回っていた。ただの凡俗にここまで時間を使ってしまうとはな。たまにはいいだろうと思っていたが、あまりにも時間を使いすぎてしまった。我ながら少々テンションが上がっていたな。

 

 「我々はこれからも忙しいのだ。貴様の道楽も結構だが、私たちに構うな。観察がしたいのなら他を当たれ」

 「そうだねえ。ずうっと見られてると作業に集中できないからねえ」

 「ダメか?」

 「ダメだ。失せろ。消えろ。二度と私たちの前に現れるな」

 「ひどく嫌われたものだな。自業自得だが」

 「どういう気持ちで言ってるんだい?」

 

 俺様を一瞥すると、(盛り髪)納見(ぎっちょう)はさっさと図書館を出て行ってしまった。仏像を作ると言っていたから、石材か木材を調達しにショッピングセンターへ行ったのだろう。戒めでも供養でも構わんが、もう存在せん凡俗のために結構なことだ。

 図書館にいた凡俗共だけでは暇は潰せんな。しかし、案外こうして探してみると凡俗もいないものだな。死者が出るほどエリアは拡大し、人口密度は着実に低下していく。人と人とが会いにくくなるということは、より綿密で時間をかけた犯行が可能になるということ。おまけに後半になるほどクロは経験値を積む。人数が減ったことで不利になることを差し引いても、後になるほど学級裁判に勝利する確率は・・・高くなる。実に面白いではないか。

 

 「ん?」

 

 さて、少々考え事に耽っていたからいくらか時間が経ったのではないかと思ったが、まだ10分ほどしか経っていない。困ったものだ。こうした暇な時間を蓄えて後から使えるような道具でもあればいいものを。暇だから発明してみようか。

 そんなことを考えながら、モノクマ城を見た。まだあそこには行ったことがないが、異性と二人一組でないと行けないということだ。今の俺様が行ける道理などないな。しかしあの城の時計・・・。

 

 「──づうううううううけええええええええええええ!!!!」

 「どおあっ!?」

 「どはーーーーっ!!?ってええ!!」

 

 時計を見てぼうっとしていた俺様が悪いのか。前も見ずめくらめっぽうに全速力で駆けてきたこいつが悪いのか。どう考えてもこの馬鹿の方が悪いだろう!なんだ『づけ』とは!

 

 「ったあ〜・・・なんだ星砂じゃねえか!最近見なかったな!久し振り!」

 「俺様が失踪していたように言うな。それは貴様だろう」

 「ああそうだった!いやあ、ちょっと色々あってな!あ、そうだ。お前いまあの城見てたろ。気を付けろよ?一人で行くととんでもねえ目に遭うぞ!」

 「貴様・・・臭いぞ」

 「ちょっと下水道にな!」

 「・・・そうか。なるほど。もしかしたら・・・面白いことになりそうだ。ふむ、馬鹿にしては思いがけぬ便利な情報だ。褒めてつかわそう」

 「いやあ、ほめられると照れるぜ!そんじゃ、晩飯楽しみにしとけよ!久し振りに腕を振るうからよ!うっめえぬか漬け食わせてやっからな!」

 「ああ、『づけ』とはぬか漬けか。相変わらず貴様は、食い物のことしか考えていない馬鹿なのだな。下水と一緒にその脳みそも浄化処理を受けてくればよかったのに」

 「おう!“超高校級の美食家”が飯のこと考えなくなったらそれこそ一巻の終わりだろ!ジョーカなんとかは分からねえけど、ババ抜きなら負け知らずだぜ!」

 「本当に馬鹿だな貴様は。貴様は実に馬鹿だな」

 「言い直してまで二回も馬鹿って言うな!」

 「二度ならず言っているのだが・・・」

 

 冷静に考えると、いま俺様は、こいつと対等に会話していないか?この馬鹿と?天才を超越した人類の最高傑作であるこの俺様が?対等?いや、この馬鹿はあまりに馬鹿で、馬鹿過ぎるがあまりに己の馬鹿さと俺様の崇高さを理解できていないだけか。いやはや、馬鹿も突き詰めるとむしろ爽快だな。学級裁判以外ではまともに会話をしたこともなかったが、話せば発見があるものだな。馬鹿と言えど“超高校級”、侮れはしないということか。

 

 「ちなみに今日の晩飯のリクエストはあるか!?」

 「なんでも構わん。もはや貴様に毒を混ぜる知性さえないと知った。存分に味わってやるから思うようにすればいい」

 「んっじゃ!よぉく漬かったぬか漬けもあることだし、和のフルコースにすっか!腹減らしとけよ?美味くてほっぺた破裂して舌ぶっこ抜けるような飯用意してやるよ!」

 「食事にまで命を懸けたくないな」

 「じゃあまたホテルのレストランでな!」

 

 俺様にぶつかってきたときと同じように、凄まじい勢いで下越(馬鹿)は行ってしまった。今のほんの少しの間に、圧倒的な情報量だった。後半はほとんど晩食の献立についてだったが。最近は間に合わせで済ませていたから、久々に満腹になれそうだ。

 それにしても、あの城の下には下水が流れているのか。あの下越(馬鹿)が入れたということは、侵入に特別な知恵は必要ないようだ。誰でも入ることができ、しかし容易には抜け出せない場所か。ふむ・・・。

 

 

 

 

 

コロシアイ・エンターテインメント

生き残り:12人

 

【挿絵表示】

 




三章の執筆は苦労します。
いろいろと

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