ダンガンロンパカレイド   作:じゃん@論破

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非日常編

 息を呑む声。思わず漏れる息。無意識に舌を弾くと同時に突進した。重い感触。温かく湿る手。喀血に呻く呼吸。乱れて、喘いで、霞んで、そして静かに消え入る。

 

 「・・・ッ!」

 

 もたれてくる身体を支えて次の行動に移った。これでもう戻れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アラームクロックのベルでボクは起きた。今は7:00、モーニングにあつまる時間よりずっと早い。すぐにベッドから出て、バスルームに行ってフェイスウォッシュ、トゥースブラッシング、それからおきがえをした。ミラーでばっちり決めて、レストランに向かった。いつもテルジさんがブレークファーストをつくるところにお手伝いに行くと、ジュースやクッキーを作ってくれるんだ。

 そういえば、ラストナイト、ワタルさんがアレをしてました。ネズミのパン?なんかちがうな。こなたさんだったらすぐにおしえてくれるのに。とにかく、オールナイトでボクたちを守ってくれてたはずです。

 

 「グッドモーニングですワタルさん!・・・Oh?」

 

 元気よくドアをあけて外に出たけど、ろうかにもフロントにもワタルさんはいなかった。ラストナイト、フロントにおいてあったマガジンやドリンクはもうなくて、キレイになってた。

 

 「・・・Ah!モーニングなったからゴートゥーベッドしたですね!」

 

 じゃあおこさないようにサイレント、しないとダメですね。音が出ないように、ボクはそろーりそろーり、ニンジャみたいに歩いた。そこで、まだトイレに行ってないことに気付いた。うう、クッキーが楽しみでフォーゲットでした。でもフロントにトイレ、あったはずです。

 

 「えっと・・・」

 

 フロントのカウンターのサイドに、トイレありました。でも、その前にカラーコーンとタイガーバーで入れないようになってました。それに、モーニングからワーストエンカウント、しちゃいました。イエローのヘルメットをかぶったモノクマが、そこにいました。

 

 「なにしてるんですか?」

 「ん?ああスニフ君じゃないの!おはよう!」

 「グッドモーニングです。ボク、トイレつかいたいです」

 「それはムリだねー。今ここのトイレは封鎖してるから!」

 「ホワイ?」

 「う〜んとね・・・その、詰まっちゃったんだ。分かる?オーバー!」

 「つまる?トイレつまったですか?」

 「そうだよ。だからここは使えないの。今日は出すならここ以外の使ってよね!」

 

 トイレがつまるって、モーニングからそんなにビッグな人がいたのかな。使えないならショウガないです。ボクは一度マイルームもどって、トイレをしてからまたレストラン向かいました。

 エントランスからレストラン行こうとしたとき、ホテルの外からちょっとだけ音きこえてきました。アーリーモーニングで、モノクマがトイレにいるなら、だれが外いるでしょうか?気になってエントランスを出てみると、ホテル前の広くなってるところで、ラジカセからミュージックを出してヘンなかっこしてるマイムさんがいました。

 

 「マイムさん?」

 「ほあ〜〜・・・あれえ?スニフくん♫グッモーニーン♡」

 「グッドモーニングです。なにしてるんですか?」

 「知らないの?太極拳っていうんだよ☆あちょーっ!」

 

 両手をかまえて片足を上げてポーズをきめるマイムさんが、チャイニーズなミュージックに合わせてスロウにうごく。ケンポーって、バトルスタイルですか?

 

 「朝はねむいし身体が動かないからね☆いつ誰かが殺しに来てもいいように運動しないと♣」

 「またそんなこと言って」

 「スニフくんもやらない?マイムのマネしてればいいんだよ♡」

 「ボクは・・・ころすとかころされるとかはあんまり・・・」

 「やだなー☆太極拳は健康法でもあるんだよ♫」

 「そうですか。じゃあちょっとだけ」

 

 ボクはマイムさんに合わせて、ミュージックにあわせておなじようなかっこうをした。バランスをとったりゆっくりうごいたりするのがハードで、ちょっとやっただけですごくタイヤードなアクティビティだ。それでもマイムさんはニコニコしながらやってる。ランプにのぼったときも思ったけど、マイムさんってすっごくアクティブでタフだ。

 

 「ハァ・・・ハァ・・・マイムさん、ベリータフですね」

 「だらしないなあスニフくん♠もっと体力付けないとすぐ殺されちゃうよ?」

 「・・・マイムさんは、どうしてそんなにころすとかころされるとか言うですか?」

 「えー?だって、みんなは外に出たいんだよね?出るには誰かを殺すしかないんだよね?だったら誰かを殺す人がでてきても全然おかしいことじゃないよね♣まいむは誰かを殺してまで出たいとは思わないけど、そうじゃない人もいるはずだよ♠だからまいむは、その時殺されないようにしてるんだ☆」

 「そんな・・・もっとみなさんのことビリーヴしてあげてください」

 「ビリーヴ?信じるの?それは・・・ちょっとムリかな♡」

 

 マイムさんは、ちょっとヘシテイトだったけど、すぐにスマイルで言った。

 

 「あのねスニフくん♫スニフくんはまだ子供だからまいむお姉さんが教えてあげる☆」

 「こどもじゃないです!」

 「人はね、自分の本当に大事なことのためにはなんだってするんだよ♠まいむはね、いっぱい知ってるんだよ☆お金のため、家族のため、栄誉のため、恋人のため、プライドのため、神様のため・・・って言いながら、結局死んじゃった人たちのこと♫」

 

 スロウなうごきは止めないまま、マイムさんは言った。人が死んだのを知ってるって、見てきたような言い方だ。だけど見てきたとしたら、その言い方はすごくイージーだ。人が死ぬことが、ふつうのことみたいだ。なんでもないことみたいだ。

 

 「マイムさんは、ここに来る前、どこにいたんですか?」

 「高校生だもん、高校だよ♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マイムさんのアクティビティに付き合ったせいでモーニングからへとへとになってレストランに行った。ライトがついてて、もう何人かの人がいた。ジュースをもらってまってると、次から次にみなさんがおきてきた。そしてブレークファーストの8:30になった。それでも人が足りない。いつもレイトタイムな人もいる。ちょっとだけまった。

 

 「グッドモーニングです」

 

 来る人にモーニングのあいさつをする。いつもラストの人が来た。それでも足りない。ボクたちはオールメンバーで16人。今、ここにいるのはボクをいれて13人。なんで足りないんだろう。

 

 「昨日の夜遅くまで起きてるヤツもいたんだろ?部屋に呼びに行ってみろよ」

 「仕方のないヤツらだ。どれ、ここは一つ私が呼びに行ってくれよう」

 「うっし!チャーンス!オレもい」

 「貴様はここにいろ。私が行く」

 

 何人かの人が、まだ来てない人たちにモーニングコールをしに行った。きっとレイトナイトまでおきててスリーピングなだけだ。ボクたちは、あと3人がおきてくるまでモーニングをまってた。だけど、すぐにもどってきた。まだ来てない人といっしょじゃなくて、一人だけで。

 

 「・・・お、おい!」

 

 もどってきてすぐに、ボクたちはエマージェンシーだって分かった。ゲストルームにいない人をさがしに、ボクたちはモノクマランドにちらばっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボクたちはスリーマンセルで分かれてちらばった。ボクのグループはファクトリーエリアをしらべることになって、ダッシュでファクトリーラビリンスの中をさがした。モーニングなのに、ファクトリーはスモークを吐き出して、ボクたちが中へすすむのをリフューズしてるみたいだ。

 

 「こんなとこ探して意味あんのかよ?部屋にいねえっつっても、他の施設も使えるんだろ?そっちじゃね?」

 「真面目に探せ。何もないに越したことはない」

 「ふあ〜ねみい。おいスニフ!走るとコケんぞ!」

 

 ボクは、ラビリンスの中のもう使われてないファクトリーを見つけた。はじめてここに来たとき、こなたさんとしらべてエルリさんと会ったあのクローズドファクトリーだ。なぜか、ボクはそこに入っていった。なんでそこに入ったのか、そこに入ってしまったのか、ボクにも分からない。だけど、ボクの足はキイキイ言うステイアーや、つもったダストをふみながら、どんどんすすんでいく。

 セカンドフロアの、いちばんおくの方、きたなくて、くさくて、うるさくて、くらい、今すぐに出て行きたいようなところに、ボクたちのさがしてる人はいた。

 

 「お、おいスニフ?どこ行くんだよ・・・ッ!?」

 「・・・」

 

 ゴウンゴウンとメタリックな音がひびくファクトリーの中で、ファンのすぐよこにもたれかかるようにして、その人はいた。だけど、イエスタデイ、ボクたちが見てたすがたとはちがった。

 

 「う、うそだろ・・・!?おい・・・!」

 「そんな・・・なんで・・・!?」

 「二人ともどうし・・・た・・・?」

 

 ボクといっしょにいた2人が、ボクと同じものを見た。ブラッディなにおいをかぎとったタイミングで、ボクたちのモノモノウォッチがバイブし、モノクマの声がきこえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 『死体が発見されました!オマエラ!ファクトリーエリアの廃工場に集まってください!』

 

 

 

 

 

 

 

 シエスタでもしてるみたいにその人はそこにいた。少しのサンライトをリフレクトしてギラギラ光るナイフが、おなかにつきささってる。ちっとも力の入ってないボディが、糸の切れたマリオネットみたいにそこにただ落ちてるだけだった。おなかからあふれ出た、ブラッディな色のものが、あざやかなカラーのふくにしみこんでディジーなコントラストになっていた。

 死体・・・死体?いま、モノクマは死体って言った?

 死体・・・!!いまボクたちの目の前にいる人は・・・あるものは・・・!!死体・・・!?

 ウソだ・・・!!ウソだウソだウソだウソだ!!ありえない・・・!!なんでこんなことに・・・!!

 だって・・・!!だってコロシアイなんてしないって・・・!!

 

 

 

 ぐるぐる回るボクの考えは何のパワーもなくて、目の前にいるその人は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         チガサキマナミさんは、そこで死んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこから先のことを、ボクはあんまりリマインドできない。たぶん、ボクのブレインがメモリーすることをやめたんだと思う。気が付くと、ボクといっしょにいたダイスケさんとセーラさんの他にもたくさんの人が、このクローズとファクトリーにあつまってて、目の前のマナミさんと合わせて、ちょうど16人いた。目をクローズしてるマナミさんとみなさんを見るボクをリムーブして、14人はみんなマナミさんを見てた。

 

 「ウソ・・・だろ・・・!?どういうことだよ・・・!」

 「・・・コロシアイか。やはりあの映像を見て誰か・・・!」

 「やめろ。それより、私たちを呼び出したということは、何かあるのだろう。モノクマ」

 「イエス!!そのとーりー!!」

 「!」

 

 レイカさんの言葉にリアクションするように、どこからともなくモノクマが出てきた。目の前のことをアクセプトできないボクにとって、その声はすごくノイジィにきこえた。モノクマはいつもよりもダークに笑いながら、マナミさんにちかよっていった。

 

 「物わかりがよくて助かるよ極サン!うぷぷぷぷ!ボクは嬉しいよ!オマエラがとうとうコロシアイをしたことが嬉しくてたまらないよ!そしてようやく、このコロシアイ・エンターテインメントのメインイベントを開催できることがさ!」

 「メ、メインイベント?」

 「テメエ・・・ふざけてんじゃねえぞ!!なにがコロシアイだ!!なにがメインイベントだ!!いいからさっさと茅ヶ崎を助けやがれ!!テメエならできんだろ!!」

 「はあ?助けるって、死人をどう助けろっていうのさ。いくらボクにでもできることとできないことがあるんだよ!って、同じようなことをどっかのダメなメガネの小学生に言ったような気がするけど」

 「やめておけよ凡俗。せっかく面白くなってきたのだ。余計な水を差すな」

 「・・・お前は、この状況が恐ろしくないのか?」

 「この後のモノクマの話に依るな。少なくとも今のこいつに逆らって、日焼けの二の舞になるほど愚かではない」

 「そうそう!星砂クンはさすがに分かってるねー!」

 

 モノクマはコンフューズするボクたちをネグレクトして、わらいながらマナミさんをチラチラ見る。

 

 「さてさて、それではオマエラ、モノクマランドに新しい掟が加わったのでモノモノウォッチで確認してください!」

 「お、おきて?こんなときになんだよ?」

 「うぷぷ♫」

 

 ハルトさんのクエスチョンにモノクマはなんのアンサーも返さない。ただわらうだけだ。ボクはモノモノウォッチを見る。ルールがふえてた。

 

 

 

 

 

 ーーー

 掟9.生徒内で殺人が起きた場合は、その一定時間後に、生徒全員参加が義務付けられる学級裁判が行われます。

 

 掟10.学級裁判で正しいクロを指摘した場合は、クロだけが処刑されます。

 

 掟11.学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、クロだけが失楽園となり、残りの生徒は全員処刑です。

 ーーー

 

 

 

 

 

 「???」

 

 ボクのブレインをクエスチョンマークがとびまわる。クラストライアル?クリミナル?エクゼキュージョン?アクトさんがモノクマにエクゼキューズされたときのヴィジョンが、かってに思い出される。なんだこれ?意味がわからない。モノクマは、またぷぷぷとわらう。

 

 「今からオマエラには、捜査をするための自由時間を与えるよ!捜査中は時間に関係なくほとんどの場所に入れるようになるから、時間いっぱい思い残すことのないように捜査して捜査して捜査しまくっちゃいな!」

 「捜査・・・その後に裁判?まさか、俺たちに推理小説の真似事でもさせるつもりなのか?」

 「真似事どころかそのものだよ!あ、いや小説とは違うか。学級裁判は普通の裁判とは違うよ。オマエラ全員が容疑者で、オマエラ全員が検事で、オマエラ全員が弁護士で、オマエラ全員が裁判官なんだよ!」

 「ぜ、全員が容疑者・・・?ちょっと待ってよ!なんでたまちゃん達が容疑者なの!それじゃまるで・・・!!」

 「うぷぷ♫まるでもなにも、何を今更言ってるんだよ?」

 

 分かりやすいような分かりにくいような、はっきりしてるようなぼんやりしたようなディスクリプションをするモノクマに、みなさんが次から次にクレームをつける。だけどモノクマはケロリとして、あっさり言い切った。

 

 「茅ヶ崎サンをこんな風にしたのは、オマエラの中の誰かだよ!」

 

 そんなわけない、と思ってたのに、モノクマの言葉はスピアみたいにボクのハートに突き刺さって、それがリアルなんだって何回もボクに言う。ボクたちの中にこんなひどいことをする人なんていない。そうビリーヴしてきたのに、それをイージーにブレイクしてしまった。

 

 「茅ヶ崎氏を殺したのがおれたちの中の誰かあ・・・?そんなまさかあ」

 「うぷぷ♫本当なんだなこれが!ボクはこの目でしっかり見たもんね!もちろん監視カメラ越しにだけど!」

 「そうか。貴様が用意したあの陳腐な動機に揺らいだ愚か者がいたか」

 「茅ヶ崎サンを殺したクロはこの後の学級裁判を生き残れば失楽園!それ以外のシロは全員おしおき!正しいクロを指摘できればクロだけがおしおき!シロもクロも平等に命懸けの、ワックワックドッキドッキの学級裁判!そこで議論をしてもらうための捜査を、これからオマエラにしてもらうんだからね!」

 「ちょ、ちょっと待って!捜査って・・・私はまだ、茅ヶ崎さんがどうなったかさえ分からないのよ?それなのに捜査なんて・・・素人の私たちには無理よ!」

 「ふぅん?じゃあいいよ。捜査ができなきゃ、この後の学級裁判でシロは為す術なくおしおきされるだけだからね!裏切り者のクロにとっては願ってもないチャンスだね!」

 「・・・そ、そんなこと・・・!できるわけないだろ!なんで俺たちがこんな」

 「だから、できないならしなくていいよ。それで死ぬのはオマエラなんだからね」

 

 むりやり、知らないうちにおしつけられたクラストライアルとそのルール。ボクたちに、マナミさんが死んだことのインヴェスティゲーションをしろって?ボクたちの中にいる、マナミさんをころしたクロを見つけだせって?そんなこと・・・そんなことできるわけがない。できなければ・・・死ぬ。

 

 「せいぜいがんばって捜査して、学級裁判を盛り上げてよね!うぷぷぷぷ♫」

 

 たくさんのことが一気におきて、ボクはわけがわからなくなった。だけど、一つだけクリアーなことがある。ボクたちの命は、モノクマの気分でどうとでもできる。だから、やるしかないんだってことだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー《捜査開始》ーーー

 

 「そうだ、オマエラに一つボクからプレゼントしておくよ。モノモノウォッチを見てちょーだい」

 「なんだ。時間は有限なのだろう?さっさとしろ」

 「おっ!星砂クンやる気まんまんだね!うぷぷ♫じゃあきっと喜んでくれるよ!」

 

 ボクたちはまた、それぞれのモノモノウォッチを見た。モノクマからファイルメッセージがとどいてる。きっといいものじゃないんだろうけど、オープンした。タイトルは、『モノクマファイル①』。ロードがおわると、ウインドウいっぱいにでてきたのは、ボクたちの目の前と同じものだった。

 

 「これは・・・?」

 「これから学級裁判に臨むオマエラに、ボクから心ばかりのプレゼントだよ!ろくな技術ももたないオマエラに、ボクが検死した結果をくれてやるよ!もちろんここにウソはありません!シロとクロとが平等に戦えるようにするためのものだからね!」

 「ケッ、それがウソかどうか分からねえじゃねえか」

 「ひどいなあ。ちょっとはボクのことも信用してあげなよ」

 「自分で言うことではないな」

 

 モノクマファイルのことはあとでよく見るけど、まずはモノクマを追い払った。モノクマがいるとディストラクテッドされてインヴェスティゲートできない。それからボクたちは、どうすればいいかをディスカッションした。

 

 「捜査って言ったって・・・どうしたらいいの?モノクマファイルだって信用できるか分かんないし」

 「でもモノクマはウソはないって言ってたよ?」

 「それでも確かめる必要はある。でも・・・検死できるヤツなんかいないよな?」

 

 まずは、モノクマファイルがホントかどうかをクリアにさせなきゃいけない。でも、オートプシーができる人なんて、いくらギフテッドのボクたちだって、いるわけがない。そう思ってたら、ひとつだけ、手があがった。

 

 「経験こそないが、知識ならある程度はある。構わんか?」

 「えっ!?極ってアンタ・・・やっぱそっち系の」

 「・・・まあ死体を見た経験がある者は少ないだろう。それに、彫師という仕事は一般的には医師免許を必要とするものだ。医学知識は多少ある」

 「いいのか極?キツいものを見ることになると思うけど」

 「そんなことを言っていられる状況ではないだろう。私にできることがあれば協力しよう」

 「ククッ、協力、か。言い得て妙だな盛り髪」

 「なんだ星砂。何が可笑しい」

 

 レイカさんがオートプシーをするって言いだして、ほかにできる人もいないから任せようってかんじになった。だけど、そこでまたハイドさんが一言入れてくる。

 

 「検死をすると言えば、死体に一番近いところで死体に触れても何もおかしくない。故に証拠隠滅、証拠捏造、虚偽報告などやりたい放題だ。盛り髪が犯人ではないという確証も・・・今はないだろう?」

 「っっっ!!まったテメエはそういうことなんで言うんだよ!!極がやってくれるってんだからいいじゃねえか!!水差すんじゃねえ!!」

 「し、しかし・・・星砂さんの仰ることにも一理ございます。いよたちの中に咎人がいるのであれば、目止めに越すことはなしかと。だ、断じて!極さんを疑うているわけではありませんが!」

 「いや、星砂の言うことも正しい。命がかかっているのだ。それに、潔白を証明する者がいてくれた方が、私もやって意味がある」

 「だったらオレがやるよ!捜査ってよく分かんねえし、極がそんなコソコソしたヤツじゃねえってのはよく分かってるからな!オレが証人になってやる!」

 

 言い方はなんだかひどいけど、でもたしかにハイドさんの言うこともわかる。そこでボクはハッと気付いた。今からインヴェスティゲートしていくけど、その中で出てきたエヴィデンスとかクルーはどれも、それ自体がホントかウソかを考えなきゃいけないんだって。

 

 「分かった。じゃあ極と下越はここで茅ヶ崎の検死をしてくれ。みんなはモノクマランドの各所に散って、事件の手掛かりを探すんだ。なんでもいい。昨日までと違うこととか、事件に関係してそうな場所とか、時間まで全力で捜査するんだ。それと、なるべく2人以上で行動するようにしてくれ」

 「捜査って言ってもどうすれば・・・」

 「ふん、俺様は1人で行くぞ」

 「・・・俺はレストランに行くが、一緒に行く者はいるか?」

 「は、はいはいはい!たまちゃんのこと・・・守ってね」

 「すまないが約束はできん」

 

 やっぱりこういうときにリライできるのはワタルさんだ。みなさんに声をかけて、こまってるボクたちがインヴェスティゲートできるようにしてくれる。オロオロしてたみなさんが、ファクトリーを出て行ってあちこちに向かって行った。そしてラストには、ボクとこなたさんだけがのこった。前もこんなことがあった気がする。

 

 「こなたさん?ダイジョブですか?」

 「う、うん・・・大丈夫・・・じゃ、ないかな。やっぱりまだ・・・信じられないっていうか、受け入れられないかな・・・」

 「ボクも・・・かなしいです。でも、ボクたちクラストライアルしなきゃいけないです。インヴェスティゲートしないと、ボクたちがあぶないです」

 「・・・そうだよね。みんなが、危ないんだもんね。うん・・・がんばらないと」

 「はい。がんばりましょう」

 

 仲の良かったマナミさんがこんなことになって、こなたさんにとってはトラジディだ。元気がないのも仕方ないけど、ここで立ち止まってちゃいけない。ボクはこなたさんの手をにぎって、チアアップした。ボクのためにも、みなさんのためにも、ボクたちはがんばらないといけない。まずは、このクローズドファクトリーをしらべよう。

 

 「まず、モノクマファイルを見ましょう」

 

 モノモノウォッチのディスプレイをたたいて、ついさっきもらったモノクマファイルを見た。いきなりマナミさんのフォトグラフが出てきて、つい目をそらした。でもがんばって見ると、色んなことがかいてあった。シインとかシボウスイテイジコクとか、ジャパニーズだと分かりにくい。ルールとかはイングリッシュバージョンを作ってくれてるのに、これはそうじゃないんだ。

 

 「被害者は“超高校級のサーファー”、茅ヶ崎真波。死体発見場所はファクトリーエリアの廃工場。死亡推定時刻は1:10頃。死因は失血と呼吸困難による心停止。刺し傷は腹部に1ヶ所あり、肺に達している」

 「えっ・・・」

 「一応日本語で書いてあることを読んでみたけど・・・スニフ君、意味分かった?」

 「あっ、や、えっと・・・ご、ごめんなさい。むずかしいジャパニーズ分かんないです」

 「・・・そうだよね。ごめんね、私が英語できたら訳してあげられるんだけど」

 「ダ、ダイジョブです!あとでモノクマに言いますから!」

 「どうしたお前たち?」

 

 モノクマファイルにかいてあることは、ボクにはむずかしすぎてよく分からなかった。イングリッシュバージョンがあればいいのに。モノクマにクレームつけてやろうと思ったけど、その前にうしろから声をかけられた。

 

 「そうか、スニフ少年は英語でなければ読めないのか。いかに天才少年と言えど、日本語と韓国語は世界屈指の複雑さを誇ると言うからな。言語学の中でもインド=ヨーロッパ語族や中華系言語とも異なるカテゴリに分けられているときく。ふむ、残念ながら私にはこれを英訳し伝えるほどの英語力はない。日本の英語教育の実用性の無さをこんな形で痛感することになろうとは思わなかった」

 「は、はあ・・・」

 「詳細は分からないが、この後の学級裁判でこのモノクマファイルの内容は間違いなく議論の中心になることだろう。そこでスニフ少年だけが何も分からないのは不都合だな」

 「それは困るね。スニフ君は頭がいいから、議論するなら参加してほしいんだけど私も無理だし。極さんは?」

 「・・・私も大した英語は使えない」

 「じゃあやっぱりダメか」

 「待て!なんでオレに聞かねえ!いや無理だけど!」

 

 ジャパニーズとイングリッシュのランゲージトラブルに、こんなところでこまるなんて。今まではこなたさんがヘルプしてくれたけど、やっぱりニッポン人でもむずかしい言葉なんだ。こまったな。

 

 「英語なら、城之内が得意と言っていたな。海外フェスなどを開くために猛勉強したそうだぞ」

 「リアリィ?あとでダイスケさんにおねがいしましょう!」

 「うん、そうだね」

 「それはいいが、検死が終わったぞ。下越、お前から見て私の検死に怪しいところはあったか?」

 「あ?いや、ねえよ。あるわけねえだろ!自信持てよ!」

 「自信だけでは足りないから証人を頼んだのだ」

 「それでは、ここにいないメンバーには悪いが、私たちだけ先に聞こうか。学級裁判とやらで明らかにすることだ。多少早く耳に入れても問題ないだろう。で、モノクマファイルに書いてあることは、事実か?」

 「ああ。服を脱がせて全身を調べてみたが、腹部の刺し傷以外に死に至るようなケガはない。ケガは肺まで達し、喀血の跡も見られる。呼吸困難という記述は、傷から空気が漏れたこともあるようだ」

 「す、すげえな・・・マジで本物の検死みたいじゃねえか」

 「テルジさん、リアルのオートプシー見たことありますか?」

 「ねえよ」

 「下越君、考えてからしゃべろうよ」

 

 オートプシーでわかったことをレイカさんがおしえてくれる。どうもモノクマファイルにかいてあることはビリーヴしていいみたいだ。レイカさんがモノクマファイルにウソはないって言うし、レイカさんがヘンなことしてないっていうのはテルジさんがプルーフしてくれる。

 

 「状況としては、格闘の末に殺されたというよりは、一刺しで殺された、ということか。刺し方からして肺を狙ったというよりは力任せに刺した、という感じか」

 「そんなことまでわかんのか!?探偵じゃねえか!」

 「直接犯人に迫るわけではない」

 

 レイカさんが自分なりのインファーを話してくれた。すごい、オートプシーだけでそんなことまで分かるなんて思わなかった。だとすると、きっとこのモノクマファイルはもっとボクたちのヘルプになってくれるんだと思った。でもこれを作ったのがモノクマだっていうことに、なんだかファジーな気持ちになった。

 

 「私たちは引き続きこの廃工場の捜査と、茅ヶ崎の見張りをしておく。検死は終えたが、事件現場が無人になるのはまずい」

 「おう!任しとけ!」

 「では私にもちょっと遺体を見せてくれ。どれどれ」

 「・・・」

 

 もううごかないマナミさんに、エルリさんがグッと近付く。イエスデイにはいっしょにおスシをたべてたのに、今はそこまで近付くことにヘンにレジスタントな気持ちになる。エルリさんは少しじろじろ見てから、あごに手をあてて考えこむようなかおをしてた。

 

 「ふむ。スニフ少年、少し気になることがあるのだが、ここを見てくれないか?」

 「えっ、ボ、ボクですか?」

 「我々の中で君は重要な頭脳だ。情報はたくさんある方がいい」

 「荒川さん、スニフ君はまだ子供なんだよ。その・・・茅ヶ崎さんの死体だけでも辛いだろうに、そんな傷口に近いところまで・・・」

 「い、いえ!ダイジョブです!がんばります!」

 

 エルリさんがこいこいってやったので、ボクは気持ちを決めて、マナミさんのおなかをよく見た。ギラギラしたナイフがマナミさんのキレイなおなかにディープにささって、かたくなったブラッドで中まではよく見えないのが、今はまだたすかってる。

 

 「固まってはいるが、ナイフを血が伝っているだろう。この部分に注目してほしい」

 「?」

 「不自然ではないか?このような血の流れはあり得ないと思うのだが」

 「そうですね。こっちからリキッドながれたら、チョイルからドロップするおもいます」

 「やはりな。はてさてどういうことか・・・」

 

 エルリさんにおしえられたところを見ると、マナミさんのおなかに刺さったナイフのハンドルにブラッドのラインがつづいてた。イメージでシミュレーションをしてみると、刺さったナイフをブラッドがながれるとどうしてもチョイルからドロップするはずだ。ハンドルまでながれるなんて、どう考えてもおかしい。

 

 「おかしいと言えば、私も少し不思議なことがある」

 「なあに極さん?」

 「茅ヶ崎の周りに血溜まりがない。ないというか、小さいのだ。左脇腹から肺に達するのならそれなりの出血量があるはずだ。それにしてはここで確認できる血の量は・・・少ないな」

 「極さん。検死もできるし、そういう知識もあるし、どういう生活してきてたの?」

 「・・・今はいいだろう」

 

 

 

 獲得コトダマ

【モノクマファイル①)

 被害者は“超高校級のサーファー”、茅ヶ崎真波。死体発見場所はファクトリーエリアの廃工場。死亡推定時刻は1:10頃。死因は失血と呼吸困難による心停止。刺し傷は腹部に1ヶ所あり、肺に達している

 

【ナイフ)

 茅ヶ崎の腹部に刺さっていたナイフ。腹部からの出血が伝っているが、刃のあご部分だけでなく柄の部分まで伝っている。

 

【廃工場の血痕)

 茅ヶ崎の死体の周囲には血痕が残されていた。それなりの出血量ではあるが、極曰く死に至るほどの量ではなさそう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クローズドファクトリーでのインヴェスティゲートをおわりにして、ボクとこなたさんはほかのところに向かった。外に出たら、こなたさんのコンプレクションが少しかわった。やっぱりマナミさんといっしょにいるよりも、ほかのところにいた方がまだいいんだ。でも、次にどこをインヴェスティゲートすればいいんだろう。マナミさんが見つかったここじゃなくて、このケースにかんけいあるところ。

 

 「こなたさん、次どこ行ったらいいおもいますか?」

 「うーん・・・そうだね。ホテルエリアに戻ってみる?朝、私たちはみんなレストランにいたから、もしかしたらそこに何か手掛かりがあるかもよ?」

 「I see!りょーかいです!」

 

 というわけで、ボクとこなたさんは、ホテルエリアにもどることにした。ファクトリーエリアのラビリンスを出てホテルエリアにもどって、どこに行くかまたこなたさんと話した。

 

 「レストランの捜査は鉄君と野干玉ちゃんがやってるんだっけ。それじゃあ・・・」

 「あっ!スニフくんとコナタだ♡おーい☆」

 

 ボクとこなたさんに、とおくから声がかけられた。この声としゃべり方で、すぐにだれか分かる。声のする方を見ると、ショッピングセンターのテラスから、マイムさんが大きく手をふってた。まぶしいくらいのスマイルで、イノセントな声をボクたちに向ける。ボクたちはひとまず、ショッピングセンターにいってマイムさんと話をした。

 

 「がんばってるー?」

 「まだ廃工場しか捜査してないよ。虚戈さんは元気そうだね」

 「うん☆殺されるのがマイムじゃなくて一安心だと思ったのに、今度は本当に命を懸けなきゃいけなくなっておったまげーだよ♠」

 「マイムさん!こなたさんの前でそんな言い方、ひどいです!」

 「いいんだよスニフ君。虚戈さんがこういう子なのは知ってるから。それより、何か分かったことはある?」

 「うーん♣ショッピングセンターはあんまりかなー♣ハイドとヤスイチも調べてるんだけどね♫」

 「また変な組合わせだね」

 「マイムは先にヤスイチが造ったアートを見にアクティブエリア行ったよ♫すごかった!なんかぐわーって感じで♢みんなに見せたかったけど、大きいし重いし1人じゃ持ってこらんないからやめたの♡」

 「よく分かんないです」

 

 マイムさんと話しててもあんまりゲインはなさそうだ。ヤスイチさんのアートはいいけど、それよりハイドさんがショッピングセンターにいることがびっくりだった。ハイドさんはここに来た日にファクトリーエリアをしらべたり、1人だけオピニオンを堂々と言ったり、なんだかこわいかんじはするけどインテリジェンスがある。もしかしたら、ショッピングセンターにインポータントエヴィデンスがあるのかもしれない。

 ボクたちはすぐにマイムさんとわかれて、ショッピングセンターの中に入っていった。中は気になることもなくて、ラストナイトとちがうところもあんまりない。ハイドさんをさがしてみるけど、広すぎてなかなか見つからない。

 

 「話は聞きたいけど、どこにいるか分からないもんね」

 「それがこまりました。ハイドさーん!いないですかー!」

 「星砂君は無視しそうだね」

 

 大きい声を出してコールしてみるけど、リアクションはない。ハイドさんはこういうのにリアクションするような人じゃないけど、ヤスイチさんの方はなにかリアクションしてくれるかもしれない。

 

 「それにしても色んなお店があるんだね。私、あんまり来たことなかったから知らなかった」

 「たくさんあります!おつむショップもありました!」

 「おつむ?・・・もしかして、おむつ?」

 「それでした!」

 「そんなもの必要なのかなあ?」

 「モノクマ言ってました。ここでセールしてるもの、オール、ボクたちのだれかのニーズあります」

 「ふーん。ってことは、あの凶器もここで買ったのかな?」

 「じゃあ、そこを見た人がいれば・・・!」

 

 そうこなたさんと話すけど、ボクたちだけで話しててもダメだ。みなさんの手に入れたエヴィデンスからきちんとインファーしないと。もうちょっとショッピングセンターの中をさがしてくと、どこかから声がきこえてきた。

 

 「カンベンしてくれよ星砂氏い。自分で運べばいいじゃないかあ」

 「情けないヤツだ。これしきのことでクタクタになるなど、本当に男子高校生か?」

 「全白髪の星砂氏に言われたくないよお」

 「あっ、納見君に星砂君」

 「む。子供にアンテナか。ちょうどいい、お前たちも手伝っていいぞ」

 「こどもじゃないですってば!なにしてるんですか?」

 「ここの在庫が気になってな。メガネに段ボールを運んで調べさせている。それが、たった2箱運んだだけで疲弊しきってしまって、どうも使い物にならんのだ」

 「自分で1箱も運ばないくせしてよく言うよお・・・!」

 「在庫が気になるって・・・ここ、おむつショップだよ?」

 

 見てみると、くたくたになったヤスイチさんがカードボードボックスにもたれてひいひい言ってて、ハイドさんがため息をつきながらそれを見てた。

 

 「先ほどここを通りかかったら、コーナーの一角が空になっていた。昨日の今日でおむつを使うようなヤツがいるか?子供がいるとはいえ」

 「むっ!ボクのことじゃないでしょうね!」

 「すごいね今のおむつはあ。これトイレに流して処分できるんだってさあ」

 

 カードボードボックスにもたれながらヤスイチさんがケアフリーに言った。こんなことに気付くなんて、ハイドさんはホントにこまかいところまでよく見てる人だ。おむつショップなんてボクだったらスルーしてた。

 

 「他にも情報が必要だな。クロにはせいぜい楽しませてほしいものだ」

 

 

 獲得コトダマ

【虚戈の証言)

 アクティブエリアの武道場に、納見が夜通し造形していたという木造がある。かなりサイズが大きく、運ぶにはかなりの労力が必要だという。

 

【納見の運動神経)

 普段はインドア派の納見は、運動神経が壊滅的に悪い。また体力もないため、段ボール箱を2,3箱動かしただけでへとへとになってしまっていた。

 

【ショッピングセンター)

 ショッピングセンターには様々な商品が揃っており、おむつの専門店まである。モノクマ曰く、ここにあるものは全て生徒の誰かが必要としているもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤスイチさんとハイドさんとわかれて、ボクとこなたさんはネクスト、ホテルに行くことにした。ショッピングセンターを出てみると、ホテルからテーマパークエリアに走ってくハルトさんがいた。なんだかビジーなかんじだ。

 

 「ハルトさん!インヴェスティゲートどうですか?」

 「須磨倉君だ」

 「ん?おう、スニフに研前か。いや、ホテルでもいくつか分かったことがあったから、そろそろ検死も終わっただろうし廃工場に行こうと思ったんだ」

 「もう捜査終わったの?」

 「俺はそんなに有能じゃねえよ。鉄たちのレストランの捜査と、雷堂たちの個室の捜査の結果を聞き回ってたんだ。情報をぶのも俺の仕事だからな」

 「シェアですか。Great!ハルトさん、自分のやるべきこときちんとやっててかっこいいです!」

 「こんなときなんだ。できることやるしかねえだろ。俺は頭もよくねえし、捜査なんて向いてねえんだ。こうして走り回る方が性に合ってるってだけだ」

 

 ストイックに走り回るハルトさんは、自分にできることをなんとかしてるんだ。ダイレクトにエヴィデンスやクルーを見つけてるわけじゃないけど、ディスカッションするためにインフォメーションシェアは大切なことだ。プロのハルトさんがいてくれることが、とっても心強かった。

 

 「それで、何か気になったこととかある?」

 「これから聞きに行くんなら俺が言うより直接見た方が確実だろうな。気になったのは・・・特にはねえかな。廃工場で殺されたんなら、あんまりこっちに手掛かりはないだろうな」

 「・・・そうだね」

 「ま、研前もそう肩落とすな。こんなことになっちまって参る気持ちは分かるけど、そんな場合でもねえんだろ?」

 「う、うん・・・ごめんね、気を遣わせちゃって」

 「気にすんな!」

 

 明るいスマイルを見せて、ハルトさんはまた走って行っちゃった。みんな、それぞれが自分なりにできることをしてるんだ。ボクたちももっとがんばらないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホテルのエントランスのすぐよこに、いつもボクたちがモーニングをたべるレストランがある。サイクロウさんとたまちゃんさんがここをしらべるって言ってたから、何か分かったことがないか行ってみた。でもレストランにはたまちゃんさんしかいなくて、サイクロウさんはいなかった。

 

 「あれ?野干玉ちゃん、捜査は?」

 「たまちゃんって呼べっての!捜査なんかたまちゃんできないし、意味分かんないんだもん」

 「モノクマが言ってたクラストライアルは、たまちゃんさんもやるんですよね?こわくないですか?」

 「・・・怖いとか怖くないとか、自信あるとかないとか、そんなこと言ったって意味ないでしょ。やるっきゃないんだから。こんなところで、わけのわからない人殺しのせいで死ぬなんてゴメンだもん」

 「言ってることとやってることが噛み合ってないよ」

 「うるさいなー!あんたたち手掛かりが欲しいなら厨房行きなよ!鉄のお兄ちゃんがなんかやってるからさ」

 

 グラスのオレンジジュースをちょびちょび口にしながら、たまちゃんさんはおちつきなくしてた。不安なんだな。ボクだってクラストライアルがなんなのか分かんないし、どうなってしまうのか不安だ。

 

 「あっ、あとさっき相模が来てたよ」

 「相模さんも?」

 

 キッチンに入ると、たまちゃんさんが言ってたように、サイクロウさんといよさんの2人がキッチンにいた。ワタルさんは、このケースにかかわってるところをインヴェスティゲートしようって言ってたけど、キッチンって何かあるのかな?イエスタデイ、ふつうにテルジさんがクッキングしてただけだと思うけど。

 

 「いよーっ!スニフさんに研前さん!捜査は順調でございますか!?」

 「相変わらず元気だね相模さん。うん、みんな順調かな。私たちは特に何かをしてるわけじゃないけど」

 「みなさんのリザルト、きいてまわってます!」

 「先刻、須磨倉もそう言って来た。分かったことはそんなにないぞ」

 「きかせてください!」

 

 キモノでキッチンをダッシュしながら大声を出すいよさんと、ナイフを見るサイクロウさん。なんだろうこのエキゾチックなキッチン。キッチンのライトにぎらつくナイフを見ると、なんだかおなかのあたりがぞわりとする。サイクロウさんはナイフをおいて分かったことをおしえてくれた。

 

 「まず、包丁が一挺足りない。遠目にしか確認していないが、茅ヶ崎の腹に刺さっていた得物はここにあったもので間違いない」

 「そんなこと分かるの?」

 「包丁一挺一挺にも、刃の形や光沢で微妙な違いが出る。プラスチックでもなければ、おおよその見分けはつく。これでも鍛冶屋の息子だ」

 「へえ、すごいね鉄君。じゃあ茅ヶ崎さんを襲った凶器は包丁で決まりか・・・」

 「昨日下越が使っていた鮪包丁も、なかなかのものだった。あの華麗な手際・・・包丁が踊っているようだった」

 「目の付けどころがシャープです」

 「上手いことおっしゃいますねスニフさん!いよーっ!」

 

 上手いこと言ったつもりはないんだけどなあ。でもサイクロウさんがそう言うなら、マナミさんのおなかにささってたナイフはキッチンからブリングアウトされたものだってことだ。だけど、それだとボクには分からないことがある。

 

 「厨房の包丁が凶器に使われたということは、昨日最後まで厨房に残っていた人こそ胡散なるものですねえ・・・」

 「昨日キッチンにいたのは・・・下越君が片付けをしてて、私とスニフ君と茅ヶ崎さんでそれを手伝ってたよ。他のみんなはお腹いっぱいですぐ寝ちゃったりお風呂行ったりしてた」

 「ボクもおてつだいしました!」

 「俺と須磨倉も手伝いで片付けはしたが、包丁を持ち出すほどの余裕はなかった。洗い物をしていれば一挺なくなっていても気付きにくいから、やはり直接洗い物をしていた者たちか」

 「ボ、ボクたちはちがいますよ!ナイフなんてもったらデンジャラスです!」

 「うむむ・・・被害者の茅ヶ崎さんがその中にいるのも気になるところではありますな」

 

 サイクロウさんの言うことをサスペクトするわけじゃないけど、でもナイフを持ちだしたのが、あのときお片付けをしてた中のだれか?ボクもこなたさんもちがうんなら、テルジさんかマナミさんになる。マナミさんはヴィクティムだからなくすると、もうテルジさんかしか・・・No!テルジさんがそんなことするわけないです!

 

 「俺に分かるのは凶器のことだけだ。それが決定打になるかどうかまでは保証できない」

 「そう簡単にはいかないってことだね」

 

 もしテルジさんがクリミナルだったとして、もしテルジさんじゃない人がクリミナルだったとして、ボクはそのコンクルージョンにさんせいできるんだろうか。だれがクリミナルだってことになっても、ボクはそれを信じたくない。それじゃいけないってことも分かってるのに。

 

 「・・・そう言えば、茅ヶ崎さん、ちゃんとおにぎり渡せたのかなあ」

 「いよ?おにぎりですか?」

 「うん。見当たらないから、どうしたのかなって」

 「俺たちがここに来た時には、そんなものはなかったぞ。しかし、それがなんだというのだ?」

 「マナミさん、ラストナイト、ライスボールクッキングでした。ワタルさんにあげむぶっ」

 「そういうの人に言いふらさないの」

 

 こっ!!こなたさんの手が!!ボクの!!口に!!ああやわらかい・・・それにいいにおいだ・・・!!Good smell!!Sniff Sniff Sniiiiiff(くんくんはすはすふがふが)!!

 

 「お、おい・・・スニフが苦しそうだぞ研前。呼吸が乱れている」

 「あっ、ごめんねスニフ君。だけど、女の子のデリケートなことを言いふらしちゃダメだよ」

 「yeah・・・!」

 「ラリった目をしております」

 

 

 獲得コトダマ

【鉄の証言)

 凶器に使われたナイフは、厨房にあったナイフと刃渡りも素材も全く同じだという。実際に、厨房からはナイフが一本なくなっていた。

 

【研前の証言)

 事件前日に厨房に出入りしていたのは、片付けをしていた下越と研前とスニフと茅ヶ崎。途中で大きな食器を片付けに、須磨倉と鉄が立ち寄った。

 

【昨夜の茅ヶ崎)

 昨夜の片付けが終わった後、茅ヶ崎は一人で厨房に残って雷堂の夜食としておにぎりを作っていた。しかし捜査時、厨房におにぎりはなかった。

 

 

 進化コトダマ

【ナイフ)→【キッチンの包丁)

 茅ヶ崎の腹部に刺さっていた包丁。腹部からの出血が伝っているが、刃のあご部分だけでなく柄の部分まで伝っている。元はキッチンにあったもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レストランでは、マナミさんをさしたナイフのことが少し分かった。少し分かると、また分からなくなる。ボクたちはホントに、ボクたちの中のだれかをクリミナルだってジャッジしなきゃいけないんだ。それが、いまイメージするだけでも、すごくハードだ。

 

 「スニフ君」

 

 ぐるぐる考えるボクに、こなたさんが声をかけた。ボクの名前のほかには何も言わなかったけど、それだけで今ボクがやらなきゃいけないことを思い出させてくれた。そうだ。もしボクたちの中にクリミナルいるのがホントでも、ボクたちはそれをジャッジしなきゃいけない。その人は、マナミさんをころしたんだ。それを許すなんてこと、できるはずがない。こなたさんも気持ちは同じはずだ。

 

 「ソーリーですこなたさん」

 「ううん。無理はしなくていいんだよ。スニフ君はまだ・・・あ、子供って言っちゃダメなんだよね」

 「はい。ボク、がんばります」

 

 レストランを出て、ボクとこなたさんはマナミさんのゲストルームに向かう。イエスタデイ、おにぎりを作るのにレストランにいたマナミさんは、きっとそのあとゲストルームにもどったはずだ。もしかしたらそこに、何かクルーあるかもしれない。エントランスからゲストルームに行くところで、トイレがまだキープアウトされてた。

 

 「あれ?ここのトイレって使えないの?」

 「そうなんです。モーニングからずっと、キープアウトです」

 「なんでかな?」

 「トイレつまったみたいです」

 「男女とも?」

 「Umm・・・」

 

 モノクマが言ってたことだからボクはよく分からない。だけど、モーニングからずっとだから、ボクより先にウェイクアップした人、トイレつまらせちゃったんだと思います。でもそんなことを言うのはその人のためによくないから、何も言わないでおいた。

 トイレの前をすぎて、ゲストルームまで行く。ラストナイト、マナミさんはゲストルームもどったはずだ。どこかに何かクルーがあるはずだ。ルームまで行くと、同じように思った人たちがゲストルームのまわりをしらべてた。

 

 「あれ?正地さん」

 「あっ、スニフくんに・・・と、研前さん。あなたたちもここの捜査?もう3人もいるけど」

 「いろんなところ見てます。どうですか?」

 「部屋の中は雷堂くんと城之内くんが捜査してるから、私は部屋の外を見てるの」

 「部屋って・・・そこ、私の部屋だけど?」

 

 床をじっと見てしらべてるセイラさんが、ボクとこなたさんを見てなんだかバツがわるそうにしてた。マナミさんのルームをしらべてると思ってたのに、セイラさんがいるのはこなたさんのルームの前だった。

 

 「う、うん・・・それは分かってるんだけど、ちょっと気になるものを見つけたの。ま、間違いだったら、本当にごめんなさい」

 「どうしたの?」

 「その・・・これ、何か知らない?」

 「・・・?」

 

 なんだか言いにくそうにするセイラさんが、そろーり指でさしたのは、こなたさんのルームの前のろうかのすみっこだった。カーペットのカラーがあざやかで、よくよく見てみないとセイラさんが何を見つけたのか分からなかった。

 だけど、よく見てみると、そこにはなんだか赤いポイントが・・・血がワンドロップだけ、そこにあった。

 

 「血・・・よね、これ」

 「・・・?なにこれ?私・・・分からない」

 「わ、私は別に、研前さんがどうって言ってるわけじゃないのよ。ただ、部屋の前にこんなのがあるのが変だわって思ったから、聞いただけなの。気を悪くしないで欲しいわ」

 「う、うん・・・」

 

 あわててセイラさんはフォローするけど、こんなところに血がおちてたら、だれだってヘンに思う。それはつまり、マナミさんがころされたのと、こなたさんが、何かリレーションあるってことのヒントだ。ボクだってそんなこと考えたくないけど、でも他の人は・・・。

 

 「ごめんなさい」

 

 なんでか、セイラさんはあやまった。ボクはこなたさんを見ることもできないで、ただ血のあとを見てた。ずっとそこにいてもなんだかオークワードな気分だから、マナミさんのルームをしらべることにした。中には、セイラさんが言ったとおり、ワタルさんとダイスケさんがいた。

 

 「あっ・・・雷堂君」

 「ん。スニフと研前か。やっぱここ来るよな」

 

 マナミさんのゲストルームは、とっても広くてパシフィックなテーマのルームだった。ウォールペーパーはオーシャンビューにまちがえるほどブルーとホワイトのコントラストがきれいで、コーラルカラーのインテリアがあちこちにおかれてる。ライトはサンシャインみたいに白くクリアで、ベッドはリゾートビーチみたいで今すぐにダイブしたくなる。

 

 「こんなステキな部屋だったのに・・・茅ヶ崎さん、辛かっただろうね・・・」

 「マナミさんらしくてグレートなルームです。きっと、マナミさんここ好きでした」

 「くそっ・・・俺がしっかりしてればこんなことには・・・!」

 「そういえば、雷堂君は寝ずの番で見張りしてたんだよね?茅ヶ崎さんとか、茅ヶ崎さんの部屋に出入りする人がいたりとかは見てないの?」

 「・・・俺が見た限りでは、夜中に出入りしてたヤツはいない。でも、部屋の鍵がずっと開いてた部屋は3つある」

 「3つ?」

 「一つは納見だ。晩飯の途中でアクティブエリアに行って、深夜に帰って来た時に話した。ずっと部屋にいない理由も分かる。一つは茅ヶ崎だ。夜中に部屋の外にいるなんておかしいと思ったけど・・・こんなことになってるなんて・・・!」

 「ラストワン、だれですか?」

 「最後の一つは・・・星砂だ」

 「ハイドさん?なんででしょう?」

 「んなもん、あいつが殺したからに決まってんだろ!」

 「わっ、城之内君、いたの?」

 「バリバリいたわ!たまにガチになったらこれだよチクショウ!」

 

 ラストナイトのことについてワタルさんから話をきいたら、思ってもないことがきけた。ルームのキーがひらいてたってことは、そのルームの人はそのとき外にいたってことだ。ルームキーはチープなつくりだから中からしかかけられないんだった。

 

 「他の部屋は全部鍵がかかってたの確認したんだろ?だったらあいつしかいねえじゃねえか」

 「確認ってどうやって?」

 「部屋の鍵が赤色になってると鍵がかかってるってことなんだ。一目見て分かるから便利だよな」

 「だったらやっぱ星砂だ!あんにゃろう、集団行動できねえのは百歩譲って、女に手ェ挙げるほど性根が腐ってるとは思わなかった!ぶん殴る!」

 「ま、待て待て待て!まだあいつが犯人だって決まったわけじゃないだろ!」

 「・・・あれ?これ、なんですか?」

 「スニフ君、今こっち大変なのによく普通に捜査できるね」

 

 なんだか一人でエキサイトしてるダイスケさんを、ワタルさんがなんとか止めてる。レディに手を出すのがひどいことだっていうのは分かるけど、まだクリミナル分からないです。ハイドさんって決まってもないのに、もうダイスケさんの中ではハイドさんがクリミナルで決まりみたいだ。

 

 「おうなんだスニフ!星砂に繋がる手掛かりなんか見つけたか!」

 「ハイドさんかんけいしてるか分かんないですけど、これ、ユーズドです」

 「あん?なんだこりゃ?」

 「ピッキングツールです。マイルームにもありました」

 「そういやそうだな。ん?なんで茅ヶ崎の分が使用済みなんだ?あいつは被害者だろ?」

 「さあ・・・」

 

 ベッドサイドのキャビネットにあったピッキングツールは、ビニールがあけられててユーズドだった。もしかしたらクリミナル、ピッキングしてスリーピングのマナミさんおそったのかな?でもそうだとしたら、なんでファクトリーエリアにマナミさんがいたんだろう?それに、ワタルさんのモニタリングがあるのに。

 

 「あ、そういえばスニフ君。城之内君にお願いあるんじゃなかったっけ?」

 「そうでした!ダイスケさん、モノクマファイルのトランスレーション、おねがいします!」

 「ん?ああ、そうか。スニフにゃちと難しいか。けどいいのかよ?あれ結構エグい写真もあるぜ?」

 「おねがいします!ボク、みなさんの力なりたいです!むらさきしきぶイヤです!」

 「は?」

 「たぶん、村八分のことじゃない?」

 「それでした!」

 「よく分かったな!?」

 

 さすがだなあこなたさんは。これでやっとボクもまともにモノクマファイルの中身をアンダースタンドできる。ダイスケさんのイングリッシュアビリティはグレートで、ボクでも知らないワードのエクスプレインまでしてくれた。まさかダイスケさんに教わることになるなんて思わなかったなあ。

 

 

 獲得コトダマ

【エントランスのトイレ)

 朝方、ホテルのエントランスのトイレが使用不可能になっていた。前日の夜までは普通に使えていたが、モノクマ曰く誰かが詰まらせたらしい。

 

【廊下の血痕)

 研前の部屋の前の廊下の隅に、一滴の血のあとがあった。よく見なければ分からない。

 

【雷堂の証言)

 寝ずの番をしていた雷堂によれば、夜中に部屋の鍵が開いていたのは、星砂・納見・茅ヶ崎の3人の部屋だった。納見は夜中にレストランで会った。

 

【個室のロック)

 個室はスライド式の簡易な鍵で施錠されている。外側の小窓から開錠中は青色、施錠中は赤色のパネルが覗く。雷堂曰く、一目で鍵がかかっているか分かるのでとても便利。

 

【ピッキングツール)

 コロシアイ参加者全員に配布されている、モノクマ製スペシャルピッキングツール。初心者にも分かりやすい図説付き。茅ヶ崎の部屋にあったものは、使用した痕跡がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そういえばスニフ君。モノヴィークルって使ったことある?」

 「YES!ナビゲーションしてくれるからベリーユーズフルです!」

 「ふーん」

 「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーーーん!モノクマ登場だよ!」

 「Don't you ever come here again, could you(一昨日来やがれください)!」

 「ひ、ひどいスニフクン!そんな汚い言葉使うなんて!」

 「一昨日おいでよ」

 「2カ国語で同じ罵倒を受けた!なにこの珍体験!」

 

 ホテルの前にたくさんあるモノヴィークルが気になってこなたさんとお話してると、どこからかモノクマが飛び出してきた。トイレのリペイアはもういいのかな。

 

 「何の用?」

 「なんだかモノヴィークルについて知りたそうにしてたから教えてあげようと思って来たんじゃないか」

 「おしえてくれるんですか?」

 「うぷぷぷぷ♫ボクは優しいクマだから教えてあげるのです。モノヴィークルのナビには履歴機能がついてるのは知ってるよね?」

 「気にしてなかったなそんなの」

 「してよ!ボクが一生懸命作ったのに!」

 「There's no stiff knew(知ったこっちゃないです)」

 「知ったことじゃないよね」

 「オマエラなんなの?副音声?」

 

 ナビのログファンクションなんてみんな知ってるはずだ。それがなんなんだろう。

 

 「しょぼん・・・もうなんか言う気なくなっちゃった。っていうかナビ機能以外に目玉機能ないし」

 「案外しょぼいんだね」

 

 がっくりして落ち込むエフェクトが見えそうなくらいしょんぼりするモノクマは、そのままホテルのバックに消えていった。何しに来たんだろう。でも、ボクもこなたさんとリンクしながら悪口言うことなかったかな。なんだかちょっとだけかわいそうに思えてきた。

 ボクとこなたさんはラストにアクティブエリアをしらべにきた。ここはマーダーケースとはダイレクトにリレーションないと思うけど、ラストナイト、ヤスイチさんがウッドカーヴィングしてたはずだ。たしか、えーっと。

 

 「グレープ?でしたっけ?」

 「武道場。マーシャルアーツってヤツだね」

 「それですか」

 

 プールとかジムが入ってるコンプレックスファシリティの一つに、オリエンタルな感じのブドウジョウがありました。なんでこんなところでウッドカーヴィングなんかしてたのか分からないけど、ブドウジョウのセンターにウッドチップスをちらかした、アンスピーカブルなサムシングがどでーんとあった。

 

 「What' this?」

 「これが、納見君が造ってたっていう彫刻・・・なのかな?」

 「う〜ん、ジ・アンスピーカブル・ワンです」

 「名状しがたいねこれは。台風の模型かなんかかな?」

 「そんな造形しないだろお」

 

 ぐねぐねカーブしたようなラインが全体にほってあって、ところどころはディストートされてる。なんだか虫をスコルドしてるバーディみたいだ。ボクとこなたさんで全然ちがうイメージをもったけど、それをヘンに思わないくらい、わけがわからなかった。そんなことを言ってたら、カーヴィングの後ろからヤスイチさんがのそりと出てきた。

 

 「あれ?ショッピングセンターにいたんじゃないの?」

 「星砂氏がさあ、調べ終えたからどっか行けって言うんだよお。他に行くところもないしい」

 「もっとあると思いますけど」

 「これはなんなの?」

 「昨日の晩に造ったのさあ。タイトルはあ・・・考えてなかったやあ。え〜っとお、『無知の罪』なんてどうだろお」

 「思ったより重いタイトルだね」

 「もちろんだよお。これにはおれの右利きへの怒りと啓蒙を詰め込んだからねえ。昨日の2時までかかった大作だよお」

 「そんなレイトナイトまでですか!」

 

 スシディナーのときにハイドさんとケンカして出て行った、あのときのヤツか。相当アングリーだったけど、まさかそんなレイトナイトまでカーヴィングしてたなんて思わなかった。でも、その時間までいたんだったら、マナミさんのケースと時間がかさなる。

 

 「ヤ、ヤスイチさん!ラストナイト、あやしいことなかったですか!?クリミナル、分からないですか!?」

 「ん〜?いやあ、昨日はこれを造った後はすぐにホテルの部屋に戻ったからねえ。ああ、その前に小腹が空いたからレストランにも寄ったなあ。そこで雷堂氏に会ったよお」

 「雷堂君・・・?そう言えばそんなこと言ってたね」

 「他に見た人はいないなあ」

 

 もしかしたら、と思ってきいてみたけど、ヤスイチさんは何も知らなかった。いきなりこんなところでクリミナル分かったら、モノクマがきっと他になにかしてくるはずだ。モノクマは、クラストライアルっていうものをボクたちにさせたいはずだから、ダイレクトにクリミナルだれか分かるようなものはないはずだ。

 

 

 獲得コトダマ

【ナビ履歴機能)

 モノヴィークルのナビには履歴機能が搭載されており、ナビした場所と時間が記録される。何回か同じ場所に行くと、学習して自動で連れて行ってくれるようになる。

 

 進化コトダマ

【虚戈の証言)→【木造彫刻)

 アクティブエリアの武道場に、納見が夜通し造形していたという木造彫刻があった。かなりサイズが大きく、運ぶにはかなりの労力が必要だという。納見によれば、深夜2時までかかった大作だという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ピンポンパンポ〜〜ン!!オマエラ、捜査は終わったかな?ただいまをもって捜査時間を終了とするよ!時間が足りないって?時間は誰にとっても無慈悲で残酷なものなんだよ。有限であることを分かっているのに無限だと思い込もうとしてる、そこのオマエ!オマエが一番時間を浪費してるんだよ!さあさあ、オマエラに残された有限な時間はどれくらいかな?それを決めるのはオマエラ自身!エントランス池前広場に集まってください!』

 

 ボクたちのモノモノウォッチがバイブしたと思ったら、フロア中にモノクマのアナウンスがエコーした。それは、ボクたちに与えられた時間がフィニッシュしたことを知らせるアナウンスだ。

 

 「行くしかないんだろうねえこりゃあ」

 「うん・・・」

 

 ボクとつないでるこなたさんの手に、ぎゅっと力がこもった。これから何が起きるのか分からない、クリアーなのは、ボクたちがむりやりに命をかけさせられるってことだけだ。本当は、今すぐにげだしたい。でもここでボクたちがにげだしたら、マナミさんはどうなるんだろう。ゴーストなんて信じてないけど、でもボクの中にいるマナミさんは、まちがいなく悲しむ。

 

 「・・・行きましょう、こなたさん。きっと、ダイジョブです」

 

 ベーシスなんかない。神様にお祈りすることもミーニングレスに思えた。生きるか死ぬかをかけたバトルの前になって気が付く。すべてボク自身の手にかかってるってことに。自分の命も、大切な人の命も、未来も、ユメも、キボウも、ゼツボウも。

 ボクのために、こなたさんのために、マナミさんのために、みなさんのために・・・ボクは、トゥルースを見つけ出す。この気持ちがチェンジしてしまわないうちに、早くエントランス広場に行こう。

 

 

 

 

 

コロシアイ・エンターテインメント

残り:16名→15名

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 獲得コトダマ一覧

【モノクマファイル①)

 被害者は“超高校級のサーファー”、茅ヶ崎真波。死体発見場所はファクトリーエリアの廃工場。死亡推定時刻は1:10頃。死因は失血と呼吸困難による心停止。刺し傷は腹部に1ヶ所あり、肺に達している

 

【ナイフ)→【キッチンの包丁)

 茅ヶ崎の腹部に刺さっていた包丁。腹部からの出血が伝っているが、刃のあご部分だけでなく柄の部分まで伝っている。元はキッチンにあったもの。

 

【廃工場の血痕)

 茅ヶ崎の死体の周囲には血痕が残されていた。それなりの出血量ではあるが、極曰く死に至るほどの量ではなさそう。

 

【虚戈の証言)→【木造彫刻)

 アクティブエリアの武道場に、納見が夜通し造形していたという木造彫刻があった。かなりサイズが大きく、運ぶにはかなりの労力が必要だという。納見によれば、深夜2時までかかった大作だという。

 

【納見の運動神経)

 普段はインドア派の納見は、運動神経が壊滅的に悪い。また体力もないため、段ボール箱を2,3箱動かしただけでへとへとになってしまっていた。

 

【ショッピングセンター)

 ショッピングセンターには様々な商品が揃っており、おむつの専門店まである。モノクマ曰く、ここにあるものは全て生徒の誰かが必要としているもの。

 

【鉄の証言)

 凶器に使われたナイフは、厨房にあったナイフと刃渡りも素材も全く同じだという。実際に、厨房からはナイフが一本なくなっていた。

 

【研前の証言)

 事件前日に厨房に出入りしていたのは、片付けをしていた下越と研前とスニフと茅ヶ崎。途中で大きな食器を片付けに、須磨倉と鉄が立ち寄った。

 

【昨夜の茅ヶ崎)

 昨夜の片付けが終わった後、茅ヶ崎は一人で厨房に残って雷堂の夜食としておにぎりを作っていた。しかし捜査時、厨房におにぎりはなかった。

 

【エントランスのトイレ)

 朝方、ホテルのエントランスのトイレが使用不可能になっていた。前日の夜までは普通に使えていたが、モノクマ曰く誰かが詰まらせたらしい。

 

【廊下の血痕)

 研前の部屋の前の廊下の隅に、一滴の血のあとがあった。よく見なければ分からない。

 

【雷堂の証言)

 寝ずの番をしていた雷堂によれば、夜中に部屋の鍵が開いていたのは、星砂・納見・茅ヶ崎の3人の部屋だった。納見は夜中にレストランで会った。

 

【個室のロック)

 個室はスライド式の簡易な鍵で施錠されている。外側の小窓から開錠中は青色、施錠中は赤色のパネルが覗く。雷堂曰く、一目で鍵がかかっているか分かるのでとても便利。

 

【ピッキングツール)

 コロシアイ参加者全員に配布されている、モノクマ製スペシャルピッキングツール。初心者にも分かりやすい図説付き。茅ヶ崎の部屋にあったものは、使用した痕跡がある。

 

【ナビ履歴機能)

 モノヴィークルのナビには履歴機能が搭載されており、ナビした場所と時間が記録される。何回か同じ場所に行くと、学習して自動で連れて行ってくれるようになる。




文字数多くなりすぎて反省。次からはもっと細切れにするようにします。2万5千字ってホント
実際はコトダマとか三点リーダーとかあるので多少は減ると思いますが、多いですよねえ

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