「──という訳で、今回は将来有望な若手の諸君に集まって貰った次第だ」
上層部のおっさんが厳かに進めていく。その視線の先にあるのは5人の若手悪魔だ。本来はもう1人居たのだが、現在捜索中である。
そして若手同士のレーティング・ゲームの開催やらが長々と説明され、パーティーは終盤に差し掛かった。魔王サーゼクスが将来の目標を発表するように言うが、イッセー達には関係無い。
そこら辺から持ってきた高級料理を食いながら、ミッテルトの肩を優しく叩いた。
「ミッテルト、もう起きとけよ」
「ごめん、寝てたっス。難しい話は苦手で……」
「苦手、ねぇ」
何気に膝の上に乗せている辺り、彼の性癖が伺える。周囲の悪魔や猫姉妹がドン引きしている事にも気付かないイッセー。
「白音は私が守るにゃ! ロリコンには触らせない!」
「……身の危険を感じました」
「俺の扱いが酷くない!?」
全く魔力が使えないマッチョが魔王への憧れを告げたり、眼鏡クール貧乳が馬鹿にされたりもしていたが、イッセー達は聞いていなかった。
こうして、なんだかんだでパーティーは終わった。
「で、ホテルに戻ってきた訳だが。今後の予定はどうする?」
「美食巡りとか?」
「レーティング・ゲームの観戦に行くっスよ! 『
「じゃあ順番に行くか」
パーティーが思ったよりも長く、お開きになった際には既に夜も遅かった。疲れたのか直ぐに眠ってしまった幼女組を置いて、イッセーと黒歌はワインを飲む。
やがて酔いも回った頃に黒歌が訊ねた。
「ねぇ、ミッテルトちゃんが好きなんでしょう? 告白とかしないの?」
「随分とストレートな質問だな。……まあ、正直に言うと解らないんだ」
「どういう事にゃ?」
彼の脳裏にはかつて暴虐の限りを尽くした己があった。最強の邪神として、恐怖と残酷の代名詞であり続けた過去だ。自嘲気味に薄く笑う。
「忘れられがちだが、俺は『
「故に、誰かを愛した事が無いんだよ」
「そんな……」
「永劫に近い時間の中で、ただの一度もな」
グラスを傾けて赤ワインに自分を映した。嘗ての姿からは想像もつかない穏やかな顔をしていた。部下が見れば驚くだろう。
だが気さくでお人好しな言動とは裏腹に、本質的にはなんら変わらない。
イッセーは邪神なのだ。
「悪いな、折角の酒を不味くしちまった。今日はもう寝ようか」
「う、うん……」
何も言い返せないまま酒盛りは終わった。寝室に消えた彼を見送りながら呟く。
一部始終を影から見ていた、とある堕天使幼女に向けて。
「前途多難にゃ」
▼▼▼▼▼
翌日以降も美食巡りやゲーム観戦、各領地の特産品等を見に行った一同だが何となく空気が悪化していた。
その原因はイッセーとミッテルトのすれ違いにあった。
「お姉様、二人がギクシャクしてますけど」
「こればかりは私達にどうする事も出来ないにゃ」
そう言って遠くを眺めているイッセーを見た。普段なら馬鹿みたいにくっついているのに、最近は別行動している。彼女を意図的に遠ざけているようにも白音は思えた。
「……寂しいですね。前は笑顔に溢れていたのに」
「また皆で笑える日が来るにゃ」
その頃、ミッテルトは土産物を見ていた。どうにも居づらくなり一人で行動しているのだ。恋愛成就のお守りを片手にただ溜め息を吐く。
「ウチは、どうしたら……」
グッズを見るのに夢中だった彼女は自分を狙う悪意に気付かなかった。
穢れた神々