邪神イッセーの非日常   作:ミスター超合金

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先ずは原作10巻まで描き終わりました




学園祭のライオンハート
第拾四話 WEAVING A STORY


「レーティング・ゲームが始まるにゃ!」

 

 

「次の試合はリアス元部長とサイラオーグさんの対決ですか」

 

 

「サイラオーグに三万」

 

 

 一行はゲームの見物がてら、冥界のゲームスタジアムに訪れていた。無論VIP待遇。他勢力のトップ連中と混ざっての観戦である。

 邪神様に遠慮してか、はたまた恐れているのか。誰も喋らない微妙な空気のまま試合だけが進んでいく。

 

 

「ズルいっスよ! ウチもサイラオーグに賭けるっス!!」

 

 

「あ、じゃあ私も一口乗るにゃー」

 

 

「賭けになりませんよ」

 

 

 挙げ句に博打まで始める始末。しかも一番人気がサイラオーグという有り様だ。文句をぶちまけたいが、やってしまえば試合終了なので何も言えないサーゼクス。頭髪が薄くなったと噂の彼を尻目に博打の波は広がる。

 オーディンや帝釈天は笑いながらサイラオーグを選び、普段は興味を示さないであろうハーデスすら彼の名を言う。

 

 

 最早、誰もリアスを選ばないのか。実兄たるサーゼクスが頭を抱えようとした瞬間、一人の男が手を挙げた。

 

 

「……そんなら、俺はリアス達に賭けようじゃねぇか」

 

 

「アザゼルにしては意外だな。安全牌を選ぶかと思ったが」

 

 

「教え子を信じるのが教師だからよ」

 

 

「……君が親友で良かったよ、アザゼル」

 

 

 下馬評でも勝利確率は皆無と貶されたリアス。そんな彼女の可能性に賭けたのはアザゼル、一人だけだった。金よりも友情を選択した親友に思わず涙が溢れた。

 

 

 

 

「大穴当てて溜まったツケを払いたいんだろ?」

 

 

「……ギクッ」

 

 

 そして秒速で涙を拭った。

 

 

 

 因みに案の定リアスはフルボッコにされてしまい、後に残ったのは多額の負債を抱えてシェムハザにぶん殴られる総督の姿だった。

 

 

▼▼▼▼▼

 

 

 満面の笑みで自宅に帰ってきたイッセー達。総督から毟り取った金で酒とご馳走を買い込む辺り、今夜は盛大に飲むらしい。

 幼女組はシャンパンを、イッセーと黒歌はウイスキーを手に乾杯する。

 

 

「他人の金で飲む酒は美味い!」

 

 

「最低な発言だにゃー!!」

 

 

 笑いながら言う黒歌だが、光熱費や家賃その他諸々を悪魔勢力が支払っている事を解っているのだろうか。早くもベロンベロンの姉に呆れながら寿司を食い荒らす白音。何時もの光景だ。

 

 

 馬鹿騒ぎする家族に苦笑しながら、ミッテルトはシャンパンをグラスに注ぐ。すると顔を赤に染めたイッセーが歩み寄った。少し酔っているようだが、その眼差しは真剣だ。

 そのまま何気無く彼女の腰に手を回しながら、告げる。

 

 

「なあ、ミッテルト」

 

 

「急にどうしたんスか?」

 

 

「異世界での自己紹介でお前は言ったな。『妻の』ミッテルトだと」

 

 

「あ、あれは……ッ!! その、何と言うか……」

 

 

 

 

「──嬉しかった」

 

 

「へ?」

 

 

 唐突な告白に思ってポカンとなるミッテルト。そんな彼女が愛しくて、強く抱き締めながら更に紡ぐ。

 

 

「お前が妻だと宣言してくれた時、俺は『いいな』と思った。子供が居て、家庭があって。暖かい未来ってのが頭を過ったんだ」

 

 

「だから、『まだ』結婚してないと言った」

 

 

「イッセーさん……」

 

 

 片膝をついて。お伽噺の王子のように、白く細い左手を取る。

 

 

 

 

「俺と、結婚してくれないか」

 

 

▼▼▼▼▼

 

 

 昔、あるところに一人の天使が居た。彼女は生まれつき最下級の力しかなく、故に重大な任務からは弾かれ、毎日を雑用係として過ごした。他の天使達からは見下され続け、そんな連中を逆に見下そうと努力を重ねた。

 天使は何れだけ努力しても、生まれ持った能力が上昇する事は無い。その事実を知り失意のままに堕天するまでは。

 

 

 流れ着いた堕天使組織でも、また雑用の日々があるだけだった。鉄砲玉として扱われる事も珍しくなかった。

 自分は死ぬまでこんな生活を繰り返して、誰にも知られずに呆気なく死ぬのだろう。そう思うようにしていた。

 

 

「……だから、イッセーさんが助けてくれた時。ウチは嬉しかった」

 

 

「ミッテルト……」

 

 

 きっと涙でクシャクシャの顔、誰かに見られたくない顔をしているのに。

 

 

 何故、こんなにも胸元が暖かいのだろう。

 

 

「弱いし、馬鹿だし。ツルペタで、女子力の欠片もないチンチクリンっスけど。こんなウチでも幸せになって良いんスか?」

 

 

「安心しろ。これでも俺は最強の邪神だぜ? ……必ず幸せにする」

 

 

「マジパネェ……」

 

 

 微笑みながら二人は唇を交わした。

 

 

 

 

「遂に結婚だにゃー!」

 

 

「おめでとうございます!」

 

 

「お前ら、雰囲気をぶち壊すなよ!?」

 

 

 何処で用意したのか、クラッカーとカメラを片手に現れる猫姉妹。珍しく照れるイッセー。騒がしい日常の中で彼女は笑う。

 

 

「……これからも宜しくっス。あなた」

 

 




She is a Longinus.

彼女は神を殺す槍である。


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