第拾弐話 奇跡の価値は
「イッセー、その機械の中に入れ! 実験材料が無くて困ってたんだ!!」
「あんたは自分の教え子を殺す気ですか!?」
明らかに怪しい大型洗濯機の前でアザゼルとイッセーが騒ぐ。最初こそリアス達は様子を見守っていたが、流石に制止した。
「もう止めなさいよ、アザゼル。その機械をどうにかして頂戴。部室が潰れてしまうわ」
「そりゃ残念だ。こいつは一種のシミュレーションマシンで、入った者が想定される未来の姿になって出てくるんだ。成長して格好良くなったイッセーを見たくないか?」
「イッセー、入りなさい。部長命令よ」
言うなり洗濯機の中に彼を放り投げると、即座にスイッチをポチッ。謎の大爆発が巻き起こったのはその直後だった。
煤だらけとなった部室。衝撃で吹っ飛ばされたアザゼルが呟く。
「ゲホッ、やっぱり失敗したか……」
「聞き捨てならない言葉が!?」
「成功の母って言うだろ? 大丈夫か、お前ら」
ゲホゲホと咳き込みながらも文句を言うイッセー。当然無視されたが。他の面々も文句を言いながら立ち上がった。どうやら無事なようだ。
一先ず安堵したところで、四散した洗濯機の上に立つ影を見つけた。途端に寒気が彼等を襲う。
「リアス部長!」
咄嗟に庇うイッセー。様子を見ていたリアス達も戦闘体勢に入った。得体の知れないナニカが砂煙の向こうに居るのだ。
先程まで笑っていたアザゼルも真剣な表情だ。
「この魔力は主神クラスを越えてるな。……もっと上だ」
「……責任問題ですよ、アザゼル先生」
軽口を叩く二人。構えてはいるものの冷や汗が止まらない。そして煙が晴れて、遂に魔力の主が姿を現した。
「強制転移っスかね?」
「デートの邪魔をするとは、命が惜しくないようだな」
呑気な会話を交わす、妙に見覚えのあるゴスロリ幼女と茶髪の青年。一同は思わず驚愕の声を洩らした。
『イッセーがもう一人!?』
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「要するにそこの機械の故障で偶然、俺を呼び出したと……」
元凶を睨みながら
残念な方をチラリと見て、アザゼルも頷く。
「そうだ。申し訳無い事をした」
「下手に出るなら構わんさ。修理にどれだけの時間が必要だ?」
頭を下げるも、意外にもあっさり謝罪を受け入れた事に胸を撫で下ろした。
「全力で取り掛かって三日だ。無論、その間の生活は俺が面倒を見る」
ひたすら様子を伺うアザゼル。騒動の原因という点もだが、純粋に目の前の男が恐ろしかった。仮に機嫌を損ねれば、この場に居る全員で戦っても殺されるのがオチだと悟っていたからだ。
「胃が……」
どの世界でも苦労人のようだ。
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「つー訳でこれから世話になる邪神イッセーだ。宜しく頼む」
「妻のミッテルトっス! 宜しく!」
「まだ結婚してねぇだろ」
二人はなんやかんやで原作イッセーの家に宿泊する事となった。異世界交流を兼ねての事らしい。彼等が自己紹介するとリアスが驚いた顔で訊ねた。
「もしかして付き合っているのかしら?」
「籍は入れてないがね」
「そう……」
複雑そうな顔のリアス。恋人と同じ顔をした男が幼女と連れ添っているのだから当然だ。
今度はイッセーが邪神に問う。
「いや、待ってくれよ。それよりも邪神って何だ?」
「説明してなかったな」
「俺は元々、『
予想外の言葉に渇いた笑いを浮かべるしか無い原作組であった。
続、そして終。
非、そして反。