Dr.ゲムデウス   作:(´鋼`)

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因みにしてくれたら私がキーボウノーハナーになります。


rejectと覚醒 リーゼ・ロッテ

 高くなった視界、見下ろせば緑色に広がる大地が見えていて、そこに赤い風船を持った少女が居た。なぜ少女だと分かったのかは定かではない。しかしその少女を見下ろしているとは理解した。

 

 

 唐突に、赤い風船が少女から離れていく。徐々に上がってきた赤い風船の紐を、自分の()()()の手で掴んだ。しかし、その手は本当に自分のものなのか疑った。こんなにも自分の手は、こんなにも不気味な色だったのかと。

 

 

 赤い少女が呼んでいる。聞こえてくる言葉は、“ありがとう”と、そう言っていた。その少女は天を見上げて、そう言っていた。屈託のない笑顔で、不気味な存在に向かって言っていた。

 

 

 しかしその不気味な手は、赤い風船を潰した本人でさえ気付かなかった。そして足が上がる。その不気味な足は、少女の真上を取り、その足を━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ────────!?」

 

 

 

 飛び起きたゼロが険しい表情のまま辺りを見渡す。どうやら自分の部屋……ではなく、診察室のようだ。仕切りに使われているピンクのカーテンが学校の保健室を思い出させるが、今のゼロにそんな考えまで及ばなかった。

 

 

 

「はぁ……はぁ…………はぁ………………ここって……」

 

 

「目が覚めたか」

 

 

 

 カーテンが開かれると、ゼロの視界にはバダンが映る。しかしそれよりも、なぜ自分がこのような場所に居るのかを思い出そうとして……すぐに思い出した。そしてゼロが不安気に尋ねた。

 

 

 

「なぁ…………バダン…………あの怪獣は……どうなった……?」

 

 

「…………私が来た時は、ウルトラマンに攻撃されているザ・ワンを見ていた。だが赤色に点滅してもウルトラマンは攻撃していたのは確認している。まるで狂ったかのようにな…………」

 

 

 

 そこまでバダンが言って、漸く自分が陥っていた状況に震え始めた。あの時のゼロはただ怒りに呑み込まれただけの攻撃をしていた。銀色の体色のウルトラマンに、自分の手に赤黒い炎のようなものを纏わせてザ・ワンを殴りつけていた自分。

 

 

 不可抗力……とはいえども、ウルトラマン態の自分の胸で、サチをこの手で殺したこと。その光景がフラッシュバックし、言い様のない不安がゼロを襲った。

 

 

 ウルトラマンに変身して……それからどうなっていくのかが分かるのが怖いのだ。もしもまた怒りに呑み込まれて、また誰かを自らの手で殺してしまうことをした途端……サチのことを思い出して、動けなくなる。

 

 

 

「なぁ…………サチは?」

 

 

「……サチ、か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………生き続けてるだろうな、データとして」

 

 

 

 それがバダンに出来る、精一杯の伝え方であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 幾ばくかの日が経ち、攻略は第30層にまで及んでいた。迷宮区内で敵モブを斬りつけ、壁を蹴って方向転換し背後に攻撃するというアクロバティクな動きで両手斧を振るい、トドメは強力無比なステータスに任せてSSを放ち終える。一息ついたデウスは、安全エリアでもないのにも関わらず腰を下ろした。

 

 

 

『…………辛いなら変わるぞ』

 

 

「……いや、良いよ。それにゲムデウスらしくないじゃん」

 

 

『らしくない……か。宿主の陥っている状況を考えてみれば確かにそうだな。私にとっても不味い状況なのだからな』

 

 

「……ごめん、無理させてるみたいだね」

 

 

『だったら大人しく変われ、そして休め。ここに来て何回()()()()()()?』

 

 

「…………あら?覚えてないや」

 

 

 

 ゲムデウスと高山明(デウス)の会話には、いつも通りの雰囲気すらなかった。本人とゲムデウスだけが知る秘密を抱えていることを、誰にも悟られたくは無かった。

 

 

 現在、ランにはMが付き添いに居るのである程度の心配は無い。だからこそ自分の抱えるもう1つの秘密について、久々に思い耽ることが出来た。

 

 

 

「……()()()()()()、か。この世界でもガタが来るなんて思ってもなかった」

 

 

『私のウィルスとの適合が及ぼしたデメリット……茅場が製作したペインアブソーバーというシステムでさえも、私達には反応しなかった。宿主にとっては……なんら現実と変わらぬ世界になってしまった』

 

 

「…………フゥ、あぁもう無し無し!ほら、まだまだ続けるよ!」

 

 

『……あぁ、そうするか』

 

 

 

 デウスは両手斧の柄を右肩に置き、右腕で持ち手を支えて警戒態勢を取りつつもボス部屋を見つける為に探索を続けていく。

 

 

 

「……そういえばさ、リーゼ……優美には心配されちゃったね。不味いな、もう少し隠すの上手くしなきゃ」

 

 

『…………コイツは』

 

 

 

 そして第30層のボス部屋に到着したのは、それからおよそ5時間後のことであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第30層のエリアボスは少々特殊であった。鏡が部屋中そこかしこにあり、その鏡を伝って移動したり、別方向から攻撃を仕掛けてきたりする魔女のようなモンスターであった。といっても、ゲムデウスとの連携とレベル32+34のステータスで難なく回避や攻撃を加えられたことで、攻撃パターンのアルゴリズムは全て確認できた。

 

 

 この情報は攻略組にも伝えた。だが、またあの時のようにバグスターウィルスが介入してくる可能性も無きにしも非ず。だからこそ今出動できる仮面ライダーの2人、またはどちらか一方が必ずボス部屋に行かなくてはならない。

 

 

 その注意を払いつつも、(つつが)無く進んでいくボス部屋への道。モンスターだって現れるのにも関わらず、攻略組のレベルを考えると苦なく突破できるだろう。

 

 

 だが攻略組にとっても、仮面ライダーであるランの不参加やユウキの失踪。そして極めつけはゼロの不参加による攻略組へ向けられたプレッシャー。このような原因がある中で、ヒースクリフ、キリト、デウス、バダン、アスナの5名が参加している。

 

 

 それだけでも安堵できるというのが、このギルドメンバーのもたらす影響力の大きさというのだろう。

 

 

 攻略組一行はボス攻略へと挑んでいく。到着したボス部屋の中に入り戦い始めた。鏡には1部破壊可能なものもあるが、逆にバラバラな小さな鏡を作り出すことになり攻略が難しくなる。なのでペアを作って遠距離攻撃は防御か回避、近接攻撃をしてきた時を狙って地道に作業紛いの攻撃を続けなくてはならない。

 

 

 だが1本目のHPゲージを削り切った途端、ボスの行動パターンが変化した。その行動パターンとは……安全地帯から出ずに遠距離攻撃、とどのつまりイモった。

 

 

 

「うっわ!イモリやがったぞあのボス!」

 

 

「うぜぇ!そしてクリアさせる気がねぇなコイツ!」

 

 

「あんなもんどうやりゃあ良いんだよォ!?」

 

 

「デウス君、何か考えは?」

 

 

「ちょっと待って下さい!あれパターンに組み込まれてなかったですもん!」

 

 

 

 遠距離攻撃が飛び交う中タンクプレイヤーは移動速度は遅いながらも、ローリングなどでギリギリ回避したりとてんやわんや。アタッカーは逃げたり攻撃を弾いたりと様々。

 

 

 

「……ぁん?弾いた?」

 

 

『…………使えるな、宿主』

 

 

「可能性は低いけど……やんないよりかはマシか!」

 

 

 

 遠距離攻撃を避け続けていたデウスであったが、突如目の色を変えて危険地帯に向かっていく。ムーンサルトや側転で回避するデウスであったが、魔女はプレイヤーが対処しにくい面攻撃を放つ。

 

 

 

「(いけるか!?)」

 

 

『いいや、やるぞ!』

 

 

「(オッケー!)」

 

 

 

 ゲムデウスのサポートを受けて高速でドクターマイティの武器であるガシャコン・シールドを展開し素早く両手斧にチェンジ、デウスの体からゲキトツロボッツとドレミファビートのガシャットを取り出して装填させる。

 

 

 

【【ガッシャット!キメワザ!】】

 

 

 

「行くぜぇエエエエ!」

 

 

 

【ROBOT!BEAT!CRITICAL FINISH!】

 

 

 

 ガシャコン・シールド斧モードを振るうと斧から爆音が、それも周囲のガラスにヒビが入りプレイヤー全員が耳を塞いでも聞こえてくる程の音が、魔女の放った攻撃と激突する。

 

 

 少しの間拮抗を見せていたが、ゲキトツロボッツによって高威力となった音は魔女の攻撃を押し返し、逆に魔女への攻撃と化した。しかし自分自身の攻撃が跳ね返されるパターンを想定していなかったのか、鏡を貫いてダメージを与えた。

 

 

 

「よっしゃ!成功です!」

 

 

「攻撃を高火力の技で跳ね返すか……ならばタンク勢と高火力アタッカーで攻撃を跳ね返すぞ……!」

 

 

「でも先生……さっきのはキツイ……!」

 

 

「あ、ごめん。僕も無理だったわ。HPレッドに入ってた」

 

 

『一時的な聴覚機能の低下が見られるな。休め』

 

 

「それじゃあ皆、あとは頼んd」

 

 

 

 

 

 

 

 

【PAUSE】

 

 

 

 突如その音声が聴こえると、周りの時間が止まった。やがてデウスだけがその静止された時の中を動き出し、辺りを見渡した。

 

 

 

「これは……っ!クロノス!」

 

 

「その通りだ、ゲムデウス」

 

 

「っ!?」

 

 

 

 背後からの僅かな声で振り返ると、そこには緑と黒を基調とした仮面ライダークロノスが居た。しかしクロノスの傍にはデウスにとって見慣れた……いや、何よりも大切な人が居た。

 

 

 

優美(リーゼ)!?クロノス、なぜ彼女をここに連れてきた!?」

 

 

「なぜ?……彼女は力が欲しいと願っていたからさ」

 

 

「質問の答えになってな…………うぐっ!?」

 

 

 

 突然デウスの体に痛みや苦しみが走る。体に流れる電流のような痛みがデウスの仮想の肉体を駆け巡り、脳に痛みと認識させている。

 

 

 

「ゲム……デウス…………!」

 

 

『っ……!す、すまん……何故かは知らんが、私の制御が……っ!』

 

 

「!?ちょっと待って!私は貴方に!」

 

 

「自分の恋人を守れる程の、隣に立てる程の力が欲しいのだろう?」

 

 

「っ!?……リー、ゼ……!君は……!」

 

 

 

 こんな場所で唐突に聞かされた、リーゼの真意。彼女とて守られる存在だけでは無いという存在になりたかった。自分の大切な人が苦しんでいるのにも関わらず、ただ指を咥えてじっと見て待っていることなんて耐えられなかった。

 

 

 クロノスはまず、デウスに近付いて何やらパネルを出現させて操作をすると、デウスからゲーマドライバーと【バンバンシューティング】のガシャットが現れそれを取るとリーゼの元へ届ける。

 

 

 

「さぁ、君が欲しがっていた力だ。彼を救いたくば……君も仮面ライダーとなれ」

 

 

「止めてくれ……!リーゼ!」

 

 

「静かにしたまえ」

 

 

 

 さらにデウスの痛みが増してきた。その苦痛から地面を転がって痛みを紛らわすかのような行動をしていることから、デウスの生死を分けるような痛みなのだろう。

 

 

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!」

 

 

「っ!」

 

 

「さぁ、早くしたまえ。君なら変身できる筈だろう?君が始まりの街で止まった時の中を()()()こと……この意味は分かっている筈だ、藍原優美」

 

 

 

 

 

 

「……分かった、でも明に掛けているものを無くしてからにして」

 

 

「ふむ…………まぁ良いだろう。暫くは動けない筈だからなぁ」

 

 

 

 クロノスがデウスに向けて手を出し、払う動作をすると痛みは瞬時に消えた。だがデウスが動けないのには変わらない。それを確認したリーゼは、ゲーマドライバーを腰に巻き付けガシャットを起動させる。

 

 

 

【バンバンシューティング!】

 

 

 

 本来ならドラム缶が出現するが、時が止まっているせいかドラム缶の出現がない。それでもリーゼはガシャットを逆さにして構える。

 

 

 

「リー……ゼ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明…………今度は、私が……守るから」

 

 

 

 無慈悲にもガシャットはゲーマドライバーのスロットに差し込まれ、軽快な音楽と共に選択画面が出現。その中でスナイプのものを選ぶとリーゼに近づき、リーゼの姿が変わる。

 

 

 

 

【ガッシャット!】

 

【レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!? I'm a 仮面ライダー!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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