あの後、ビルドガシャットの併用ならばガシャットを使用して変身できることが判明し永夢やポッピーがガシャットの量産を求めた。が、最初は作る気が無かった。自分が神であるという証拠に1つしか作らないという何とも我を貫き通している黎斗神であった。
しかしビルドガシャット量産の問題は御成の説得によって解決された。これには安堵の表情を浮かべるが、如何せん時間が足りない。この時高山の考えには平行世界移動装置を止めるのか、此処で守りに徹するのかを悩んでいた。
そして時間は過ぎていき、この世界で夜を過ごすことになった高山とゲムデウス、そして万丈。ネビュラバグスターに感染していた患者はゲムデウスワクチン摂取による影響で大分楽になっていた。が、そもそものバグスターウィルス自体は消す事が容易では無かった。
バグスターウィルスは人間の遺伝子を媒介として形ある存在に変化することから、ある意味人間と一体になった状態とも言える。だが人間側からゲムデウスワクチンを使うとなると消滅させるには繊細な作業が必要なのだ。
ワクチンも元はウィルス、最強のワクチンとて人を殺すこともある。とどのつまり、人間の遺伝子に影響が及ばないぐらいに留めて置かなければならないということだ。
現在高山はこんな時間にも関わらず外に出ていた。空を見上げて星を見つつゲムデウスと会話している。
「なぁゲムデウス」
『何だ?こんな時間まで起きてるとは、交際相手と一緒に居る時以外無いのにな』
「おいバカ。……まぁ、今回は良いや」
『……ほぉ』
「それよりさゲムデウス、ちょっとした質問だ」
星と地球を見上げている高山は少しだけ微笑みつつゲムデウスに対して話を続けていく。傍から見れば独り言かもしれないが、少なくとも高山とゲムデウスにとっては1つの会話である。
「平行世界って、どれくらいあるんだろうね?」
『ふむ……』
ゲムデウスも少しだけ考えたあと、高山に話していく。
『恐らく
「あ、やっぱり?僕もそうさ」
『お前の自論を思い浮かべただけだ。確か……平行世界は人間が空想、妄想として思い浮かべたものは全てあるのではないか?という考えだったな』
「そう。僕らがこの世界を現実と認識しなきゃこの世界は存在しない……なんて考えから逆を考えて“僕らが色んな世界を考えればその世界は何処かで現実となっている”っていう考え方さ。というより、よく覚えてるね」
『お前の脳にもウィルスが入っているんだ、応用すれば脳の何処が活性化してどんな考えをしているか何となく分かる』
「……んな簡単に言ってるけど、結構凄い事だからね?これ」
この世界がもうすぐ終わるというのにも関わらず、高山とゲムデウスは何時もの様に談笑していた。ある意味ゲムデウスとの関係は変わらないものなのだろう。
「いよぉ!
「『ッ!?』」
かなり陽気に、それも世界が終わるというのに関係ないという状態を貫いているかの様な声色は高山の前方に居た。
高山は脚を戻す勢いだけで立ち上がり顔見知りの者に敵意を向けた。
「お前は……ライトカイザー!」
「Exactly!大方他のライダーから聞いたんだろうが……まぁ今は置いとくぜぇ」
ライトカイザーは高山に近付く。高山はバッグからゲーマドライバーではなく、ガシャットギアデュアルβを取り出す。
「ほぉ!違うガシャットも使うか!」
「何故此処に来た?目的は何なんだ?」
「目的ィ?平行世界同士を繋げるとかじゃなくてかぁ?」
高山の体が反れると、人格変更したゲムデウスが問いかける。
「貴様が此処に来る理由が知れんのだよ。今ここには私とゴースト、ビルドガシャットの併用によるドクターライダーの活動が可能だ。お前が来たとしても返り討ちにされると考えるのだがな?」
「……んまぁ、そう考えるわなぁ」
ライトカイザーは持っている銃をゲムデウスに向けつつ言い放つ。
「今の目的はお前
「…………お前達?私は1人だが?」
「いんやぁ、お前にはもう1人居るだろ?正確にゃあ1つの体に2人居るが記憶の共有はされるんだろぉ?」
「…………察しの良い事だ。もう一度聞くぞ?
「おぉ!変わった変わった!やっぱ口調が変わると性格も変わるんだなぁ」
未だに警戒態勢を取ったままの高山はギアデュアルβのギアを右に回して起動させる。
【Taddle Fantasy!】
【Let's going king of Fantasy!Let's going king of Fantasy!】
ゲーム画面からファンタジーゲーマを召喚し臨戦態勢になる高山。ライトカイザーは溜息をつき高山に銃を向けながら言った。
「目的は……お前らだよ」
「変身ッ!」
【DUAL UP!】
変身する寸前でゲムデウスに変わるとスイッチを押して変身する。ファンタジーゲーマが高山の体を包み込むとゲムデウスはファンタジーゲーマーとなり、デウスラッシャーとデウスランパートを召喚してライトカイザーに向かう。
【Satan appears!MaOU!Taddle Fantasy!】
「セァッ!」
「ふっとォ!」
ゲムデウスは空中浮遊を使用してライトカイザーに向かいデウスラッシャーを叩きつける。ライトカイザーは右側に取り付けられた歯車から歯車状のエネルギーを出して相対する。
剣と歯車から火花が飛び散り拮抗状態になること5秒間。ゲムデウスは歯車の回転も相まって右に逸れる様に離れていき、ライトカイザーは数歩退いた程度に収まった。
ゲムデウスはデウスラッシャーをデウスランパートを前に出して隠し構えるとライトカイザーに言い放つ。
「私たちに何の用だ!?そして私たちの何が目的だ!?」
「おぉ、また変わった。それと目的かぁ?教えるとでも?」
「ならば直接お前の記憶から知ろうか!」
ゲムデウスは盾で身を隠し突撃していく。ライトカイザーはそれを右へと避けて銃撃を仕掛けるが、ゲムデウスの視界に入ったことが仇となってエネルギー弾を盾で防がれる。
その隙を逃さないゲムデウスはデウスランパートの伸縮攻撃を発動させて不意打ちする。それを受けたライトカイザーは地面に倒れ転がって離れる。
「ぐおっ!?」
「ぬぅん!」
ゲムデウスは剣を上に掲げると上空から低級バグスターが降り立ちライトカイザーに襲い掛かる。
「まぁじかよッ!」
ライトカイザーは向かってくる低級バグスターに対して回し蹴りや銃撃によって退かせる。ゲムデウスはその隙を狙ってデウスラッシャーでの剣撃と盾でのチャージアタックを繰り返す。
「ふっ!せあっ!らあっ!」
「あーったく忙しー!いって!」
低級バグスターの攻撃が当たりダメージは入るが、それも微々たるもの。なのでゲムデウスは積極的に攻撃に回っていく。低級バグスター達もゲムデウスの動きに合わせて追撃を入れていき、遂にはライトカイザーの動きを止めて膝を着かせるまでに至った。
「ぬぉおおお!?」
「コイツで決める!」
ゲムデウスはホルダーからガシャットを取り出すとギアを再度回転させてホルダーに戻す。
【KIME WAZA! DUAL GASHAT!】
【Taddle Critical Slash!】
ゲムデウスは剣と盾両方を捨てると空中に浮かび上がり前回転すると、紫のエネルギーが蓄積された右足を突き出してそのままライトカイザーに向かう。
「ォオオオオオオオオオオ!」
「おいしょっとぉ!」
ライトカイザーは右肩の歯車をエネルギー状態にさせてゲムデウスのキックと衝突させる。少しの間拮抗が続いていたが、徐々にゲムデウスが押していっている。
「セアアアアアッ!」
「ぐぉはぁッ!」
最終的にはゲムデウスのキックの威力が上回りライトカイザーを吹き飛ばした。慣性の法則に従って着地したゲムデウスはホルダーからガシャットを取り出しギアを戻して変身解除する。
【GASHUーN】
ゲムデウスはそのままライトカイザーに近付くが、直ぐにライトカイザーが起き上がった。だが満身創痍という所だろうか、ゆっくりとした動きであった。
ライトカイザーはゲムデウスを見つめ、徐々に笑っていく。
「くはははっ……中々やるねぇ」
「まだやる気か?今の貴様ならこの体で充分だぞ?」
「いんやぁ…………俺の目的は達成したぜぇ」
「……何?」
ゲムデウスはライトカイザーが何を言っているのか分からなかった。そのゲムデウスの表情を見てライトカイザーは笑いつつ
それは今上空に見えている世界で桐生戦兎が持っていたボトルと酷似していたが、色は白いままであった。
「それは……あの世界の」
「知ってるよなぁ?これは【フルボトル】っつう代物だ。コイツは成分を吸収させて保存させる役目があってだな、ボトルを振れば中身の成分の力を使用できるんだよ」
ライトカイザーはその手に持っているフルボトルを見せながら発言する。その表情は仮面によって見えはしないが、何処と無くニタニタとした表情を浮かべているのは予想している。
ライトカイザーはゆっくりと立ち上がり話を続けていた。
「まぁ何が言いたいかっつぅとよ
「何っ!?」
『んな馬鹿なッ!?』
「お前が高威力の技を使おうとした時、既にボトルを仕込んでいたんだよ。そしてお前と俺とで衝突した時、その成分の一部を奪った」
「貴様ッ!その中身が何なのか分かっているのか!?」
「分からねぇから採取したんじゃねぇか。……だが分かることは、お前は
不快感が残る笑い声を挙げながら背を反らす。ゲムデウスと高山はこの状況に危機感を覚えざるを得なかった。
成分の一部ということからゲムデウスウィルスの全てを奪えなかったのか、奪わなかったのかは判断しかねる。だが採取されたゲムデウスウィルスは、高山やこの世界に住まう人間が知っている。
「そいつを返せ!」
「おっとぉ!」
ゲムデウスが向かうが先に銃撃によって進行を阻まれ歩みを止める。その隙にライトカイザーは煙に紛れてその場から立ち去った。
ゲムデウスは辺りを見渡すが何処にもライトカイザーは居ない。
「ッ!…………くそっ!」
ゲムデウスと高山は憤慨していた。ゲムデウスウィルスが使用されでもすれば、この世界はパンデミックに陥らせる可能性も無くは無いからだ。
しかし現在ではどうしようもない状態であるのも事実。ゲムデウスは高山と人格を交代し、まだビルドガシャットの量産で起きているであろう黎斗神を訪ねていく。