用意された寝台が2つ、そこに2人が【ゲンムVR】を被り寝そべっている。ここに永夢と高山が二人してSAOの世界に向かい救いに行くのだ。だが同時に命の危険性もある上に、1度入ってしまえばクリアするまで2度と戻れない仕様になっている。
そこは檀黎斗が上手くやってくれると期待していたが、その檀黎斗でさえも2人が現実世界とVR世界を行き来することは出来ない結果となった。何が作用しているのかは既に檀黎斗は聞いていた。恐らく考えられるのは……
〔カーディナル・システム。学習をし続けるSAOの要によって、この私でさえもこのザマだ。AIというのは時として私のような才能の持ち主を越えるからなぁ……ひっじょうに腹立たしいがなァ!〕
「いえ、ありがとうございます黎斗さん。この様な介入が出来るのも、黎斗さんのおかげですから」
〔……そうか…………そうかぁ!やはり私はAIを越えるおt〕
『宿主、時間だ』
「了解。宝生さん、パラドさん」
「準備はOK。パラドの方も何時でも行けるって」
高山は永夢に頷き、ゲンムVRを装着する。永夢も同じように装着した。
「それじゃあ……黎斗さん!お願いします!」
〔ガシャットの件は任せたまえ!では……2人とも行けぇえ!〕
檀黎斗がキーボードのエンターキーを押すと、高山と永夢の2人は電脳空間へと誘われる。ピンクの幾何学的模様が2人の視界を覆い、そして到達すべき場所へと辿り着く。
2人の視界に入ったのは、中世風の街並み。そこで人は殆ど見かけなかったが、居るには居る。恐らく何処か別の場所に訪れているのだろうと予想する2人であったが、その後自分達の姿を見た。
「……やっぱり、適応されてるか。この世界に」
「ゲムデウス、居る?」
『問題ない。パラドの方も居るぞ』
「取り敢えず……侵入には成功してと。この後はどうしましょうか?」
「先ずはステータスを見てみると良い」
突如後ろから声を掛けられてきたのだが、その前に高山と永夢はこの声を聞いたことがあった。それはあの時、自らこの事象に頼んできた人物ただ1人。
「茅場先輩!?」
「茅場さん!?」
「シーっ……出来れば本名は避けてくれ」
そう、茅場晶彦その人である。しかし風貌は結構変わっており、白髪ロン毛の高身長……少し老けた様な姿をしていた。3人は集まって小さな声で話し始める
「ちょっと、何で先輩が居るんですか!?待っててくだされば良かったのに!」
「ここは私のゲームだ。つまりはだな……
私のゲームを、理想を!勝手に弄ぶ輩はこの手で捕らえるゥ!そしてその罪の重さを理解させてやるのだァ!」
「うわぁ……黎斗さんが2人居る……」
〔そいつと一緒にするなァ!〕
ハプニングは色々あったものの、先ずはこの世界の創造者に色々と聞かねばならない事が幾つもある。というわけで茅場にレクチャーされる結果になった。
「さて、この世界に適応すべく私達は色々知らなければならい。先ずはだが右人差し指で下にフリックしてくれ」
高山と永夢の2人は指示通り行うと、そこにはマネキンと様々なアイコン。そして予想通りログアウトのボタンは無く、この世界に閉じ込められた事を意味している。
「マネキンの方は現在の自分を意味している。HP残量などは自分の視界の左上にあり、そこで状態異常なども確認できる」
「あとは英語表記で……これがステータス…………」
「どうしました、高山さん?」
〔ここではプレイヤー名を言え。宝生永夢は英単語の『M』、高山君はゲムデウスから『デウス』と命名した〕
「僕そのまんまじゃないですか」
「因みに私は『ヒースクリフ』と名乗っているから、そこの所宜しく。さて……デウス君、何が?」
「あの……これ…………」
高山に呼ばれるがまま永夢と茅場は高山のステータス画面を覗き込んだ。そして、その異常な
「えっ……嘘ぉ!?」
「な、なぜ君のステータスが……レベル35相当のものなんだ!?これで5層は平気だぞ!?」
〔恐らくゲムデウスウィルスの侵蝕率で、その分高山君のステータスも上昇したのだろうな〕
『恐らく私のウィルスの侵食率で、その分宿主のステータスも上昇したのだろうな』
「ごめん、一気に言わないで」
「えっ……じゃあ僕のステータスは……あれ?」
〔恐らく永夢はパラドに侵蝕されてないからこそ、普通のステータスになったんだろう。それほどまでに高山君とゲムデウスの侵蝕が進んでいるということになるな〕
高山とゲムデウスウィルスによる異常性を突き付けられた後は、色々ありながら用意された武器や防具などを装備していく。高山は両手斧とサブウェポンに片手剣と盾、永夢は片手剣、茅場は剣と盾を両方装備している。
「……物凄く軽いです」
「君のウィルスが、こうもVR世界に馴染むとは……あの時のデータはこれが理由だったのか……」
「と、ともかく!次はガシャットの方に!」
〔永夢すまない。少々厄介なことが起きた〕
「えっ?」
〔ガシャットデータを送ったには送ったが……今送れたのは、
「「 !? 」」
「レベル1……4年前に見た、あの時の」
現在レベル1のデータしか使えないとなると、様々な厄介事が多発してしまう。特に高山が使っていたガシャットは全てダブルタイプ……つまりレベル2桁ばかり=高山は活躍できないとなる。
〔やはりカーディナルが邪魔をしているらしい。面倒だ……打開策があれば即ガシャットデータを投入していくつもりだ。あとはデウスだけだが……その点は心配ない、他のレベル1のガシャットデータを送る〕
「あ、良かった……ホッ」
「これで一応、戦えますね」
「えぇ。けど心許ないのも確かですね……それまでは生身で戦う方が良いかと」
「確かに……それまで僕達はレベル上げをしなきゃ、戦えませんし」
「では1層で良い狩場は確か……あぁ着いてきてくれ2人とも」
そして筋力値も高いので……結局速く到達する為にデウスは2人を運んで移動していったそうな。
『中々シュール過ぎないか?』
「僕もそう思ってるよ。でもここは合理的に……!」
『無理しなくて良いぞ』
「無理しちゃう結果になっちゃったんでしょーが!」
そして狩場に到達し、早5時間が経過し夕暮れになった頃。デウスとM、ヒースクリフは1層の軽食屋に行った。流石に本物の再現とまではいかず、何やら似たような物を食べている感覚に陥っていた。
そしてステータスの方だが、ヒースクリフはレベル5にまで上昇。Mもレベル5にまで上昇した。しかし高山だけ……レベル3までしか上がらなかった。
「…………それでも相変わらずステータスはエグいんですよねぇ」
「多分……ステータスが異常過ぎて、レベルの上昇が妨げられてるって解釈かもね。カーディナルもデウスのステータスに細工できなかったのかも」
「そして発見したことも1つ。どうやらガシャットはプレイヤーのレベルが上昇する毎に解禁されていくシステムだということ……その場合、高山君が使う形態に変身できるまで異常なレベリングが必要らしいな」
「あと個人的に1つ」
「「 ? 」」
「VR世界に適応しすぎて、VRでも
「なっ!?……そ、その様な弊害が……!?」
「……あぁ!だからお腹抑えて!」
このSAO。疲労や疲弊が無い無限スタミナという仕様であるが、空腹感というのは現実から擬似的にプレイヤーに伝わる仕様である。しかしSAOは空腹感を真に満たす為には現実で食事しなければならない。さらにSAOの食事は1部好んで食べようとするものではない。
しかしデウスだけは仕様が違っていた。食事をVR世界でもしなければ、現実世界でも
そして現在、漸くお腹も膨れて落ち着いた。そして回復アイテムで増えるHPも、食事をして回復していた。これは便利なのか不便なのか……それは誰にも分かりはしない。
「さてっと……今使えるガシャットがぁぁ……」
「僕はレベル5までだから……【ドラゴナイト・ハンターZ】まで変身できるね」
「僕は……レベル3までの全て。ねぇゲムデウス、何が俺にあってる?」
『近距離戦と蹴り技が主流だったからな……良さげな所で【タドルクエスト】と【ギリギリチャンバラ】の組み合わせだな』
「タドルクエストにギリギリチャンバラね……遠近両用の攻撃ができるか……」
『少々難がある上に元の使い手の戦闘スタイルから選んだ分、そのギャップ差というのが顕著に出てくるからな』
「それもそうだよねぇ……こればっかりは慣れしかないか」
そんな話しをしながら、やはり気になることは1つ。この異常性に対し、そろそろ誰もが気付き始めそうな頃合なのにも関わらず……未だに何も反応は無い。
「……しかし、何も起きないな。もう何か行動をするハズなのだがな……」
「……確かに。何もアクションが無いのも考えものですよね……」
『……なぁ永夢』
「ん、どうしたパラド?」
『いつもこんな物食ってんのか?何か微妙だった』
「あぁ……いや、何も現実世界はこんな味では無かったよ」
「それを私の前で言うのか。言ったんだな」
その会話の最中に辺りのプレイヤー……そしてデウスやM、ヒースクリフにも該当している。プレイヤー全てに粒子状のものが発生した。
「!先輩これは!?」
「これは……転移時のエフェクト!強制転移か!」
「一体……何処に!?」
そしてその場から消える、全員消えた。
3人の次に映った視界は、最初の広場であった。
「最初の……!でも何d」
そう言おうとして、周りの
「ゲムデウス、これって!」
『これは……ポーズ!だがアイツはあの時…………!宿主、そちらもだが右端を見ろ!』
「何…………って、あの人……動いてるのか!?」
そう、デウスの他に動いているプレイヤーを発見したのだ。そして空の方から電子音が聞こえてくると、デウスとそのプレイヤーは空を見上げた。そこで2人は目にした。
【仮面ライダークロノス】の姿を