Dr.ゲムデウス   作:(´鋼`)

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God Dream

 あれから2日後。高山は()()()()処遇を衛生省から通告されていた。ただこれでも随分マシな方であり基本的に自由、買い物等の外出も了承されている。但しライダーとしての活動は停止期限を設けられた。

 

 

 その停止期限も1日だけであったので、そもそも問題は無いのだが。その代わり檀黎斗が何を企んでいたかについて、高山とゲムデウスが知っている事を全て話す為に質疑応答があった。だが具体的な詳細すら分かっていないのは事実、そこに檀正宗の復活やパラドとポッピーからの情報ではパラドと似たバグスターを取り込んだとまでしか分かっていない。

 

 

 そのパラドに似たバグスターの正体は、檀正宗に存在していたバグスター。そして天才ゲーマーMの能力と天才クリエイターの能力が組み合わさった存在になったとだけ。

 

 

 そんな中、高山とゲムデウスはバイクを走らせて()()()()()()()()()場所に向かっている最中だ。しかしゲムデウスが感知した反応は、これまでに確認されていないウィルス反応であった為か今日は休みである藍原には外出を極力控えておく様に伝えた。

 

 

 

『宿主、反応が近い。…………むっ?』

 

 

「どうしたゲムデウス!何か反応でもあったか!」

 

 

『これは……ッ!宿主、恐らく相手するのは単なるバグスターではない!』

 

 

「!どういう事だ!?」

 

 

 

 目的地に向けてバイクを走らせている高山であったが、突然の報告により何が起きているのかは察せない。だがゲムデウスがこう言っている以上、警戒せねばならないのは確かである。

 

 

 続けてゲムデウスは、今反応しているウィルスの概要を分かる範囲内で伝えていく。

 

 

 

『確かにウィルスの反応は多く、そして私に反応した。だが当初分かったのは()()()()、しかし近付いてハッキリと分かった事がある!』

 

 

「さっさと伝えろ!もう着くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()!その集合体だ!』

 

 

 

 高山はブレーキを掛けてバイクを横に滑らせながら停める。ヘルメットを脱ぐと、そこには異様な光景が広がっていた。

 

 

 過去に見た【デンジャラスゾンビ】と呼ばれる檀黎斗が変身する形態のゲンムが、そこには多く居た。しかし数が異常過ぎる故に、この光景を1つの“パンデミック”としてしか見れなくなっていた。

 

 

 そしてゲムデウスの言った、“人のデータが存在するウィルス”。これが何を意味するのかは、高山が疑問を持った瞬間理解する事となった。

 

 

 

「これは…………一体……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ、私の創造した【()()()()()()】に」

 

 

「!?」

 

 

 

 高山が後ろを振り向くと、檀黎斗が誰も居ない歩道に立っているではないか。しかし高山が生んだ感情は警戒ではなく“安堵”の方であった。

 

 

 

「黎斗さん……良かった、一体どこに」

「やはり、ゲムデウスを持つ君が()()()()()する結果になってしまったな」

 

 

「あの……黎斗さん?」

 

 

「……君にはこれからゲームをしてもらう。私はそのナビゲートを務めよう」

 

 

「ゲームって…………」

 

 

 

 未だに分からない。否、分かりたくなかった。一昨日言っていた“あの一言”が脳裏を過ぎるまでは。それが分かった瞬間、高山とゲムデウスも理解してしまった。

 

 

 今、この瞬間に。()()()()()()()()()()ことを。

 

 

 

「このゲームの名は【ゾンビクロニクル】、不死身のゾンビと戦うサバイバルホラーゲームだ。プレイヤーは各々武器を手に取り、ゾンビと戦って生き残る……これがゾンビクロニクルの内容だ」

 

 

 

 瞬間、ゲムデウスが高山の意識を強制交代させて檀黎斗に質問していく。

 

 

 

「矛盾していないか?どうやって不死身のゾンビを倒せと?しかもバグスターであるゾンビに対してだ。我々の様なライダーやバグスターならまだしも、通常の人間がクリア出来るゲームでは無いだろう」

 

 

 

 しかしゲムデウスの疑問に、檀黎斗は首を横に振り否定した。

 

 

 

「不死身と不死は違う。不死は永遠に死ぬことは無いが、不死身は()()()()()()。急所を狙えば確実に死ぬからな。つまり人の手で()()()()()()()()()のさ」

 

 

 眉をひそめるゲムデウス。そんなゲムデウスにはお構い無しに、檀黎斗は続け様に言った。

 

 

 

「尚このゾンビを倒したあかつきには、ある特典を与えよう」

 

 

「特典?」

 

 

「今まで消滅した人間の“復活”さぁ」

 

 

「……成程。あのバグスターに人間のデータが異様に含まれていたのは、それ故か。ならば話は」

「んだがぁ……君達には制限を掛けさせてもらう」

 

 

「……なんだと?」

 

 

「君達のガシャットは、このゲームにおける()()()に相応しい。そうあってしまえばゲームが成り立たなくなるからな」

 

 

 

 そう言って檀黎斗は指を鳴らす。するとその横に数字が映し出された画面が現れた。これを見たゲムデウスも一瞬なんなのかは理解できなかったが、檀黎斗の説明が入る。

 

 

 

「これは……」

 

 

「1つのガシャットで変身できる制限時間さ。そしてこの制限時間を過ぎると強制的に変身は解除され、そのガシャットでは2()()()()()()()()()

 

 

「なっ……!」

『黎斗さん……何でこんな…………!』

 

 

「さぁ、消滅者の命を救うのが先か。はたまた人類が滅びるのが先か。……そのゲームを始めようじゃないかぁい!」

 

 

 

 両腕を高らかに挙げてその場から消えていく檀黎斗。すぐに追いかけるが間に合わず、その場で舌打ちするゲムデウスであったが直ぐにゲーマドライバーとドクターマイティXXを取り出して準備を行う。

 

 

 

「宿主、このゲームに参加してしまうが先に消滅者を救うぞ」

 

 

『……分かった。制限時間には気をつけるよ』

 

 

「承知しておる!」

 

 

 

 ゲムデウスはドクターマイティXXを起動させる。その背後にゲーム画面が出現すると、辺りにカプセル錠が散らばっていく。

 

 

 それに気付いた一部のゾンビがゲムデウスの方に向かって行くが、その足取りは遅い。しかし油断せず、ゲムデウスはゲーマドライバーを腰に装着するとガシャットを差し込む。

 

 

 

【ドクターマイティXX!】

 

 

【ダブルガシャット!】

 

 

 

 両腕を前で交差させXの形を作ると、レバーを開き変身する。

 

 

 

「Mark X-2!変身ッ!」

 

 

【ガッチャーン!レベルアーップ!】

 

 

【ドクターマイティ!2人で作る!ドクターマイティ!2人でメイキーング!X!】

 

 

 

 高山とゲムデウスはお互いXLとXRに分離し、お互いの右腕と左腕を交差させるポーズを取って開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「これより、製薬実験を開始する!」」

 

 

 

 高山とゲムデウスは両者走り出す。それと同時に高山とゲムデウスの視界の端に“10分”の制限時間がカウントダウンされた。

 

 

 それぞれ分かれると高山は前方宙返りから踵落としを決めて相手を沈める。ゲムデウスもお得意の連打から上から下へと肘打ちを与えて沈めていく。

 

 

 

「「ッ!」」

 

 

 

 しかしそれでも立ち上がる。不死身な故に痛みが存在しない事を考慮すると、これほど厄介な相手は居ない。しかもそれが高山とゲムデウスの周囲に計6体。すぐに距離を取って離れて背中合わせとなる。

 

 

 

「ゲムデウス、不味いよこれ……」

 

 

「効いてないな……これではジリ貧か?」

 

 

「しかも制限時間が…………何かあ……った」

 

 

「むっ?」

 

 

「ゲムデウス、一気に必殺技できる?」

 

 

「ふむ……!そういう訳か。やるぞ」

 

 

「オッケー!」

 

 

 

 高山とゲムデウスは再度レバーの開閉を行い、必殺技を発動させていく。

 

 

 

【【ガッチョーン キメワザ】】

【【ガッチャーン!】】

 

 

【【DoCTER MIGHTY!CRITICAL STRIKE!】】

 

 

 

「「ハァッ!」」

 

 

 

 高山とゲムデウスは先ず2体のゾンビに向かって跳躍し、左ストレートと右ストレートを与えると後方宙返りをする。そのあと空を蹴り、その隣に居たゾンビ2体にそれぞれキックを与える。

 

 

 最後に後方宙返りし、空を蹴ったあと残り2体のゾンビにそれぞれ踵落としを決めると呻き声をあげながら6体のゾンビは消えていった。

 

 

 しかし他のゾンビは何処かへと行ってしまった為、高山とゲムデウスはガシャットを引き抜きレバーを閉じる。

 

 

 

【【ガッシューン ガッチョーン】】

 

 

 

 漸く表に出れた高山は辺りを見渡す。すると制限時間のある画面の数字が9:28で変化を止めていた。

 

 

 

『どうやら、あくまでも変身できる時間が限られているだけで制限時間内で変身解除をすれば時間も止まるのか』

 

 

「……それより、消滅者の方は」

 

 

『少し待て…………ふむ、ここから大分離れてはいるが大丈夫そうだ。だが今はあのバグスターを追わねば』

 

 

「だったら衛生省に。事情を話せば対応してくれる筈」

 

 

 

 ゲムデウスの元、地図アプリである程度の位置を把握するとすぐさま衛生省に電話。粗方の事情を伝えると、消滅者が復活したとされる場所を伝えると直ぐに対応された。

 

 

 高山とゲムデウスは、引き続き檀黎斗のゲームに参加することを決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────Loading……──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高山はバイクを走らせる。ゲムデウスが反応している地点まで行くのだが、そのゲムデウスは今まで以上に困惑している。その謎の理由は恐らく……否、確実にゾンビクロニクルによるものだろう。

 

 

 

『宿主、非常に不味い事が起きている』

 

 

「……見えた。恐らく、あの雑魚ゾンビみたいなのは」

 

 

『ご明察、()()だ。恐らくゾンビゲーマーのゲンムのものだろう』

 

 

 

 そんな会話の中、高山の電話が振動する。人が逃げていく中、高山はバイクを急停止させて電話に出る。

 

 

 

「はい高山です」

 

 

〔高山君、もうニュースは聞いてるだろうが〕

 

 

「……その事でしたら、今現場に。でも、ゲムデウスが感知するにしても数が多すぎて」

 

 

〔そうか、分かった。それと君が提示した場所に、“仮面ライダークロニクル”の消滅者が発見された。恐らく檀黎斗のゲームの“特典”とやらだろう〕

 

 

「そうですか……!良かった……」

 

 

『安心するな馬鹿者。まだゾンビが蔓延っているではないか、素早く終わらせるぞ』

 

 

「すみません、電話切ります!」

 

 

〔気をつけたまえ!〕

 

 

 

 着信を切ると高山はバイクから降りてヘルメットを脱ぎハンドルに掛けると、再度ドクターマイティXXとゲーマドライバーを構えて走り出す。

 

 

 装着し、ドクターマイティXXを用いて変身をする。

 

 

 

「Mark X-2 変身ッ!」

 

 

 

【レベルアーップ!】

【2人でメイキーング!X!】

 

 

 

 それぞれXLとXRに成りながら深緑色のゾンビ達に飛び付く。視界の端に制限時間が見えるが、そんな事を気にしている余裕は無い。1体ずつ抑えて様子を確認する高山とゲムデウスだが、状況が良くなったとは言い難い。

 

 

 心の中で舌打ちをする両者だが、突如抑えていた2体のバグスターが苦しみ始める。次第に顔が人間の物に戻っていく様を見て、高山とゲムデウスは確信を持つ。

 

 

 

「そうか、これが黎斗さんの言ってた……!」

 

 

「この雑魚ゾンビ共のッ、駆除も可能だからか。恐らくドクターマイティとメディスン・トリートメントなら人間に戻せる筈だ」

 

 

「だったらワクチン散布!」

「それしかなかろうて!」

 

 

 

 元に戻った2人を担いで高山とゲムデウスは背中合わせとなり、2人を降ろすと両手をゾンビに向けゲムデウスワクチンを放出させていく。すると周りに居るゾンビが連鎖的に苦しみ始め、最終的に元に戻った。

 

 

 ゾンビウィルスに今のところ対抗出来る唯一の力、ドクターマイティXX。元に戻った人々は自分の自我を取り戻せた事に歓喜していたが、喜んでいる暇は無いと高山が両手を叩いて注目を集める。

 

 

 

「皆さん、喜ぶのは後に!今すぐ都市部から離れるか、ご自宅に待機して下さい!」

 

 

「またゾンビウィルスに感染しても良いのか!?早く逃げろ!」

 

 

 

 声掛けによって蜘蛛の子を散らす様にして、この場で最善な行動を取った。高山とゲムデウスも再度ガシャットを抜き取り変身を解除すると、今度はゲムデウスが反応をキャッチする。

 

 

 

【【ガッシューン】】

 

 

 

『ッ!宿主よ、檀黎斗のウィルス反応が!』

 

 

「!それどこ!?」

 

 

『案内するから早く乗れ!』

 

 

 

 急いでバイクまで走り、ヘルメットを被ってエンジンを蒸かす。一気に爆走状態となったバイクだが、今は法律云々を提示されたとしても守れるかどうかは怪しい。

 

 

 さらに残り時間が8:46となっている。この制限時間で消滅者を全員救えるかと言えば無理難題だが、先に檀黎斗の元に向かい説得を試みようとしている。その途中、ゲムデウスがまたも反応をキャッチする。

 

 

 

『宿主、今度は九条貴利矢の反応だ』

 

 

「何処?」

 

 

『もうすぐ合流する。ほれ右を見てみろ』

 

 

 

 合流地点で高山と貴利矢が合流した。お互い目線を合わせて頷いた後、高山が先行してバイクを走らせていく。そして建造物に到着するとバイクを停めてヘルメットを脱ぐ。

 

 

 両者顔合わせ。高山は貴利矢に礼をしたあと上を指さして場所を示すと、向かいながら話す。

 

 

 

「明、今までどうしてた」

 

 

「……1番最初のプレイヤーとして、ゾンビクロニクルの説明は1通り。そこでゾンビに変えられた人達の治療を」

 

 

「流石ドクターマイティ、お手の物ってか。だけど何で」

 

 

「……あの人を、救いたいから」

 

 

 

 突如貴利矢は歩みを止める。階段の中腹辺りに居る貴利矢を見下ろす形で高山が振り向く。

 

 

 

「あの、貴利矢さん?」

 

 

 

 

 

 

「まだ、んなこと言ってんのかよ」

 

 

 

 サングラス越しに見つめてくる貴利矢の視線が高山に突き刺さる。それは何処か恨みが混じった様な、()()()()()()()()()()であった。普段の貴利矢からは感じ取れない感情でもあった。

 

 

 

「お前はまだ、あの犯罪者を庇うつもりか?」

 

 

「……例え犯罪者だとしても、僕にとっては生きる道をくれた恩人です。認識を変えるつもりはありません」

「だけど、それさえも嘘だったら?」

 

 

 

 

 

「あの時の、あの目と、あの声は……本物でしたよ」

 

 

 

 先に高山は広場の方に向かう。話している途中に人が降りてくるが、それらを避けて上に向かう。貴利矢も少し溜息をついて高山の後を追いかける。

 

 

 貴利矢は高山の隣に立ち、高山が見据えている場所に目線を向けて立つ。2人は先にゲーマドライバーを装着しておき、高山だけガシャットを用意して身構える。

 

 

 やがて人混みが消えていくと、その視界には檀黎斗が現れた。その檀黎斗は2人を見るとにこやかに微笑んだ。

 

 

 

「九条貴利矢と……高山君か……」

 

 

「脱獄犯が白昼堂々とお散歩とは……随分ノリノリだな」

 

 

「当然さぁ。私の神の才能が具現化されたのだからなぁ……」

 

 

 

 そう言って檀黎斗は1つのガシャットを見せてきた。紫が目立つギアデュアルとも違う大型のガシャットを見て、貴利矢が面倒くさそうな表情を浮かべながらサングラスを取る。

 

 

 

「また妙なモン作ってくれちゃって」

 

 

「このガシャットがあれば私のアイディア1つで、()()()()()()でも作り出せる。ゾンビクロニクルもその1つさ」

 

 

「へぇ〜……って事は

 

 

 

 

 

 そのガシャットをぶっ壊せば、ゾンビゲームも強制終了って訳か」

 

 

 

 貴利矢と檀黎斗との間にただならぬ意思を感じる。

 

 

 

「君達2人が私に挑む勇気に免じて、神の恵みを与えよう」

 

 

 

 檀黎斗は何処からか2つの黒いプロトガシャットを見せつけた後、貴利矢に向けて乱雑に放り投げた。次に檀黎斗が指を鳴らすと、高山の隣に制限時間が映し出された画面が出現し10:00に戻った。

 

 

 

「腹立つなぁ、その余裕」

 

 

 

 その2つを拾う貴利矢。その様子に少しだけ微笑んだ檀黎斗。既に勝負をしなければならない事を悟った高山。

 

 

 

「んじゃ、お言葉に甘えて」

 

 

 

【爆走バイク!】

【シャカリキスポーツ!】

 

 

【ドクターマイティXX!】

 

 

 

 

 

 

 

「爆速、変身」

 

 

「Mark XX 変身ッ!」

 

 

 

 両者は共にガシャットを差し込み、貴利矢はその場で画面を蹴って変身し、高山は一気にレベルXに変身した後にレバーを開きレベルXXとなる。

 

 

 

【爆走バイク!】

【アガッチャ!シャカ!シャカ!コギ!コギ!シャカリキスポーツ!】

 

 

【何度も何度も倒して!(Hey!)XX!】

 

 

 

 貴利矢はレーザーターボスポーツゲーマーに、高山はレベルXXにガシャコン・シールドを装備した状態で変身を完了する。

 

 

 一方の檀黎斗は、手に持っているガシャットを見せつける。

 

 

 

「思い知るが良い……最高神の力を」

 

 

 

 そのガシャットを起動させる。

 

 

 

【ゴッドマキシマムマイティX!】

 

 

 

「グレードビリオン…………変身ッ」

 

 

 

【マキシマムガッシャット!】

 

 

【ガッチャーン!フーメーツ!】

 

 

【最上級の神の才能!クロトダーン!】

 

 

 

 

 背後の画面から現れたのはエグゼイドのマキシマムマイティと同じような装甲。セレクト画面を通り抜けてゲンムになった黎斗がガシャットのボタンを押すと、その装甲に包まれて人型を取る。

 

 

 

【ゴッドマキシマーム!X!】

 

 

 

「ビリオン……?」

 

 

「私のレベルは……10億だ!」

 

 

「ヘッ、何が10億だ。数字なんてお前の匙加減1つじゃねぇか!」

 

 

 

 先に貴利矢が向かう。高山はガシャコン・シールドをアックスモードに変形して同じように走り出す。

 

 

 

【ド・ガーン!】

 

 

 

 貴利矢が初手に蹴りを放つも逆にカウンターを食らって数歩下がってしまう。しかし後からやって来た高山の攻撃が与えられる。それでも檀黎斗にはダメージ1つ与えた感触は無い。重い一撃が高山を襲い、かなり吹き飛ばされてしまう。

 

 

 

「ぐがっ!」

 

 

「チィ!明!」

 

 

「ハッハッ……平気ですよ!ゲムデウス!」

『承知した!』

 

 

 

 貴利矢が相手している合間に高山とゲムデウスは人格を交代し、ゲムデウスの持つ“他のバグスターの能力”を使用する。

 

 

 

「ガットン!ソルティ!グラファイト!モータス!」

 

 

 

 ゲムデウスに4つの幻影が纏われると、次に貴利矢はトリックフライホイールを1つ投げて高速で広場を周回し始める。ゲムデウスもモータスの能力を借りて速度を上昇させて檀黎斗に振るう。

 

 

 

「おぉいしょぉ!」

「むぅんッ!」

 

 

 高速のヒット&アウェイを行う貴利矢、隙を見てガットンとソルティで強化された炎を纏った重い一撃を放つ高山。戦況的には追い詰められているのは檀黎斗の方であった。

 

 

 それも直ぐに覆されてしまうが。

 

 

 

「コズミッククロニクル、起動!」

 

 

「!チィ!」

 

 

 

 檀黎斗が空に手を掲げた。ゲムデウスも悪寒を感じ取り直ぐにシールド状態にさせてBボタンを10回連続で押して自らの半径5mにバリアを作る。

 

 

 

【ガ・キーン!】

【1!2!3!4!5!6!7!8!9!10!】

 

 

 

「入れ貴利矢!」

「遅いッ!」

 

 

 

 まるで虫眼鏡で収束された様な太陽の光が走行中の貴利矢に当たる。再度立ち上がり立て直そうとしても追撃が来る。時にはゲムデウスを取り囲むバリアにも当たり、ダメージが僅かながらに受けてしまう。

 

 

 

「チィ……!ダメージがッ……!」

 

 

「コズミッククロニクルは、宇宙崩壊の危機を地球から救うゲーム」

 

 

「太陽使うとか……無茶苦茶かよ」

 

 

 

 あの太陽光線が終わると、貴利矢は体勢を立て直して別のガシャットを使用する。

 

 

 

【ジェットコンバット!】

【ガッシャット!】

【ガッチョーン ガッチャーン!レベルアーップ!】

 

【爆走バイク!】

【アガッチャ!フライハイ!スカイ!ジェットコ〜ンバッ〜ト!】

 

 

 

 貴利矢は空中戦に移行する。それに合わせて檀黎斗も跳躍によって対応していく。しかしゲムデウスは参加しようとする意思は無かったのだが、本人の()()が出た。

 

 

 

『ゲムデウス!体の事は良いから頼む!』

 

 

「……どうなっても知らんぞ!パーフェクトパズル!」

 

 

 

 ゲムデウスが5つ目の能力を使う。4つの能力を使用している事で高山の体には相当な負担が掛かっていた為にゲムデウスは能力使用を躊躇したが、高山からの要望で発動させた。

 

 

 パーフェクトパズルの能力でエナジーアイテムの1つを使用した。

 

 

 

【飛翔!】

 

 

 

「ハッ!」

 

 

 

【ド・ガーン!】

 

 

 

 飛翔のエナジーアイテムによって貴利矢と同じ様に空中戦を行うゲムデウス。貴利矢が両サイドのガトリングコンバットで撃ち、高山が檀黎斗に近づいてアックスモードの近接攻撃。時に炎の刃を撃ち出し追い詰めていく。

 

 

 檀黎斗が着地する。しかし余裕の表情だけは消えてなかった。

 

 

 

「私は、宇宙にコミットした」

 

 

「ッ!くそっ!」

 

 

 

【ガ・キーン!】

 

 

 

 直ぐにシールドに変形させた後、飛翔している貴利矢に向かいながらBボタンの連打。その後半径5mにまたバリアを作る。

 

 

 空からは隕石という予想外なものが降ってきたが。

 

 

 

「ガッ!グッ!ま、不味い!」

 

 

「あぁったく!」

 

 

 

 バリアにヒビが入った所で貴利矢はゲムデウスを庇うように覆いかぶさり、バリアが破られた事で隕石の攻撃が両者に当たり墜落していく。

 

 

 

「がふっ!あ……がっ……」

 

 

「う゛っ……ぐっ…………!」

 

 

 

【【【ガッシューン】】】

 

 

 

 墜落したと同時に2人の変身が解除され、貴利矢は仰向けになり、高山は俯せの状態のままであった。

 

 

 

「これが……神の力だ」

 

 

 

 そう言って立ち去ろうとする檀黎斗に高山は止めようと必死に声を絞り出そうとするが、それより前に貴利矢が口を開いた。

 

 

 

 

 

 

「ずっとCRに居て」

 

 

 

 檀黎斗の足取りが止まる。

 

 

 

「永夢とかポッピーとか過ごして……1ミリ位感じなかったのかよ。命の大切さとか…………被害者の無念を」

 

 

「だからこそ、消滅者の命を救うチャンスを与えているんだろう。ハッピーエンドかバッドエンドを決めるのは、君達次第……それがゲームというものだ!」

 

 

 

 突然、貴利矢が笑い始めた。徐々に立ち上がろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「何がゲームだ…………

 

 

 消滅した人の命はデータ保存されるかもしれねぇけど

 

 

 淳吾だけは違う……!

 

 

 幾らお前の神の才能でも…………

 

 

 アイツの命は……アイツの命は取り戻せねぇんだよ!」

 

 

 

 

 貴利矢は嘗て真実を伝えたが為に失った友の記憶が呼び覚まされていた。もう戻れない命は、誰にもどうする事も出来ない。

 

 

 

【STAGE SELECT】

 

 

 

「むぅ……?」

 

 

「あっ……?」

 

 

「ッ……?」

 

 

 

 突然景色が変わった。浮かぶ月が輝いていることから、夜なのは間違いない。だがここはゲームエリアだ。

 

 

 そして、檀黎斗の後ろから足跡が聞こえた。それに全員注目した。

 

 

 そこには、伝説の戦士『仮面ライダークロノス』が居た。巨大な時計版を背にして。

 

 

 

 

 

 

 

 

黎斗ォ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────Loading……──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗い夜の闇の中、伝説の戦士『仮面ライダークロノス』となった檀正宗が檀黎斗の前に立ち向かう。彼の父親として、止めるべき脅威として。

 

 

 

「その声は……檀正宗…………」

 

 

「ほぉ……危機を脱したか。ならば貴方も、ゾンビクロニクルに参加するがいい。貴方が愛した女性『檀櫻子』を取り戻す為に」

 

 

「何……?」

 

 

 

 正宗の記憶から、赤いドレスを着た1人の女性が思い浮かばれる。檀正宗にとって、掛け替えのない大切な()の思い出が。

 

 

 

(ぬぅ)………………」

 

 

「最早人間の命も有限ではない。私の存在が、この世界そのものをゲームに()()()

 

 

 全ての命が!コンテニューできる世界となった!

 

 

 私の存在こそが、真のルールだ!」

 

 

 

 檀黎斗は嗤う。その仮面の下で歓喜に呑まれる。しかし高山の意識はゲムデウスに強制交代され、ゲムデウスは辛うじて使えるソルティの能力を使って立ち上がろうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ハッ」

 

 

「……何がおかしい?ゲムデウス」

 

 

「おかしいも何も…………滑稽としか……言いようが……ない……だけだ。檀黎斗よ……」

 

 

 

 今のでゲムデウスの意見も、貴利矢側に()()()。残された高山は未だに、檀黎斗を救いたいと思っている程の大馬鹿者であった。

 

 

 

「命がコンテニューできる?……巫山戯るな。

 

 

 命とは、限りがあるから輝くのだ。人間の生きる心地というのは、その命に限りがあるからこそ感じるのだ。

 

 

 だが、そんな永遠に続く命なんぞ何の価値も無い。

 

 

 永遠に続く命に、価値なんぞある訳が無いわ!」

 

 

「ゲムデウスの言う通りだ」

 

 

 

 そこに檀正宗が割り込む。というよりも、ゲムデウスの意見を尊重し檀黎斗に対する後悔と憤怒の混じった声色で、自身の意見を言い放つ。

 

 

 

「お前は狂っている。お前を産んだ私の手で、絶版にする!」

 

 

「何故だ……なぜ檀櫻子を救おうとしない?」

 

 

 

 

 

 

「彼女は、私の心の中で生きている!」

 

 

「…………ぁん?」

 

 

「彼女の命を弄ぶことだけは、この私が絶対に許さん!」

 

 

 

 嘗て他の命を仮面ライダークロニクルによって危機に追いやった檀正宗だが、彼にも彼なりの大切なものはある。それが自分の伴侶の存在であった。

 

 

 

「チッ……フッ!」

 

 

 

 檀黎斗は無駄たと感じ取り、コズミッククロニクルを使用して隕石を降らせる。4つの隕石が檀正宗に向かって放たれ、近場に隕石が衝突する。最後の隕石が落ちる前に、檀正宗はバグヴァイザーⅡのAボタンとBボタンを同時に押す。

 

 

 

【PAUSE】

 

 

 

 ゲームエリア内の時間が止まる。降ってくる筈の隕石も、人間の動きも止まる。しかし高山明の体だけは違っていた。ゲムデウスウィルスの効果は、既にグラファイトの存在もあって証明されている。

 

 

 

「これは…………止まってるのか……」

 

 

「やはり君の存在もあって、その体の持ち主も動けるのか……」

 

 

 

 仮面ライダークロノスの能力は()()()()()。【時間停止】【巻き戻し】という能力は時の神『クロノス』に由来する。しかし、時間停止に対応できるのがゲムデウスというラスボスの存在。

 

 

 ゲムデウスの正規攻略方がクロノス

 クロノスに対抗できるのがゲムデウス

 

 

 本来の仮面ライダークロニクルのラスボス戦では、この様な図が展開される筈だった。それも檀黎斗が作ったハイパームテキで崩されてしまったが。

 

 

 

「しかし……流石の黎斗もポーズには敵わなかったみたいだな」

 

 

 

 檀黎斗は動いていない。そもそも本来は動けない。ゲムデウスという存在を除けば、この時間はクロノスの独壇場である。

 

 

 だからこそ、この隙を狙って檀正宗は殴る。本来なら、当たる筈の攻撃を。

 

 

 

「ふっ!」

 

 

「なにッ!?」

 

 

 

 受け止めた。クロノスの攻撃を片手で。そして払い除ける。クロノスは地面を転がり檀黎斗を見る。

 

 

 

「何故だ……!?」

 

 

 

 クロノスが飛び膝蹴りを行うも容易く防ぐ。蹴り、拳と続いても防がれ、檀黎斗が一撃を入れる。それだけで地面が抉られ煙も上がるが、止まる。

 

 

 檀黎斗がその大型のボディの目からレーザーを放つが、檀正宗は跳んで回避し頭を蹴る。この時、初のダメージを与えたのはクロノスであった。

 

 

 しかしたった一撃だけしか入らなかった。その後は檀黎斗の裏拳によって地面に叩き付けられる。すると檀黎斗は檀正宗の首を掴み、拘束する。

 

 

 

「宇宙は……時の概念を歪める……」

 

 

 

 そして左拳に肥大化させたエネルギーを纏い、上空へと吹っ飛ばす。ゲムデウスの視線の先には、月があった。そして檀黎斗も宇宙に向かう。

 

 

 暫くすると、月が動いた。この突然起きた現象に驚かざるを得なかった。やがて大きな時計に向かって檀正宗が落ち、檀黎斗が地に足をつける。

 

 

 

【RESTART】

 

 

 

 そうして時が動き始めた。

 

 

 

「檀正宗ェ……貴方のライダーゲージは

 

 

0だ」

 

 

 

 

 ゲームエリアが解除され、現実の世界に戻る。檀黎斗も消えた後、檀正宗の変身が強制解除される。

 

 

 

【ガッシューン】

 

 

 

「マジかよ…………」

 

 

 

 貴利矢はクロノスの力をよく知っている。というよりドクターライダーならば誰もが知っている。時間経過による防御力上昇や、攻撃を当てる度に攻撃力が上昇されるなどスペックが強化される仕組みを持つクロノス。さらに100t以下の攻撃はダメージにすらならない装甲。

 

 

 それらを持ってしても、檀黎斗のゴッドマキシマムマイティには敵わなかった。

 

 

 

「爆走バイク……」

 

 

 

 檀正宗がゆっくりと起き上がる。既にライダーゲージが0になった事で、後の誰かに託そうとしたのだ。そして繋がりが長いのは、貴利矢であった。

 

 

 

「私と初めて会った時を……覚えているか……」

 

 

「…………あぁ」

 

 

「あの時、私は君に運命を託し……全てを話した」

 

 

「……でもそれはクロニクルの主導権を奪うために、自分を乗せる為の嘘だったんだろ」

 

 

「だが今は違う。私の言葉が嘘かどうか…………君なら、分かる筈だ」

 

 

 

 立ち上がった檀正宗は、最後の望みを貴利矢に託す。

 

 

 

 

 

 

「私の息子を止めてくれ

 

 

 アイツは………………産まれるべきじゃなかったんだ」

 

 

 

 そう言い終えた後、檀正宗の体が消えていく。残されたのは檀正宗が身に付けていたバグヴァイザーⅡだけであった。

 

 

 

【GAME OVER】

 

 

 

 貴利矢は残されたバグヴァイザーⅡを拾う。同時に、ゲムデウスの意識は闇に引き込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目覚めると知らない天井……という訳では無かった。目覚めた意識は高山のもので、何が起こったのか記憶を探っていた。そして気付いて、すぐに起き上がろうとする。

 

 

 

「ちょアキラ!」

「まだ動くな」

 

 

「ッウ……!あ、明日那さん…………パラドさんも……」

 

 

 

 側に居たパラドと明日那が高山を抑える。高山自身はこの2人に気付く様子も無かったのだが、少し時間を貰い冷静になれた。

 

 

 

「……ッ、そうだ。貴利矢さんの方は」

 

 

「今は永夢の所に居る。檀黎斗の言ってた新しいガシャットの事は聞いた」

 

 

「そうですか……でも、こうしちゃいられ」

『無理に動くなと言っとるだろうが馬鹿者』

 

 

「ゲムデウス……」

 

 

 

 今のゲムデウスと高山の間には意見の違いがある。ゲムデウスは大多数派の“檀黎斗を止める”思考を持ち、一方の高山は本当に極1握りの少数派の“檀黎斗を()()”思考を持っている。

 

 

 ある意味これが、2度目の対立とも言っていいのかもしれない。

 

 

 

『無理に動くな。お前が許可した上で上限を越えた能力使用をしたのだからな、私の意見は聞いてもらうぞ』

 

 

「今はそんな事……言ってる場合じゃ……!」

 

 

『正直に言うぞ宿主。私は九条貴利矢の意見を推奨する』

「ッ!?」

 

 

『聞いていただろう、あの言葉を。アイツの命の見方を。命の扱い方を。この世の法則を変える力を持ってしまったアイツを。

 

 

 私からすれば、檀黎斗は神ではない。1つの“害悪”だ』

 

 

「ッ……ゲムデウス、お前…………!」

 

 

『貴様はまだ擁護するつもりか?なぜそうする?

 

 

 貴様の言っている事は、その害悪を救う事と同じになるのだぞ?ましてや、害虫や害獣みたく複数によって被害が起こるものではない。

 

 

 アイツはただの1人だけで、この世界に異常を引き起こす存在になった。最早私は擁護する事も出来んし、貴様の意見にも賛同しかねる』

 

 

「でも……それでも、黎斗さんは…………僕の恩人だ……」

 

 

『その恩人がこの世に害をもたらそうとしてもか?恩人であれば、その“悪”を止めなければならないのではないのか!?我々が檀黎斗を“止める”事に、何の躊躇いがある!そうしなければ、世界そのものが檀黎斗の思うがままだ!

 

 

 それなのに貴様は、なぜその選択肢を取らない!?これで救われる存在が、どれ程のものか知らんのか!?』

 

 

 

 檀黎斗を“止める”ゲムデウスや貴利矢、永夢の意見は、この今の状況では正しい選択なのだろう。命そのものを冒涜し、命の有り方を間違えた人間に対して排他的になる思考が。

 

 

 檀黎斗を“救う”高山明の意見は、この今の状況では()()()()()()と誰しもが言うだろう。命の冒涜者だとしても救う、誰もが救われてほしいと願う慈愛の思考が。

 

 

 皮肉な事に、ゲムデウスは人間らしく、高山は人間らしくない考えを持っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでも……救いたいんだ。

 

 

 あの人は、確かに許されない事をした。

 

 

 でも、そんな事をしたのには、絶対に理由がある筈なんだ。誰しもが“悪”なんて心を持ってないことは、僕が1番知ってるから。

 

 

 僕は、黎斗さんを救いたい。

 あの人の心の支えになりたい。

 黎斗さんも、笑える様にさせたい。

 

 

 そんな事、思ってちゃダメか?ゲムデウス。

 誰かを救いたいって思ったらダメか?

 罪ある人を、許しちゃいけないのか?

 

 

 違う!止めるだけじゃ、ダメなんだ!

 誰かを救うことが、僕にとっては大事なんだ!

 大事なのは、許すことだ!そして理解者になる事だ!

 僕はそれを信じる!誰かを救う事に、黎斗さんを救う事に、僕は躊躇いはしない!

 

 

 これはゲムデウスであっても、誰であっても邪魔させない!あの人は、必ず救われなきゃ、意味が無いんだ!」

 

 

「アキラさん……」

「明……」

 

 

 

 こうもハッキリと自分の意見を言われると、少なからず影響される人物が居る。本当にそれで良いのかと、後悔のない選択をしないのかと。だからこそ、ゲムデウスも呆れる。こうまでしてハッキリと言われるのは、慣れていない様であった。

 

 

 

『……はぁ。堂々と言いおったなオイ、逆に清々しいわ。

 

 

 まぁどうせ、私は今の所能力使用も出来んしな。流石にバグスター反応は追えるが』

 

 

 

「………………(試したなコイツ)

 

 

『もう良い、さっさと行け。意識交代する気力が起きん』

 

 

「…………けど、ありがとう。ゲムデウス」

 

 

『はて、何のことやら?』

 

 

 

 高山の決意は、もう決まっていた。側に居た明日那から()()()を渡されると、高山は服に着替え、その上にCRから支給された白衣を着る。

 

 

 決意の為の力を、たった2つだけ持って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────Loading……──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白衣を身に付け、ヘルメットを被りバイクを走らせる高山。目標にはまだ遠く、そして辿り着くには遅すぎる。普通に交通機能が活動し、高山の道を何かが邪魔しなければ早く到着する。今現在ではゾンビクロニクルによって出現したゾンビの大群によって、その交通機能は麻痺されている。

 

 

 残った問題は、そのゾンビなのだが……今のところ出会ってはおらず、順調である。ゲムデウスによる反応には、檀黎斗の他にもう2()()()のウィルス反応が存在している。よくよく調べてみれば、九条貴利矢の反応の近くにそのもう1つの反応はある。

 

 

 しかしこれに何か期待しているという訳でもない。逆に高山には不安しか起きていない。檀黎斗を救う身としては、今貴利矢に会っている状況は正直いって好ましくない。

 

 

 

「……ゲムデウス、やけに居ないな」

 

 

『確かにな……だが油断は禁物だ。ゾンビゲームでは大抵ゾンビの聴覚は優れている故に、先回りされる可能性も無くはない』

 

 

「……そうだろうね。それと…………俺達のフラグ回収も早く済んじゃったけど」

 

 

『…………不味いな、これは』

 

 

 

 高山とゲムデウスの進行方向に、ゾンビ化された人間が大勢居た。そして所々にゲンムゾンビが点在されている。まるで()の様に、高山とゲムデウスを阻んでいる。

 

 

 バイクから降りてヘルメットを外し、ゲーマドライバーを装着する。しかし持ってきているガシャットは1つしか無い。ならばどうするか?

 

 

 

「ゲムデウス、ガシャットデータをバグらせろ」

 

 

『ふむ……成程。賭けにはなるが、やってみる価値はある』

 

 

「んじゃま、先ずは……!」

 

 

 

 高山の体から1つのガシャットが出現する。それは唯一ゲムデウスウィルスを抑え込めるガシャット【ドクターマイティXX】のガシャットデータであった。しかしこのガシャットデータは、高山明の()()に存在しているデータの1つ。

 

 

 ガシャット本体の権限を持っている檀黎斗が、恐らく唯一()()()()データだ。しかしこのデータを使うことで、カウントダウンが開始される可能性も無くは無い。そこで高山は、ゲムデウスとの相談でガシャットデータにバグを引き起こし、制限時間を無しにしようと考えていた。

 

 

 

『いくぞ!』

「やれ!」

 

 

 

 高山の体から白い炎にも似たゲムデウスウィルスが、データガシャットを侵食していく。しかしこのゲムデウスウィルスの反応は、高山の体にも負担を掛ける諸刃の剣と同じ。故に高山の体力は削られる一方だ。

 

 

 

「ガッ……!あがっ!ガアッ!」

 

 

『そろそろ良いだろう!早く差し込め!』

 

 

「ッ!…………ァアッ!」

 

 

 

 ドクターマイティXXを起動させ、ゲーマドライバーに差し込みレバーを開く。

 

 

 

【ドクターマイティXX!】

 

 

【ダブルガシャット!】

【ガッチャーン!レベルアーップ!】

 

 

【ドクターマイティ!2人で作る!ドク■ーマイ■ィ!■人で■■キー■■!…………】

 

 

 

「ッ!くそっ!」

 

 

『予想はしていたが……やはり賭けになるか』

 

 

「……だったらゲムデウス!メディスン・トリートメントを!」

 

 

『いや、ここはインフェクション・バイラスにしろ!ウィルス操作を使えば或いは!』

 

 

「ッ……分かった!やれ!」

 

 

 

 ドクターマイティXXのガシャットデータを体内に戻し、今度はガシャットギアデュアルγのガシャットデータを取り出す。ゲムデウスは自身のウィルスを活性化させ、高山の体を伝ってガシャットに流し込む。苦しみながらも高山はギアを左に回転させてゲームを起動させる。

 

 

 

【INFECTION VIRUS!】

【The illness cause!(end world)finish creatures!】

 

「ッ!Mark 50!変身ッ!」

 

 

【デュアルガッシャット!】

【ガッチャーン!デュアルアーップ!】

 

 

【感染侵攻!バ・バ・バ・バイラス!】

 

 

 

 どうやら変身は成功した様で、高山はゲーム画面から現れた【バイラスゲーマ】を、XRの状態に変身して装着する。腕が肥大化し、脚の装甲が1部溶けたような姿となる高山は、そのまま腕でガードしながらゾンビの群れを駆けてゲンムゾンビに的確に拳を当てていく。

 

 

 

 

「オラァ!」

 

 

 

 吹っ飛ばされたゲンムゾンビは一撃で倒され消える。そして高山の視界の端には、バイラスゲーマー特有のポイントが映し出されていた。今ので、5ポイント。

 

 

 

「ゲムデウス!このゾンビの操作できるまでのポイントは!?」

 

 

『この数だと……停止させるのには、そこまで掛からん様だ。残りのゲンムを倒してポイントを稼げ!1ポイントで5体の計算だと、この場にいるゾンビの動きは足止め出来る!』

 

 

「残りと位置は!?」

『残り6体!それぞれ1跳びすれば到着する距離だ!』

「先ずは!?」

『9時方向!』

 

 

 このバイラスゲーマーのジャンプ力は、トリートメントゲーマーよりも低い。脚の装甲が溶けている事で、全体的に脚に関わる行動は制限される様なものになっている。しかし1跳び最大58mというスペックは、本当に弱体化補正が掛かっているのか怪しいところ。

 

 

 1跳びし、上から渾身の一撃をゲンムゾンビに叩き込む。やはり一撃で倒される設計になっているゲンムゾンビに、このバイラスゲーマーの一撃はキメ技と同等の威力を発揮するらしい。

 

 

 そして倒されたことでポイントが加算。高山はゲムデウスの指示に続くようにして跳び、次のゲンムゾンビを倒す。その行動が繰り返し、繰り返し、遂に30ポイントに到達したところで、高山は自分の目の前にホログラム画面を出現させ操作を始める。

 

 

 

「……!これで、止まる筈だ!」

 

 

 

 先程攻撃したゲンムゾンビから自動採取したゾンビウィルスの活動停止の項目を発見すると、それを選択しポイント全てを振り込んで実行ボタンを押す。

 

 

 すると他のゾンビが一気に苦しみ始めた。やがてそのゾンビは人間の姿に戻っていく。しかし活動を停止させただけで、ゾンビウィルスそのものは残されたまま。素早く処置をしなければ不味いのだが、生憎ドクターマイティXXのデータは先程の有り様となってしまった。

 

 

 人間に全員戻った所で、高山はゲーマドライバーに差し込まれているデータガシャットを取り出そうとした。

 

 

 

「ッ!?ガフッ!」

『!おい宿主!』

 

 

 

 その時、高山の変身は強制解除される。そして高山の口から生暖かい鮮血が吹き出て、地面に滴っていく。5mlにも至らないが、高山の体は急速に疲労を増していく。

 

 

 

「おごっ……!ごふっ……!」

 

 

『今度は人体のダメージか……!バグの効果とはいえ、ここまで人間の体に反映されるのか……!』

 

 

「ッバッ……!ペッ!…………行くぞ、ゲムデウス!」

 

 

『おい宿主!』

「こんな所で、立ち止まってられるか!」

 

 

 

 停めていたバイクまでフラつきながらも、高山はヘルメットを被ってバイクに搭乗し、エンジンを蒸して反応を頼りに進んでいく。自分の体の事なぞ放っておいて、ただ助けたい人を助ける為だけに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 九条貴利矢と檀黎斗の戦いは熾烈を極めていた。ゲンムから毒の霧が噴射され、ガシャコン・スパローの矢を溶かしていく。それに驚く九条貴利矢(レーザーX)は、檀黎斗から放たれる毒の霧を()()()()で避けてグレイズ、そして矢をまた放っていく。

 

 

 意図も容易く溶けていく矢だが、めげずに避け続け漸く矢を当てた。

 

 

「ッ……ペッ」

 

 

「へへっ」

 

 

 

【ス・パーン!】

 

 

 

 ガシャコン・スパローをサイズモードにし二刀流で向かう貴利矢。しかし檀黎斗は避ける避ける。代わりに蹴りがヒットしたが、微々たるものにしかなっていない。

 

 

 今度は足を集中的に狙ってサイズモードのガシャコン・スパローを振り回す。だが的確に片方を足で押さえ付け蹴りを与える檀黎斗。にも関わらず貴利矢は立ち向かう。

 

 

 

「来いよ」

 

 

 

 檀黎斗はガシャコン・キースラッシャーを装備し、飛んですれ違い様の斬撃に対応する。同じことがもう一度繰り返されると、貴利矢は次にフェイントを混ぜて攻撃する。しかしこれでも檀黎斗には届かなかった。

 

 

 蹴られて離れてしまった貴利矢に、ガシャコン・キースラッシャーを放り捨てて向かってくる檀黎斗。

 

 

 だが、その時バイクが両者の間に割り込む様にして来た。咄嗟に檀黎斗は後退し、両者はバイクの搭乗者に目を向ける。ヘルメットが脱がれ、高山の顔が顕になると檀黎斗は歓喜にも似た声を出す。

 

 

 

「高山明ァ……!随分と遅かったじゃないかぁ……!」

 

 

「明……お前…………!」

 

 

「……ッ!ハァッ!……ハッ……!」

 

 

「ん……?なぜ君は、そこまで苦しんでいる?」

 

 

「……ハッ…………あのゾンビの壁を……突破するのに…………ハァ……ゲムデウスウィルスにある、ガシャットデータを……使って……貴方の影響を……受けないように……バグらせた、代償ですよ……ハァ……」

 

 

「……やはり、このゲームの2つ目の攻略法を見つけてしまったか。だが、それでこそ高山明だァ!君とゲムデウスの両者の力が、このゲームのクリアの鍵ともいえるからなぁ!」

 

 

 

 檀黎斗は高笑いし始めるが、高山は苦しみながらバイクを降りる。しかしバランスを崩して倒れ、持っていたギアデュアルγが飛び出す。そのガシャットをほふく前進で取りに行き、手に入れたあと高山はバイクを支えにしてゆっくりと立ち上がる。

 

 

 それを見ていた檀黎斗も、次第に高笑いを止めて真剣な声で高山に問いかけた。

 

 

 

「……君は、なぜ自分自身を苦しめてまで、私に立ち向かう?先程のバグの効果で、君の体力は風前の灯火に近い筈だ……なのに、なぜ満身創痍ながらも私の前に立つ?」

 

 

 

 

 

 

 

「貴方を……救いたいからに、決まってる……!」

「!明…………」

 

 

「僕の道を……照らしてくれた…………貴方を!

 

 

 貴方の心を……救いたいんです!」

 

 

「なっ…………!君は、自分が何を言っているのか理解しているのか!?態々、私を救う為に来たのか!?それだけの為に!」

 

 

「それ以外に何があるんですか!?

 

 

 僕は、自分が後悔したくない選択肢を選んだだけです!貴方が嫌と言おうが、誰かが否定しようが!

 

 

 貴方を救うために!僕は来たんです!」

 

 

 

 ゆっくりとギアデュアルγを構え、ゲーマドライバーを装着する高山。

 

 

 

「黎斗さん…………

 

 

 

 

 僕は、貴方を救ってみせる!」

 

 

 

【デュアルガシャット!】

 

【The illness cause!Who the next patient?】

 

 

 

 ゲーマドライバーに差し込まれたギアデュアルγから変身待機音が鳴り響く中、高山は左腕を上に、右腕を下にして手首を交差させる。

 

 

 次に左腕を上に、右腕を下に移動させる。左腕はガッツポーズの様に立て、右腕はそのまま1回転させて止める。

 

 

 

「マキシマム大変身!」

 

 

 

 両腕を左右に広げ、広げるついでに右手でレバーを開けば……変身が開始される。

 

 

 

【ガッチャーン!マザルアーップ!】

 

 

【患者治すドクター!人に感染バグスター!人とウィルスフュージョン!バ〜イラストリートメ〜ント!】

 

 

 

 レベル99(マキシマム)。高山の最大戦力が、檀黎斗の前に立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────Loading……──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高山明の姿が変わる。初のレベル99形態へと変身したのだが、その姿は誰もが忌むべきものであった。

 

 

 黒と灰。その2つの色をベースに右側は腕と脚の付け根辺りから灰色と黒めの赤のグラデーションが施され、右腕と右足は黒めの赤と黒に。反対に左側は腕と脚の付け根から灰色と白のグラデーションが施され、左腕と左脚は白と黒になっている。

 

 

 患者を治療するゲーム(メディスン・トリートメント)人間を滅ぼすゲーム(インフェクション・バイラス)の2つのゲームが混ざり合い、世界の()()を握る存在となったクロノスの姿となっていた。

 

 

 

「!その姿は……!」

 

 

「……黎斗さんが作ってくれた、このガシャットの最後の力です。今までよりも格段にステータスも上がってますが、その分……」

 

 

「レベル99……私が創り出した、“もう1つのクロノス”か」

 

 

「えぇ。貴方を救える、唯一の方法です」

 

 

「…………君には心底呆れた。このゲームの運営(開発者)に、その様な反応をすることにね」

 

 

「僕は、それで結構ですよ」

 

 

「……フンッ」

 

 

 

 高山はガシャコン・シールドとデウスラッシャーを装備し、攻撃型の態勢をとる。未だに立ち尽くしている檀黎斗は多少反応はするものの、結果が決まっている様な笑みを仮面越しに浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行きます!

「かかって来い……高山明ァ!

 

 

 

 高山明が、檀黎斗に向かう。ゲムデウスに交代できない今、たった1人で戦わなければならない。しかし高山は()()に持つデウスラッシャーで檀黎斗のボディに向かって振るう。

 

 

 やはりダメージは通らない、しかしボディから火花は飛び散った。檀黎斗にダメージは届かないものの、その威力に仰け反った。

 

 

 

「チィ!」

 

 

「効いてる……のか!?」

 

 

「まだまだァ!」

 

 

 

 乱雑に、それでいて的確にデウスラッシャーを振るい()()に持つガシャコン・シールドで突く。その攻撃の応酬が徐々に檀黎斗に響いていく。

 

 

 このレベル99は、2つのゲームを合わせた形態。医療ゲームと感染シミュレーションの能力を全て備えているだけでなく、檀黎斗はあるシステムを搭載させていた。その名も【感応】。

 

 

 この感応の性質は左右で分かれており、左はステータス強化系のエナジーアイテムの効果を飛躍させる。例えるなら【マッスル化】は【剛力化】という風に飛躍させる。反対に右は弱体化系のエナジーアイテムの効果を飛躍させる。例えるなら【混乱】の継続時間を増やすなど。

 

 

 そしてこの感応に、ウィルス抑制作用によって生まれたガシャコン・シールドのウィルスが更に抑制され、バグスターの攻撃に対する耐性を上昇させた。反対にデウスラッシャーは強化ウィルスを流し込み、その威力や斬れ味を増幅させた。

 

 

 結果、高山の武器攻撃は99ながらも100t以上にまで上昇されているのだ。だが単に100tという威力だけでは檀黎斗の開発したゴッドマキシマムマイティには敵わない。だがこの現状は、どういう事なのだろうか。

 

 

 

「調子に……乗るなァ!」

「ッ!」

 

 

 

【1!】

 

 

 

 ゴッドマキシマムマイティの拳の攻撃を、ガシャコン・シールドの持つ防御機能で素早く防ぐ高山。本来受けるダメージをある程度まで減少させた防御力は、檀黎斗のカウンターの威力に高山を耐えさせた。

 

 

 

「まだだァ!」

 

 

 

【ド・ガーン!】

 

 

 

 シールドからアックスに変更し、デウスラッシャーとの高火力二刀流で攻める高山。両手斧であるガシャコン・アックスを意図も容易く片手で扱い、乱舞でダメージを与え続けていく。

 

 

 その舞は荒々しく、とても綺麗とは呼べない程遠いものであった。だがその1発1発の重みは、この世で誰にも負けていないと言えるであろう強さがあった。心の強さ、力の強さと……高山明の思いの全てが乗せられている一撃であった。

 

 

 

「ここまで強くなるかァ…………計算外だが、君という存在はこうでなくてはなぁ!」

 

 

 

 檀黎斗は高山と1番出会っていると自負している。そしてゲムデウスによる予想外な出来事や、高山とゲムデウスウィルスとの反応が起こす()()が檀黎斗はゲーム開発者として嬉しく思う面もあった。

 

 

 ゲームというのは正式に攻略されるシナリオで製作されている。だが世の中にはデータ改造やチート等によって、作られたシナリオから逸脱した攻略を行う者が居る。檀黎斗は、1ゲームクリエイターとして許そうとはしなかった。正規の攻略方法で、ゲームというものを楽しんで貰いたかった願いがあるからだ。

 

 

 高山の場合は異常すぎたが、1つのゲームシナリオとしては通用するだろうと考えられる。ラスボスは倒されたが実は生きており、新たな依り代を得て復活するという構成を。しかし敵としてではなく、新たな脅威が自身に不利益が生じてしまう為に、主人公達の仲間となるシナリオを。

 

 

 賛否両論あるシナリオであるが、檀黎斗はそのシナリオを意図的に作った訳ではない。だが別のシナリオを作る内に、急に閃いた妙案であったこのシナリオに作り替えた。結果、檀黎斗と高山明という対決のシナリオが生まれた。

 

 

 檀黎斗からすれば、高山は“良バグ”。想定されていなかったが、結果的に良い方向に持っていったバグであったのだ。

 

 

 

「フンッ!」

「ウラァッ!」

 

 

 

 上空から振り下ろされる両腕斧と剣の二刀流と、檀黎斗の拳が衝突する。どちらも本気であるが、檀黎斗は楽しんでいた。このゲームが、一体どんな結果になるのか楽しみな“プレイヤー”になっていた。

 

 

 拮抗した結果、檀黎斗が押し勝つ。高山は放り出され地面を転がる。

 

 

 

「ッア"ァ!まだd……」

 

 

 

 高山の変身時間が残り0となった。その瞬間、高山は変身が強制解除される。それがルールだと、それを認めないと高山はガシャットを押さえ付ける。

 

 

 

「ッ"!ガアアアア!」

 

 

「明!」

 

 

「死ぬつもりか?!既に10分の変身時間は終わったというのに!」

 

 

 

 

 

 

 

「まだ…………まだだ………………

 

 

 まだ……終われねぇ!

 

 

 

 高山の体から、白い電気にも似たものが放出される。その白い電気は、変身時間の画面を一気に()()()()()。残り時間、∞に。

 

 

 

「なにッ!?」

 

 

「ァ"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!」

 

 

 

 苦しい筈なのに、死にかける寸前なのに。高山は力を振り絞り、ドライバーのレバーを開閉する。

 

 

 

【ガッチョーン ウラワザ!】

【ガッチャーン!】

 

 

【INFECTION MEDICINE CRITICAL ENERGY!】

 

 

 

「ハァアアアア"ア"!」

 

 

 

 白と黒のエネルギーが両足に纏われ、高山は放つ。檀黎斗咄嗟に両腕を交差させて防御態勢を取り、高山の最後の一撃をくらう。

 

 

 

「ォ"オ"オ"オ”オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"!」

 

 

「くっ!こ、この威力……まさか!」

 

 

「デェアアアアア!」

 

 

 

 高山が檀黎斗の防御を貫く。瞬間、その場で爆発が巻き起こる。爆発によって放り投げ出された高山は、また地面を転がり変身が漸く解除される。未だに姿を保っていられている檀黎斗は、疲弊した様子を見せながらも高山に対して喜んでいた。

 

 

 

「クハハハッ……やはり君は、私の想像を良い意味で超えたなぁ……楽しかった。実に有意義な時間だった……あとは」

 

 

「……だろうな。俺と、お前で」

 

 

「このゲームのエンディングを……決める…………!」

 

 

 

 決意を固めた檀黎斗はレバーを閉め、貴利矢はBボタンを押す。既に覚悟は、決めていた。

 

 

 

【ガッチョーン カミワザ!】

【キメワザ】

 

 

【GoD MAXIMUM CRITICAL BLESSING!】

【CRITICAL CREWS-AD】

 

 

 

 檀黎斗と貴利矢の必殺技が、ぶつかり合う。高山も爆発の余波を受けるも耐えた。爆発が晴れると、檀黎斗は立ち、貴利矢は地面に落ちた。

 

 

 

「漸くか……終わったな。この私を楽しませた高山君には、感謝しなければな」

 

 

「ヘッ……その明は今、死んでも可笑しくねぇ状態にあるけどよ」

 

 

「……ァッ、まだ……です。まだ、やれ……!」

 

 

「良いや高山君、もうゲームは終わった……」

 

 

「あぁ……終わったな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前がな」

 

 

 

「ぁん?ぐっ?!」

 

 

 

 檀黎斗が苦しみ始める。体から粒子状のものが放出され、終いにはアーマーが消えた。地面に倒れ伏せる檀黎斗と、起き上がる貴利矢。

 

 

 

「何をしたァ!?」

 

 

「お前のデータを初期化させてもらった」

 

 

「なんだと?!」

 

 

「このドライバーにはな、檀正宗が残したリセットの力が宿ってる。その力でガシャットのデータを初期化させてもらった。

 

 

 つまりは、今の俺はゲンム専用の攻略法って訳だ」

 

 

「有り得ない……!私は不滅だァアア!」

 

 

「往生際が悪いぞ神!たった1つのライフが無くなったらゲームオーバー……それがゲームっていうもんだろ!」

 

 

「私は……神だァアアア!」

 

 

 

 初期化されたゲンム(檀黎斗)が貴利矢に攻撃を仕掛ける。しかし躱され、カウンターを入れられる。貴利矢と檀黎斗は掴み合い、そのまま何処かへと向かっていった。

 

 

 残された高山は匍匐前進のまま、バイクに乗ろうとしていたが如何せん体の自由が効かない。体を動かすことさえままならない中、何も無い空間からバグスターウィルスが集合する。

 

 

 

「アキラ!」

 

 

 

 駆け付けたパラドが高山を保護する。

 

 

 

「しっかりしろ、アキラ!」

 

 

「……パラド、さん…………黎斗さんと……貴利矢さんが……」

 

 

「レーザーが?!どっちに!?」

 

 

「案内……しますから、バイクに……」

 

 

「今の状態わかって言ってんのか!?ボロボロじゃないか!」

 

 

「早くしないと……黎斗さんが…………!」

 

 

 

 高山の体から白い電流が流れ始める。意思に反応するが如く、高山の体に纏わり付いていく。

 

 

 

「アキラ……お前…………」

 

 

「パラドさん……早く、乗せて下さい。運転なら、大丈夫です」

 

 

 

 パラドは危険を察知して高山から離れたが、支えていた高山は崩れなかった。しかし満身創痍なのは違いない。それでも高山は、バイクに乗って檀黎斗と貴利矢の行き先に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────Loading……──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日が沈み、夜の闇が既に広がった頃。雨が降る因縁の場所まで到着して尚、貴利矢と檀黎斗の戦いは行われていた。殴り殴られ、蹴って蹴られ、荒々しく的確に攻防戦が繰り広げられていた。

 

 

 そこまでして戦い続け、この因縁の決着を付けようとする2人。ある意味この時の高山は、関係ない邪魔要素みたいなものであったのだ。高山の助けたい気持ちとは裏腹に、檀黎斗の思いはケジメを付けようとしていた。精神科医としては患者の思いを無下にする様な真似はどうかと考えられる。

 

 

 だが高山も檀黎斗も意固地だ、譲れないし譲る気すら毛頭ない。だからこそ檀黎斗は離れたといっても過言ではない。そして貴利矢との因縁を終わらせるために、態々ここまで来たのだ。

 

 

 そして檀黎斗と貴利矢は、既にボロボロになっていた。立っているだけでやっとの筈が、2人ともどうしてか諦められなかった。高山と比べると色々度合いが違うが、2人とも満身創痍の状態で立っていた。

 

 

 檀黎斗が吠える。吠えた後、貴利矢に殴り掛かる。

 貴利矢も吠える。吠えた後、檀黎斗に殴り掛かる。

 

 

 2人の拳は、お互いの頬に当たった。しかし1歩も退こうとしない2人は、そのまま力の進行方向に任せて飛んでいった。

 

 

 そして2人のライダーゲージが……消えた。残り僅かだったゲージ残量も無くなり、変身が解除された。

 

 

 ここで漸く、貴利矢と檀黎斗の戦いは終わった。雨に打たれながらも2人は自覚した。そして檀黎斗が負けたことで、周囲のゾンビも元の人間に戻っていった。

 

 

 永夢が先に2人のいる場所まで到着した。本来はバイクで来ていた高山が先に来る筈なのだが、何故か来ていない。

 

 2人は立ち上がろうとする中、貴利矢は檀黎斗に指をさして告げた。

 

 

 

「最後に1つだけ……お前の大嘘を当ててやる。

 

 お前はずっと、自分の母親を救えなかった医療に失望していた。

 

 だから……信じるしかなかったんだ。自分自身の才能だけを……。

 

 

 

 もう良いだろ……後はこの国の医療に任せようぜ」

 

 

「私はただ、私自身の才能に……導かれただけだ。

 

 この時代の倫理が、私を拒絶するならば…………次に生まれた時……時代は、私に追いついているか?」

 

 

「ヘッ……だとしても、すぐにまた時代を追い抜いちまうだろうな。黎斗神なら」

 

 

 

 

 

 

 

 

「檀 黎斗神という名は、もう捨てた…………今の、私は……

 

 

 

 

檀……黎斗…………」

 

 

 

 そして話しが終わった。語り合いが終わった。あと残されたのは、自分達の消滅だけ。

 

 

 

「…………黎斗さん」

 

 

 

 雨の中、永夢がそう呟いた。檀黎斗は永夢を見た。そして1つの心残りが居ないことに気付いた。だが、そんなもので良いと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雨の中を突き進むエンジン音が3人の耳に入った。気付いた3人はその方向を見ると、雨に濡れながら高山がやって来たのだ。

 

 

 

「高山さん!?」

 

 

 

 ヘルメットを被っていなかったので、風圧や雨粒の痛さは異常な筈だ。しかし高山はそんな事を気にする間もなく、運転していた右手を離して白衣の内側に手を突っ込む。

 

 

 そして取り出されたものを、檀黎斗に向けた。

 

 

 

【GAME OVE…………】

 

 

 

 ゲームオーバーの合図が鳴る前に、檀黎斗は高山の持つものに吸い込まれた。そして姿が消えたあとバイクがスリップし高山は転けた。片足をバイクで押し潰されながらも、高山の意識はまだあった。

 

 

 

「ハッ……ハッ…………やっと……間に合った……!」

 

 

〔これは……ポッピーのバグヴァイザー……まさか、君は!〕

 

 

「ヘヘッ……やっと、救えた。貴方を、やっと……!」

 

 

 

 高山の表情は痛みから来ているのか、檀黎斗を助けられた事に対して安堵しているのかは定かでは無い。だが笑顔を浮かべていた。

 

 

 

〔君は……君はなぜ……!なぜ私にここまでする!?必要ない筈だ!君にとっても、この世界にとっても!私という存在は、必要ない筈だ!そうまでして私に構う理由は、一体何なんだ!?〕

 

 

 

 檀黎斗は高山に言い放った。至極当然のことを言った。もう檀黎斗は、この世界に居なくなったとしても必要とされなくなるだろう。

 

 

 しかし高山は、そのバグヴァイザーを自分自身の胸に近付けて抱きしめた。

 

 

 

「……そんなこと、言わないで下さいよ。

 

 今必要としてる人は、少なくとも僕が居るじゃないですか。

 

 僕は貴方の言葉で、貴方の行動で……救われた1人なんですよ?

 

 ゲムデウスウィルスの事で、死のう死のうって思ってたのに……貴方が止めたんじゃないですか。今生きていられるのは、貴方のお陰じゃないですか。

 

 必要無いのなら、僕だってそうだったじゃないですか。それを勝手に救ったのは、貴方じゃないですか。

 

 だから……そうまでして、自分を殺さないで下さいよ!

 

 勝手に死のうだなんて、僕が絶対許しません!貴方が救ってくれたように、僕も貴方を救いたいって思えた!

 

 

 もう1人で抱え込まないで下さい!

 もう勝手にケジメを付けようとしないで下さい!

 世間が許さないのなら、自分が許さないのなら……

 

 

 僕と、この世界で償いましょうよ!生きてる限り、何度も何度も償いましょうよ!貴方が僕に示しててくれた様に!あの時みたいに!どうか……どぅ()……」

 

 

 

 高山の意識が途絶えた。雨に濡れる度に、高山の命は減りつつある。バグヴァイザーからでは温度は感じられない筈なのに、檀黎斗は高山の体が少しずつ冷たくなる様な錯覚を覚えた。

 

 

 

〔高山君?……高山君、おい…………おい!高山君しっかりしろ!おい!〕

 

 

「高山さん!」

 

 

 貴利矢の体を支えて高山の元に向かった永夢は、ゲームスコープで緊急連絡を取った。意識を確認するも、目覚めない。闇の中に溺れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ここは?』

 

 

『宿主の深層意識というヤツだ』

 

 

 

 暗闇の中で目が覚めた高山。ゲムデウスの声がした方に振り向き、ゲムデウス本来の姿と対面していた。なぜこんな場所に居るのかは、あまり理解していないようだ。

 

 

 

『何で僕……ゲムデウスと居るのさ?』

 

 

『檀黎斗を助けた後で、宿主がしでかした行動のツケが全部回ってきた為だ。大馬鹿すぎて呆れたわ』

 

 

『あーっ……そっか。そうだよな、うん』

 

 

『言っておくが、宿主の意識が此方に入ったせいで現実の情報は全く入っていない。時間感覚も曖昧だ。まぁその分体の方は理解出来たがな』

 

 

『……どんなだった?』

 

 

『内蔵器官の負傷、バイクで足を押し潰されたが運良く関節の部位だけ単純骨折、極度の疲労……真面に動けるのに1週間かかるぞ』

 

 

 

 それだけの事をしでかした。だが高山は、その暗闇の中でも気掛かりはたった1つだけであった。

 

 

 

『……黎斗さんは?』

 

 

『私にも分からん。その後の事は宿主自身が目覚めれば良い、早く行け』

 

 

『わかった……あと、ゲムデウス』

 

 

『何だ』

 

『ありがと、付き合ってくれて』

 

 

 

 それだけ伝えると、高山の意識は光に吸い込まれていき目が覚めた。ゆっくりと開かれる瞼、そして高山の瞳に映るのはボヤけた視界。

 

 

 漸く見れる様になった所で、誰かが高山の左側で寝ていたのが分かった。そちらに視線を向けると、藍原がスヤスヤと寝息を立てていた。

 

 

 

「優美……?」

 

 

「おーおー、漸く起きたのかよ寝坊助」

 

 

 

 右側にも誰か居た。だが聞きなれた声であった為、正体を確認せずに済んだ。

 

 

 

「貴利矢さん……」

 

 

「お前俺よりぐっすり眠りやがって、五日も寝てたんだぞ?」

 

 

「五日……そんなに」

 

 

「しかもまだ絶対安静だとよ、鏡先生からの伝言だ」

 

 

 

 貴利矢は自分の傍に置いていた高山のカルテを取って確認する。

 

 

 

「えーっと、内臓器官にダメージあり。左足の関節が綺麗に骨折、さらには筋肉痛まで……んで極めつけが」

 

 

 高山が見やすい様にカルテを移動させて見せる。

 

 

「ゲムデウスウィルスの侵蝕率、現在は68%にまで一気に上昇してる。ドクターマイティを使わなかったツケだな」

 

 

 

 

 

「あの、黎斗さんは……何処に?」

 

 

「お前な……もうちょっと自分の心配したらどうなのさ?ん?彼女さんにも迷惑かけてやがって」

 

 

 

 呆れた様子の貴利矢。カルテを台に置き、高山に目線を向けて語る。

 

 

 

「檀黎斗の入ったバグヴァイザーはすぐに衛生省に持ち込まれた、そこで檀黎斗の処遇をどうするか役員が会議()()()()

 

 

「……していたって、決まったんですか?」

 

 

「ん、まぁな。俺としちゃ決着付けたのに、どっかの誰かさんが余計な事をしたせいで何か不完全燃焼だし」

 

 

「……貴利矢さん?」

 

 

 

 高山からは少しだけ怒りの色を見せていたが、そんな事は知らないと謂わんばかりに貴利矢は話しを続けた。

 

 

 

「あぁ、そうそう。明、復活したら即仕事だぞ」

 

 

「……仕事なら行きますけど?」

 

 

「あぁそっちじゃなくてだな……あ〜、檀黎斗の処遇に関してだけどな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前が檀黎斗の()()()になった」

 

 

「………………へっ?」

 

 

「檀黎斗の精神状況も考慮した結果、精神科医である明にカウンセリングとか檀黎斗の監視を一任することになったんだよ。ある意味1番安全な監視としてな」

 

 

 

 突然の事に驚きを隠せない高山。それもそうだ、目覚めたら直ぐに檀黎斗の担当医として一任されたという事実、そうそう受け止められるものではない。

 

 

 だが高山は、何処かすんなりと事実を受け止めていた。それが何故だかは分からない。

 

 

 

「そう……ですか。僕が……黎斗さんの」

 

 

「……まぁ唯一違うことしてたのが、明だけだったからな。交流が深い点で言っても明が担当医になるのは会議で意見の一致があった。精神科医っていう点でも評価された理由だけどな」

 

 

 

 

 

「あぁ……でも良かった。黎斗さんを助けられて」

 

 

「まだ言うかコイツは……」

 

 

 

 高山の表情は、今何処の誰にも負けてはいなかった。

 

 

 1番輝いて、嬉しそうな笑みだった。

 

 

 かくして檀黎斗の起こした事象は幕を閉じた。そこには犠牲も違う思いもあったが、この様な結果になった。

 

 

 批判されるかもしれない、世間が認めないかもしれない。けれども、それでも高山は檀黎斗には生きてほしいと願った。その願いは、この様な形で叶えられた事にとても嬉しく思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【制限時間】
・ゾンビクロニクルを行う際に高山とゲムデウスに設けられた“ガシャット1つ”につき“変身できる”時間。10:00しか設けられていないが、ドクターマイティ等は所謂“特効薬”としての意味を持つので檀黎斗が設けた。

 変身を解除すれば時間は止まり、制限時間が残っていれば変身可能。ただし制限時間が極端に少ない(例:00:01etc)場合は、檀黎斗によって強制的に使用不可になる。そして無理やり使用不可のガシャットを使おうとすれば高山の体にダメージが入る。


【感応】
・高山明がバイラストリートメントゲーマーに変身した際に常時使用される能力。左側はメディスン・トリートメントの力が発生し、左側で強化系エナジーアイテムを使用すると効果がランクアップする。

 右側はインフェクション・バイラスの力が発生し、弱体系エナジーアイテムを使用すると効果時間が伸びる。
 
 また使用武器への感応もあり、対応した箇所で武器を使うと威力などが上昇する。





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