Dr.ゲムデウス   作:(´鋼`)

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皆様お久しぶりです!鬼の半妖、ついにDr.ゲムデウスの連載を再開します!

ここまで待ち続けてくれた読者様、お待たせしました!アナザーエンディングならぬ【Ending of Parallel】スタート!


Ending of Parallel
Braver 対 Sniper 


 この世界にはバグスターウィルスなるものが伝染している。それは今から6年前、ゲンムコーポレーションと呼ばれる会社の社長が意図的に発生させたバグスターウィルスによるパンデミックが起こり様々な場所に【バグスター】と呼ばれる存在が蔓延った。

 

 

 しかし5年という歳月を経てドクターライダーが本格的に活動し始め、バグスターの脅威は静まりつつあった。

 

 

 ()()()()()が登場するまでは。

 

 

 その名も【仮面ライダークロニクル】。ライダークロニクルと呼ばれるガシャットを使うことでドクターライダーが持つバグスターウィルスの抗体が無くとも変身できるA()R()()()()であった。

 

 

 だがゲーム病に感染するリスクが備わっていた禁断のアイテムでもあった。ドクターライダー達や衛生省の協力もありライダークロニクルは事実上の終了を迎え、その時社長『檀正宗』やライダークロニクルのラスボスである『ゲムデウス』を倒し、平穏は一時的に戻った。

 

 

 しかし後にVR空間に人々が閉じ込められる事件が発生。これに対応したドクターライダー達はゲムデウスとなった主犯者である『ジョニー・マキシマ』を倒す。

 

 

 そしてここからがこの世界特有の物語。マキナビジョンが起こした事件の後、ゲムデウスのコピーデータが流出。それが1人の男性に感染し、そして適合した。

 

 

 その男性の名を『高山 明』という。彼は当時21という若さであったがゲムデウスウィルスの感染、適合により“緊急時ドクターライダー”という仕事を衛生省から下される。中に居る意思を持ったデータの『ゲムデウス』と共に【仮面ライダーゲムデウス】として活躍する。

 

 

 さらにこの2名は平行世界に訪れた経験もあり、そこで別世界のドクターライダー達や仮面ライダー達と共に世界を救った。活躍は目ざましいと言えるが、一方で疲弊や生傷などが絶えないライダーである。

 

 

 この男性には女性の同居人も居り、衛生省が支給したウィルス放出を防ぐ家で2人暮しをしている。時たま彼の友人である天才『茅場 晶彦』と『神代 凛子』を招く様子も見られる。

 

 

 特殊な事例として、ゲムデウスに変わった時のみ【ギアデュアルガシャットβ】の単体使用による変身が可能。さらにゲムデウス内にあるバグスターの特性を利用する事も出来る。

 

 

 そしてこの高山明は学生としての傍ら、ドクターライダーとしても活躍し続けている。これはそれから2年弱経った頃の物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “檀黎斗失踪事件”そこからこの話は始まる。2 3ヶ月前に檀黎斗が失踪した事件である。未だ発見の目処は立っておらず、捜査も難航している。

 

 

 そんな中高山明は大学を卒業し、精神科医の研修を終えて今は新米の精神科医となった。彼女である『藍原 優美』も今は1会社員として働き、若くして部長のポストに位置する程の業績の持ち主となった。

 

 

 今高山は精神科病院で働いている。だが精神科医というのは主に人間の心を診察する役目を持つ為か、人の精神状態が様々で刺激を受けやすい故に疲れやすい。慣れてしまえば問題ないという訳でもない。だが高山も望んで仕事にしたのだから文句も言わない上に充実していると楽観的になる。

 

 

 勿論1人では疲弊していただろうが、生憎高山は1人では無い。中に居るゲムデウスが色々と体調管理もしてくれるので自分はそれを行ってリラックスしている。ゲムデウスも“自分が生きる為”と割り切って助言しているので、ある意味持ちつ持たれずの関係であった。

 

 

 食堂で焼き鯖定食を食べて落ち着く高山の様子を見て、ゲムデウスが話しかける。

 

 

 

『今回もお疲れだったな』

 

 

「(まぁね。流石に今回の患者さんは前回より良かった……何て言ったら不味いな)」

 

 

『思うだけなら何ともならん』

 

 

「(それもそっか)」

 

 

 

 これがいつもの様子である。衛生省経由でドクターライダーであることは大学を卒業してから既に伝えられており、バグスター関連の事では出動する必要性があった場合のみ行くシステムを取っている。

 

 

 

『……ん、宿主』

 

 

「(着たの?)」

 

 

『あぁ。動き始めた、休みはあるよな?』

 

 

「(勿論。その為に休暇届け出したし……黎斗さんが何をしようとしてるのか、突き止めなきゃ)」

 

 

 

 今から高山は休みに入る。外に出て駐輪場で大型バイクに乗り、とある場所まで向かう。

 

 

 

『しかし……本当に誰にも伝えないのか?確かに協力の要請をすれば、我々が檀黎斗に勘づかれる可能性は否定できんが……』

 

 

「その可能性があるからこそさ。黎斗さんは僕らを()()()……それはラヴリカバグスターを僕らの中にある【ゲムデウスウィルス】で復元させた事で分かった。

 

 

 でも、未だに僕らを()()()()が分からないんだ。復元が用なら終わったも同然、隙を突いて用済みにすることも出来た筈さ」

 

 

『だがそうしなかった……我々を使う目的があるから、か。成程、だからこそ敢えて1人になり檀黎斗の動向を探るのか』

 

 

「そういう事さ。さて、そろそろ気張って行くよ」

 

 

『了解した』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あまり目立たない場所に立てられた洋館に到着した高山とゲムデウスは、大型バイクから降りて洋館の中に入る。洋館の入口を開けると、目の前に檀黎斗が出迎えていた。

 

 

 

「約束通り来てくれてありがたい、高山君。早速だがランチを振る舞ってもらいたい」

 

 

「ランチ……ですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやおや、ラスボス様お手製のランチとは。ハッハッハッ!どんなジョークだろうか?」

 

 

 

 高笑いしながらやって来たピンクの服を着た『天ケ崎恋』が2人に歩み寄ってくる。この男は高山の体内に存在するゲムデウスウィルスを使用して復元された“ラヴリカバグスター”であるが、高山に対しては良い感情を持っていない。

 

 

 ゲムデウスとは、バグスターの頂点に立つバグスター。本来ならば仮面ライダークロニクルのラスボスであり、ラヴリカを含む他のバグスターを全員倒して降臨する存在。それがまさか1人の人間と共に暮らしていることに嫌悪感を持っている。

 

 

 

「減らず口なことで。キザな輩って大抵ナルシストでキモイウザイモテないのですがね」

 

 

「減らず口は君も同じじゃないのか?大して顔立ちも良くないのに……物好きな女性が居るm」

 

 

 

 高山がキレてすぐにゲーマドライバーとギアデュアルγを用意するとギアを左に回して起動する。

 

 

 

 

【INFECTION VIRUS!】

 

 

 

 同時にゲーム画面から赤黒く変色した装甲一式が出現すると、ラヴリカもバグヴァイザーを持って元の姿に戻ろうとする。だがそこに檀黎斗が割り込んだ。

 

 

 

 

「喧嘩をするのは良いが、それなら他所でやってくれ。それとラヴリカ、君は高山君の体内にあるゲムデウスウィルスによって復元された。私の才能があればゲムデウスウィルス無しでも復元できたが、その手伝いをした者に対する礼儀としてはどうなんだ?」

 

 

「あちらが戦いを望むのなら、私もそうするまで。私は負けまないから……なッ!」

 

 

「ウィルス操作で存在諸共消し去る事は可能ですよ。それと……流石に僕の彼女に向かってその発言だけは許せません」

 

 

 

 互いに嫌悪しあい、互いに戦闘態勢を取るこの状況であったが少しすると高山も落ち着きを取り戻しギアを元に戻してゲーマドライバーとギアデュアルγをバッグに戻す。

 

 

 

「おやぁ?何のつもりですかな?」

 

 

「誤解しないで下さい。今の目的を思い出しただけです」

 

 

 

 高山は厨房へと赴く為に足早に向かう。それを見たラヴリカもバグヴァイザーを戻して席に座るが、不機嫌そうな表情も1人の介入によって柔らかなものとなった。

 

 

 

「出来るまで、少しお散歩でもしよっか?」

 

 

「おぉ、そうだね。マイハニー」

 

 

 

 彼女の名は百瀬小姫、本来は鏡飛彩の……仮面ライダーブレイブの交際相手であった。だがゲーム病に感染しデータとなって姿を消した存在であった。

 

 

 何の偶然か、本来は檀正宗が消去したデータであったが仮面ライダークロノスのリセット能力によりデータが元の状態に戻った。そして檀黎斗がラヴリカと共に復活させた。

 

 

 だがラヴリカと百瀬小姫にはタイムリミットが存在する。復活のために洗脳された百瀬小姫は、今こうして存在していた。そのラヴリカと百瀬小姫は少し外に出て散歩を楽しんでいた。

 

 

 先程の高山とラヴリカのやり取りを少し溜息をつく檀黎斗であったが、ポケットから取り出したブランクガシャットを取り出すとニタニタと不気味な笑みを浮かべていた。

 

 

 そしてそれをこっそりと見ていた高山とゲムデウスであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ランチを作り終えて、ディナーまで時間があるので高山は自宅へと向かっている。そこでゲムデウスと高山は先程のについて相談していた。

 

 

 

「ゲムデウス、あのガシャットって」

 

 

『あぁ。宝生永夢が持っている、あのガシャットとそっくりだ』

 

 

「形だけだけど…………中身が決まってないとなると、何のゲームを作るんだ?」

 

 

『さぁな。だが今回のは碌でもないのは確かだろうな、恐らく厄介な事柄を起こすつもりだ』

 

 

「………そうか」

 

 

『……なぁ宿主よ、1つ良いか?』

 

 

「何さ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

『何故そこまで檀黎斗に拘る?既に利用されていると知りながら、態々檀黎斗の策略に乗るのは何故だ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()だからに決まってる」

 

 

 

 高山はその事を言うと、強くハンドルを握り表情を真剣なものにさせていく。

 

 

 

「黎斗さんは……僕にとっては大切な恩人なんだ。あの人が何の為に脱獄したのか、何の為に僕らに協力を申し出たのか知りたいんだ」

 

 

『そうか……大切な恩人、道標を()()()からか』

 

 

「そうさ。だからさゲムデウス、手伝ってくれるよな?」

 

 

『片足どころか全身突っ込んで後戻りなんぞ出来るか』

 

 

「違いない」

 

 

 

 高山とゲムデウスは、何時もの調子と普段見る事の無い決意を胸に抱いて家へと帰っていく。

 

 

 しかしこの時の高山とゲムデウスは知らない。この先、檀黎斗が再度世間を巻き込ませる程の事件を起こすことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この物語のエンディングを変える為の歯車になるのが自分たちだということを、未だに知ることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────Loading……──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その翌日、高山は日課となった2人分の朝食作りを行う。同棲している藍原は会社に行くので序でに弁当も作る主夫となった高山は、手際良く朝食と弁当のメニューを作っていく。時に鼻歌を歌いながら、時にこれからの事を考えながら。

 

 

 そうしている内に階段から降りてくる足音が少しだけ聞こえてくる。寝ぼけ眼でトタトタとゆっくりと歩きリビングの扉を開けるのは藍原であった。

 

 

 

()よ〜…………」

 

 

「おはよう。ほら、顔洗ってきて」

 

 

「みにゅ()〜…………」

 

 

 

 そんな高山の言い分を無視し藍原は後ろから抱き着く。出来ることなら今はやめてもらいたいと願う高山、また理性が崩壊しそうで怖いのだ。

 

 

 しかし藍原は頭をグリグリと擦り付ける。まるで先程の発言に対して拒否しているかのような行動であった。少し困った表情をする高山であったが、朝食作りは1通り終わったので藍原の腕の中で正面を向き合う。

 

 

 

「優美、今日は大事な接待があるんでしょ?早く支度しないと」

 

 

「…………めんどぃ()ょ〜、何であんな代表取締役(変態オヤジ)と接待しなきゃなんないの〜?」

「こら、その口はなんですか?」

 

 

「や〜あっ。ゆうきゅうとりゅぅ〜」

 

 

 

 頭を抱える高山。社会人になってから毎度毎度この調子であるのだが未だに慣れずに疲れてしまう。この対処に5分かかり、漸く朝食の準備と藍原の洗顔も終わった。

 

 

 

「いただきます」

 

 

「はい召し上がれ。あといただきます」

 

 

 

 白飯、ハムエッグ、サラダ。後は納豆キムチという内容だが、美味しそうに食べる2人の姿があった。何時もの光景に何時もの食事、何時もの2人に普段と変わらぬゲムデウス。

 

 

 しかし高山は内心、檀黎斗という恩人の動向を調べる為に態と協力しなければならない。多目に見てくれている箇所はあるとは言え、少し早めに食している。何時もは藍原、高山の順に食事が終わるが今回は2人同時に食事を終えた。

 

 

 

「ご馳走様でした」

 

 

「お粗末様でした。あとご馳走様でした」

 

 

「今日は珍しいねぇ〜。一緒に終わるなんて」

 

 

「ま、たまにはこんな時もあるさ」

 

 

 

 一緒に食器類を片付け高山は洗い物を済ませていく。藍原は会社に行く準備をしているが、休暇届けを出した高山は普段通りに終えるとソファに座ってTVを着ける。

 

 

 ニュースでは芸能人関係や事件事故など普段よく見るニュースばかりであるが、その中には檀黎斗の失踪事件は報道されていなかった。下手に事を荒立てるのを恐れているのだろうか。しかし真実を伝えたところで、それが何になるのかは分からない。

 

 

 元気の良い足音がリビングにやって来ると藍原が高山の首に腕を回して寄りかかる。高山は右手で頬を撫でて藍原を立たせ玄関まで一緒に行く。

 

 

 

「忘れ物は無いよね?」

 

 

「大丈夫、ばっちし!」

 

 

「はい、じゃあ行ってらっしゃい」

 

 

「行ってきます!」

 

 

 

 元気良く敬礼のポーズをしたあと、互いにキスをして藍原は仕事に向かう。高山はそれを見送った後、寝室に移動しゲーマドライバーを装着して斜め掛けバッグを持つと次に玄関に移動して靴を履く。最後にキメワザスロットホルダーのステージセレクトで場所移動をする。

 

 

 

【STAGE SELECT】

 

 

 

 ボタンを押すと景色が変わる。そこはあの洋館の庭であった。その庭の入口から高山は入ると待っていたかのように檀黎斗が視線の先にいた。

 

 

 

「高山君、頼んだよ」

 

 

「では」

 

 

 

 

 今回はモーニングを作る。と言っても食事をするのは天ケ崎恋(ラヴリカバグスター)百瀬小姫(鏡飛彩の恋人)であるが、朝食を作ることに抵抗を覚えている高山であった。特にラヴリカに対して。

 

 

 しかしこれも檀黎斗の策略に態と乗り、真相を暴こうとしているため。仕方ないと割り切り出されて文句の1つも言えないモーニングを作る。これで文句を出すのならばラヴリカの舌を疑わなくてはならない。

 

 

 予定通り朝食を作り終えて並べていると、ちょうどのタイミングで天ケ崎恋と百瀬小姫が階段から降りてきた。ドリンクの準備も怠っておらず、何時でもバッチ来いと謂わんばかりの高山であったが中のゲムデウスは“気張る所違う”とツッコミを申していた。

 

 

 天ケ崎と百瀬小姫が食事をしている間、高山は檀黎斗が言っている事柄について思ったことがある。

 

 

 ()()()()()()()は明日の午前0時だと。

 

 

 はて?と高山は考えた。内蔵されていたデータ()()で復元された状態ならまだしも、ラヴリカは高山の中にあるゲムデウスウィルスを使って復元された。つまるところラヴリカ構築の補強となっているゲムデウスウィルスに制限時間は存在するのだろうかと。

 

 

 それはゲムデウスとて同じであった。現にゲムデウスからはラヴリカの情報が伝わっており、ラヴリカを補強している事は自覚している。だがタイムリミットが決まっている時点で、まるで“その結末になること”が()()()()()様な言い草であった。

 

 

 そしてラヴリカと百瀬小姫が食事を終えて離れると、高山の元に檀黎斗が近付く。

 

 

 

「少し良いかい?」

 

 

「別に構いませんが……何の御用ですか?」

 

 

「なに、君に頼み事をね」

 

 

 

 高山にずいっと顔を近付ける檀黎斗。少しビックリした高山であるが、少し顔を離れさせるだけで終えると檀黎斗は続けて高山に言う。

 

 

 

「高山君、仮面ライダークロニクルは知っているね?」

 

 

「えぇ、クロニクルガシャットを使ったARゲームですよね。それが何か?」

 

 

「ならば話は早いな。私が言う時間に指定した地点まで行って、花家先生の持つクロニクルガシャットを回収してほしい」

 

 

「…………花家さんが、持っていると?」

 

 

「あぁ。花家先生も、目的があってそれを持っているのだからね。兎に角、時間通りに指定位置へと着いてくれ」

 

 

 

 高山は内心疑心暗鬼だが、それでも了承する。全ては檀黎斗の行動の真相に迫るため。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして時間だけが過ぎていき、現在午後11時30分。高山とゲムデウスは見つからない様に移動し終えて待機していた。そこにゲムデウスが違和感を感じ、高山に伝える。

 

 

 

『……宿主、少し聞いてくれ』

 

 

「……何さ

 

 

『私や宿主の様な状態では無いが、ゲムデウスウィルスに()()()()を察知した。ウィルスのデータから読み取るに、花家大我のデータが採取された』

 

 

「!…………ねぇ、それって」

 

 

『宿主の推測とは違う。流石に宿主は私が居るということもあって無茶が効く、だが花家大我にそれは無い。となれば……ゲーマドライバーからの感染が有効だろう』

 

 

 

 正直、高山も花家大我が何を考えているのかさっぱり分からない。何故そうまでしてクロニクルガシャットを使うのか、何故そこまで固執するのかが理解できない。そもそもゲムデウスウィルスと似たウィルス構成を体内に保存するだけでも体力を使う。

 

 

 高山の場合はゲムデウスという他の媒体があるからこそ利益を生み出せる。だが他の媒体が無い花家大我にとっては害悪しか及ぼさないはずなのに……何故か。

 

 

 そうしている内に先にラヴリカと百瀬小姫が時計塔前に到着する。現在午後11時35分、まだタイムリミットの午前0時にまで時間はあるが早いとこ済ませようとしている。

 

 

 

『宿主、来たぞ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「午前0時…………」

 

 

 

 午後11時35分、花家大我が到着した。邪魔されたラヴリカは憤慨しており花家大我に向けて怒りを示す。

 

 

 

「無粋な男だねぇええ!

 

 

 西馬ニコとの恋愛ゲームを放置して、僕達のアバンチュールを邪魔しに来るだなんて!」

 

 

 

 ラヴリカはバグヴァイザーを片手に持つ。潜んでいた高山はラヴリカの言っていた“恋愛ゲーム”に疑問を持った。

 

 

 

ヴぁいよう!

 

 

 

 バグヴァイザーのAボタンを押し、両腕を広げて元の姿に戻っていく。

 

 

 

 

【INFECTION!The Bugster!】

 

 

 

 花家大我はバグヴァイザーⅡを装着し、Aボタンを押す。軽快な音楽が流れる中、ラヴリカは花家大我に尋ねる。

 

 

 

【ガッチャーン】

 

 

 

「何のつもりだい?それは人間に扱える代物じゃ…………ッ?」

 

 

 

 問いかけには答えなかった花家大我であったが、その答えと謂わんばかりに取り出したのはクロニクルガシャットであった。花家大我は、それを起動させる。

 

 

 

【仮面ライダークロニクル!】

 

 

 

「変身」

 

 

 

 

 バグヴァイザーⅡにクロニクルガシャットを差し込み、赤いスイッチを押す。しかし拒否反応が起こっているのか、まだ完全な抗体を物にしていないのか花家大我が苦しみ始める。

 

 

 この時、高山とゲムデウスは一時的に焦っていた。このままでは体が持たないと直感した2名は、ゲムデウスと似たウィルス構成ならばゲムデウスが操れるのではと頼んでみた。

 

 

 だが檀黎斗にバレれば一巻の終わり。苦渋の決断だがある程度干渉するがバレないようにウィルス操作を施す選択を取った。苦しんでいる花家大我を嘲笑うかの様に、ラヴリカは言う。

 

 

 

「ハッハッハッハッ、勇気と無謀は違う。君が、檀正宗の様になれるとでも思ったのかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ………俺はドクターだ!

 

 

 患者も!ブレイブの恋人も!

 

 

 

 

 

俺が救う!」

 

 

 

 声を荒げながら立ち上がる花家大我。ゲムデウスはウィルス操作を終えて傍観者の立場に立つ。

 

 

 

【バグルアーップ】

 

 

【天を掴めライダー!(ウォー!)刻めクロニクル!

 

 

 

今こそ時は、極まれり!】

 

 

 

 

 ローマ数字が時計の様に並び、そして真上から花家大我を覆い『仮面ライダークロノス』となった。

 

 

 

【STAGE SELECT】

 

 

 

 場所が代わり、対決の場が作られる。

 

 

 

「いけ好かないねぇ、僕を消滅させたその姿を見ると!」

 

 

「相手してやっから……ちょっと黙ってろ」

 

 

「おのれぇッ!」

 

 

 

 ラヴリカが攻撃を仕掛けるが、クロノスがAとBボタン両方を同時に押すとクロノスは百瀬小姫の方に居てラヴリカの攻撃を回避していた。

 

 

 

「なっ……!?貴様ッ!」

 

 

「ミッション…………開始!」

 

 

 

 今ここに、1つの歯車(運命)を決める戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────Loading……──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クロノスのガシャコン・マグナムでの牽制から、この戦闘は始まる。ラヴリカは数発ほど食らうがガシャコン・マグナムを弾き落とし攻撃を仕掛ける。しかしクロノスも紙一重で避けた後、拳を2 3発ほど叩き込み幾度と無く回転蹴りを与える。

 

 

 

「彼女は、お前のじゃねぇんだよ!」

 

 

 

 怯んだラヴリカに対して、クロノスはガシャコン・ソードを取り出す。時に斬り、時に叩き付け、時に突き、時に蹴り、ラヴリカを弱らせていく。だがラヴリカの体からは【HIT!】などの攻撃表示が出ていない。つまるところ、クロノスの攻撃は有効打とはなっていない。

 

 

 しかし、そうだとしてもクロノスは攻撃を続けた。百瀬小姫(零した過去)を取り戻そうと、飛彩が愛した人を救おうと、クロノス(花家大我)は自分を酷使し続ける。

 

 

 クロノスの体から緑のデータが出現し、ガシャコン・ソードから炎が噴き上がる。

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 

 

 そして斬りつけ、ラヴリカから爆発が巻き起こる。しかしラヴリカの方は倒れていない。だがダメージを与えた影響で疲弊しているのは確かだった。

 

 

 

なーんてね。例え僕のボディを傷付けても、暴力じゃ僕のハートまではブレイク出来ないよ!」

 

 

「ハァ…………しぶとい野郎が……!」

 

 

 

 クロノスがガシャコン・ソードを構えてラヴリカに飛びかかる。が、そこで異変が起きた。動きが止まると、クロノスの体から緑の電気の様なものが流れ始める。そしてクロノスは、強制的に変身を解除される。

 

 

 

【ガッシューン】

 

 

 

 

 クロニクルガシャットはそのまま高山の居る近くにまで飛び、それを回収する。本来なら高山とゲムデウスも、ここで帰っておけば良かったのだが……高山は元の位置に戻り様子を見続けた。

 

 

 フラフラに成りながらも変身が解除された花家大我の元にラヴリカは向かう。

 

 

 

「ハッハッハッハッ……僕の忠告を無視した報いだね。君は西馬ニコのハートを射止めようとしなかった」

 

 

 

 睨み付ける花家大我。ある意味大切なものを投げうって来た花家大我は、ラヴリカにとっては飛んで火にいる虫同然。しかしそれは花家大我が()()()()()を理解しているが故の行動でもあった。

 

 

 医者は基本的に私情に駆られてはならない。ただ患者を治し、救うことを目的としている。そこに私情が入ろうが命を見捨てる事はできない。高山は、すぐにでも行ける様にドクターマイティを構える。

 

 

 

「ハッハッハッハッ……レディのハートを掴めない男に、負ける気はなぁい!

 

 

 1人ぼっちのまま、あの世に逝くがいい!

 

 

 

 

 

お別れだぁ」

 

 

 

 ラヴリカは花家大我に向けて拳を振り下ろそうとする。すぐにドクターマイティの起動ボタンを押そうとしたが、寸前の所でラヴリカに白衣が掛かり視界が塞がれる。

 

 

 少し慌てた様子を見せつつも、白衣を払い来た方向を見る。高山もドクターマイティをゆっくりと仕舞った。

 

 

 白衣が投げられたと思われる場所には、鏡飛彩が立っていた。

 

 

 

「お前は……ッ!」

 

 

「その戦闘(オペ)…………俺が引き継ぐ」

 

 

「…………ブレイブ?」

 

 

 

 花家大我は鏡飛彩を見て驚く。

 

 

 

「お前は小姫を救おうとしてくれた。

 

 

 今度は俺の番だ。

 

 

 お前の患者は、俺が救う」

 

 

 

 

 鏡飛彩は、そうタドルレガシーガシャットを取り出しながら言った。しかしラヴリカが否定していく。

 

 

 

 

「無駄無駄。乙女心が分からない野暮な男にはねぇ」

 

 

 

 飛彩の視線に苦しげな状態の恋人が映る。

 

 

 

 

 

 

 

「小姫……本当にすまなかった。

 

 

 ドクターの勉強ばかりに気を取られて

 

 

 小姫を蔑ろにして…………!」

 

 

 

「今更後悔したって、1度傷付いたレディのハートは取り戻せないんだよ!」

 

 

 

 飛彩は、少しの間を置いた。ラヴリカの言うことにも確かに一理ある。だが1度傷付けてしまったのなら、償いさえすれば良いのも事実。つまりラヴリカのは単なる極論に過ぎない。

 

 

 タドルレガシーガシャットを構えて、起動させる。

 

 

 

【タドルレガシー!】

 

 

 

 画面が飛彩の後ろに現れ、ゲームが開始される。

 

 

 

「術式レベル 100!

 

 

変身ッ!」

 

 

 

 ゲーマドライバーに差し込み、レバーを開く。

 

 

【ガッシャット!】

【ガッチャーン!レベルアーップ!】

 

 

 

 

 

 

辿る歴史目覚める騎士

 

タドルレガシー!】

 

 

 

 白き翼から現れる勇者と魔王の力を持つ騎士(仮面ライダーブレイブ レガシーゲーマー)。ガシャコン・ソードを構えてラヴリカに相対する。

 

 

 

 

「これより、ラヴリカ切除手術を開始する!」

 

 

「フンっ、出来るかな!?」

 

 

 

 ラヴリカがブレイブに迫る。しかしブレイブはラヴリカの攻撃をいなし、避ける。

 

 

 

「フンっ!暴力じゃ僕のハートはブレイク出来nぬおっ!?」【HIT!】

 

 

 

 攻撃表示が出た。何かしら攻撃が通る理由があるのは確かだが、構わずブレイブは攻撃を続ける。

 

 

 

【HIT!】【HIT!】

 

 

 

「な、何故だ……?何故僕のハートがズタズタなんだ!?」

 

 

 

 ラヴリカが無数の花びらによる攻撃を加える。それにブレイブは直撃し花びらが囲んでいく光景を見て、ラヴリカはほくそ笑む。

 

 

 だが、白き翼をはためかせたブレイブが花びらを散らす。それを見ていた花家大我はまさかと思い、百瀬小姫の方を見る。表情がまるで安心しているかの様な表情であった。

 

 

 

【HIT!】

 

 

 

「な……何故だ……?」

 

 

 

【HIT!】【HIT!】

 

 

 

 ブレイブは思い出す。あの時、助けられなかった過去を。

 

 

 

【HIT!】【HIT!】

 

 

 

 ブレイブは思い出す。今まで過ごせなかった時を。

 

 

 

【HIT!】【HIT!】

 

 

 

 ブレイブは思い出し、後悔した。

 

 

 時は必ず進んでいく。ずっと止まらずに進んでいく。止まる事も、過去に戻ることさえも出来ない。

 

 

 

【HIT!】

 

 

 

「な……何故だ…………!?」

 

 

 

 ラヴリカは未だに理解が出来なかった。なぜ自分に攻撃が通るのか。なぜ百瀬小姫がブレイブを思うのか。なぜ自分は負けるのかと。

 

 

 

キメワザ!】

 

 

 

 ブレイブはガシャコン・ソードを地面に突き刺し、白き翼を広げて飛翔する。

 

 

 

「はあああああああッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TADDLECRITICAL STRIKE!】

 

 

 

「ハアアアッ!」

 

 

 

 ラヴリカに衝突し、白き翼がラヴリカを包み込む。翼が消えると、ラヴリカには攻撃表示が幾つも表示されていた。

 

 

 

「ぐはぁっ!」【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

 

 

「ッ……世界中に、I miss you……」【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

 

 

 

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

 

 

 

「ぐぉほぉッ!」

 

 

 

【会心の一発ゥ!】

 

 

 

 ブレイブがゆっくりと降り立ち、変身を解除する。

 

 

 

【ガッシューン!】

 

 

 

 その後、ゲームエリアが解除されていく。高山はそれを見計らってキメワザスロットホルダーのボタンを押して、檀黎斗の待つ洋館に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 檀黎斗に花家大我の持っていたクロニクルガシャットを渡すと、その翌日に今度は何処か別の場所のデータを移される。もう一度キメワザスロットホルダーのボタンを押して、先程移入された場所までワープする。

 

 

 場所は“ネクストゲノム研究所”。そこに到着すると檀黎斗と、もう1人女性が共に居た。名を『八乙女紗依子』、彼女は遺伝子医療の権威と呼ばれる逸材とされるのだが何故に檀黎斗と共に居るのかは明かされていない。

 

 

 高山とゲムデウスは両者を見やる。檀黎斗と八乙女も高山を見やる。

 

 

 

「ご苦労だった……高山明ァ…………」

 

 

「……黎斗さん、そのガシャットを使って何をするつもりですか?そろそろ教えて下さっても宜しいのでは?」

 

 

「ふむ……そ う だ な。折角だ、見ていくと良い」

 

 

 

 高山にとある場所を指差す檀黎斗。そこを目指していく高山は、ある地点で()()()が見えた。何かと思い警戒しながら、ゆっくりと覗く。

 

 

 

「ッ!…………ゲムデウス、()()()って……!」

 

 

『……まさか、これの為にか?』

 

 

 

 漸く全体像が見えた。高山の瞳に映し出されたのは、普通では有り得ない人物が居たからであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『檀…………正宗……!』」

 

 

「その通り」

 

 

 

 不意に後ろから檀黎斗の声が聞こえたので、瞬時に振り返る高山。しかし何処吹く風と謂わん様な口振りで喋り続ける檀黎斗。

 

 

 

「君にクロニクルガシャットを回収して欲しかった理由、クロニクルのマスターガシャットを複製し内蔵されている檀正宗のデータを取り出す為にあったのさ」

 

 

「……成程、要は花家さんは1つの過程にすぎなかったと。ラヴリカのタイムリミットも、()()()()()()と決定づけなければならなかったと。始めから()()()()()()()()()()()()()()を信じて、ラヴリカに緊張感を持たせたんですか?」

 

 

「流石に気付くか……確かにゲムデウスウィルスの効果は素晴らしい、完全な復元に近い状態になるまで成功したのだからな。そして私の計画に必要なガシャットは、もしラヴリカが倒されなくとも別に良かった。

 

 

 

 ()()()()()()()()からなぁ」

 

 

 

 

 その笑みに、高山は少しだけ恐怖してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回『Dr.ゲムデウス』は!


 揃う2体のバグスター!

「高山さん!何で……何で協力してるの!?」


 そして高山の心境に、変化が……!

「それが……親の言う言葉ですか!?」


 絶望した黎斗を救う方法を捜す!

「お願いします!力を貸してください!」



 次回『Dual Bugster』




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