Dr.ゲムデウス   作:(´鋼`)

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今回は閑話。零治君と詩乃のんの単なる小話。
なので短いかと思われますが、どうぞ読んでいって下さいませ。


閑話 超人が吹く音色

 森の中から音が聞こえる。ハーモニカの音だ。誰かが吹いているのは間違いないだろう。

 

 そしてハーモニカを吹いている本人は、隣で手頃な岩に座っている少女という観客に聞かせていた。

 

 この少女は関本零治、渾名『ゼロ』の吹いているハーモニカの音色を聴いて心が安らいでいた。心地良い音色が朝田詩乃の心を駆け巡り、気付けば音楽に合わせてユラユラと体を揺らしていた。

 

 その演奏が終わるとゼロが詩乃に感想を聞いた。

 

 

「……という感じだが、どうだった?」

 

「…………スゴい安心できるわね、その音楽」

 

「そうか、なら良かった」

 

 

 ゼロと詩乃はあの事件以来に知り合う機会があった。そもそもゼロと漆の住むアパートと、詩乃の祖父母が住んでいる家が近かった所からである。

 

 あの事件以来、恐怖によって精神年齢が下がった母親は精神鑑定を受けながら福祉施設での生活を余儀なくされた。そのため朝田詩乃は祖父母の家で生活する事となった。

 

 そしてある日偶然、スーパー内で零治と詩乃と詩乃の祖母が対面。それが切っ掛けで稀に零治が夕食をご馳走になる関係になっていた。

 

 ゼロはゼロで父親の漆の帰りが遅いので1人で食事をする事が多かった為か、それを聞いた詩乃や詩乃の祖父母が一緒に食べようと提案してきたのが事の始まり。

 

 ゼロと詩乃はお互いが休みの日であったり、ゼロが夕食で厄介となっている時に趣味について語る事が多くなった。その中でゼロの特技がハーモニカである事を知った彼女は何が吹けるのか聞きたくなった。

 

 何度か頼んだが夜という事も相まって迷惑になりそうな行為として辞めていたが、今日の昼頃にゼロのお気に入りの場所に連れてこられた詩乃は漸く聴ける事ができた。

 

 

「良かった。これ母さんから教えて貰ったからよ」

 

「ゼロの……お母さん?」

 

「あぁ。もう居ないけどな」

 

 

 ゼロはハーモニカを握り締めている手を見ながら、そう応えると詩乃は表情を曇らせた。

 

 

「ごめん……なさい」

 

「いや、何で謝んだよ?」

 

「だって……」

 

「良いんだよ、んなモン。俺の母さんもそう考えてるし」

 

 

 そう言ってまた吹き始めるゼロ。たった1つしか教えて貰って無かったが、この音楽だけは忘れていなかった。既に亡くなって7年経つが、母親が気紛れに奏でたこの音楽だけはどうしても忘れることが出来なかった。

 

 どんな辛い時、苦しい時でも、この音楽を奏でるだけで不思議と安らいだのだ。だが今日は、人のために奏でていた。

 

 しかし彼らは知らない。この音楽を聞いている存在が、誰も知らない所からやって来ているのを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かなりの時が経った頃、高山は茅場からとある報告を聞いていた。話によればバグスターウィルスを通さないフィルターとしての役割を持つプログラムを開発し衛生省からの許可を受理したという。これでVRゲーム中にバグスターウィルスが潜入して感染するということが大幅に減るのだ。

 

 しかしそんな朗報に突如伝えられた悲報も、またあったことを忘れてはならない。

 

 ━━━檀黎斗の失踪

 

 事の始まりは些細な事であった。檀黎斗を連れてポッピー、永夢、パラドと共に遊んでいたが、永夢とパラドが遊んでいた間に逃走。

 

 逃走という事で高山にも連絡は入った。高山はゲムデウスを適合させているため、バグスターウィルスの反応を探せるという点で捜査に加わった。

 

 大型バイクを走らせながら捜索しているが、一向に反応と呼べる反応が見つからない。というより反応が微弱なため、バグスターウィルスの反応をゲムデウスが探知出来ないのだ。

 

 

「くっそ!一体何処に居るんですか黎斗さん?」

 

『焦るな、反応は微弱ながら存在するんだ。研ぎ澄ませれば反応の方向は分かる筈だ』

 

 

 高山が焦っている中、急にスマホが震える。2回震えると終わったため恐らくメールだと理解できた。路肩に停めてスマホを調べると一件着ていた。

 

 不思議がって恐る恐る開くと住所だけが書かれており、そこを地図アプリで調べると森の中を示した。

 

 まさかと思い高山はその住所までルート案内をする。暫くして道が険しくなっていた為バイクから降りて道を駆けていく。

 

 そして道が途切れた。その先には古びた館が存在していたのだ。

 

 

「ここ……は、一体……?」

 

『宿主、ここから反応が強くなっている。どうやら間違いは無い』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ちわびていたよ」

 

「ッ!?」

 

 

 高山が瞬時に後ろを振り向き警戒態勢を取ると、そこには失踪した筈の檀黎斗が居た。

 

 

「君たちをね」

 

「黎斗さん……」

 

 

 ゲムデウスが無理矢理高山と人格を交代し、檀黎斗に質問していく。

 

 

「檀黎斗、貴様何の目的でここに居る」

 

「目的…………目的か」

 

 

 檀黎斗はゲムデウスに歩いて近付いていき、ある程度の距離になると口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君たちに手伝ってほしい事がある」

 

 

 

 

 

 

 

 


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