Dr.ゲムデウス   作:(´鋼`)

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はい皆様どうも、鬼の半妖で御座います。

今から掲載させて頂くのは閑話というヤツです。といってもネタが無くなったから書いたのではありませんからね?ウソジャナイヨ……

まぁ後々の物語に関与する人物を(  '-' )ノ)`-' )

では閑話をどうぞ。


閑話 彼女が出会った超人

 12月16日、午後3時15分頃。青森県のとある郊外の銀行に1人の男が挙動不審な態度で現れた。

 

 その男は足早に受付へと向かった。だが生憎とその銀行は順番待ちのシステムが存在し、機械が発注した紙を受付から貰わなければ対応してもらえる所か待っても意味の無いものになってしまうのだ。

 

 だが男は()()()()でそのシステムを覆した。だが強制的という点が挙げられるが。

 

 その男は受付に対応していた目の前の女性を持っている拳銃を向けて脅したのだ。とどのつまり強盗である。勿論、周りの客は叫び声を挙げる者も居た。逃げようとしたり叫ぼうとする客を銃声で黙らせ、その場に留めさせた。

 

 その中には親子連れや妊婦、老人などが人質として取られている事と同じである。この場に居る強盗は拳銃を突き付けながら大型のバッグを提示させ金を詰めろと脅した。

 

 だが、こんな時に限って妙な正義感が働いてしまう者も居る。女性が強盗に支持され金を詰めている間、ゆっくりと強盗の死角に隠れて捕らえようと考えている男が居た。

 

 男は元々正義感の強い人物であり、強盗から全員を救おうと必死になっていたのだ。勿論それ自体が悪いとは言い難い。ただ……相手の状態が悪かった。

 

 男が()てた物音に敏感に反応した犯人は、その方向に銃を向けた。その場所とは待合室と職務室を分ける為に設置された扉であった。しゃがめば容易に大人さえ隠せることのできる扉に銃を向けて、そこから出ろと大きく叫んだ。

 

 観念した男は犯人を刺激しない様にゆっくりと立ち上がり、様子を伺いつつ犯人と交渉していく。だが犯人の様子が普通の人間の()()では無かった。

 

 それもその筈、犯人は危険ドラッグ使用者で正確な判断が脳内で行われていないのだ。交渉なんて意味が無い上にあらゆるものが犯人の刺激と成りかねない状況に陥られていた。だが男も冷静な判断ができていなかった。

 

 元々持っていた正義感が話で応じない者と認識し、捕まえようとする事を決意させてしまった。それが仇となってしまったのだ。

 

 結果、その男は犯人を刺激してしまったが為に命を落としてしまった。その際に1人の女性がパニックを起こしてしまう。それも犯人の刺激となって脅しという行動を取った。

 

 その女性が急激に静まり隣に居る娘にしがみつくと犯人は受付の女性を再度脅し、金を詰めることを強要させる。

 

 だが少しして、先程の女性の(すす)り声が聞こえ始めた。男が捕まえようとした刺激、その女性がパニックに陥り叫び声を挙げてしまった刺激、そして最後の小さな刺激。だが犯人の逆上に触れるには充分過ぎた。

 

 犯人は苛立ちを見せて銃をその女性に向けた。

 

 同じ頃、その女性の隣に居た娘が決意を抱いた。母親を守りたいという一心のままに、彼女の体は動こうとしていた。チャンスは今、この瞬間にしか無い。犯人が此方に注目が逸れている今しかないと感じ、行動に移そうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デェアアアアッ!」

 

 

 突然の声に一瞬思考を停止するが、気付けば犯人の体が大きく逸れて地面に倒れ伏した。頭にも痛みが走っている様で右手で銃を持ったまま頭を抱え悶絶している。

 

 女性の娘は声の主を見る為にその方向に視線を向けた。

 

 自分よりも高い身長、自分よりも鍛えられた体、自分よりも犯人に対する鋭い目付き。しかし顔は何処か幼さを残した状態の男であった。

 

 その男は犯人の持つ銃を強引に奪い取り遠くへと投げ捨てた。捕まっていた人質は解放されたも同然だが、急に現れた男に視線が行き避難どころではなかった。

 

 

「ったくよぉ……友達(ダチ)に荷物届けようとして行ってみれば、この有様。何か不幸だな今日は」

 

 

 そう言ってはいるが犯人への視線を逸らさない。痛みに耐えながらも犯人が起き上がり男へ殴りかかろうとする。

 

 

「クソがあぁぁぁ!」

 

「ふっと」

 

 

 犯人の右拳が迫っていたが、男は難なく避けて腕を掴み背を向けたかと思いきや顎に叩き込む様にして自分の上半身を倒して蹴りを入れた。

 

 犯人は顎を蹴られたことによって脳震盪を起こしその場でフラフラとしながら倒れてしまった。伸びていることを確認した男は早急に警察への電話を行った。近くにあった遺体も見つけ、その場に近付いて黙祷を捧げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 警察も到着し事情聴取を行っている会議室の中で先程の女性の娘『朝田詩乃』と呼ばれる少女が、ふとした疑問を婦警に投げ掛けた。

 

 

「あっ……あの…………」

 

「ん?どうしたの詩乃ちゃん」

 

「……銀行で、助けてくれた男の人は…………?」

 

「あぁ……あの子ね。今親御さんが迎えに来てくれてる途中で待ってるみたいよ」

 

「そう…………ですか……」

 

 

 今からでも言いたいのだ。何故あの様なことをしでかしたのかを。朝田詩乃としての考えはそんな事を考えていた。

 

 

「良ければ会ってみる?」

 

「は、はい」

 

 

 少ししどろもどろと成りながらも答えた。担当している婦警は一旦外に出て男を連れてくる。

 

 時間は3分程だろうか?たったそれだけだが、朝田詩乃には長く感じた。扉がノックされ開かれると婦警と、その後ろに銀行強盗を退治した男が居た。

 

 その男は朝田詩乃を見るやいなや気付いた表情で少し馴れ馴れしい様子で挨拶をした。だが不思議と不快感は感じず、寧ろ何処か安心できる様な雰囲気となっていた。

 

 婦警は気をきかせたのか部屋から退室し、残っているのはその男と朝田詩乃だけとなった。その男は朝田詩乃の前に座り口を開く。

 

 

「ぃよっ。さっきぶりだな」

 

「はい……あの…………」

 

「あぁそうそう。言っとくけど、俺まだ13だからな?この図体のせいで2ぐらい歳上に見られるんだよ」

 

「えっ…………そ、それでも私より歳上……じゃなくて」

 

「んぁ?じゃあ何?」

 

 

 かなり物凄いことをカミングアウトした男。13という年齢でありながら犯人の()()()()()()()という人間らしからぬ行動に驚かされる。が、朝田詩乃の本意は違っていた。

 

 

「あの……助けてくれて、ありがとう……ございます」

 

「あぁ……そっちか。なに、気にすんな。俺が勝手にしゃしゃり出ただけだからよ」

 

 

 やっと言えたと安堵する朝田詩乃。その後に会議室の扉がノックされ部屋に婦警と見知らぬ男が入ってきた。その男を見てその男子は少し萎縮(いしゅく)した。

 

 

「ゲッ!親父!」

 

「何がゲッ!だ?よくもまぁ言えるなバカ息子」

 

 

 何故かこの親子の間で言い知れぬ雰囲気が漂っているが誰も介入できずにいた。その男子の父は自らの子に近付き、高さを合わせて耳打ちをする。その際ビクッとその男子の体が震えたのが映った。

 

 次第に体の震えが増していき、椅子ごと震えていた。耳打ちが終わった様で、その男子の父は婦警と朝田詩乃に一礼をしてその男子の首根っこを掴まえて帰ろうとしていた。

 

 

「あっ…………あの!」

 

 

 帰る2人の足を止めるかの様に大声で呼び止める朝田詩乃。それに反応したのか、その男子の父とその男子は朝田詩乃の方に顔を向ける。

 

 

「あの……名前を、聞かせても……?」

 

「……ほれ、何時も通りに」

 

「おっと」

 

 

 首根っこを掴んでいた手が緩み落下のままに地面に着地する男子。1度だけ咳払いしたあと、その男子は名乗り始める。

 

 

 

 

 

「俺の名は関本 零治(せきもと れいじ)、俺の友達からは零の字から渾名で『ゼロ』って呼ばれてる」

 

 

 じゃあなと一言だけ告げて、その親子は会議室から去っていった。朝田詩乃はその男子の名前を頭の中で反復させていた。

 

 

「せきもと……れいじ。『ゼロ』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 関本零治とその父『関本(しち)』が車内に居る中、零治の持つスマホから1本の電話が鳴る。スマホを取り出して確認すると、零治の呼んでいた“友達”からの電話であった。

 

 漆に断りを入れて電話に出る零治。

 

 

「はいはいもーしもし」

 

『ネットは情報の拡散が速いね。直ぐにゼロの情報に辿り着いたよ』

 

「要件を言え要件を。お前がそんなタマかよ『バダン』」

 

『ふむ……要件だな?さっき他人のツイートからゼロの情報が発信されてな、見てみればゼロが映っていたという訳さ。そして犯人逮捕に1役買ったゼロに対するネットの反応が“えぐっ!何だコイツ!?”や“図体デケェ……柔道家か?”とか“ウホッ、良い男”とか』

 

「分かった、わーったから!ってか最後のヤツ完全にアウトじゃねぇか」

 

『兎も角君に対する評価が色々とあったのでな、それを君に伝えるのが僕の要件だ』

 

「こんのクソ暇ニート」

 

『株で生計は立てている。だからニートではない』

 

「どんな無茶苦茶理論だテメェのは」

 

『という訳だ。僕からは以上、では』

 

 

 勝手に通話を終了させるバダンと呼んだ電話相手に溜息をつきながらもスマホを片付けて車の景色を眺める零治。ただ、電話を終えた零治の目は何処か空虚になっていた。

 

 

「また何が言われたのか?」

 

「ん……まぁな。アイツは単に伝えたがっているだけだがよ」

 

「またネットの評価というヤツか。お前はお前なんだから背筋伸ばして生きていけ、ドラ息子よ」

 

「ドラ息子って……何時の時代だよ?」

 

「そうか、もう死語なのか。ふははっ」

 

 

 相も変わらず普段通りに我が道を行く父、漆を横目に溜息をつきながらも零治の心は少しだけ軽く感じていた。零治は言葉通り背筋を伸ばして、椅子にもたれかかった。今日あったことに対する疲れでも出たのだろうか?はたまた父親の出す雰囲気に落ち着いたのか、定かでは無いが零治の顔はスッキリしていた。

 

 

 

 

「だからと言って、今回の件に対する罰は受けてもらうぞ」

 

「おいそりゃねぇぜ親父ぃ」

 

「何とでも言え」

 

 

 赤い車を走らせて家へと帰っていく関本親子。車内では何処かしら和んだ雰囲気を醸し出しながらであるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして後に、ゼロとバダンは数奇な運命を辿ることになる。とても現実とは思えない、そんなもう1つの現実をその身で味わうこととなるのを未だに知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 




『関本零治』
渾名『ゼロ』。年齢13でありながら15歳に見間違えられる程の図体の持ち主。父である『関本漆』と2人暮らしをしている。世に珍しい“ピンク筋”を筋肉の内の3割を持つ稀な人間、その影響で身体能力は武道経験者より遥かに上。母はゼロデイの日に亡くなっている。

『関本漆』
関本零治の父親。母を亡くしたことで零治の世話をしているシングルファーザー。元陸軍軍曹の階級に所属していたが辞任、しかし功績も相まって自衛隊員の育成に力を貸している。零治の師匠でもある。

『バダン』
本名『唐澤 成英(からさわ なるあき)』。両親は2人とも国際関係で仕事をしており滅多に帰らないことと、そもそも学校に意味を感じない性格から不登校となっている。だが株で儲けたりするなど頭はキレる。唯一外との交流を持つのが零治であり、唯一信頼出来る友である。




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