ダンジョンに出会いを求めたら黒の剣士に会いました?   作:アーズベント・ウィッカ

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弄られ兎

「…キリトの凄く上がってるね」

 

「…そう言うベルもな」

 

迷宮から帰ってきた俺達は、ヘスティア様にステータスの更新をして貰った。

 

結果、俺達二人のステータスは上がっていた。異常な程に。

おかしい…ステータスの伸びが高すぎる。俺達は互いのステータスを何度も確認しながら、間違いでは無いかとヘスティア様に問い掛ける。

 

「間違いでも手違いでも無いよ。そのステータスは正真正銘、君達のさ」

 

機嫌が悪そうにヘスティア様が間違いでは無いと断言する。

 

「でも、キリトは解るけど僕が同じくらい上がってるのは…」

 

確かに異常な上昇率だが、俺には一応原因らしきスキルがある。

【黒の剣士】このスキルには二つの効果があるがその内の一つに早熟すると言うものが有る。ヘスティア様によればステータスの上昇が速くなる効果だそうだ。

 

これが、原因だと思うのだが…それでもおかしい。このスキルはここまで劇的な上昇では無かった、少なくともいままでは。

 

いままでは、ベルの上昇率より若干高い位だった筈だ。

そのお陰で冒険者として、俺より速く活動していたベルのステータスに追い付いく事が出来ていた。

 

それなのに、いきなり何倍も上がるのはどうかしてる。…いや、スキルについて俺は余り知らない。もしかしたら何かしらの条件が偶々噛み合ってこの様な事が起きたとも言えなく無い。

 

それに、まだ幾らか原因が解っている俺より全く原因が分からないベルの方が重大だ。

 

「知らないよ、それに理由なんてどうでもいいじゃ無いか。儲け、儲けとでも思っておけばいいんだよ。上がって損する冒険者なんて居ないんだからね!」

 

「そんな神様ー……」

 

やはり、機嫌が悪いヘスティア様が頬をぷくぅとさせながらベルの疑問を一蹴する。

 

…これなにか知ってるな、しかも何だか下らない事で俺達に黙っている気がする。ヘスティア様は色々と顔にも態度にも出易い。

 

これに気付かないのはベル位だろ。だが、その事を言っても余計意固地になるだけなので敢えてスルーする。ヘスティア様が教えないならそこまで重要でも無いのだろう。この神様は自分に不都合だろうと俺達には真摯だ。

 

「今日僕は友達の家で食べて来るから、君達も男二人で虚しい食事を楽しむことだね!」

 

終始、機嫌が悪かったヘスティア様はそう言って出掛けていった。

 

 

 

残された俺達は今朝の少女との約束を果たす事にした。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

『豊穣の女主人』

 

店前にそう描かれた看板が置かれている店に入る。

記憶が確かならあの少女はこの店から出て来た筈だ。

 

その記憶は確かだった様で、店の中に今朝の少女を発見した。他にも同じウェイトレスの服を着てる従業員をチラホラ見掛ける。

特に目を惹くのは、エルフや猫の獣人の女性だ。

あと、別の意味で如何にも女将って感じの女性にも目を惹かれる。驚愕してるが正しい。

 

「来てくれたんですね。ベルさん、キリトさん!」

 

女将に気を取られていたら、いつの間にか近くに来ていたあの少女ことシルさんに声を掛けられる。

 

「…やってきました」

 

「約束したからな」

 

ベルが、店の雰囲気に飲まれたようで何やらそわそわしてる。店の客として多くの冒険者がガヤガヤ騒いでいるからだろう。

一方、俺は怖い店主の店で慣れているから臆す事は無い。まあ、客の多さは段違いだが。あの店、俺達以外に客見ないんだもんなぁ。

 

「お客様二名入りまーす!」

 

そのままシルさんに案内された席に腰を下ろす。

そこはカウンター席だった。

 

「アンタらが、シルのお客かい? ははっ、二人とも冒険者らしく無い可愛い面してるね!」

 

ぐはぁと俺とベルは二人してダメージを受ける。人が気にしてる事を…。

 

「いやいや、流石にコイツより可愛い顔してませんって」

 

「えっ、ちょっキリト?!」

 

そう言って、ベルを指差す。本当は反論したい所だが、この手の人に口で勝てる気がしない。なので、ベルを生贄にする。ゴメンな、今度じゃが丸君奢るから。

 

「確かに、こっちの坊やはウサギみたいだね! まぁ、あんたも可愛い事に変わりは無いがね! なんなら女の子って言われても信じちまいそうだよ!」

 

ベルの生贄は効果が無かった。むしろ、俺の恥ずかしい過去を少し思い出してしまった。そして、ベルが凄い睨んでくる。

 

「まぁ、そんな可愛い顔して私らを泣かす大食漢なんだろ! いっぱい食って金落としな!」

 

『?!』

 

なん、だと。

 

「ベル…そうだったのかゴメンな、いままで気付かなくて。我慢…してたんだな」

 

俺は悲しい(笑)感じを醸し出しながらベルに言う。

 

「ちょっ! キリト?! 僕がそんなに食べれる訳無いって! その事キリト知ってるよね?! てゆうかその目! 絶対からかってるよね!」

 

「あぁ」

 

「…」

 

ベルがこめかみを抑える。数秒たった後。

 

「キリト、一発殴っていいかな?」

 

「駄目だ」

 

「…」

 

ベルが再びこめかみを抑える。

 

「大体、責めるのは俺じゃなくてデマを流したシルさんだろ」

 

「…えへへ」

 

俺達が視線を向けたら、シルさんはお盆を抱えて誤魔化し笑いをする。…あざとい。

 

「いや、お二人の事話したら何でかこうなりまして」

 

嘘だな。絶対わざとやってる。俺と同じで目が笑っている。

 

「…人間不審になりそう。主に君達の所為で」

 

「何だってー! 大変だ!」

 

「とっても、とっても大変です!」

 

「その棒読み辞めてくれない? 仲いいね君達」

 

さて、ベル弄りもここまでにするか、これ以上は後から何かされそうだ。しかし、シルさんも大概酷いな。話が合いそうだ。

 

その後、拗ねてるベルを構いながら食事をしていたらあるファミリアがやってきた。ベルの想い人が居る【ロキ・ファミリア】が。

 




補足
ステータスは基本的に書きません。なんか大変そうだし。何かしら、重大なものはそれだけ書いときます。

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