ダンジョンに出会いを求めたら黒の剣士に会いました?   作:アーズベント・ウィッカ

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本来の目的

「…あの、お二人は冒険者ですよね? こんな朝早くからダンジョンへ行かれるですか?」

 

「はい、ちょっと早起きしたんで軽く行ってみようかなぁなんて…」

 

落とし物を届けけてくれた少女の問い掛けにベルが応える。俺は頷きながら補足を付け足す。

 

「その前に腹ごしらえしないとな」

 

「…朝食まだ何ですか?」

 

俺の付け足しに少女はほっぺに手を添えて首を傾ける。…あざとい。

 

「あぁ、今から屋台に行く予定なんだ」

 

「なら少し待ってて貰っていいですか?」

 

そういうと少女は近くのカフェテラスに入っていった。あの店のウェイトレスなのだろうか。さっきの修羅場な人達もあそこのカフェに居たよな。…もう居ないか。地味に結末知りたかったな。

そんな野次馬的な思考をしていたら少女が戻ってきた。手に何やらバスケットを持っている。

 

「これを良かったらどうぞ。驚かせたお詫びです。」

 

バスケットの中にはパンやらチーズやらが入っていた。

 

「えぇっ! そんな、僕達が勝手に驚いただけですし、大体これって貴方の朝ごはんじゃ?!」

 

ベルが手を振りながら遠慮する。

 

「いえいえ、お腹を空かしているお二人を見捨てたら、私の良心が痛んでしまいそうです。だから、是非とも受け取って下さい。」

 

「ず、ずるい…」

 

こんな言い方されたら断りにくいよな。特に、心優しいベル何かは。俺だって普通に受け取ってしまう自信がある。ただ、このウェイトレスの少女…仕草が凄いあざとい。天然なんだろうが、これが計算だったら恐ろしいな。

 

「なんでしたら今日の夜、うちの店に食べに来て下さい。その為の対価として、これを受け取って下さい。新規のお客様が増えるのは、お店として大歓迎ですからね」

 

「…本当にずるい」

 

同感だ。今ので断る事が出来る奴はそうそう居ないだろ。

 

「ベルの負けだな」

 

「キリト…」

 

「貴方にも言ってるんですよ?」

 

「おう、俺は元から貰うつもりだから問題無い」

 

「そうですか、いい事です。」

 

うんうんと頷きながら笑顔を見せる少女は、俺とベルを交互に見た。

 

「それでは、お二人の来店をお待ちしております」

 

そう言ってペコリと少女はお辞儀をする。

 

「あ、そうだ僕…ベル・クラネルって言います。こっちが」

 

そのまま歩いて去ろうとした時にベルが、思い出した様に名前を名乗る。そして、視線が俺に向けられる。その意図を察して俺も名乗る。

 

「キリトだ。」

 

「貴方の名前は?」

 

最後にベルが少女の名前を尋ねる。…何気にコミュ力高いよなベルって。

 

ベルの質問に瞳を見開いた後、直にはにかんで少女は名乗る。

 

「シル・フローヴァです。ベルさん、キリトさん」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

ウェイトレスの少女こと、シルさんから貰った料理を食べた後、俺達は迷宮に潜っていた。

 

「今日は言い付け守って下層には行かないんだね」

 

「…人を問題児みたいに言うな、と言いたい所だが、日頃の行いの悪さは自覚してる。」

 

流石に、二回も連続で説教された翌日に言い付けを破る真似は出来ない。

 

「キリトに付き合う僕も僕で悪いけどね…」

 

「その通りだ、しっかり反省しろよ」

 

ベルが呆れた目で見てくる。

 

「その台詞、キリトにだけは言われたくないよ」

 

ベルがジト目で言ってくる。…俺も、俺だけは言っちゃ駄目な気がする。

 

「…キリトはダンジョンに、記憶の手掛かりを探してるんだよね」

 

そういや、そんな設定あったな。記憶については嘘だが、ダンジョンに、元の世界についての手掛かりを求めてるのはに確かだ。

 

「そうだな、ヘスティア様の勘だとダンジョンに何かしらの手掛かりがあるそうだ。俺もそんな気がする。」

 

「何で、ダンジョンなんだろう? 記憶とかは普通、知り合いとか住んでる町とかで思い出す物じゃ無かったけ?」

 

「勘に意味を求めても仕方無い。取り敢えずはダンジョンの攻略しながらゆっくりやっていくよ」

 

他に手掛かりが有りそうなのは神様達だが、他のファミリアの神様にそうやすやすと合える訳ないから、地道にダンジョンを攻略していくしか無い。

 

そんな会話をしながら歩いていると、モンスターが現れた。

 

「来たぞ、ベル」

 

「コボルトだね」

 

コボルトは群れで行動する。現に八匹のコボルトが通路を塞いでいる。

 

数的にはコチラが不利だが、問題無い。正直この階層で出現するモンスターには遅れを取る気がしない。だから、言い付けを破ってついつい下層に行ってしまうのだ。

 

予想通り、最初に二匹を俺とベルが一瞬で始末すると、その事に混乱して動きが鈍り残りも容易く屠る事が出来た。

 

コボルトの魔石を剥ぎながら、感想を言い合う。因みに、荷物持ち専門のサポーターなる者が居るらしいが、今の所縁が無いので俺達は自分達で荷物を管理している。

 

「…やっぱり、歯ごたえ無いな。油断するつもりは無いが」

 

「…そうだね、エイナさんにステータスの事いって下層の許可貰う?」

 

俺としては、それでも良いんだけどな。

 

「そうだな、帰ったらヘスティア様に相談して見ようぜ」

 

 

 

 


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