ダンジョンに出会いを求めたら黒の剣士に会いました? 作:アーズベント・ウィッカ
ベルに連れられ、じゃが丸君を買いに行ったらヘスティア様が丁度仕事終わりだったらしく俺達は一緒にホームに帰還した。
「全く、君達は本当に危なっかしいね」
ホームに着いて俺達がミノタウロスに襲われた事を話すと、先程購入したじゃが丸君の新味、あずき抹茶味を食べながらヘスティア様が呆れた様にため息をつく。
「大体、君達がミノタウロスに襲われた階層ってまだ行くなって担当の職員に言われてたんだろう? 言いつけはしっかり守らないと。それにーーー」
話がいつの間に説教に変わっていた。本日二度目の説教だ。しかも、注意を受ける割合は俺の方が多い。自業自得ではあるため、グチグチとまるで嫁を前にした姑の様な説教も甘んじて受ける。
「ーーーと、まぁ色々言ったけど無事で二人が良かった。」
説教を終えたヘスティア様が俺達二人を抱き寄せる。まさしく女神の抱擁だった。
「君達は、二人しかいない僕の大事な眷属なんだ。あまり、心配させないでおくれよ」
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「はい、キリト君。めちゃくちゃ上がってるぜ」
説教が終わった後、俺達二人はステータス更新をしていた。先に俺からしたのだが、ステータスが軒並み上がっていた。相変わらず、読めない所は変わっていないが。ステータスの上昇は多分スキルのお陰だろう。
「相変わらず力が突出しているねー」
俺の力のステータスはもう直ぐで上限に達する程に上がってる。俺としては、敏捷や器用をもっと高くあげたいのだが。力だけが規格外に高い。ベルの敏捷も似たようなものだ。
「続いてベル君。こっちにおいで」
「はい」
俺が終わりベルの番になる。普通ステータス更新の時は神様と眷属の二人きりらしいが、俺達は更新後の結果比べをやってる為、そこら辺はなあなあになっている。
「はい、出来たっと。て…何だい、このステータス」
ベルのステータスを紙に写し終え、それを見たヘスティア様が驚愕している。
「神様、どうかしました?」
「いや、何でも無いよ。ベル君のステータスはこれだよ」
「うわぁ! 凄い全部上がってる!」
自分のステータスを見て、はしゃぐベルとは対照的にヘスティア様はぶすっとした表情でベルの背中を見ている。
まるで、親の仇を見るような目で見てる。ベルのステータスに何かあったのか?
「そういえば、君達を助けたアイズ・ヴァレンシュタインだったっけ? どんな子なんだい?」
ヘスティア様が酷く怖い笑顔でアイズ・ヴァレンシュタインさんの事を聞いてきた。
「えっと、凄く強くて綺麗な人でした!」
ヘスティア様の笑顔に疑問を感じていないベルが素直に思った事を告げる。
すると、ヘスティア様の眉がピクピクと痙攣した。
「…へー強くて綺麗なんだ。それじゃあ、彼氏の一人や二人は居るんだろうねぇー。」
「え…。」
ヘスティア様の言葉にベルが固まった。
「まぁ、どのみち、ロキの所の眷属なら君達二人には縁が無い子だけどね。」
「……。」
ヘスティア様による追加の口撃でベルはノックダウンされた。俺だって、鈍い訳じゃ無い。さっきのギルドでの事と今のベルの反応を見れば、ベルがアイズ・ヴァレンシュタインに想いを寄せているのは明白だ。でも、何でヘスティア様は気づいたんだ。
まぁ、どのみち違うファミリアじゃ、ヘスティア様の言う通り婚約なんて出来ないけど。俺には彼女が居るから関係ないが…。
…俺は何時まで、ここに居るのだろう。
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(なんだい、なんだい、ベル君の奴! 今日会ったばっかりの女性に惚れるなんて)
ヘスティアは先程みた、ベルのステータスを思い出して憤っていた。
《スキル》
【憧憬一途】
・早熟する。
・懸想が続く限り効果持続。
・懸想の丈により効果向上。
(なんなんだい! あの片思いみたいなスキルは!)
ベルに新しく芽生えたスキル。それを見てヘスティアは自分に敵が出来た事を知った。何を隠そう、ヘスティアはベルが好きなのだ。乙女的に自分以外の女性によって、こんなスキルを発現させられたらそりゃ、怒るだろう。ただ問題はそれだけで無く。
(これも間違い無く、レアスキルだ。キリト君のと同じ。効果も少し似てる。でも、それよりベル君は、絶対に渡さないからな! ヴァレン某!)
レアスキル、その名の通りスキルの中でも希少だったりするものの総称だ。これを他の神に知られたら厄介な事になる。本来なら、そっちの方が重大なのだが、恋する乙女にはライバルの存在の方が重要らしい。
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その夜、ベルは今までの日々を振り返っていた。
キリトと出会って半月ぐらいか…。
最初に記憶喪失と言われた時は吃驚したけど、一緒のファミリアになって、一緒に迷宮に潜って、一緒に冒険していく内にそんな事はどうでも良くなっていった。
今まで、年の近い友達が居無かったからかもだけど、キリトと過ごす日々はいつも新鮮で驚きの連続だった。
キリトは何時も頼りになる。ミノタウロスに遭遇した時だって、自分は戦うのに僕には逃げろと言った。…あの時、本当は怖かった。ミノタウロスを前にして、逃げるどころか一歩も動けないでいた。目の前にいる存在のすべてに圧倒されて、自分はここで死ぬんだと思い込んでいた。
そんな相手に、キリトは一歩も引かず戦っていた。それどころかカウンターでミノタウロスに傷を負わせた。そのまま倒せるんじゃと淡い思いを抱いた。だが、現実はそんなに甘くなく、キリトに致命的な隙が生まれてミノタウロスの一撃を喰らいそうになる。
この時、キリトを特別視してた事に気付いた。キリトなら大丈夫、何とかしてくれる。根拠も無く蒙昧にそんな事を心で思っていたのだ。馬鹿だ。僕はとんでも無い大馬鹿だ! キリトなら大丈夫? そんなわけ無いだろ! キリトだって死んだら終わりなんだ! 僕が助けなきゃいけないんだ!
そう思ったら、ミノタウロスに怯えて動けなかった身体が自然に動き出しキリトを助ける事が出来た。
そして、僕は吹っ切れた。過ごした時間は少なくとも、キリトは僕にとって大事な相棒だ。そう思うと、興奮からか普段は言わない言葉を口にだしていた。でも、その言葉に嘘は無い。僕はキリトと二人一緒なら、どんな困難だって乗り越えられる。今度は、盲信じゃなく信頼でそう思った。
補足
原作より、ステータスかなりあがってます。