ダンジョンに出会いを求めたら黒の剣士に会いました?   作:アーズベント・ウィッカ

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ミノタウロス

ヘスティアファミリアに加入して早、半月。冒険者生活にもそれなりに慣れ始めた矢先、俺達はそいつと出会った。

 

牛の頭に人の身体をしてる牛頭人身のモンスター【ミノタウロス】に。

ミノタウロスが獲物を前にした肉食獣の様に瞳をギラつかせ、咆哮を上げる。

 

『ブモオオオオオォ!!』

 

「「うわあああ‼」」

 

俺達二人は阿吽の呼吸で逃げ出した。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

ミノタウロスは一定のペースで俺達を追いかけて来る。そんな背後から迫る恐怖を紛らわす為、隣で並走してるベルに疑問を投げかける。

 

「おい、ベル! ミノタウロスってもっと下の階層で出てくるんじゃ無かったのかよ?!」

 

「そのはずだって! なんでこんな浅い階層にいるの?!」

 

投げかけた疑問はベルも感じてたらしく、酷く動揺していた。当たり前だ。冒険者になってから、俺もこの世界のモンスターについて色々と調べる様になり、モンスターの知識はそれなりに頭に入っている。だから、当然ミノタウロスの事も知ってはいる。本来ならもっと下の階層に生息するモンスターのはずだ。そして、討伐に要求されるレベルは2。今の俺達レベル1だけでは到底勝ち目の無い相手だ。本当、なんで居るんだよ⁉

 

あれよあれよと逃げ回る事数分。俺達は足を止めた。何故ならー

 

「…なぁ、ベル。」

 

「…なに、キリト。」

 

「俺達さ、奴にあって咄嗟に逃げ出したよな」

 

「うん、脇目も振らず一心不乱に逃げ出したよね」

 

「出口ってここじゃ無いよな」

 

「うん、ここは行き止まりだね」

 

ーそう、いつの間にか行き止まりまで来てしまったのだ。

 

あまりに危険過ぎる状況に二人揃って笑った。

 

「「あっはっはっは」」

 

『ブモオオオオオォーーー!!!』

 

「「うわぁーーーーー!!!」」

 

ミノタウロスの咆哮で現実逃避が出来無くなり、背後を振り返る。そこに居るのは紛れも無く、俺達を追い回したミノタウロスだった。

 

筋骨隆々を絵に書いた様な身体に、口から垂れるヨダレ、手に持つ斧、どれをとってもやばい位ミノタウロスだ。何言ってんだ俺?

 

どうやら俺は、自分に対するツッコミでミノタウロスの咆哮による異常をレジストしたらしい。その証拠に、同じく咆哮を聞いたベルが恐慌状態に陥っている。

 

「ああぁぁ」

 

これは、ヤバイ。目の焦点が定まってない。ここは一つ、俺のレジストと似たような事を…。

 

「ヘスティア様の胸凄いよな、まさにロリ巨乳だ。後あの紐も地味に気になるよな?」

 

「キリト! 何言ってんの?! こんな状況で!」

 

「よし、戻ったなベル! お前恐怖でおかしくなってたぞ」

 

「え、そうなの」

 

「おう、俺のナイスなアシストで正気にもどーーー」

 

台詞の途中で横に飛ぶ。ミノタウロスが斧を振り下ろす直前だった。危ない、地味に存在を忘れていた。もう少し待っててもいいだろ。会話中は悪役だって待ってくれるぞ! …いや、アイツ等、待たなかったな。

 

「キリト!」

 

「大丈夫だ! ベル逃げろ!」

 

幸い今、ミノタウロスは俺に集中している。ベルの素早さなら逃げ切れる筈だ。

 

「そんな、キリトを置いてなんて!」

 

「俺も後から逃げるから先にお前だけでーーー」

 

又もや、台詞の最中に攻撃が来る。すんでの所で転がり、回避する。

 

「お前、人の喋ってる時ばっかり狙うなよ! 性格悪いぞ!」

 

悪態を吐きながら、俺は構える。手にはsao時代の愛剣アニールブレードが握られている。これは、俺の魔法のアイテムボックスに入っていた物だ。他にも武器だけなら、sao時代だけでなく、アルブヘイムやガンゲイル、果てはあの世界の物も入っていた。だが、レベル1で大層な剣を持っていても、良からぬ輩を呼びかね無いので、今は無難にこの剣を愛用している。

 

ミノタウロスが動く。その巨体な見た目からは、考えられない速度で突進してきた。だが、速いと言っても、避けられない程じゃ無い。突っ込んで来るミノタウロスを寸前で交わしながら、カウンターで右薙ぎを見舞う。

 

タイミングは完璧だった。しかし、俺の剣はミノタウロスの脇腹に深く食い込んだだけで止まった。肉が硬すぎて断ち切れなかった。

剣を引き抜こうとするも、上手くいかず隙が出来てしまう。

ミノタウロスがその隙を見逃すはず無く、斧が俺を真っ二つにする軌道で振り下ろされる。

 

「キリト!」

 

ミノタウロスの斧が届く直前、俺はベルの体当りによってなんとか無事にその場を退避出来た。だが、どうして。

 

「ベル! 何で⁉」

 

「僕も、戦うよ。」

 

「勝てる相手じゃ無いんだぞ! 戦う理由だって無いのに!」

 

「キリトが戦ってる。それだけで、僕が戦う理由になるよ。」

 

「…死ぬかも知れない相手だ」

 

「大丈夫、キリトと一緒なら勝てるよ。僕達は友達でパーティーで相棒なんだから」

 

その瞬間、ベルが今はもう居ない親友と重なった。…俺って案外単純なんだな、今の言葉を聞いただけで負ける気がしなくなった。 

 

俺は、魔法のアイテムボックスを使い武器を取り寄せる。

 

「顕現せよ、『夜空の剣』『青薔薇の剣』」 

 

背中に出現した剣の重みを感じる。俺の持つ最高の剣達だ。手に持ち替え二刀流の構えを取る。

 

「勝つぞベル!」

 

「勝とうキリト!」

 

『ブモオオオオオォーーー!!!』

 

ミノタウロスの咆哮が合図となって俺達の戦いが始まった。

 




補足、キリトの装備も性能がある程度下がってます。キリトのレベルアップで元にもどって行く仕様です。ですので、リリースリコレクションとか必殺技みたいなのも使えません。夜空の剣も今は魔剣より性能低いです。

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