ダンジョンに出会いを求めたら黒の剣士に会いました?   作:アーズベント・ウィッカ

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第16話

ヘスティアは土下座していた。

相手は神友であるヘファイストスだ。

 

無論、訳はある。

ヘスティアはヘファイストスに頼み事があり、その為の誠意を示しているのだ。決して土下座すればどんな事でも許されるという虚言を信じての行動ではない…はず。

 

「はぁーわかったわよ。作ってあげるわ、あんたの眷属の短剣。で、もう一つの相談事って何よ」

 

数日の土下座を見せられたヘファイストスが根負けし、ヘスティアの願いであるベルへの短剣が作られることになった。

 

ヘスティアの頼み事は2つある。

 

一つは、ベルの武器。

キリトは性能が破格の魔法のお陰で武器の心配はしなくていい。

だが、ベルの方はそうはいかない。急激に強くなっていくベルに使われ続ければ、対して高く無いギルド支給武器の短剣では長くは持たない。

 

そして、キリトとの面会だ。

キリトは記憶喪失だと言っているが、それは嘘だ。ただ、何かしらの理由で神に会いたがってるのは知っている。実際自分と会ったとき、いくつかおかしな質問をされた。あれを他の神にも聞きたいのだろう。

 

と、ヘスティアは考えている。

 

若干の違いはあれど、キリトが神達に会いたがってるのは事実だ。

ヘスティアと比較的親しい神の何人かとは既に知己を得ているが、基本ギルドの工房にいるヘファイストスは未だあった事がない。

 

「相談ってのはね、僕の眷属にキリト君って子が居るのは話したよね?」

 

「確か、二人目の眷属だったわね」

 

「うん、キリト君は何やら訳有でね。神達に会いたいらしいんだ」

 

「訳って?」

 

「それは分からない。記憶喪失なんて下手な嘘で誤魔化してる。…そう、下手な嘘なんだけど。僕達の嘘を見抜く能力の反応が鈍いんだ。まるで、ノイズが混ざってるみたいに」

 

「…なんで、そんな怪しい子を眷属にしたのよ」

 

「しょうがないじゃないか…。ベル君に続いて僕なんかのファミリアに入って良いっていう優しい子なんだよ。大抵の子供達に断られまくった僕を主神と認めてくれるんだよ!! その場の勢いでファミリアに迎えてしまっても良いじゃないか!!!」

 

そう叫んだ所為で、足が痺れて正座のままだったヘスティアは、バランスを崩し身体が床に当たりそうになるのを胸がクッションの役割をし阻止したものの、振動が足にいき声にならない悲鳴をあげた。

 

それを見たヘファイストスは万感の思いを込めて呟く。

 

「…私はあんたの頭が心配。」

 

 

 

ーーー

 

「ベル君、終わったぜ!」

 

ステータスの更新を終えた神様が僕に一つのナイフを渡してくる。

 

「神様、これが...?」

 

「そうだよ、これがあのゴリラ達を切れる...いや、ゆくゆくはどんなモンスターだろうと切れるナイフさ!」

 

「どんなモンスターも?!」

 

「このナイフは特別製でね君のステータスに連動した性能を発揮するんだ。つまり君が成長すればするほどこのナイフも一緒に強くなるんだ!」

 

神様が得意げに話す内容に僕は驚愕していた。

使い手と一緒に性能が上がる武器なんて聞いたことがない。

神様はいったいどうやってこんな凄いものを?

 

「なんだい、その顔はせっかくの僕からのプレゼントなのに。」

 

「あ、いえ、嬉しいです! すごく! ただ、その神様。このナイフってどうやって…」

 

「なーにちょっとした伝手さ。もちろん代金は僕が払うから君は安心してモンスターを倒しておいで。さすがにキリト君も一人じゃいつまでも持たないだろ」

 

そうだ、いま優先すべきはキリトに助力に行くことだ。

 

「神様行ってきます! ナイフありがとうございます!」

 

「いってらっしゃい」

 

神様に見送られながら元の道に引き返す。

多少上がったステータスのおかげでそこまで時間をかけずに到着した。

 

「「ガアアアアアアア!」」

 

戻ってきた道ではキリトが二匹のファングの猛攻を凌いでいた。

猛攻と言っても二匹は連携を知らいようで、バラバラなタイミングで拳を繰り出していた。

それどころか互いの拳がお互いの邪魔することさえある。

 

「おまたせ、キリト!」

 

「来たか、ベル! 白い方から頼む。」

 

「了解!」

 

ファングと達とキリトの距離が離れたタイミングでキリトと合流する。ほんとは気づかれてないうちに不意打ちでもしときたかったけど場所が悪い。

 

不意打ちは諦めてキリトの指示に従う。

手に先ほど渡されたヘスティアナイフを感じながら全力で敵との距離を詰める。

さっきの互いの邪魔にお互いが怒って離れているから、狙いやすい。

 

「ブモオオオオオオオ!!!」

 

ファングは目の前に僕が来たことで、怒りをたぶんに含んだ咆哮を上げながら手を組んで振り下ろす。

受ければただでは済まない。なら受けなければいい。

迫りくる拳を済んでのところで躱しながらナイフを添える。あとは勝手にファング自身が斬られに来る。

ブルーバードにしたことと同じだが、怒りまくった状態のファングは見事に右腕に血の線を自ら作った。

 

「ブモ?」

 

血がだらだらと出る右腕を不思議そうに眺めてるファングの心臓(魔石がある部分)にナイフを突き刺す。

 

「…!ブゥ…」

 

ファングが右腕の負傷にようやく気付いたのと魔石が壊れるのは同時だった。

これで一体。

 

キリトの方は? 黒いファングを相手にしてるはずの相棒に目を向ける。

 

「だぁ固いなオイ。というかやっぱり俺の武器って前より性能下がってないか?」

 

「ブ、ブモ」

 

滅多刺しにしてた。

ファングの皮膚を斬れない剣での斬りかかりより、突きの方がダメージを与えるだろうとの考えだろうけど酷い。

なんていうか惨い。

 

全身に突きによる穴が開いたファングは心なしか怯えている様に見える。

というか怯えてる。現にキリトから逃げ出した。

 

「あ、おい待て!」

 

「大丈夫、僕がやる」

 

逃げるだろうと考えてたので、すぐさま反応できた僕は、キリトがつけた穴からファングの後ろ足にナイフを滑り込ませる。

 

「ブモオオオオオ!!」

 

その悲鳴は哀愁を乗せていた。

片足が斬りつけられた事で、バランスを崩したファングを体当たりで倒しそのまま魔石を壊す。

 

こうして、僕らの方にやってきたモンスターの処理は完了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









お久しぶりです。しばらく書いてなかったのでいろいろと忘れてることや抜けてることが多いと思いますが。やりたいことだけは覚えてるのでそれができるよう頑張ります。信用のない目で見守ってもらえると嬉しいです。もう具体的な日付とかは言わないことにします。守れたためしがないので。それとこの作品とは関係ないですがりゅうおうのおしごとの二次創作も書いてます。そちらもそろそろ再開するのでよろしかったらどうぞ。

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