ダンジョンに出会いを求めたら黒の剣士に会いました? 作:アーズベント・ウィッカ
四体のモンスターがそれぞれの速度でこちらに向かって来る。
最初に来たのはブルーバードだった。
名前通りの蒼い鳥で猪ほどの巨体なのに空を優雅に駆ける姿は幻想的とも言える。だけど、見惚れている余裕は無い。
空を飛ぶモンスターとは戦ったことが無い。
空中に留まられたら攻撃のしようがないけど、幸いブルーバードは遠距離攻撃手段を持っていない。
攻撃手段は体当たり、噛みつく、つつく程度だとモンスター関連を扱う本に書いてあった。
キリトと一緒に勉強したお陰でこういう知識は頭にはいってる。
「ヒャーーー」
見た目の美しさに似合わない奇声をあげながら、ブルーバードが
突進して来る。
その軌道にある身体を僅かにずらして短剣を添える。
「ヒーーー!!」
勢いをつけ過ぎて、回避出来なかったブルーバードは自ら短剣に斬られていく。
致命傷程では無いが、小さくも無い傷を受けブルーバードは怯んだ。
その隙を見逃さず、ローキックを見舞う。
「ヒ、ヒー」
ローキックによって道に叩きつけられたブルーバードは羽を広げ空に逃れようとするけど、ビクビクと震えて上手く飛べていない。だからといって、油断せずに首を撥ねる。
「ヒ゛ャ゛ーーーーーーーーー!!!」
「…なんだろう、凄い罪悪感がある」
きっと、首を撥ねるときに漏れた断末魔のせいだ。これが、もっと醜悪なモンスターならそこまで無かっただろうけど、見た目が良いせいで余計に罪悪感が増した気がする。
ズギヤン!!!
感傷に浸りかけた僕の耳に破砕音が響く。
音の発生源を見れば、キリトとブラックファングが戦っていた。
レッドドッグは既に倒した様だ。一刀両断されてる。
これで、数的不利は無くなった。モンスター達が連携しないお陰で助かった。だけど、ファング二匹がまだ残ってる。
「ガアアア!」
「来た!」
僕に向かってホワイトファングがやって来る。さっきのブルーバードのやられ方を見たせいか途中で突進の速度を緩めている。
あの速度なら方向転換も出来るだろう。同じ手は使えないか。
どっちみち、ホワイトファングに同じ戦法は意味ないけど。
皮膚が硬すぎて、この短剣じゃかすり傷しか負わせられないし。
「ガァ!」
ホワイトファングが両手で拳を作り真上から振り下ろす。
軌道を十分に見切って躱した拳はそのまま地面に当たり、周辺に軽い揺れが起きる。
…一撃の威力がこの上なく高い。まともに喰らえば一発KOもあり得る。
(まぁ、喰らうつもりなんてないけどね)
僕は、顔をニヤってさせてホワイトファングを見る。
意味が判ったのか顔を赤くなり鼻息が荒くなる。
タゲだっけ? キリトに教えてもらった技だ。
これが毎回美味いこと嵌まる。ある程度知能があるモンスターに限定してだけど。
今の状況で一番起こっちゃいけないのが、ファング達を逃がす事だ。既に周囲にいた人達は避難しているけど、今日はお祭り。いつも以上に人がいる。この場で逃してしまったら別の所で被害者が生まれるかもしれない。
だから、ファング達には僕達の相手をしてもらわないと。
それに、逃がさなければいいだけでこいつ達を倒したって、助けが来るまで粘ってもいい。
焦る必要は無い。
「ガアアア!!」
幾度も拳が躱された事で腹が立ったのか、ファングが見境なく暴れる。駄々っ子の買って買ってを立ったまましてると言うのが正直な感想だ。
ただ、被害が比じゃない。
整備されていた道路は所々が壊れ、その破片が空を飛び壁に、窓に、女性下着に穴を開ける。
大迷惑だ。
(これ…請求とかされない、よね…?)
内心アワアワしながら対処法を考える。
下手に近づけば、巻き込まれる。そして、近付いたとしても有効な攻撃方法が現状ない。
(どうする? この短剣じゃ急所じゃ無いとダメージを期待出来ない。)
「いって! 何か飛んできた!」
手詰まりな現状を思案していたら、キリトの呑気な声が聞こえてきた。どうやら、ファングが道路の破片が頭に当たった様だ。割と危ないと思うけどあの反応なら大丈夫。キリトの頭硬いし。
「ごめん! キリトそれこっちのファングの仕業」
「てことは、そっちもまだ倒して無いのか。どうする? このまま応援を待つか?」
「キリトの剣でも倒せないの?!」
「今の剣でも、切れることは切れるが切れ味が悪い。研いでないからかしらないが。周囲に人が居たから癖でアニールブレイドにしたが、もう少し上のランクにしとけば良かった」
あぁ、そうか。キリトって変に絡まれない為に何時もアニールブレイドを装備してるんだった。今日はダンジョンに行かないから武装しなかったらしいけど。やっぱり便利な魔法だ…て!
「キリト! その上のランクの武器に短剣ってある?! 僕の短剣じゃそもそも切れそうに無くて!」
「悪い! 持ち合わせてない! 長剣なら幾らでもあるぞ!」
長剣か流石に余り使った事が無い武器をいきなりは厳しい。
こうなるとキリトに倒して貰うしかないか。
「長剣は遠慮するよ。ただ、僕がそっちのファングのタゲ? も取るからキリトはランクの高い剣に変えーーー」
「ちょい。ちょーい! 待った! 二人共待ったー!」
僕達の会話に神様が入り込む。
「ベル君! 短剣なら僕が持ってる! 間違いなくあのゴリラを切れる短剣を!」
「本当ですか!」
「勿論。ただ、少し特殊な短剣でね、使うにはベル君のステータス更新をしないといけないんだ。だから、時間を稼ぐのはキリト君の方に頼めないかな」
「俺は問題ない。一時的にゴリラが増えても大丈夫だ。それに一匹はただ暴れてるだけみたいだしな。」
使うのにステータスの更新が必要な短剣? よく解らないけど、取り敢えずはキリトに任せて僕はステータスの更新を行った。
次回は神様とヘファイストスに少し焦点宛てます。
感想できた、神に嘘は通じないをそれとなくそれぽっい補足つけてます。