ダンジョンに出会いを求めたら黒の剣士に会いました? 作:アーズベント・ウィッカ
ガヤガヤ。ざわ…ざわ…。
ダンジョンの探索は終え帰る途中、街は道行く人々の喧騒に包まれていた。
それ自体は何時もの事だが、幾つか気になる単語が聞こえてきた。
「ベル、怪物祭ってなんだ?」
「ガネーシャファミリア主催のお祭りらしいよ。闘技場を使ってモンスターの調教とかをやるんだって」
ガネーシャファミリア…あの趣味の悪いホームが特徴的なファミリアか。モンスターの調教ねぇ、よくもまぁ地上でそんな物騒な事を。大手だから色々と融通が効くんだろうな。警備やら人手やら。じゃ無きゃ、ギルドの許可が降り無いだろうし。
「キリトが知らないのは意外だったよ。こういうの僕よりキリトの方が詳しいから」
「いや、ここ最近はダンジョン攻略と訓練に時間を割きまくってたから、情報収集(買い食い)があんまり出来ないでいたんだ。それはベルも同じだろ?」
「そうだね、僕もエイナさんから聞いて知ったし。」
俺達は豊穣の女将での一件以来、強くなる為にダンジョン攻略や訓練を今までより多くするようになった。
お陰で、ヘスティア様とエイナさんからの小言も前より増えたてしまっが…。
まぁ、それはそれとして。
「なぁ、その怪物祭の日はダンジョン攻略休みでいいか? 是非とも見てみたい」
強くなる為には休息も必要だろう。あまり急ぎ過ぎても良くない。それにモンスターの調教は是非とも見てみたい。
「いいよ。僕も見た事無いから楽しみだなぁ」
「決まりだな」
怪物祭を満喫する事が決まり。雑談しながら歩いていたら誰かとすれ違う。半ば反射的に振り返るがすれ違った筈の誰かは既に居なかった。
…気のせいか。だがアレは…。
(白衣だったよな…。)
すれ違う時にみた相手の服装は白衣だった。
白衣自体はこの世界にもある。だが、感じた気配はかつて宿敵のものだった…。
(あり得ない筈だよな。だってーーー『ここはゲームの世界じゃ無い』ーーー。)
半月。この世界で過ごした期間だ。その半月でここがゲームの世界では無い事を俺は確信していた。確かな証拠がある訳では無い。でも、ここは現実だと解る。理屈も理論も関係なくただそうなのだと理解している。まるで、最初から自分がこの世界の一員だったかの様にこの世界を受け入れている。
正常な感覚では無い、自覚はある。
それでも、この世界こそが自分の生きる世界なのだと想う気持ちが常に心の最奥で燻っている。もし、このままこの世界に何年もいれば俺はーーー
「キリト!」
「うわぁ!」
ベルの声で深く沈んだ意識が覚醒する。
「よかった、キリトいきなりどうしたの?」
「いや、すまん。考え事してた」
「どんなこと? 思い詰めた顔してたけど…。」
「あぁ、えっとなーーー」
ベルの疑問を適当に誤魔化す。今はまだ言うべきじゃ無い。少なくとも、自分の事を打ち明けてない今は…。
ーーーーーーーーーー
キリト達が歩く姿をカフェテラスから見ている二人組がいる。
その内の一人、ゴスロリの格好をした少女がニタァという効果音がつきそうな笑顔を浮かべる。
「キャハ! みーつけた! ねぇねぇアメリー見つけたよ! 神様が言ってた黒い子!」
「良くやったなウェルガ。神も褒めて下さるだろう」
ゴスロリの少女に執事服を着た長身の女性が応える。なんとも異様な二人組ではあるが、誰も彼女達を気にしない。それどころか存在を認識すら出来ない。
「でもあの黒い子、あれ何か憑いてるよ! さっき急に濃くなって気付いたけど! 内の神様の仕業ぁー?」
「なに、それは本当か? いや、【百目】のお前が言うんだ間違いない。しかし、神からは何も伺っていない。何者かに先を越されたか…?」
「うぅー! どうするのぉ? 一度見たからいつでも場所は分かるよ!」
「一度報告に行く」
「りょーかーい!」
キリトさんなんか状態異常患ってますけど、当初の予定に無い設定です。なんか急に書きたくなって。