ダンジョンに出会いを求めたら黒の剣士に会いました?   作:アーズベント・ウィッカ

12 / 16
神の宴

【ガネーシャ・ファミリア】の本拠『アイアム・ガネーシャ』には現在、多数の神が訪れていた。『神の宴』そう呼ばれるパーティの来賓達である。

 

この『神の宴』は下界に降りた神達が集まる為の物だ。何だかんだと言って気まぐれな神達が、それなりの数集まるにはこの様な場が必須である。

 

集まった神の中にはヘスティアの姿もあった。普段なら参加しないヘスティアだが、今回はとある目的があり仕方なしにやって来ていた。

 

そんなヘスティアだが、パーティーで遭遇した女神ロキと言い争いをしていた。元々、ヘスティアとロキの仲は宜しく無い。ロキがヘスティアの一部に嫉妬して突っかかるのだ。

 

「このドチビがぁ!」

 

「この貧乳がぁ!」

 

互いにメンチを切りながら相手のコンプレックスを罵しる。

ヘスティアはロリ巨乳。対して言い争うロキは背丈は普通だが胸は絶壁である。……つまり、そういう事だ。ロキはヘスティアの胸に嫉妬している。持つ者(巨乳)持たざる者(貧乳)の対立は何かと根深い。

 

そんな二人の低レベルな争いを間近で二人の女神が見ている。いや、最初にヘスティアと話していたのはこの二人で、話の途中にロキがやって来てこの状況になっているのだが。

 

「よく毎回飽きないものね…。見るに耐えないわ」

 

右目に眼帯をしている女神ヘファイストスがため息を吐きながら呟く。

 

「そう? 私は好きよ。」

 

その呟きにもう一人の成り行きを見守っている女神が反応する。

他に三人の女神がいるというのに、その中でも明らかに突出している美貌の持ち主フレイヤが。

 

「…相変わらず物好きね」

 

ヘファイストスは隣に立つフレイヤの趣向が今一理解出来ない。最も、ヘスティアとロキの低レベルな争いが好きなのは何もフレイヤだけでは無い。周囲にいる野次馬の神達だって酒の肴に見物しているのだ。

 

『やれやれーもっとやれー!』

『巨乳とまな板か…』

『ロリ巨乳が勝つのに千ヴァリス!』

『俺は、まな板に…』

『何だかんだタケミカヅチが借金するのに一万ヴァリス!』

『安心しろ、奴は普通に借金する』

 

そんな野次馬の中からヘスティア達の元へと、一人の女神が進み出る。床まで着きそうなとてつもなく長い青みがかった黒髪が特徴的な女神だ。

 

「…ヘス、ロキ、ヘフ、フレ…久しぶり。」

 

ヘスティア達の元に辿り着いた女神が挨拶をする。その声を聞いて、四人の女神は揃って目を見開く。自分達の名前をこの様に最初の二文字だけしか言わないのは一人しか心辺りがない。だが、その者がこんな人が、もとい神が大勢いる場所にやってくるとは思って無かったからだ。それに特徴的な見た目をしているが、前にあった時とは余りにも違い過ぎていた。それこそ別人といえる程に。

 

「その呼び方をするって事は君はレイフィナなのかな?」

 

「…うん。…この姿で会うの初めて?」

 

レイフィナと呼ばれた女神はそう言って首を傾げる。それに返されるのは肯定の頷きだった。

 

「少なくとも、僕は初めてだ」

 

「ウチもやな」

 

「私もね」

 

「私もよ」

 

ヘスティア達は目の前の女神レイフィナと幾度かあった事がある。その時の容姿は、胸まであるキラキラと輝く金髪にヘスティアと遜色ない大きさの胸や、女性にしては高めな身長が特徴的だった。

 

それが今居るのは、ロリ巨乳と言われるヘスティアと同程度の身長で床に着きそうな長い黒髪の女神だ。胸はロキよりかはあるが小さめである。

 

一見して同一人物とは言えない筈のレイフィナを前にヘスティア達は驚いたがそれだけだ。元々、本来の姿では無いと伝えられてた為にそこまでの混乱は無い。…姿が違い過ぎて唖然としたが。

 

「…なら、改めてこれが私の本来の姿。…驚いた?」

 

淡々とした口調でレイフィナが言う。本人にしてみれば茶目っ気を出して言っているのだが、違いが僅か過ぎて誰も気付かない。

 

「驚いたよ。姿もそうだけど、君がパーティーにやって来たことも。…寧ろパーティーに来てる事の方が驚きだけど。」

 

「…それはヘスが来るって聞いたから。」

 

「僕?」

 

レイフィナがパーティーに来たことは自分が来るからとと言われてヘスティアは困惑する。ヘスティアとレイフィナはそこまで親しい訳では無い。会えば世間話をする位の関係は有ると思うが、わざわざ自分に会いにこんな神が大勢いる場所に来るとは思えなかった。

 

「…うん。…ヘスに聞きたい事があって」

 

「聞きたい事? 何を聞きたいんだい?」

 

「…眷属出来たって聞いた。…その眷属に黒い子いる?」

 

「黒い子…。キリト君の事かい?」

 

聞きたい事が、自分のファミリアについてとはどういう事だと思いながら、ヘスティアは黒い子で思い浮かぶ自分の眷属の名前を言う。

 

「…キリト。…その子は最近眷属になったの?」

 

「最近も何も、僕の最初の眷属のベル君だってつい最近眷属になったばっかりだよ? キリト君はその少し後かな?」

 

「へぇー自分見たいなドチビの眷属なる物好きおんねんな。どういった子らや?」

 

「ロキの質問に答えるのは尺だけど、レイフィナも聞きたい様だしいいか。一人は白髪で赤い目をしたベル君、もう一人は黒髪で黒目のキリト君。どっちもヒューマンの少年だよ」

 

ヘスティアの言葉を聞いてレイフィナとフレイヤの二人が笑みを浮かべる。

 

「…ありがとう。…知りたい事が知れた。…今度お礼する。」

 

「別にお礼とかは良いけど、何だって僕の眷属が気になったんだい?」

 

ヘスティアとしてはあまり自分の眷属について探りを入れられたく無い。これが普通の眷属だったらそこまで思わなかっただろうが、あいにくベルもキリトもレアスキルと思われる物を持っている。そんな事が神々に知れたらとんでもない事が起きる。絶対に。

主審としてそんな事を認める訳にはいかないヘスティアは、レイフィナが何故、恐らくキリトの事が気になったのか知ら無ければならなかった。

 

「…一目惚れ? みたいな?」

 

『はっ?』

 

レイフィナからの予想外な返答にヘスティアだけでなく、フレイヤを除く二人の女神も素っ頓狂な声を上げるのだった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。