「皆、よくここまで頑張ってくれた。あとは好きにしていい。我が共和国はこれで終わりだ……」
私は噛みしめるように側近たちに告げた。
「何だって?」
「大統領、それは一体どういうことです⁉︎」
暗い洞穴の中でざわめきが広がる。
「この戦争は負けだ。じきにここも敵に特定されてしまう。捕まる前に君たちは逃げろ。」
私は深く吸った息を吐くように告げる。
しばらくの沈黙の後、側近たちが一人、また一人と洞穴を出ていく。
「大統領……あなたはどうするのです?」
最後まで残っていた側近が私にたずねてきた。
私はその問いに対して、極力笑顔をつくりながら答える。
「なぁに私は大丈夫だ。君たちが出ていくのを見届けたら私もここを出る。」
おそらく死ぬ前につく最後の嘘になるであろう言葉を私は彼にかけた。
すると、彼は泣きながら、黙って洞穴を出ていった。
その様子を黙って見届けた私は持っていたナイフを自分の喉にあてる。
「フフフ……この紛争を解決しようとしてきた私が、まさか紛争を拡大させる結果となってしまうとは……」
自分は、亡国の独裁者。故郷の破壊者。無能な殺人鬼……
様々な思いが錯綜したが、ふと私はこの世に別れを告げる前に、自らの負の人生に思いを馳せてようと思った。
「アリュー君‼︎あ〜そ〜ぼ‼︎」
学校から帰ると、決まってこの声が聞こえてくる。
「ああ‼︎ちょっと待ってて‼︎」
私も、気の置けないこの親友に対して毎日こうしたやりとりをしていたものだ。
今思えば、この親友が、私を紛争解決に目覚めさせてくれた、最初のきっかけだったのかもしれない。
「今日は何して遊ぼうか?」
「他の友達も誘ってサッカーでもするか?」
「いいね‼︎」
彼との日々は本当に楽しかった。
いつも共に遊び、共に冒険し、共にいたずらして、共に怒られる……。
彼は無二の友であった。
そう。あの忌々しい紛争が起きる前までは……
ある時期から、彼は私の家に来なくなった。
ちょうど夏休みに入った頃で、学校で会う、ということもできない。
たまに彼の家を訪ねてはみるが、返事があったことは一度もなかった。
そうするとますます心配になって、「まぁ今日は都合が悪かったんだよね」とも思えなくなってくる。
私は毎日のように彼の家の戸を叩いたが、ついぞいつものあの声を聞くことはできなかった。
その日も、私は彼の家の戸を叩きに、彼の家へ向かった。
トントントン……
「おぉい‼︎あ〜そ〜ぼ‼︎」
…………
トントントン……
トントントン……
いつものように戸を叩いていると、学校の私の担任の先生がそこを通りかかった。
「おいアリュー、どうしたんだ?」
「あ‼︎ラグジー先生‼︎お久しぶりです‼︎」
ラグジー先生はなにか不思議なものを見るような目で私を見つめる。
「どうしたんだ?そんな『空き家』の戸をバンバン叩いて……」
「空き家⁉︎」
私は戸惑った。
ここが空き家?私の無二の親友がここにはいるはずである。
「先生‼︎ここにはちゃんと人が……」
「そこにいた一家は引っ越したぞ」
一瞬の沈黙。
引っ越した?彼が、親友であるはずの私に無断で?
その時の衝撃はいまでも忘れ得ぬ少年の日の思い出である。
「な、なんで⁉︎な、なんで⁉︎」
私はラグジー先生に飛びつく。
「嘘でしょ先生‼︎夏の間に気がおかしくなっちゃったんじゃないの⁉︎そんな、急に引っ越すなんて……」
おかしな話であった。普通夏休み中に引っ越すのなら学期末に学校できちんと連絡されるはずである。
「命令が下ったんだよ……」
ラグジー先生はうろたえる私に静かな声で言う。
「命令?」
「あぁ、今チェーグル族とカラカン族との間で紛争がはじまってな……彼らは政府の命令で国へ帰ったんだよ……」
チェーグル族とカラカン族とは我が国、セントフル共和国にいる二つの民族である。
セントフル共和国があるこの地にはもともとチェーグル族とカラカン族という二つの民族が居住していた。
この二つの民族は大変仲が悪く、しばしばいざこざがあったそうだ。
そんななか、200年くらい前に大戦争があって、カラカン族がチェーグル族を屈伏させ、セントフル共和国をつくったそうだ。
そんな歴史があるものだから歴代大統領は全てカラカン族。だから国の政策もおのずとカラカン族の為の政策となる。
税金は全てカラカン族の為に使われ、カラカン族はどんどん発展する。しかし一方ではチェーグル族は税金をとられるだけで、どんどん貧乏になる。
それに国内ではチェーグル族に対する差別が激しく、チェーグル族はまともな職にもつけないという有様。
チェーグル族は過去何度も独立や地位の改善を求めてきたが、ことごとくはねられ、苦汁をすすってきたという。
「それで今回チェーグル族は独立の為に戦争を起こしたったいうんですか?」
「あぁ、……まあ……そういうことだ。」
ラグジー先生は社会の先生であったからこういう話にはもってこいであった。
「ここらへんの地域は君や私も含めカラカン族が多く住む地域。だからここらの地域はチェーグルが独立する、という範囲からは外れていたんだな。だからこの事件で敵になったチェーグル族を、政府がチェーグル居住区、いわゆるチェーグルが独立する、という範囲に追いやったんだな。あの一家はチェーグル族だったから追いやられちまったんだ。」
話を聞いても、私はどうも納得できなかった。
なぜだか分からない。だがどうも納得できなかったのだ。
「……でもさよならくらい言いに来てもよかったと思うな……」
私はポツリと呟いた。
「彼らが我々カラカン族の敵になってしまったように、彼らにとっても我々は民族の敵だ。親が別れを言いに行くな‼︎と言いつけられたのかもしれないね。」
私はこの時、心の中で何かがモヤモヤするのを感じたのを、よく覚えている。
「…………戦争が終わったらまた会えるでしょうか……」
私は静かにラグジー先生に聞いた。
「…………戦争が終わればの話だがな……」
ラグジー先生も、ポツリと答えをかえしてくる。
「え?」
「この戦争はそこまで単純な話じゃないんだ。」
ラグジー先生いわく、この戦争には大国の思惑が深く絡んでいるとの事である。
当時、……まあ今でもそうだが世界では、二つの国が覇権を争っていた。
リャーモ帝国と、スノン帝国である。
この両国は世界中に植民地や、自分の影響下の国をつくって、世界の覇者にならんとしていた。
このセントフルも例外ではない。
この二つの大国は、セントフルが自分の言う事を聞くようにしたいといろいろ画策したらしい。
まずリャーモが動いた。
リャーモは、独立を求めるチェーグル族に対し、
「君ら独立したいんだろ?その気があるのなら支援してやるぞ?ただうまくいったら俺らの言う事聞いてくれよな。」
とすり寄り、彼らをその気にさせたらしい。リャーモの目的は一目瞭然だが、一刻も早い独立を求めるチェーグルは彼らの口車にのせられ、独立闘争を開始したとの事だ。
「彼らはリャーモの指導のもと『チェーグル国』という国を一方的に宣言したもんだからセントフル政府は怒った。しかし大国の後ろ盾があるから目立った行動はできない。」
「……」
「ほら、前セントフルの大統領が暗殺された事件あったろ。」
「あ、はい。」
「それもリャーモの仕業だって噂だよ。」
この時のセントフルの大統領、ショッチュ大統領は外交官上がりで、リャーモがセントフルを狙っていることを知っていたから、このチェーグルの動きを危惧し、
「このチェーグル国の一方的な宣言は大国につけいる隙を与え、国が乗っ取られる危険が極めて高いものである。現にチェーグル居住区にはリャーモ帝国の軍が我々に無断で駐留している。このままでは我が国が占領されてしまう恐れがあるからチェーグル族はすみやかに矛を収めるように。」
との声明を発表。
これをおもしろく思わないリャーモの軍部はスパイを差し向け、ショッチュ大統領を殺してしまったそうだ。
「実に勝手な話ですね。」
私はこの話を聞いて心の底から怒りを覚えた。
「だがその戦争に介入してくる大国はリャーモだけじゃない。」
大国の介入に否定的なショッチュ大統領が死ぬと、その後を継いだビルハ大統領はリャーモと覇権を争っていた国、スノンに救援を頼んだ。
リャーモの支援するチェーグル国に、セントフルだけでは勝てないと踏んだのである。
スノンからすると、このセントフルの地にリャーモの影響下の国ができるのはおもしろくないのでこの支援要求を受諾。セントフルにスノン軍を駐留させた。
その数週間後、チェーグル国はセントフル共和国に対して宣戦布告。戦争が勃発したとの事である。
「もともとセントフルの国内だけの話だったのに、いつの間にか大国が介入してきてこの戦争はもっとややこしくなっている。」
「……先生、僕、納得できません……」
私はラグジー先生にこう叫んだ。
「だってリャーモとかいう国が煽らなければ戦争が起きなかったかもしれないのに‼︎平和的な解決法を見つけられたかもしれないのに‼︎大国の都合で戦争が起きてしまうこの状況が悔しいです‼︎友情が引き離されることが悔しいです先生‼︎」
「…………」
ラグジー先生は静かに口を開く。
「アリュー君、君の言わんとする事はよく分かる。ただ我々にはどうする事もできん……」
「先生……悔しいです……」
私たちの頭の上には、夏の激しい日差しが降り注いでいた。
次に私が戦争に疑問を持ったのは中学の卒業の時であろうか。
「もう卒業だな。」
「あぁ……早いもんだな。」
当時は戦争が激化して、高等教育なんか受けられる状況ではなくなっていたから、皆中学を卒業したら大人にまじって働かなければならなかった。
しかし、私はたまたま成績が良かったもんだから、政府選抜の海外留学団に入ることが許され、海外で高等教育を受けられることになっていた。
「もう皆とはお別れだな……」
「もう皆就職先は決まってるんだろ?」
皆嬉々として卒業後のことを話していた。
私はふと皆のことが気になり、少し訪ねてみた。
「なぁ……皆はこの先どうするんだ?」
「あぁ……俺らは……皆兵隊になるつもりだ。」
私はその時目を丸くした。
なんと私のように海外へ留学しにいく者以外は皆兵隊、あるいは軍需工場で働くというのである。
私のクラスだけではなく、他のクラスも皆、である。
「俺たちゃ頭も良くないし金もない。だからおまえみたいに勉強して国に尽くす、てことはできないんだ。だから兵隊として国に尽くそうってわけさ。」
「それに……今のご時世並の就職先なんかみんな軍需工場かそれの関連企業。別に驚くことなんかねぇだろう。」
私は海外への留学が決まっていたので、就職活動なぞしなかったから全然分からないが、どうも話を聞いていると、こんな、本当ならば学生として生きて行くはずだった子供まで徴兵しないといけないくらい政府は切羽詰まっていたらしい。
不公平なものだと私は子供ながらに感じた。
かたやこの戦争の中いつ死に行くかも分からない兵隊になり、
かたや海外で比較的高い水準の高等教育を受ける。
私自身海外というものに興味を持っていたから留学をしないと思うことはなかったし、友達も「おまえは海外で勉強して、頭で国に尽くすんだ」と私の留学を蔑む者はいなかった。
ただどうも心の中がモヤモヤするのだ。
この状況はどうもおかしいとおもった。
しかし、私は自分がどうすればいいのかは分からなかった。
私はまだ幼すぎた。
モヤモヤした気持ちの中、海外へ留学した。
多民族国家であるその国で、大きな衝撃を受けたのをよく覚えている。
おそらく、そこが私にとって一番の人生の転機になった場所であろう。
教室の戸を開ける。
するとそこの生徒が私を出迎えてくれた。
肌の白い者、黒い者、黄色い者、
目の青い者、緑の者、黒の者、
頭に布を被っている者、そうでない者、
髪の黒い者、金色の者、
なにか民族衣装をきている者、
実に様々な生徒が私の目に映った。
衝撃だった。
違う民族同士が同じ教室にいるのである。
違う民族同士が同じように席に座って授業を受けているのである。
違う民族同士が仲良く喋ったり遊んだりなんやらしているのである。
幼い頃に民族が違うという理由で親友と引き離された過去のある自分からすればその光景は私のその過去を馬鹿にしているようにさえ感じられた。
「お、おい……おまえら大丈夫なのか……?」
「は?何が?」
「いや……違う民族同士で……そんな仲良くしても……」
「違う民族……?……いや……そこまで深くそんなこと考えたことないや。それよりもなんかバスケでもしようぜ‼︎」
なんとこの場所では、民族のことなどそんなことで済まされるのである。
しかも、皆自分の民族のことを隠さず、むしろアピールしているかのようにも感じられた。
洒落た民族衣装を着、ターバンを巻き、スカーフを巻き、それでいて誰もそれには文句は言わない。
皆それぞれの文化を否定せず、受け入れあっていた。
そしてなおかつ、自分の文化も「否定」せず、発信できるだけの余裕を皆持っていた。
その時私は気づいのだ。
違う民族同士でも、たとえその政府やトップ同士が仲が悪くても、「個人個人」という視点では仲良くできる、ということ。
そして、我が祖国セントフルでも、カラカンとチェーグルの紛争は解決できるのではないか、ということ。
私は無我夢中で勉強した。
祖国の紛争の解決の為、海外で吸収できる知識をできるだけ多く吸収すべく努力した。
自分で言うのもなんだが留学団の中では私が一番多く勉強したと思う。
その時の私は、紛争解決という使命に燃えていた。
祖国へ帰った私は紛争解決の運動をする為の協力者を求めた。
この運動に参加してくれる人はもちろん、資金援助をしてくれそうな人や、この運動に協力してくれる人を募る為の宣伝を手伝ってくれる人などを探し、説得して回った。
しかし、世の中そううまくはいかないものだ。
誰一人として協力してくれなかったのである。
本当に、誰一人。
ある時は水をかけられ、またある時は石を投げられ……
私は当初、なぜここまで忌み嫌われるのか理解できなかった。
ただ、まだ理性のある人々は私にその理由を語ってくれた。
ある商人はこう言う。
「戦争が何によって成り立っているか君は知っているかね?答えは食料や弾薬だ。その食料や弾薬は誰が軍に売っていると思う?誰でもない、我々商人だ。
戦争によって我々の市場は拡大した。昔は貧相な市場の端の方でひっそりと商売をしていた私が今では国内屈指の大商人に成り上がったのだ。
君の気持ちは分からんでもないが私からすると戦争が終わるのは困るのだ。」
またある出版社はいう。
「我々は君のように反戦運動はできない。なぜかって?それは我々の出版物を買ってくれる民衆が戦争を望んでいるからだ。
今民衆は戦争で苦しい生活を強いられている。それは君も知っての通りだ。政府はそれを敵、いわゆるチェーグル国やリャーモのせいにしている。奴らが勝手に独立したから戦争が始まった……だから国民はきびしい生活をしていかなければならない。
だから奴らを戦争で倒せば生活は楽になる、だから皆で政府に協力して戦争を遂行していこう、と世論を誘導しているのさ……。
そんな世論の中我々出版社が反戦のことを書いたら非国民だと言われて会社そのものが潰れちまうよ。」
私は自分の無力さに打ちひしがれた。
どうすることもできないこの気持ち。また心にモヤモヤが広がる。
運動が困難を極めていた中、ある日一人の老人が私のもとを訪ねてきた。
「アリュー君、元気にやっとるか?」
その老紳士は私のことをよく知っているかのような口調で私に話しかけてくる。
「はっはっは‼︎私のことを忘れたのか?」
「はぁ……すみません……」
「まぁ仕方ないなぁ……君がまだ幼い頃だったからなぁ……」
「……」
「私はその昔、おまえの担任を勤めていた者だ。」
「…………⁉︎」
そう言われて私はすぐに彼のことが分かった。
そう、その老紳士はその昔私にこの紛争のことを教えてくれた、いつの日かの私の担任、ラグジー先生であった。
「先生‼︎」
「はっはっは‼︎やっと気づいたかこの間抜けめ」
先生はいたずらっぽい目で私を見つめていた。
「今日はどうしたんです?」
「あぁ、昔の教え子が何やら活動をしていると聞いてな、様子を見に来たんだ。
どうだ?調子は。」
「えぇ……その……あまり振るわないのです……」
「……そうだろうな……今世論は戦争を欲しているからな……」
「……」
「今日私が来たのはただ様子を見にきただけじゃないぞ。私は君にとっての最初の協力者になってやろうと思ってここに来たんだ。」
「⁉︎」
「要はおまえに協力してやると言っているんだ。」
全く藪から棒である。今までたった一人で戦っていて、誰も協力してくれなかった中、やっと、やっと協力してくれる人が現れたのである。
「先生……」
「困るか?私では不十分か?」
「い、いえ滅相もございません‼︎あ、ありがとうございます‼︎」
それから私はラグジー先生と共に地道に活動を続けた。
私は独自の出版物をつくって出し、それで反戦を訴え、先生は仲間になってくれそうな先生仲間を探しては一緒に反戦運動をしようと説得してまわった。
さらに私たちは各地で演説を行い、皆に訴え続けた。
「チェーグルとカラカンは、今は戦争をしていますが、必ず仲良くできます‼︎
戦争に勝って、抑え込んでもまた新たな火種を生むだけです‼︎重要なのはいかに共生できるかなのです‼︎
お互いにお互いの文化を受け入れ合う、そして自分たちの文化を遠慮なく発信し合える。そういう世界の構築が肝要なのです‼︎」
「今続いているこの紛争は大国の介入によって泥沼化しています‼︎我々はなかば大国に振り回されているのです‼︎一刻も早く目を覚まし、大国に押し負けないような国をつくらなければならないのです‼︎」
「今我々が考えねばならないのはいかに違う文化や民族と付き合っていくかなのです‼︎いかに違う文化をねじ伏せようかなどと考えているようでは時代遅れなのです‼︎」
そんなものただの理想論だと冷笑されることもあったが、私はめげなかった。
私たちの運動が少しずつ知れ渡るようになると、偉い教授や学者たちが私たちを支援してくれるようになった。
彼らは私のように海外へ留学したことのある人間が多いから、私が留学した時に体験し、感じたことや、私の言わんとすることがよく分かるのである。
「アリュー君、君の活動に協力しよう。」
「君の主張を私は支持するぞ。」
ラグジー先生の説得や、偉い教授たちの加勢によって私たちの運動はどんどん広がり、世論を変えつつあった。
それを疎ましく思ったのが当時のセントフル政府である。
ある時期から、政府は警察を差し向けて我々を弾圧し始めたのだ。
政府は国の面子があるので、今更戦争をやめる訳にはいかなかったのであろう。
最初はそこまで仰々しい弾圧は行われなかったが、運動が大きくなるにつれて弾圧は厳しさを増していった。
集会は中止させられるし、署名活動もできない。
さらに衝撃だったのはラグジー先生はじめ我々に協力してくれた教授などが教育界から追放されたことであった。
「なんということだ……」
我々はあまりにも厳しい政府の弾圧に唖然としていた。
しかし私たちは負けなかった。
我々はめげずに世論に訴え続け、反戦運動をさらに展開した。
この時、政府はチェーグルに押されていて国民の不満も溜まっていたし、我々に協力してくれている権威ある元教授たちの言葉によって、世論は動き、戦争をあくまで遂行しようとする政府への不満はどんどん溜まっていった。
しかし、そう物事はうまく運ばない。
「アリュー、ラグジー、その他反戦運動をしている者ども‼︎おまえらを逮捕する‼︎」
遂に私たちは逮捕されるにまで至ってしまったのである。
暗く、ジメジメした拘置所の端の方の独房。
そこが私の収容所であった。
飯はまずいし、過酷な労働はさせられる。
毎日、毎日。
状況は最悪であった。
しかし私の逮捕は事態を思わぬ展開への導いた。
我々の力で変わりつつあった世論が一気に反政府、いわゆる反戦へと傾いていったのである。
私の逮捕や、反戦運動の弾圧に怒った元権威ある教授たちや仲間たちが一気に立ち上がったのだ。
さらにこの時大統領や政府高官の汚職事件が重なり、国民の政府に対する不満が爆発。それが反戦運動に結びつき、国中で反政府運動が展開されるに至ったのである。
獄中でそれを聞いた私はしめた、と思った。
そこまで運動が盛んになっているのなら政府も無視する訳には行くまい……
その後、さらに予想もしなかったことがおきる。
「アリュー殿、今すぐ出て来なさい。将軍が、あなたに話したいことがあるそうだ。」
そのことを伝えて来たのはセントフル政府を支援していたスノン帝国の軍人であった。
将軍というのはスノンの将軍であろうか。
当時、反政府運動が絶好調の時であったから、なにかそれの関連事項であろうか。
私はとにかく、その軍人の指示通り、その将軍とやらに会うことにした。
私は囚人服のまま、車でセントフルに駐留しているスノン軍の本部にまで連れて行かれた。
車を降り、軍人の導くままに私は執務室と書いてある部屋に入った。
「その椅子に腰掛けて、しばらく待たれよ。」
私は着替えさせてもくれず、シャワーも浴びさせてももらえず、ただ黙って待たされた。
「やあ、よく来たね。」
しばらくして入って来たのは軍服を着、ヒゲを生やした貫禄のある男であった。
「全く私の部下は未来の大統領閣下をこんな格好のままお連れしおって……」
その男は私の椅子の、テーブルを挟んで向かいっ側の椅子に腰掛ける。
未来の大統領?なんの話であろう?
私が思考を張り巡らしていると、その男は私に握手をして言った。
「やあ、どうも、私の名前はアルベルト。セントフルのスノン軍の総司令官です。」
「はぁ……どうも……お会いできて光栄です。」
その男は、なにやら胡散臭い笑みを浮かべて私を見つめる。
「うむ。最初に今日あなたに来てもらった理由を率直に言いましょう。
あなたにセントフルの大統領を引き受けてほしい。」
「……?」
大統領?なんの話か?
私は意味がわからなかった。
なぜ今まで反政府運動をしてきた私に大統領なぞを勧めるのか。
そしてなぜセントフルの大統領のことをスノンの軍人が口出しするのか。
「突然のことで驚くのも無理はない。事情を説明いたしましょう。」
「今、あなたもご存知の通りセントフルは戦争をしている。我々スノン帝国もそれを支援している。
ところが最近セントフル国内で奇妙なことが起きている。いわゆるあなたの進めてきた反政府運動だ。それのせいで国内はめちゃくちゃ。戦争どころじゃない。このままでは敵に足元をすくわれ、戦争に負けてしまうでしょう。
そこであなたに大統領を引き受けてほしい。そして国内の混乱を鎮めてほしい。
やってくれますか……」
「……」
私は最初は辞退した。
話を聞いていると戦争の為に私が大統領になるように聞こえてくる。
そんな目的ならば私は大統領にならないと固辞したのだ。
しかし、彼はその後禁じ手を使ってきた。
「なるほど……そうですか……もし大統領を引き受けて下さったらあなたと共に逮捕されたラグジー氏を出してやろうと思ったのに。」
「⁉︎」
「おや知りませんか?今ラグジー氏は牢屋の中での労働がたたって体調を崩してらっしゃるんですよ。」
「何⁉︎」
「もう彼も高齢だ。これ以上肉体労働をさせていてはそのうち死んでしまわれるかもしれない。あなたが大統領になってくれれば救えたものを。残念なことだ……」
「…………」
私は結局大統領を引き受けることにした。
スノンがなぜそこまで私を大統領にしたがっていたかは分からなかったが、どうしてもというので引き受けたのである。
私の大統領の就任式には多くの人々が押しかけてきていた。
私は国民の選挙によって選ばれた大統領ではなく、いわゆるスノンの圧力によって大統領に就任した、異色の大統領であった。
しかし、この時民衆の間で広がっていた反政府運動の火付け役である私に、多くの国民が支持してくれた。おそらく、前の大統領の、反政府運動の弾圧などの恐怖政治や、スノンに対する弱腰外交に嫌気が指していた民衆は私に何かを期待していたのであろう。
私は皆の前で演説をした時の様子をよく覚えている。
演説は運動でさんざんやったのにやはり雰囲気が違う。
手にブワッと汗が出る。喉はカラカラ。緊張で少し寒気を感じる。
私はマイクに向かって静かに口を開いた。
「皆さん、私はこの度セントフル共和国の大統領に就任致しましたアリュー・アフド・ケリーです。
早速ではありますが私の大統領としての目標を話させていただきたいと思います。
私の目標は紛争解決です。私はこれを最優先にして尽力をしていきたいと思います。
紛争を解決し、国内の分裂を統合し、今一度、強いセントフル、平和なセントフル、輝かしいセントフルを創り上げたいのです‼︎」
私の演説は短いものであったが、皆あらんばかりの拍手を送ってくれた。
私は、いろいろ疑問はあったが、せっかく大統領になったのであるから、紛争解決の為に働こうと固く決意した。
それが、皆の為になると信じて……
私が大統領になって一番最初にやったことが戦争とは皮肉なものであった。
どういうことか。
またスノンの圧力であった。
私が大統領に就任してまもなく、例のスノンのアルベルト将軍が官邸にやってきた。
「やあ大統領、今日は閣下に進言をしにきました。」
「?」
「あなたは大統領だ。確かに大統領ではあるが本当に民衆の支持を得ているのだろうか?」
「?」
「普通、大統領というのは民衆の意思をある程度尊重されて選ばれるものです。選挙という方法を使いますからね。しかしあなたは選挙によって選ばれた大統領ではない‼︎これでは国民はあなたを支持しにくいのではと思いましてね。」
自分たちご圧力をかけておいてよく言えるものである。
「何が言いたいのです?」
「つまりあなたは国民の支持を得る必要がある。お分かりですか?今国民は戦争を望んでいる。あなたがチェーグル、リャーモ連合軍に戦争をしかけ、勝利し、紛争を解決されれば国民の支持は一気に伸びるのではないかと……」
「……」
当時、私は戦争によってこの民族紛争を解決しようとは毛頭考えていなかったので、当然拒否した。
「私は戦争による紛争の解決を望んではいません。」
「……ほう……」
その時、アルベルト将軍の目が怪しく光った。
「あなたはまだこの国のしくみをよく分かっていない……」
「⁉︎」
「あなたの大統領就任に伴って政府の高官に就いた人間は皆我々スノン軍に恩を感じている……なぜなら閣下と同じように我々が彼らを抜擢したのだから……
残念ながらあなたが何を言おうと我々は他の政府高官に掛け合えば彼らは動く……あなたの命令を破ってでもね。まあ、恩情だけではなくこちらには強大な軍事力もありますし。
それに元からいる官僚に『我々の命令が聞けないのならスノンはこの紛争から手を引く』と脅せば彼らはいやでも我々の命令を聞きますよ。」
アルベルト将軍はこちらに寄ってきて耳元で囁いてくる。
「そんな勝手なことはさせん‼︎」
「もちろん閣下が止めに入ることは想定済みだ……そうすれば我々はここから手を引き、後はあなたらが勝手に自滅するだけだ……」
アルベルト将軍の胡散臭い笑みは、するりととんでもないことをぬかす。
「国民は私と共に反戦運動をした‼︎戦争など望んでいない‼︎」
「確かに国民は『反政府運動』はした。しかし反政府運動をした国民はのほとんどは『反戦』をした訳ではない。小さい頃から戦争が善という教育を受けてきた彼らは、反政府は叫んでも決して反戦などは叫ばない。閣下がどんなに理想を語っても人はそう簡単に思想を変えない……
閣下と共に、閣下の理想を理解して運動をした人間は、ほんの一部だ。あとの人間は政府を倒す為にあなたを利用したに過ぎないのだ。」
「くっ‼︎」
「ふふふ……なぁに心配あそばしますな閣下、あなたはただ我々の言うことを頷くだけでいいのだ……」
私はこの時スノンがなぜ私を大統領にしたか理解した。
スノンはセントフルを自分たちの言うことを聞く国にしたい。自分たちの言うことを聞くのならばどんな人物が大統領でもいいのである。
国内の混乱をうまくおさめ、そして自分たちの影響下に置ける人物として、私は選ばれてしまったのだ。
「まあ閣下がお認めにならなくても先ほど申したように我々の命令を聞くセントフルの官僚などごまんと居るからいいんですがね、ハッハッハ‼︎」
セントフル軍は、スノン軍の指導のもと、私の知らぬところで戦闘を開始した。
その時は正月で、チェーグルもお祝い気分で、支援していたリャーモの軍も故郷に帰っていたから面白いように勝てたそうだ。
反政府運動も私の大統領就任で下火になり、兵の士気も高かったからわりかし簡単にチェーグルを攻略できたそうだ。
さらにスノンもセントフル軍の支援に気合いを入れ始め、故郷に帰ってしまったリャーモ軍の支援もなく、チェーグル軍はあっけなく潰され、チェーグル国は壊滅したらしい。
紛争は解決してしまった。
力で抑えつけるという方法で……
私はこの出来事に非常に危機感を覚えた。
力で抑えつけることで、チェーグルとカラカンの溝はますます深まるだろう。
そして、この紛争のことに、いやセントフル共和国の行動に、スノン帝国が口出しし、そして、私はじめセントフルの政府がスノンの言いなりになっているという事態に、とても危機感を覚えた。
私はスノンの影響力を排除しなければならないと思った。
各民族、国が自分の文化だけでなく、自分たちの意見もそれぞれ「対等」に言い合え、それを受け入れあえる。
そういう世界が、私の目標なのだから……
しかし、セントフルを動かす官僚たちはスノンを排除しようとは思わない。
彼らはスノンの力でその地位を築いているのだから、それも当たり前であった。
いつしか、彼らは私の命令ではなく、スノン帝国の言うことのみを聞くようになってしまった。
国を動かす官僚が、外国によって動かされる、そういう環境になってしまったのである。
私は自分の不甲斐なさに、絶望せざるを得なくなってしまった。
結局、人は思い通りには動かない。
彼らにも自分と同じように、人生があり、家族があり、故郷があるのである。それらは簡単には思い通りにならない。
私は自分で言うのもなんだが努力も人一倍していると思うし、志も高いと思っている。
しかし、たとえどんなにそれらが高くとも、ただやみくもに突っ走るだけでは駄目なのである。
当時の私は怒りに任せた面があった。
スノンの国政への介入に対しても怒りを覚えたが、やはり、ラグジー先生の死が私を独裁者へと導いた。
「何ぃ⁉︎ラグジー先生が亡くなられたぁ⁉︎」
私がそれを聞いたのは突然のことであった。
「はい……どうも……この紛争が、戦闘によって解決されてしまつたことに対してのショックが大きかったらしく……」
「……」
「先生の最後の言葉は……
『アリューの馬鹿者が……なぜ戦闘を許した……‼︎』
であったそうです……」
私は話を遠くの方で聞きながら、私は怒りを増幅させた。
スノンを我が国から追い出す……奴らの好きなようにはさせない……
今思えば、感情で国を動かしてしまったのは大いなる間違いであった。
私が怒りに打ち震えていた中、ある一人の男が私のもとを訪れてきた。彼はセントフル軍のトップ、エリゴット将軍であった。
「大統領、あなたはこれでいいのですか⁉︎」
「これで……とは?」
「分かりませぬか‼︎スノンのことでございます‼︎」
「何かあったのですか?」
エリゴット将軍はものすごい剣幕で語りはじめた。
「チェーグル掃討戦のときです‼︎その時スノンの援助と称してスノンの軍人が我々の陣営を訪れました。そいつらは偉そうに我々の陣営を見てまわった後、贅沢のできない戦陣で酒をだせだの賄賂を渡せだの暴れた後、しまいには酔っ払って勢いに任せて我が軍の将校の一人を殴った後そいつを解任したのです‼︎
しかもそれと同じようなことがセントフル軍の全ての陣営で起こったというのです‼︎スノンの傲慢な態度にはもう我慢なりません‼︎大統領、私と共にスノンの影響力を我が国から排除しましょう‼︎」
エリゴット将軍が熱く私に語ってくれたのをよく覚えている。
当時スノンの影響力を排除しようと思い仲間を探していた私にとって願っても無い話であった。
「将軍、お話はよく分かります。やりましょう‼︎私もスノンの動きは頭にきていたのです‼︎」
「おぉ‼︎」
エリゴット将軍はスノンの影響力を排除するには戦争しかないと言っていた。
占領したチェーグルの領地の資源や、チェーグルからの徴兵で軍備を強化し、スノンに戦いを挑むのだ、と。
私は最初は反対したが、エリゴット将軍は
「平和的にこの問題を解決するには時間がかかります‼︎その交渉にはスノンは絶対のらないでしょうし、その交渉をしている間にセントフルは乗っ取られてしまいます‼︎」
と言ったので私も戦争に乗り気になった。なってしまった。
彼の言い分にも一理あったし、何より、ラグジー先生の死に対する怒りが私を戦争へと傾けた。
これには多くの人間が反対した。
世界を牛耳る超大国スノンに勝てる訳がない、と。
今は戦争よりも内戦で荒れた地域の復興に力を入れるべきだ、と。
しかし私の決意は固かった。
その昔私と反戦運動を展開した学者や教授の方々も押し寄せ、私を説得しにきたが私は耳を傾けなかった。
官僚や大臣たちもスノンとの戦争には反対したが彼らはスノンの手先だと判断していた為耳を傾けない。
国民の中にも昔の私のように反戦運動を展開していた活動家がいたが私は決意を動かすことはしなかった。
ただただ私はエリゴット将軍ら軍部の言うことを聞いていた。
私はスノン帝国に宣戦布告した。
私は、その日、人の心をくずかごに捨ててしまったのかもしれない
すべては、自らの理想を実現する為に……
「大統領、今国内ではこの戦争に反対する者が多くいます。」
「それは私も憂慮していますがある種仕方ないことです。」
「大統領、あなたは甘い。戦争は命のやりとりです。少しのほころびから戦線が崩れることもあるのです‼︎
国内に戦争に反対する者がいるという事実は兵の士気に関わります‼︎即刻彼らを粛清するべきです‼︎」
「粛清……とは……」
「ここに我々軍部がまとめた危険者リストがあります。ここに載っている者は粛清して良いかと。」
そのリストには、その昔私と共に反戦運動をし、今も反戦を続ける仲間たちの名もあった。
「大統領にとっては辛いかもしれませんが……一度戦争をすると決めたからには……」
「……」
私は反戦、反政府の勢力の大粛清を断行した。
スノンに尻尾を振る官僚、大臣、反戦を唱えるかつての仲間たち、その他の活動家など多くの人間を処刑、その他の刑に処した。
さらにマスコミを統制し、戦争を煽るような記事を書かせ、少しでも反戦を唱えようものならそこを潰した。
それが結果的に私と軍部の独裁体制への道筋になってしまったが、その方が私はやりやすかった。
私は非常に心が痛んだ。特に、かつての仲間を弾圧するというのは本当に傷ついた。しかし、一度戦争をすると心に決めたのだから、もう後戻りはできなかった。
しかしそれだけでは超大国スノンには勝てない。もっと兵力を増強する必要があった。
そこで私は軍部の助言をもとに、この度支配下になったチェーグル族からも徴兵することに決めた。
結果的にチェーグルの復興が遅れることとなってしまったが、当時の私にはそんなこと眼中になかった。
私も何度も戦線を視察し、今考えれば勝てるはずのない超大国への無謀な戦いを主導した。
戦争が長期戦になるにつれ、各地で反政府運動が盛り上がった。国民の食糧や資源などを全部戦線にまわしたのだから無理もない話であったが。
私はそれを弾圧する為に兵を出した。その反政府運動は個々撃破したが、それを弾圧する兵たちはもともとは国民から徴収した者たちであったから、この弾圧で兵の士気は格段と下がった。
戦線にもこの情報は届き、戦線の兵たちは自分たちの家族が弾圧させていると聞き、しだいに意欲を失っていった。
さらにチェーグルでも反乱が起きた。
度重なる徴兵などで負担の大きくなったチェーグルでは、なぜ昨日まで敵だったセントフル政府の為にここまで負担をしいられなければならないのか、という不満が溜まり、もう一度独立しようという気運が高まったのである。
我々セントフルの政府がスノンとの戦いに苦戦していたこの時を狙っての反乱であった。
さらにチェーグルをもともと支援していたリャーモ帝国が戻ってきて我々セントフルに宣戦布告をしてきた。これで我々は超大国二つを敵に回すこととなってしまった。
これによってチェーグルから徴収した兵の士気は下がり、チェーグル領からの資源も手に入らなくなり、もう超大国スノンとの戦争どころではなくなっていた。
さらにこれに呼応するように国内でも反政府運動が激化。私の粛清により下野していた人間もそれに加わり、鎮圧にだした兵たちもそれに寝返ってしまう始末。
もはや、私に勝ち目はなかった。
その後、私の唯一の味方であったエリゴット将軍がスノンとの戦闘で戦死すると、各地の戦線は崩壊。
首都は陥落し、大統領官邸にも火をつけられ、私は逃亡した。
何日もさまよった挙句、今こういう状態となった。
暗い洞窟で、私は静かに自分の喉にナイフをつきつける。
結局私の人生はなんだったのか……
紛争の平和的解決と叫びながら、結局戦争を激化させる結果となってしまった。
世の中は、どうすれば違う文化同士が「共生」することができるのか。
私には、もうこの答えを探す時間はないが、いつか、本当の平和が世界を覆い尽くすことを願って、私はこの世を去る。