俺が開けた扉は全てダンジョンになる件   作:っぴ

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#9「俺達、頑張ったよな」

「よし、ステータス画面だ」

「かしこまりました」

 

 買ってきたプロテクター類を全て装備した。

 これでファルフナーズに見えるステータス画面を確認して貰う。

 

「わっ、強くなってますわ。マサト様」

「んーんー、そうだろそうだろ」

 

「技量点1+2(良い金属バット)+2(プロテクター・マスクとレガース):中学生並み、となってます」

「これで中学生並みなのか……まあいい、戦力倍増だ」

 

 ファルフナーズも喜んでくれてパチパチと拍手をしてくれる。

 良い気分だ。

 

「あらっ? 特性の文字も書き換わっておりますわ」

「ほー! 読んでみて読んでみて」

 

 ファルフナーズがチラッと俺の目を見る。

 ああ、これはまたくだらない事が書いてあるな。

 

「特性【物質社会の申し子】:形から入るタイプ。物に使われちゃ駄目でしょ」

「うっせ」

「す、すみませんっ」

「いや、ファルフナーズに言ったんじゃない」

 

「ファルフナーズも炎の矢はチャージ完了してるな?」

「はい、いつでもどうぞ」

 

「今度は最初から省略してすぐ出すんだぞ?」

「心得ました!」

 

 

 

「じゃあ行くぜ! リセマラ作戦からだ」

「頑張りましょうね」

 

 

 フスマをスラリ!  トリケラトプス?

「石化能力のカーバンクルです」 パタン

 

 玄関のドアをガチャ! 浮かぶドクロ 

「リッチの上位アンデッド、ドルージュです」 バタン! 

 

 今の引き戸をガラッ! 巨大な像が乗った戦馬車

「破壊神ジャガーノートです」 ピシャリ!

 

 風呂場の扉をパカッ! 足と鼻がたくさんある象

「古代象ボーデンドルーカーです」 パタリ!

 

 トイレのドアをパタッ! でっかい細胞!

「ゼラチナスキューブです!」

「おっ? スライムの類か? これイケるんじゃないの」

 

「危険すぎます! 食細胞を伸ばして強酸で溶かされてしまいます」

 

 パタン!

 

 

「今日は引きが悪いなあ」

「左様ですわね……」

 

「同じ家の中だから駄目なんかなあ。もう少しやってみて、駄目なら別の場所へ移動だ」

「はい、かしこまりました」

 

 

居間の押入れをスラッ!

 

「おっ、ゴブリンきぞこれ!」

「でも2匹ですわ、離れた所に」

 

「だが行くしかねえ! オラアッ!」

 

 手前側のゴブリンに叫びつつ金属バット攻撃!

 

 カァン!

 

 防いできた棍棒ごとゴブリンを打ち倒した。

 

「いけるぜ! さすが『良い』金属バット!」

 

 だがゴブリンは倒れただけで、まだ生きてる。

 地面に叩きつけられてヨロヨロしてるうちにトドメを刺さねば!

 

「ファルフナーズ! 前に出て向かって来るもう一匹に【炎の矢】だ!」

「ま、前は怖いです!」

 

「それじゃあ俺がまた死んじゃうでしょ!」

「だ、だってー!」

 

 倒れたゴブリンを金属バットで滅多打ちにしながら叫ぶ。

 打撃系武器だから致命傷を与え辛い!

 

「早く! もう距離がねえ!」

「ゴブリン怖いです! ゴブリンとても臭いです!」

 

 バカン!

 

 金属バットがゴブリンの頭部にめり込んで絶命させた!

 

「もう一匹もやるしかないか!」

 

 プギョルルルル!

 

 しめた!

 ゴブリンが飛び上がってくれた!

 

 掬い上げるようなホームラン狙いのフルスイングを食らえ!

 

 ゴキーン!

 

 ゴブリンの棍棒と金属バットが打ち合う。

 よし、初撃をかわしただけでも大儲けだ。

 

 正面からの一対一なら、もう勝てる!

 

「さんざん怖がらせてくれたな! だが、今からお前らは俺の経験値だ!」

 

 ゴブリンを一匹倒せた事で俺には余裕ができた。

 さあ、初の完封勝利と参りましょうかねえ!

 

「マサト様、いっ、いっきまあーす!」

 

 

「えっ!? 何を」

 

 振り返った俺が見たものは白い光。

 

 ……に見えるほど白熱した炎の矢じり。

 

「ちょ待っ! 待てって!」

 

 

 ボアーッ!

 

 全てが消えるその直前、俺とゴブリンは堅い握手をして互いの健闘を讃え合った。

 

「ピュギョ! プギョギョー」

「ああ……俺達、頑張ったよな」

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

 ベッドの上で3度目の復活を果たした。

 

「ひんっ、くすんっ、マサト様ぁ……」

「ファルフナーズさん」

 

「生き返ってくださり、ありがとうございますー」

「いや、君に殺されたんだけどね?」

 

「だってマサト様が【炎の矢】を撃てとー」

「俺の前に出て、と言ったよね?」

 

「ご、ゴブリンは苦手でして……」

「状況変わったんだから、確認とってから撃ってね?」

 

 頭ごなしに怒鳴って叱り付けたい所だが。

 ヒキニートだった俺にもわかる。

 いや、俺だからわかるが、ここで怒りをぶつけては絶対萎縮される。

 

 我慢しろ、俺。

 褒めて伸ばすんだ、俺。

 

 ああ駄目だ、やはり一言、嫌味でも言わなきゃ腹の虫が――

 

 

『ぎゅーん ぱぱらぱっぱっぱっぱー! ぱぱらぱっぱすぽぽーん てれーん!』

 

 

「おわっ!? 何だ何だ!?」

「また、マサト様の体から音楽が」

 

「って事はレベルアップか!」

「い、今確認致します」

 

 …

 

「マサト様、おめでとうございます! レベルが2になっていますわ!」

「キター! 技量点と体力点はどうなった!? 上がってる?」

 

「はい、技量点が2、体力点は4になっていますわ!」

「よっしゃあ! 俺様、強さ倍増!」

 

 おめでとう、俺!

 最高だな! 俺!!

 今日が俺様の、独立記念日だ!!!

 

 ワー!!

 

 心の中の観客がスタンディングオベーションで喝采を送ってくる。

 ついに俺の時代がやって来たのだ。

 

 

「ははは、金属バット、貴様にはもうデカいツラぁさせねえぜ。何てったって俺様もレベル2だからな!」

「あ、あの……マサト様」

 

「んん? どうしたファルフナーズ、このレベル2のマサト様に何かあるのね? レベル2の俺様に」

「その……金属バットさんも強くなってまして、技量点+3の素敵な金属バット、と……」

 

「……」

「……」

 

 

 無言で金属バットを床に置き、平伏した。

 

「これからもよろしくお願いします」

 

 …

 

「あらっ、そういえばマサト様」

「んん? この金属バットさんの次に強い俺に何か?」

 

「……」

「いや、気にしないで続けてくれ」

 

「あ、はい。技量点の下に防御点、と言う表示ができてまして、防具はそちらに移動してます」

「ほほー。レベルが上がって、ステータスの種類が増えたのか。で、どんな具合に?」

 

「まとめますと、まず技量点2+3(素敵な金属バット):高校生並み」

「うむうむ」

 

「次に防御点2+2(高いプロテクター)+1(マスクとレガース):高校生並み」

「なるほど」

 

「そして最後に体力点4、以上で……あら」

「どしたー?」

 

「その下にコインのようなマークと一緒に『ガチャ解禁』と書いてありますわ」

「んんっ!」

 

 キタコレ!

 

 魅惑のガチャが!

 

 俺様のビクトリーロードが開かれるのだ!


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