俺が開けた扉は全てダンジョンになる件   作:っぴ

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ご褒美タイムに見せかけて
上げて落とすは神の戯れ



#38「俺の暮らしがラグナロク」

「よし、3女神に完全勝利だぜ!」

「素晴らしいですわ、マサト様!」

 

 なあに、婆ちゃんの加護があれば女神だろうが悪魔だろうが楽勝よ。

 

「約束じゃ。お前の望みを何でも3つ、叶えてやろうぞ」

 

 ご褒美タイムだ!

 

 

 ――だが既に見切った。これは罠だ。

 

 

「マサト様、これで探索が一気に進みますわ」

「そうだな……」

 

「マサト様!? 何やら浮かないお顔ですわ」

 

 うーん……慎重にいかねばな。

 

「ほれ、ダンジョン・オープナーの坊や、何でも好きな望みを言うが良い。金か? 力か? 若さか?」

 

 スクルドが急かすように望みを聞いてくる。

 その態度でもう、どんな望みを言うかを見る試練である事は一目瞭然だ。

 

 

「1つ目の願いは決まっている。『俺達を次の階層に行かせてくれ』だ」

「ちっ」

 

 ほら、舌打ちした。

 

「どういう事ですの!? マサト様」

「これは最初から、そう言う試験なんだよ。欲の皮を突っ張らせて金とか力とか言って願いを使い果たしたら、ここを突破できないんだ」

 

「まあ……私ったら、そんなマサト様の深慮も察せずに、恥ずかしいですわ」

「正直、気付かなくても良かった。永久にダンジョン・オープナーの力は解除できなくても、ヌルい余生を歩めたんだからな」

 

 気長に次の友好的な神を引き当てるという手もあった。

 だがボス部屋がこの女神達で固定されてたら完全に詰みだ。

 でもそれだとファルフナーズが流石に可哀相だからな。

 

 

「ま、そーゆー事じゃ。おぬしの勝ちじゃよ。ダンジョン・オープナーの坊や」

「3つの願いには必ず罠がある。それが俺の世界の基本だ」

 

 

「試験は合格じゃ。さあ、もうそれほどの意地悪はすまい。残りの願いを2つ言うが良い」

「2つ目は流石に俺の希望を叶えてもらう。『このダンジョンやアストラルとか言う世界について知ってる情報を教えてくれ』だ」

 

「ほう……欲の無い事じゃな。良いじゃろ、後ほどまとめて教えようぞ」

「マサト様、もっとマサト様の自由な希望を申されても良いのですわよ?」

 

 そうなんだけどね。

 

 でもファルフナーズを送り届ければお礼に金貨10万枚はくれるって言うし。

 それだけあれば大抵の事は自由にできる。

 ここはダンジョン・オープナーの能力を解除する事を最優先に考えていくべきだ。

 

 あと毛根!

 

 むしろファルフナーズが俺の毛根でガチャを回すのが一番の心配事だよ。

 

 つまり、ダンジョン早期突破が最優先。

 その為にはやはり神から情報を引き出すのが有利だ。

 

 どうせ一気にクリアさせてくれ、なんて言ったらしっぺ返しを食らうんだから。

 

 

「元引き篭もりのくせに聡い坊やじゃのう。さあ最後の願いを言うが良いぞ」

 

 最後か。

 1つくらいは俺の欲望を優先しちゃうかなー

 

 いや……でも、やっぱ気付いたのに誤魔化すのもなあ。

 婆ちゃん、俺に力をくれ!

 

「よし、ファルフナーズ。1日で良い。1日で良いから……」

「何でございましょう?」

 

 

「ファルフナーズのおっぱい触り放題の日をくれ」

「な!? 何をおっしゃいますのですか、マサト様っ!?」

 

「これはお前が姫巫女になるのに必要な事なんだ! 俺の目を見ろ! この真剣な目を!」

「……えっちな目つきにしか見えないのですわ」

 

「あ、いや、そうなんですけど。ご褒美というか、代償と言うか……」

「――~~……ッ! つまり、まだ何か成すべき課題がある、とおっしゃるのですね?」

 

「そうだ。今はまだ合格はしたがギリギリの状態だ。追加点を狙う必要がある」

「わっ、分かりましたわ。このファルフナーズ、マサト様を信じてそのお約束、受けますわ」

 

 よし! 決まりだ。

 おっぱい感謝デー、頂きます!

 

 

「じゃあ最後の願いだ」

「何でも言うが良いのじゃ」

 

「『あんた達3姉妹の女神をファルフナーズの世界に招待したい。そして人々に力を貸して欲しい』だ」

「……良かろう。完璧とは言わぬがほぼ満点なのじゃ。その願い叶えようぞ」

 

 

「マサト様……そのような事まで」

「まー、そーゆー事だ。お前のこの旅は試練じゃなくて儀式、神事だったんだよ」

 

「当たりじゃ。本当は姫に願いの権利を譲り、姫自身がそこに気付く事が望ましかったのじゃがのう」

「ま、まあっ! 私と来たら……姫巫女を目指す者として至らない事、消え入りたい程に恥ずかしく思いますわ……」

 

 

「しかし良くそこまで考えが至ったのう。おぬしなら絶対に煩悩を優先すると思ったのに」

「まあ、スクネ婆ちゃんの加護、と言う事にしておいてくれ」

 

 

『我も知りたいものである。我が主がなぜそこまで献身できたのか、実に興味深い』

「お盆の行事を思い出しただけだ。あれは仏教由来らしいけどな」

 

 

「どのような行事なのでございましょう。お聞きしてもよろしいですか?」

 

「夏の時期になるとあの世とこの世を隔てる蓋が開くので、ご先祖様が子孫に会いに来てくれる、という風習さ。亡くなった婆ちゃんが会いに来てくれると、朝まで起きて待ってたもんだ。日本だけじゃなく、先祖や神様を迎える祭りや風習は世界のあちこちにある。昔、そうスクネ婆ちゃんに教えてもらったんだ」

 

 

「まあ……それでは本当に、これは御祖母様のお導きなのかも知れないですわね」

 

「うむ。巫女を目指す試練が異世界を旅する、だけじゃあ何かピンと来ないだろ。必ずお土産や成果を示す必要があるわけだ。そこで神様に出会ったとなれば、もう答えは1つだ」

 

 

「私達のトリピュロン王国に新しい御神様をお迎えする神事だったとは……マサト様のご慧眼と情け深さには本当に何と感謝して良いか」

「ま、これで気兼ねなくクリア報酬が受け取れるさ。それに1日触り放題だ!」

 

 

 ファルフナーズは赤くなって俯いたものの、嫌がりも断りもしなかった。

 流石にこれだけの事をしたんだから、少しくらい許してくれるのだろう。

 

 魅惑のおっぱい感謝デー、さていつ楽しもうか!

 

 …

 

「ともかく、一旦帰って休もう。流石に今日は疲れたぜ」

「はい、お疲れ様でしたわ。1日に2階層を突破したのですから」

 

 借金分も稼いで十分お釣りが来る金額だし、神の引っ掛け問題もクリアした。

 

 

「じゃあな、ノルニル3姉妹。ファルフナーズの世界を頼むぜ」

「えっ!? マサト様、あのう……」

「アホの子じゃのう、ダンジョン・オープナーの坊やは」

 

「俺、何かおかしい事言った?」

「ええ、マサト様。これから私達はノルニル3女神様達をトリピュロンまでお連れしなければならないのですわ」

 

「へあ?」

「つまり、行動を共にするという事じゃ。常にの」

 

「さ、先に行っててくれるとか、後で呼び出すとかじゃないの……?」

「ノルニル3女神様はトリピュロンのある『場所』を存じてないのでございますわ」

「うむ、姫巫女の言うとおりじゃ」

 

「分かってから教えればいいじゃん?」

「ここで1度でも女神様達と別れてしまえば、再び会えるかはダンジョンのめぐり合わせひとつ、万に一つの確率でございますわ。マサト様はそれほどの幸運を引き当てたのでございます」

 

 

「つまり、俺はこれから3姉妹と一緒に暮らさなければならないのか……? ファルフナーズを送り届けるまで?」

「左様でございますわ」

「しばらく厄介になるぞえ」

 

 なんてこった。

 お姫様と金属バットさんだけじゃなく、さらに居候を抱えなければならないとは。

 

 

 

「やっぱ契約キャンセルしていいすか?」

「アホか。しまいにゃ黄昏れるぞえ」

 

 

 神々が黄昏。

 

 俺の暮らしがラグナロク




新たな居候を迎えるマサト。その重圧は主にマサトの財布を直撃するのだった。
次回#39「俺たちは天使じゃない!」お楽しみに。

感想とかおっぱい触り放題とかお待ちしております!

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