俺が開けた扉は全てダンジョンになる件   作:っぴ

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#31「いや無理だろ、人間の男なら」

「よし、金属バットさんのステータス確認だ」

「マサト様の分のプリンを頂いてからですわー」

 

 くっそー

 俺のプリンがファルフナーズの口に……

 

「お、俺のプリンがぁ~……」

「何でございますか。私の胸をいやらしい目で見ておいて」

 

 いや無理だろ。

 人間の男なら、濡れて透けた女性の胸を見ないでいるなんて。

 

 

「食べながらでいいから、ステータス確認を頼むぜ」

「もう少々お待ちくださいませ、ですわ」

 

 たっぷり15分かけて食べやがった。

 これでも急いだのだと言う。

 

 俺なら2口、30秒で食べてみせるのに。

 急ぎとあらば一口で丸飲みしてやるぜ。

 

『プリンを急いで食べる状況なぞ存在し得るのだろうか』

 

 金属バットさん、俺の心読めるの!?

 

 …

 

「では金属バットさん様のステータスを確認致しますわ」

『姫、よろしく頼むのである』

 

「まあ! 命中点と打撃点が21点になっておりますわ」

「俺の3.5倍強いのか……」

 

「名称が【伸縮自在の知的なファイア・ブランド】メジャー級金属バット+9、と書かれております」

「なっげー名前になったな」

『金属バット冥利に尽きるのである』

 

 バットの冥利じゃないと思うけどな。

 

「で、伸縮自在とはどんな効果だ?」

「はい、ええと……大きさを使用者の任意で変更できる、のだそうでございますわ」

 

「ほーん。握って命じれば良いのかな? やってみよう」

『お試しあれ』

 

「伸びろ! 金属バットさん!」

 

 みょいーん

 

「うわっ、マジだ! 伸びるぞこれ」

 

 ガシャーン

 

「ま、窓ガラスをブチ破ってしまった……」

『撃破1、なのである』

 

「のん気な事言ってないで加減しろよ!」

『我自身に調節機能無し。主の意思のみで変動している』

 

 

 金属バットさんは5mくらいの長さになった。

 高い代償を払わされたが。

 いや、これから払うんだけど。

 

「最大でこの位の長さか」

「素晴らしいですわ。流石マサト様」

 

「素晴らしいのは金属バットさんだけどな」

『我に力無し。ただ主の求めに応じる、その機能が存在の全てである』

 

 じゃあ主の理解できない言葉使わないで欲しい。

 

「よし、じゃあ元に戻れ!」

 

 うにょーん

 

「何だか変な感触が伝わってくるなあ」

『質量変化に伴うものであろう』

 

 そう言えば、大きくなった程には重さはそれほど増加しなかった気がする。

 

「使いやすくなって良いな。やはり少年野球サイズじゃあ小さいからな」

『念願のメジャーリーグ公式戦用サイズである』

 

 そんな願望があったのか。

 でもプロ野球は木製バット限定だよ?

 

「さて、次は……ファイア・ブランドてのだが。やっぱり燃えるのか」

『燃えるのである』

 

「はい。マサト様、説明文にもその様に記述してありますわ。炎属性付与、炎による追加ダメージ、と追記があります」

「おー、そりゃ頼もしいな。でも俺が火傷しちゃうんじゃないの?」

 

『試してみるのである』

「ヤダよ。怪我したくねー」

「熱くなったらすぐに手放せば大丈夫ですわ。ご心配でしたら、またお風呂場で」

 

 ぐぅ

 俺の意思は関係無しか。

 

「スノコも買い直さないとな」

『申し訳無しである』

 

 ガラスにスノコ、何だかんだで金が掛かる。

 明日からバリバリとダンジョンに潜ってモンスターを倒さねば。

 

 …

 

「よし、では……燃えろ! 金属バットさん!」

『応!』

 

 ぼわっ

 

「うおっ……っと、熱くない。大丈夫だ」

『たぎっているのである』

 

 金属バットさんのグリップ(握る部分)は燃えていない。

 じっとそのまま持っていても熱さは伝わって来ない。

 

「最初のだけが異常だったのか」

『そのようである』

 

 

「マサト様、追記がありまして」

「ほう? 何て書いてある?」

 

「使用者の精神状態によって炎の火力、追加ダメージは可変、だそうですわ」

「気合次第でまだ強くなるって事か」

『素晴らしい能力である』

 

「大きさ、炎の追加ダメージ、強化値。これだけパワーアップすれば鉄の像も楽勝で壊せるだろう」

『うむ。もはやあの鉄剣ごときに遅れを取る事は無いのである』

 

 トラップとして剣が振り回されてるだけなんだけどな。

 また鉄の像の手首を狙い撃ちして、部分的に破壊するだけで良い。

 

 威力が増したから楽になるし、金属バットさんの耐久への負担も減ってくれるだろう。

 

「はっはー、何だかんだ言っても強い武器を手にしてるかと思うと気分が良いな!」

『主にそう思ってもらえて、我としても感無量である』

 

 気分も乗ってきて、素振りを軽く2、3度。

 バットの軌道で描いた弧を炎が舐めていく光景が何とも言えずカッコイイ。

 

 ブン、ブオンッ

 

「きゃっ! マサト様、狭いところで振り回すのは――」

「あっ」

 

 ガツッ!

 

 シャワーの蛇口に直撃。

 

 ブシャーッ!

 

「ヤバい! 蛇口ぶっ壊れた!」

『水が止まらないのである』

「マサト様! マサト様! 洪水ですわ! 雨漏りですわ!」

 

 ファルフナーズが慌てて訳の分からない事を言っている。

 

「やべーな……確か水道管故障したら、家への給水管の根元を止めないとダメなんだよな」

『局地的断水やむ無し』

 

 急いで庭に出て、地面にある給水管の元栓を締める。

 元ヒキニートである事が役に立った。

 水道の検針おばさんがチェックする所を何度も眺めていたから。

 

 …

 

「さて……1日に2度も水びたしになってしまうとはなー……」

「散々な日になりましたわ」

 

 しかし、水に濡れぼそったファルフナーズは何だか色気が増したように見える。

 女性は火や水にくぐらせると魅力が増すと言うが――

 

「マサト様! ちっとも反省しておりませんですわ!」

『男のサガである』

 

 洗面器と石鹸を投げつけられてしまった。

 タンコブが増えた。

 

 両親に水道を壊した事を伝えたら、オヤジにゲンコツを食らった。

 

 更にタンコブが増えた。

 最悪だ。

 

 

 しかも2度も水を被ってしまったせいで、本当に風邪を引くハメになった。

 翌日は水道修理の騒音に頭を悩ませながら寝込むのだった。

 

 騒音とタンコブと風邪。

 3重に頭が痛い。

 

 

「えっちなマサト様への天罰に違いないのですわ」

 

 姫巫女が言うのだから間違いないね。

 

 

「マサト様が回復してくださるまで、お詫びのプリンを買って頂く事ができませんわ……」

 

 

 おや、更に頭が痛くなりましたよ。

 

 4重苦だ。




先日日間の49位に入りました。ありがとうございます!
あの瞬間、ファルフナーズは全国49位のパンツだったのだ…素晴らしい
更に美しいパンツを目指して頑張ります。
ぱんつ

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