俺が開けた扉は全てダンジョンになる件   作:っぴ

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#11「髪は長~い友」

「よし、ベリーレア確定ガチャだ」

「かしこまりました!」

 

 

 いや、だってさー

 ベリーレア以上確定なんだぜ。

 

 これはもう仕方無いでしょ。

 

 冒険をさ、円滑にさ、進めるためにさ。

 俺の意思が弱いわけじゃ無い!

 

 ……よね?

 

 

「ははは! 回せファルフナーズ! 我らの栄光を導くのだ!」

「いきますわ!」

 

 うっ!

 

 後頭部に強烈な痺れに近い痛みが!

 これが毛根の死滅する感覚か。

 

 さらば、マイ毛根300本!

 愛しい君達よ、先に天国で待っててくれ。

 

 

 ドゥルルルル!

 

 光り輝くドラムが出現し回る。

 

 ピコーン!

 

 子供の天使が二人ベルを鳴らしながら降りてきてファンファーレを奏でる!

 リーチアクションって奴か!

 期待度アップ!

 

「さあ来い! 伝説の超絶素敵ソード!」

 

『スーパーレア』

 

 パパラパーン!

 

「きっ、来たあああああ! っしゃあ! おらぁ!」

 

 ふわりっ

 

「あれ? 剣じゃない。服だ!?」

 

 白いドレスのような服が

 

「おめでとうございます、マサト様!」

「お、おう……でも、これ何だ? ただのドレスに見えるぞ」

 

「では、説明文を参照いたしますね」

「頼んだ」

 

 

「名称、プリンセス・ドレスアーマー」

「……」

「……」

 

「お前用じゃねーか!」

 

「ひいっ! すっ、すみません」

「くっそー、俺の大事な毛根(フレンズ)が300本も犠牲になったと言うのに」

 

「ふ、ふれんず……ですか?」

「お前の国じゃ知らんがな。この国じゃあ髪は長い友と書くんだぞ」

 

「そうでしたの……」

「マイ・フレンズ、スリー・ハンドレッド、さらばだ……すまぬ。お前達の犠牲を無駄にしてしまった」

 

 両手を合わせ、祈りを捧げる。

 お前達のためにも、俺は必ずこの試練を乗り越えてみせる!

 

 …

 

「俺の大事なフレンズへの弔いは終わった」

「は、はあ……」

 

 あっ、こいつ。

 何を大げさな、って表情に出てる。

 

 くっそー、女性にはこの危機感、分からないんだな。

 50年後を見てろよ。

 

「それで、そのプリンセス・ドレスアーマーにはどんな説明文が?」

「あっ、今読み上げますわ」

 

 

「プリンセス・ドレスアーマー:戦う姫のためにしつらえたドレス。その戦闘力を大幅に上げてくれる。男でも着れるから、恥ずかしくないなら試してみたら? カッコワライ」

「煽りよる」

 

 着れるか!

 

 どう見てもお姫様な白いドレスに胸部にだけ白銀の装甲が付いたものだ。

 特にスカートの裾が短く、白いレースのガーターベルトとハイニーソがセットで……

 

 俺が着た日には、それはそれは酷い光景になるだろう。

 

「はい、ファルフナーズにあげる」

「こ、こんな丈の短い服は恥ずかしいですわ」

 

「俺の友300が犠牲になってまで出した品だ、着よう?」

「えええ……これは流石に」

 

「着よう?」

「うう……マサト様ぁ」

 

「ね、着て?」

「~~……ッ、はい……」

 

 しゃあ!

 根負けさせてやったぜ。

 

 このエロ可愛いぴっちりドレス!

 せめて俺の目を楽しませてもらわにゃあ、毛根達が報われないぜ!

 

「さあ着替えだ」

「かしこまりましたわ……」

 

 ……

 

 …

 

「あの、マサト様」

「何?」

 

「そこで見つめられていると、着替えられないのですが」

「私は一向に構わんッ!」

 

「私が構うのですー! せめて、せめて後ろを向いていてくださいませ」

「いや、俺は困難から目を背ける事なぞできぬ」

 

「……」

「……」

 

 はっ! と気付いたファルフナーズが素早く部屋の外へ出てしまった。

 

 バタン!

 

 しまった

 俺は扉を開けられない。

 

 無力!

 圧倒的、無力!

 

 俺はなんて無力なんだ!

 

 

 おずおずと扉からこちらを顔を覗かせるファルフナーズを見て決心した。

 

 次に着替えさせるときは扉を背にしよう。

 俺は固く誓った。

 

 プリンセス・ドレスは想像以上にファルフナーズに似合っている。

 

 

「グレートだ! ファルフナーズ、良く似合ってるぞ」

「こ、これは太ももが丸見えで……いえ、太ももどころか」

 

「いや、大丈夫だろ」

「そうでしょうか」

 

 あぐらをかいて座っている俺は踏ん反り返る。

 

「ま、ま、マサト様、ななな、なぜ急に床に寝転がるのですか!?」

「いや、一戦して疲れてさー」

 

 ファルフナーズもぺたんと床に座り込む。

 いいね、いいね。

 白いニーソの女の子の足は最高だな。

 

「あ、トイレ行きたくなった。ファルフナーズ、扉開けてくれー」

「……マサト様が先にお立ちください」

 

「おっ、メイドが主人より後に立つ、だとォ!?」

「あっ、あまり意地悪をおっしゃらないでくださいませー」

 

 意地悪じゃない!

 スケベ根性だ!

 

「わかったわかった」

 

 トイレで便座を上げてもらう時に少し見えた。

 ついでにズボンのジッパーを下ろして貰うときにも北半球がばっちりだ。

 

 さすがスーパーレアの服だな。

 ドレスなのに胸元がバッチリ開いていてくれる。

 これで胸部装甲さえ無ければ最高だったのに。

 

 ……

 

 …

 

「まあマサト様、この服には追加能力がありましたわ!」

「えっ、どんなの?」

 

 ファルフナーズがステータス画面を操作しながら言った。

 俺にはその画面が見えない。

 ファルフナーズが虚空へ向かってパントマイムしているようにしか見えない。

 

「ええと、【魔法の盾】:対象1体に一定量のダメージを吸収するバリアを張る、だそうですわ」

「マジ!? 凄いじゃん。 さすがスーパーレア服」

 

 

 と、言う事は……これは組み合わせてイイ感じのコンボが成立するのか!?

 

 

「ファルフナーズ、その服を着ても基本の【炎の矢】は消えてないよな?」

「あ、はい。まだ夕方ですのでチャージはされておりませんが、表示はそのままです」

 

「いいねいいね。つまりその【魔法の盾】で俺を守りつつ、【炎の矢】で敵を――」

「それです! 流石はマサト様ですわ!」 

 

「褒めろ、もっと褒めろ」

「素晴らしい頭脳ですわ、マサト様」

 

 ぱたぱたと拍手して喜んでくれるファルフナーズだった。

 

「まあ、ファルフナーズが前に出てくれれば本当は要らない戦法なんだけどね?」

「それは言いっこ無しですわ、マサト様」

 

 開き直りやがった。

 照れ顔で誤魔化す仕草が可愛いから許す。

 

 俺に仕えるメイドと言っても所詮はお姫様だ。

 勇ましく戦ってくれるなんて思ってないさ。

 メシが不味いとかベッドが硬いなんて言わないだけで御の字ってもんだ。

 

「その【魔法の盾】もチャージ回数は1日1回か?」

「はい、その通りでございますわ」

 

「オーケー、じゃあ次の挑戦は【炎の矢】がチャージされる明日に、だな」

「了解致しましたわ。では、時間のあるうちに今一度、毛根ガチャなどを――」

 

「回しません」

 

 

 人の毛を何だと思っていやがる。


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