dies in オーバーロード   作:Red_stone

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第6話 会議。

 

 そして集まる。会議室の中央の円卓、それぞれの場所へと座る。同じところに二人なんてギャグはすることなく、並んでーー歯抜けた時計の形を作る。

 

「藤井君、忠誠の議をするね」

 

 ……は? 先輩が何やら言い出した。

 

「第二位『死を喰らう者〈トバルカイン〉』櫻井戒、御前に」

 

 立ち上がり、頭を下げる。

 

「第三位『神を運ぶ者〈クリストフ・ローエングリーン〉』ヴァレリア・トリファ、御前に」

 

 次々と。

 

「第五位『獅子心剣〈レオンハルト・アウグスト〉』櫻井螢、御前に」

「第五位『戦乙女〈ヴァルキュリア〉』ベアトリス・ヴァルトルート・フォン・キルヒアイゼン、御前に」

「第六位『太陽の御子〈ゾーネンキント〉』氷室玲愛、御前に」

「第七位『鋼鉄の腕〈ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン〉』ミハエル・ヴィットマン、御前に」

「第八位『魔女の鉄槌〈マレウス・マレフィカルム〉』ルサルカ・シュヴェーゲリン、御前に」

「暫定第八位『狼を司る者〈ゲオルギウス〉』遊佐司狼、それとおまけの本城恵梨依ね、御前に」

「第十一位『大淫婦〈バビロン・マグダレーナ〉』リザ・ブレンナー、御前に」

 

 忠誠、首を捧げる。藤井連の特性はギロチン。つまりは命を差し出すということ。

 

「第13位代行『超越する人の理〈ツァラトゥストラ・ユーヴァーメンシュ〉』藤井連。ああ、理解しているさお前たちの想いを。この黄昏で共に生きていこう」

 

 ボスっぽく見えるよううなづいて見せた。

 

 まあ、しかしアレだな。カオスだ。とりあえず全員水銀の被害者というわけだが。魔名なんてものはあいつ……親父殿の呪いでしかないのだから。同じ席が二人いたり、本物がいるのに暫定がいたりとーーまあ、ループ世界で繰り返した結果なのだからしょうがないとしても。

 

「さて、俺たちの置かれた状況を確認しよう」

 

「ええと……どなたか攻めてくるのでしょうか? 襲撃は昔は散発的にありましたが、今は落ち着いてるのではないでしょうか」

 

 トリファ。着ているのは、全員黒いSS服で、ゆえに当然彼もまたトレードマークの神父服を着ていない。それでも同じ顔のラインハルトと区別できるのは、まあ苦労がにじみ出ているおかげであろう。

 

「ああ、ギルド戦じゃない。今は異常事態が起きていると俺は確信している」

 

「それは、何か言えないことでしょうか」

 

 さすがだな。信用できないシュピーネを除いては唯一といっていい頭いい枠だ。おそらく頭の中身は俺とは異次元レベルであろう。と、いうかなぜ一言で言いづらいこととまでわかるのだ。

 

「ああ、言葉にはできるほど理解できていない。アレの気配を感じないことと言いーーシュピーネの話も、どうなっているかはさっぱりだ」

 

「ほう、彼ですか。調べ物をさせたので? 彼を、いえ以前までであれば我々が外に出ることはなかったというのに」

 

「ああ、それこそ異常事態だな。俺も遠隔視の鏡〈ミラー・オブ・リモート・ビューイング〉で確認したがな。ウィグリード山脈が消えているそうだ」

 

「……なんですと!?」

 

 言葉には出さないが他の面々も驚いている。

 

「それって、超位魔法で吹っ飛ばされちゃったってことかしら、蓮君」

 

「いや、平原が広がっている。吹っ飛ばしたものとは思えないな」

 

「なるほど。平原が広がっているのであればーー魔法で耕して草を植えるなどという無駄なことをする意味はありませんし、我々が気付かないのもおかしい」

 

「そういうことだ。全員、警戒し自分の領域を精査してくれ。違いがあれば俺にメッセージで報告すること。俺からは以上だが、他に何かあるか?」

 

「平原ということであれば、防御面が心配ですね。テレジア、隠ぺい魔法はどうなっていますか?」

 

 隠ぺい魔法? あれを展開しているのは我がギルドに所属するレイドボス、無理やり名前を変えた天魔・常世のはずだがーー設定か! 設定にはあれと先輩は一つの存在だと書いた。もちろん、ユグドラシルでは意味がない。ただのレベル1とレイドボスだったが……あれと一心同体ということは、先輩はステがレベル150相当で、しかも体力は数倍か!? --とんでもないものが生み出されてしまったようだ。

 

「うん、問題ない。今も隠しているーー藤井君、山ごと隠した方がいい? 言われた通り拠点だけ隠ぺいしているけど」

 

「ああ、山ごと消してくれ。……それと、ダミーを作った方がいいか」

 

「なるほど、それは名案です。いきなり消えれば調べようとする輩もいるでしょう」

 

 輩……ね。人間など、いるか? まあ調べてみなければわからないが。

 

「そうだな、ルサルカ頼めるか?」

 

「え? うーん、蓮君の頼みならやってあげたいけど……山なんて、何日。ううん、何ヵ月もかかっちゃうわ。それでいいならやるけど」

 

「スクロールを渡す。第10階位魔法を使えるならどうだ」

 

「ああ、それならいけるわ。真の姿を開放してちゃちゃっとやっちゃうわね」

 

「ああ、頼む。では、解散」

 

 

 そして、一日。他の奴らが色々と構ってきてくれたが、それは割愛。

 

「……ねえ、ベアトリス。本当にいいの?」

 

 調査命令は外にまで及んでいない。というより、言外に外に出るなという命令が入っていた。それを分かったうえでーー

 

「螢、ちゃんと領域の調査は終えました。そして、領域内の調査を終えたら次は外と相場が決まっているでしょう」

 

 それは屁理屈と呼べるものだったが。

 

「そうだね、それにシュピーネは信用できない。ここで嘘をつく意味はあまりないが、これからは別だ。信頼は美徳だけど、それに足をすくわれることもある。それに、あまり藤井君に手間をかけさせるのもよくないからね」

 

 戒も同意する。真面目ではあるが、拘泥してはいない。何かあれば独自に行動する積極さを持っている。もっとも、それは独断専行とも呼べるが。

 

「戒兄さんまでそんなことを言うの。……はぁ、分かったわ。付き合う」

 

 観念したようにその足を進める。その姿は軍人然としたキビキビしたものだが、その速度は人のものではなかった。人外の”軍”ーーその行進。痕跡すら残さずに深い森を踏破する。

 

「……見つけた」

 

 地面の一点を見て足を止めた。

 

「え? 何かあったの、戒兄さん」

 

「ああ、足跡です。新しいですね、ここ数日といったところですか」

 

「……私にはその辺の地面と違いが判らないわ」

 

「そこらへんは経験ですね。軍人として森を何日も泥まみれになって駆けずり回れば分かってきます。この辺はコンクリートジャングルでは勘を養えませんからね」

 

「そうなの。で、この足跡は?」

 

「一人分ですね。軍人ではないです、そもそも軍人が一人で行動するのは考えにくいですし、なによりこれは素人そのものの足跡です」

 

「なら、近くに村があるはずだね。僕らの黄昏を攻める中継地点になるかもしれない。注意しようか」

 

「そうですね。まあ、気楽にやりましょう。別に無限の背負い袋と疲労無効の装備があれば中継地点なんて関係ないですから」

 

「……二人とも、気が抜けてない? 私たちがやることは周辺の威力偵察でしょう。敵はレベル100の可能性がある。本当の姿にならずとも余裕だと思うのは傲慢ではないかしら」

 

「違いますよ、螢。レベル100とか言っちゃうからには、敵がレベル200の可能性も考慮しなくてはいけません。そういう風にガチガチだと相手も緊張しますから。へらへらとしてるくらいでちょうどいいんです。いざという時だって、その方が動けます」

 

「こちらの戦力を過大評価させて譲歩を引き出すのは相手の情報を知ってからだよ。初対面の敵には過小評価してもらう方がいい。油断するからね」

 

「そうね。言われてみればーーチンピラでもあるまいし、コケ脅しする必要もないわね」

 

 螢が関わった人間はチンピラが多い。というか、彼女はチンピラを殺して技を磨いてきたすら言える。同じく不死とはいえ、100に届きそうだったベアトリスとは魔人の年季が違う。戦争中ではなかったから、燃料補給のためにチンピラを殺し回った。ここにはいないが、元仲間にもチンピラとしか言えない奴がいた。実を言えば、螢の青春のほとんどはチンピラとかかわって過ごしてきたと言っていいだろう。だから、それに染まってる部分はないでもない。二人とは幼くして死に別れたのであるし。

 

「ーー声が」

 

 緊張しているのはマイナスとはいえ、それで鈍るほどナマクラではない。一瞬で方向を確かめる。

 

「悲鳴ですね。さてさて、盗賊ですか。それとも殺人鬼ですかね。どちらにせよ、騎士として放ってはおけませんね」

 

 危険な光。そもそも彼女たちの原動力は波旬への憎しみだ。すべてを上回るそれに振り回される性質を持っている。……このときも、助ける気などさらさらない。アレの眷属など、全て焼き尽くす。慈悲などありえない。

 

「そうだね、ここは黄昏に近い。森もあるし、見える位置でもないが騒ぎを放置しておくわけにもいかない」

 

 そして、それは戒とて同じであるのだ。螢も、それを許すことはできない。文字通り、8000年かけても薄れない憎悪。--そういう、設定。

 

「……こっち!」

 

 殺気をまき散らし、音もなく駆け抜ける。

 

 




Dies勢の状態

 蓮を含めて全員、セバスのように本気形態を持っています。通常はDiesの軍服ver、本気を出すときはKKKの随神相の形態。オリジナルと同じ力を持つわけではなく、それをもとにユグドラシルで再現したもの。
 司狼と恵梨依、螢とベアトリスは同じ枠内に二人分の設定を書いて、グラを二人で一体にしたら、なんかこっちに来たら別々に動き始めた。
 ちなみに御前はオバロから。彼らもNPCなので多分こういうことをやるはず。

 あと、すみません。レイドボスの設定は適当です。

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