「--あなたたち、それくらいにしておきなさい」
現れたのはキリストくたばれとしか思えないほど豊満なおっぱい。でかい。ではなく、穏やかな笑顔と泣きボクロが特徴の女性。軍服のスカートには腰までのスリットがある。エロ……リザ・ブレンナー。
「なによー。バビロン〈大淫婦〉、もしかしてあなたも狙ってるの? 残念でした、あなたの好みと違ってレン君は生きてる系の男よ。どっちだろうが、あげないけど」
「リザ、邪魔しないでほしい。私はこのビッチをポイして藤井君とベッドとしっぽりするの」
頭が痛くなる会話だった。
「リザ、どうしてあんたがここに?」
一応はシスターと呼ぶべきかもしれないが、いやーーあれはただの偽装身分だろう。この場においては正しくない。そもそも、ルサルカ以外は軍服、ナチスの
「玲愛が藤井君に迷惑をかけてるんじゃないかと思って」
ふわりとほほ笑むさまは、妙齢の色気を感じさせる。……とはいえ、童貞にとってはちょっと怖い。こう、リア充的な雰囲気が溢れている。
「じゃーそのゾーネンキント連れてどっか行ってくれる? あたしはレン君としっぽりするから」
「あなたも、藤井君に迷惑かけないの。かわいそうに、困ってるじゃない。彼みたいな誠実な人には、あなたみたいな中古品はふさわしくないのよ」
さらりと毒を吐く。この辺は血筋だろうか。玲愛とは姉替わりで、その実曽祖母というわけのわからない関係がある。孫にはいろいろ思うところはあったようだが、今では溺愛しているーー設定。
「……バビロン、言ってくれるじゃない。そっちからやろうと思ってたけど、あんたからでいいわ」
「あら? 何か気に障ることを言ってしまったかしら。だとしたらごめんなさい、本当のことを言ってしまって」
「……っむがー!」
ルサルカはだんだんと地団太踏みしめているが、殺気は本物だ。……いや、怖いんですけど。藤井連ならそりゃ普通に入って行けたかもしれんが、俺には無理だ。
「あー。その辺でやめてくれないか」
と、こんな風に言うしかない。多分、かなりの中二病が入った藤井連ならかっこよく止められたのだろうが。
「ま、その辺でやめてやったらどうだい姉さん方」
またもや乱入者。1対1で会おうとか言う話はどこに行ったのか。というか、会話についていくだけで精一杯なんだが。さすがになりきりプレイするほど好きなゲームの設定をそうそう忘れたりしないが、しかしその設定で話すとなれば疲れる。
--女同士で争われてはなおさら。
「司狼、それと本城か」
「やっほー。おひさ、蓮君。元気してた?」
「ああ、問題ない。それで、何かーー」
「何かあったか、なんて俺の方が聞きたいぜ。蓮、お前さんなんでまた結界を強めたんだよ。しかも、まだ解除してねえだろ?」
「……」
黙った。というか、それに即答できるほど賢くはないんだ、俺は。ワールドアイテムを使用し続けていたのは単に解除を忘れていたから。だが、それをどう言えばいい。まあ、こんな感じかな。
「異常があった。何か知らないか?」
「おいおい、しっかりしてくれよ。ぜんぜん、まったく大丈夫じゃねえじゃねえかよ。だが、わりいな。俺はお前の言ってる異常がよくわかんねえ」
「うん、いつも通りだと思うけど。それとも、あいつの波動が強くなった?」
あいつ? そうか、波旬か。夜都賀波岐で何かあるとすれば、それは第六天波旬のことに他ならない。だが、それは設定だぞ。ユグドラシルでやっていたこととは違う。だが、設定文にはそれも書かれている。こいつらの世界はユグドラシルか、それとも新座世界か……どちらだ?
「いや……むしろ逆だな。天狗道の気配を感じない」
と言っておく。実のところ、俺は天狗道の気配など知るわけもないのだが。だって、俺は藤井連などではないのだから。
「そりゃ、いったい何を言いたいんだ。蓮」
「そうね、それならなぜ広がらないの?」
広がるーー藤井連は流出位階に達している。言ってしまえば、ただ居るだけで全並行世界規模を固有結界で覆いつくしてしまう生態を持っている。意志で止めることはできない。そんなもの設定で、持っているワールドアイテムにもそんな力はないが。
「分からん。だが外を調べなければいけないようだ。……シュピーネ!」
呼んだのは形成(笑)。ブリーチで例えれば隊長格しか登場しないのに平隊員レベルの奴がいて、始解()とか言われるようなものだ。もちろん弱いーーが、こいつの本領は情報収集であり、この場には適切だ。
「は、ここに。どうされましたかな、ツァラトゥストラ」
来た。来るかどうか不安だった、がどうせレベル1だからどうでもいいとも思っていた。夜都賀波岐に居場所がない奴だし。外の世界は危険かもしれないが、どうせカルマ値ー100の殺人鬼だ、死んだところでかまうまい。
「外に行き、情報を収集してこい。知的生命体が居たら交渉して連れてくるんだ。要求は全て飲んでも構わない」
「……ほほう。知的生命体ーー細胞であろうと、ですかな」
「見分けがつくのか、お前に?」
波旬の法に生きる者。藤井連たちが細胞と呼ぶもの、”人間”……今や土蜘蛛と貶められた彼らに代わる新人類。自愛しか持たず、他者への愛を知らぬ奇形。とはいえ、それも新座世界の概念。”ここ”は神座世界か、ユグドラシルであるのか。
「なるほど、一目見るくらいではわかりませんな。では、丁重に連れてくるとしましょう」
お辞儀をして去っていく。
「なぁ蓮、あいつでいいのか?」
「あいつならどうなっても問題ない。この黄昏に異常がないかを確認する方が先決だろう」
黄昏。ギルド『夜都賀波岐inグラズヘイム』の砦などと言うよりこちらの方が正しいだろう。プレイヤー同士ではそう呼んでいたが、設定には書いたっけか……?
「ああ、だからあいつを追い出したと」
俺はシュピーネを異物などと思ってはいない。けれど、藤井連ならばどうだろう。ただ忘れているだけという可能性もあるだけに何とも言えない。
「別に、そこまで考えていないさ」
「へー、あっそ。まあいいんじゃね? けど螢の奴はきっとお前さんを待ってるぜ。ほら、ハーレム作るにも男の流儀があるだろ。こまめにかまってやらないとスネちまうぜ」
「そうなのか?」
こいつは女を扱うすべをーー知ってそうだな。めちゃくちゃ遊んでそうな男だ、不能だが。とはいえ、俺自身の設定はマリィに一途ということだからな。……創作の人物に会ったことなんて、もちろんないのだが。NPCとして設定したこともない。さすがにそれは原作崩壊すぎるだろう。
「はっは。これだ、色男は違うねえ」
「うるさい、黙れ不能」
「……後で会ってくる。俺は自分の部屋に戻って装備を確認してくる」
そう言って、逃げた。
超ネタバレキャラ紹介
リザ・ブレンナー
魔名はバビロン〈大淫婦〉。与えられた呪いは「死体しか愛せない」
ラスボスの死体とヤって子を産んだが、ラスボスの子はラスボスの眷属であり、彼女は息子の精神性に恐れをなして逃げ出した。その子の血統を持つ玲愛にも娘としての愛情を与えていたが、ラスボスから継いだ力を恐れてまともに接することができなかったと後悔している。まとめて軍勢変性してもらった今では存分に甘やかしている。
常識人としての常識をまだ残しており、真の魔人の領域
遊佐司狼
魔名はゲオルギウス〈狼を司る者〉。名前以外にあんまり関連性が……
藤井連とは昔馴染みで不良。Dies iraeの本編前に喧嘩して両方病院送りになった後はチンピラのたまり場に居た。本人は俺tueee系、神様に力を貰って蹂躙するような人間を嫌っているが、その実一般人であった彼がDies iraeの日において戦い抜けたのは彼自身が神の操り人形であり神様に力を貰っていたからに他ならない。
続編の神咒神威神楽ではお相手はいるのだが、蓮のことを一番わかってるのは俺オーラを発しているために、女性陣からは嫌われている。