未来side
鈴音が出て暫く経ったタイミングで杏子が戻ってきた。
杏子「一旦戻りました」
美咲「おかえり杏子ちゃん!」
綾香「もー、役満振った時はヒヤッとしたよ!」
杏子「ごめんね綾香ちゃん……」
未来「それで?杏子は何か解答を得たのかしら?」
杏子「確証はありませんけど、恐らく宮永さんについてはなんとか対策を練られそうですが……」
未来「では他に何か問題が?」
杏子「松実さんの奥底に眠っている力みたいなものを感じました。それが何かわからない以上は後半戦に主導権を握るのは難しいかもしれません」
……この子はもうそれに気付いたのね。鈴音ですら気付くのに時間がかかったのに対してたった半荘の1回で気付くなんて……。まぁ具体的な正体まではわかっていないみたいだけれど、やはりこの子は天才ね。
未来(……だとしたら何れ杏子は私と鈴音の正体にも気付くのかもしれないわね)
杏子「師匠……?」
未来「なんでもないわ。それよりも後半戦はどうするのかしら?」
杏子「はい、後半戦は宮永さんへの対策を実行しつつ、攻めようかと思います。松実さんに対しては1度見ないとどういった力なのか判断できませんから、見てからまた策を練ることにします」
未来「まぁなんにせよ杏子に任せるわ。自分のベストを尽くすのよ」
杏子「はいっ……!」
美咲「そういえば鈴音ちゃんって何処に行ったのかな?」
綾香「御手洗いに行ったって感じじゃなさそうでしたし……」
杏子「……鈴音先輩は行かなきゃならない所に行ったんだと思います」
美咲と綾香は鈴音の所在に疑問を覚えていた。けれど杏子がそこに食い付かないのは珍しいわね。それどころか今の発言で何かを悟った感じすら伺えるわ。
綾香「鈴音先輩が行かなきゃいけない所って……?」
杏子「多分だけど、決勝の……白糸台か阿知賀のどっちかに昔馴染みの人達がいるのかも……」
……この子察しが良すぎるんじゃないかしら?先程天才と評したけれど、これは私と鈴音がいる『此方側』の領域に足を踏み入れてると言ってもいいわね。
美咲「あっ、もうすぐ休憩時間が終わるよ!」
杏子「……もうそんな時間ですか」
綾香「後半戦も頑張ってね杏子!」
杏子「うん、私なりに精一杯打つよ」
未来「点数さえ残れば後は私達がいるから、杏子の思うように打ってきなさい」
杏子「ありがとうございます師匠。……では行ってきます!」
そう言って杏子は会場へと向かった。
入部当時の臆病な杏子はもういない。今では頼もしい後輩ね。
未来(もしも彼女が個人戦に出場していたならきっと鈴音と美咲に次ぐ強力なライバルになっていたわね。いえ、そもそも個人戦に出場していたら私が師事することもなかったのかしら?何れにしても杏子がここまで強くなることは先鋒になった時点で必然だったということね)
そんな杏子ならきっとこの先鋒戦を更に荒らしていくでしょうね。
未来sideout
今回はここまでです。